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2015年7月18日 (土)

ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

アーノンクール指揮ベルリン・フィルによる「シューベルト・エディション」が発売!
交響曲全曲、ミサ第5&6番、歌劇《アルフォンゾとエストレッラ》を8CD + 1BDに収録
BDオーディオ、ダウンロードではハイレゾ音源(24bit/48kHz)も

 7月18日、ベルリン・フィル・レコーディングスよりニコラウス・アーノンクール指揮ベルリン・フィルによる「シューベルト・エディション」がリリースされました。このセットには、交響曲全曲(第1〜8番)、ミサ曲第5&6番、歌劇《アルフォンゾとエストレッラ》全曲が収録。CD8枚に加え、ブルーレイ・ディスクが搭載されています。BDには全曲のスタジオ・マスターの音声トラック(24bit/48kHz) と、40分弱のアーノンクールの映像インタビュー(日本語字幕付)が併載。恒例のハイレゾ音源ダウンロード・コードと、デジタル・コンサートホール7日間無料視聴バウチャーも封入され、盛りだくさんのひと組となっています。
 当録音は、2003〜06年にアーノンクールがベルリン・フィルでシューベルトを連続的に取り上げた際に、初めからCD発売することを前提に制作されたものです。当時ベルリン・フィルでは、ツィクルスの重要性を鑑み、具体的なリリース計画なしに収録を敢行しました。それが約10年の歳月を経て、自主レーベル枠で発売されることになり、念願のリリースと呼ぶことができます。
 録音に当たったのは、アーノンクールのレコーディングを長年担当してきたテルデックス・スタジオ。ライブ録音が土台になっていますが、精密なリテイクが施された完成度の高い出来となっています。その密度・精度は、一聴して明らかと言えるでしょう。
 交響曲は、1992年のロイヤル・コンセルトヘボウ管との全曲盤に続いて2度目。演奏は、アーノンクールの70代中頃=精神力・体力共に最も充実した時期に当たり、彼のシューベルトの「到達点」と断言して間違いありません。インタビューでは、「シューベルトは常に心の友であり、音楽の化身でした」と、作曲家への愛を吐露しています。
 後期のミサ曲、歌劇《アルフォンゾとエストレッラ》は、もともと録音が少ない作品だけに、貴重な内容。アーノンクールは、「シューベルトが信仰を持っていなかったとは考えられない」と語り、これらの曲が、彼の晩年において重要な意味を持っていたことを示唆しています。ソリストにはドロテア・レッシュマン(ソプラノ)、ベルナルダ・フィンク(アルト)、ヨナス・カウフマン(テノール)、クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)という強力な顔ぶれが終結しています。オペラの対訳は、この機会のために特別に新訳されたもので、作品を知るに当たって万全の仕様と言えます。
 今やユニークな巨匠として押しも押されもせぬ存在となったアーノンクールと、ベルリン・フィルの力強くも生き生きとしたシューベルト演奏を、ぜひお楽しみください。

アーノンクール指揮ベルリン・フィル/シューベルト・エディションの詳細を見る

2015/16年シーズン開幕記念・HMV特別キャンペーン
デジタル・コンサートホールの12ヵ月チケットが20パーセント割引!

 8月28日、ベルリン・フィルの2015/16年シーズンがスタートします。 それに先駆け、デジタル・コンサートホールでは、HMV提携連載「ベルリン・フィル・ラウンジ」の読者の方に、「20パーセント特別早割」を適用させていただきます。シーズン開幕までに12ヵ月チケットをご購入いただくと、通常価格149ユーロが119.20ユーロに大幅割引となります(7月15日現在のレートで約16,000円。約4,000円の割引差額)。たいへんお得となっておりますので、この機会にぜひご利用ください。
 ベルリン・フィルのネット映像配信サービス、デジタル・コンサートホールは、年間約40回のライブ中継のほか、300を越える過去のアーカイブ映像を網羅。最新のコンサートからカラヤン、アバドのアーカイブ(オンデマンド再生)に至るまで、現在約1,000曲がアップされています。
 チケット有効期間中は、何度でも無制限に視聴できます。パソコンでご利用いただけるほか、ソニー他のテレビには専用のアプリが搭載され、大画面で簡単にご覧いただけます。また、モバイル機器のアプリ(無料)をダウンロードすれば、携帯やタブレットでも視聴可能。操作や支払いは日本語で行えるため、言葉の上でも安心です。
 現在、無料お試し映像として、サー・サイモン・ラトル指揮のシューマン&ブラームス「交響曲第1番」がアップされています。また、次期首席指揮者キリル・ペトレンコの映像2本も、8月末まで無料でお楽しみいただけます(下記参照)。

12ヵ月チケットを20パーセント割引で購入する(2015年8月28日まで)
デジタル・コンサートホールをお試し視聴する
キリル・ペトレンコの無料映像を観る

キリル・ペトレンコの過去の映像が無料公開!
 6月21日、キリル・ペトレンコがベルリン・フィルの次期首席指揮者に決定しました。しかし、これまでドイツ国外での活動が少なかった指揮者だけに、日本では「謎の存在」と呼べるかもしれません。デジタル・コンサートホールでは、これを機会にペトレンコの既存のコンサート映像を、無料公開いたします(8月末まで)。この機会に、彼の演奏をぜひご体験ください。
 プログラムは、2009年と2012年の2本。前者はラルス・フォークトとのベートーヴェンのピアノ協奏曲、エルガーの交響曲第2番、後者はストラヴィンスキーの詩篇交響曲、スクリャービンの《法悦の詩》、R・シュテファンの知られざる作品2曲というもの。とりわけスクリャービンの《法悦の詩》が、鳥肌が立つような名演です。
 さらにインタビュー映像もご紹介。2012年収録のアレクサンダー・バーダー(ベルリン・フィル、クラリネット奏者)との対話には、彼のシャイで真摯な人柄が表われており、引き込まれます。本号の後半には、全訳が掲載されていますので、ご参照ください。
 詳細は、下記特集ページをご覧ください。

【演奏曲目】
2009年5月10日
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番(独奏:ラルス・フォークト)
エルガー:交響曲第2番

2012年12月21日
ストラヴィンスキー:詩篇交響曲
シュテファン:ヴァイオリンと管弦楽のための音楽
1楽章の管弦楽のための音楽
スクリャービン:「法悦の詩」

指揮:キリル・ペトレンコ

キリル・ペトレンコの特集ページ

 最新のDCHアーカイブ映像

ドゥダメルの《巨人》
2015年6月12日

【演奏曲目】
モーツァルト:セレナード第9番《ポストホルン》
マーラー:交響曲第1番《巨人》

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:グスターボ・ドゥダメル

 2004年、バンベルク交響楽団のイニシアティブによってグスタフ・マーラー指揮者コンクールが創設されました。その第1回の優勝者が、今回客演するグスターボ・ドゥダメルです。1981年ベネズエラに生まれたドゥダメルは、この受賞を機に、ごく短期間の間に驚くべき国際的キャリアを築きました。その音楽的なテンペラメント、指揮者としての専門知識の豊富さ、そして人間的な魅力によって、ドゥダメルは若い世代の中でもっとも多くのオファーを受ける指揮者の一人のみならず、サイモン・ラトル、ダニエル・バレンボイム、クライディオ・アバドといった巨匠を「彼の」オーケストラであるシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラに客演指揮者として呼ぶことに成功しています。
 そのドゥダメルが、マーラー指揮者コンクールのファイナルコンサートでマーラーの交響曲第5番を指揮してから10年。2008年にはヴァルトビューネの野外コンサートにてベルリン・フィルへの鮮烈なデビューを果たした彼が、今回の定期演奏会ではマーラーの交響曲第1番を指揮します。もう1曲は、モーツァルトの通称「ポストホルン・セレナーデ」。モーツァルトとマーラーは共に民謡の伝統を作曲に取り入れ、従来のジャンルを超える作品を生み出したゆえに、興味深い組み合わせと言えるでしょう。

ドゥダメルの演奏会をDCHで聴く

ラトル指揮でバーバラ・ハニガンがパフォーマンスするレイト・ナイト
2015年6月12日

【演奏曲目】
ヴァイル:〈ユーカリ〉、〈あなたを愛していない〉、星のなかで失われ〉
ウォルトン:《ファサード》

ソプラノ:バーバラ・ハニガン
ベルリン・フィル団員
指揮・ピアノ:サー・サイモン・ラトル

 2014/15年シーズン第3回のレイト・ナイトでは、サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルのメンバーにより、ウィリアム・ウォルトンの《ファサード》をお届けします。イーディス・シットウェルの詩に基づくこの作品は、猥雑、洗練、反体制的、さらにストラヴィンスキー風、ヴァイル風など、さまざまな音楽的要素が盛り込まれた異色作です。1923年の初演では大成功を収め、文字通りウォルトンの出世作となりました。
 独唱を務めるのはソプラノのバーバラ・ハニガン。エンターテイナーとしての才能に溢れた彼女のパフォーマンスは、まさに芸達者の一語。この演奏会でも、ラトルと丁々発止のやり取りを展開。ラトルが語りで登場する場面も抱腹絶倒です。今一番輝いているハニガンの魅力をお楽しみください。

第3回レイト・ナイトをDCHで聴く

アーティスト・イン・レジデンスのテツラフとラトルが共演
2015年6月21日

【演奏曲目】
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
ドビュッシー:《映像》
エネスク:ルーマニア狂詩曲第1番

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:サー・サイモン・ラトル


 今シーズン、ベルリン・フィルのアーティスト・イン・レジデンスを務めたクリスティアン・テツラは、ソリストとして絶大な評価を得る一方で、教育活動にも力を注いでおり、1月にはベルリン・フィルのオーケストラ・アカデミー団員と指導役を務めながら共演しています。とはいえ、今回サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルと共演するブラームスのヴァイオリン協奏曲が、彼のアーティスト・イン・レジデンスの白眉であることは、疑いがありません。
 後半は、華やかな管弦楽作品が並びます。ドビュッシー作曲の管弦楽のための《映像》は、イギリス、スペイン、フランスの民族音楽の旋律からインスピレーションを受けて書かれた作品。それぞれ〈ジーグ〉〈イベリア〉〈春のロンド〉の表題が付いており、考えられる限りの色彩的なオーケストレーションで聴き手を魅了します。ルーマニアの作曲家、ジョルジュ・エネスクの作品の多くも民族音楽に影響を受けており、ルーマニア狂詩曲第1番はその中でも代表作。さまざまな舞曲やジプシー音楽風のメロディなど、変化に富んだ曲想になっており、最後は熱狂的なストレッタで締めくくられます。

ラトル&テツラフの演奏会をDCHで聴く

 DCHの夏休み:ヴァルトビューネ&ヨーロッパ・コンサート+α特集

小澤、ブーレーズほか、チェリビダッケの歴史的帰還コンサート&ドキュメンタリー(日本語字幕付き)も!
 ベルリン・フィルのシーズンは、6月末をもって終了。8月末には、2015/16年シーズンがスタートしますが、デジタル・コンサートホールではその合間を縫って、過去の演奏会映像をアップしてゆきます。題して「首席指揮者以外のヴァルトビューネ&ヨーロッパ・コンサート+α」。ブーレーズ、ムーティ、ハイティンクのヨーロッパ・コンサート、シャイー、小澤征爾のヴァルトビューネ・コンサートに加え、マゼールとチェリビダッケの特別演奏会の映像が公開されます。
 とりわけ注目は、チェリビダッケの映像。これは、1992年にチェリビダッケが数十年ぶりにベルリン・フィルに帰還した際のものです。2015年は、チェリビダッケのベルリン・フィル・デビュー70周年に当たり、それを記念してのアップとなります。また小澤征爾の映像も、9月1日の80歳の誕生日を機会に紹介されます。
 ほかにも興味深い演奏は満載。ブーレーズのモーツァルトは、たいへん珍しいものです。またムーティのシューベルト《グレート》は、絶対的な完成度を示しています。若き日のクリスティーネ・シェーファーが歌うモーツァルトも、清冽。マゼールの《言葉のないリング》は、かつてのテラークのCD盤をも上回る内容で、彼のアクロバット的なまでのタクトが満喫できます。

【プログラムと演奏曲目】

2015年7月10日
2003年ヨーロッパ・コンサート(リスボン)
ラヴェル:《クープランの墓》
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番
バルトーク:管弦楽のための協奏曲
ピアノ:マリア・ジョアン・ピリス
指揮:ピエール・ブーレーズ


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2015年7月21日
ワーグナー(マゼール編):言葉のない《リング》
指揮:ロリン・マゼール






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2015年7月31日
2011年ヴァルトビューネ・コンサート
ショスタコーヴィチ:ジャズ組曲第2番
ロータ:組曲《道》
レスピーギ:《ローマの噴水》、《ローマの松》他
指揮:リッカルド・シャイー



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2015年8月7日
2009年ヨーロッパ・コンサート(ナポリ)
ヴェルディ:《運命の力》序曲
マルトゥッチ:《追憶の歌》
シューベルト:交響曲第8番《グレート》
ソプラノ:ヴィオレタ・ウルマーナ
指揮:リッカルド・ムーティ

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2015年8月14日
1999年ヨーロッパ・コンサート(クラクフ)
モーツァルト:モテット《喜び踊れ、汝幸いなる魂よ》
ミサ曲ハ短調より〈聖霊によってマリアより生まれ〉
ショパン:ピアノ協奏曲第2番
シューマン:交響曲第1番《春》
ソプラノ:クリスティーネ・シェーファー
指揮:ベルナルト・ハイティンク

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2015年8月21日
ブルックナー:交響曲第7番
指揮:セルジゥ・チェリビダッケ
ドキュメンタリー『チェリビダッケ:ベルリンへの帰還』




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2015年8月26日
2003年ヴァルトビューネ・コンサート
ガーシュウィン:《パリのアメリカ人》
《ラプソディー・イン・ブルー》
ピアノ協奏曲ヘ長調他
マーカス・ロバーツ・トリオ
指揮:小澤征爾


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 アーティスト・インタビュー

再録!キリル・ペトレンコの2012年のインタビュー
「私には、特定の場所で長期的に活動することの方が向いています」
聞き手:アレクサンダー・バーダー
2012年12月21日

【演奏曲目】
ストラヴィンスキー:詩篇交響曲
シュテファン:ヴァイオリンと管弦楽のための音楽
1楽章の管弦楽のための音楽
スクリャービン:《法悦の詩》

ヴァイオリン:ダニエル・スタブラヴァ
ベルリン放送合唱団(合唱指揮:カスパース・プトニンシ)
指揮:キリル・ペトレンコ

 次期首席指揮者に選ばれたキリル・ペトレンコは、これまでドイツを中心に活躍し、日本ではほとんど知られていません。彼の音楽、そして人柄は、一体どのようなものなのでしょう。当インタビューは、ベルリン・フィル・ラウンジ第71号に掲載されたものの再録。彼の音楽に対する姿勢、考え方がよく表われています。ほとんど少年のようにシャイで、謙虚ですが、どこか人の心に触れる静かな語り口が、強い印象を与えます。ぜひ映像と共にご覧ください。

アレクサンダー・バーダー 「ペトレンコさんは、2002年から07年までベルリン・コーミッシェ・オーパーの音楽総監督でした。2013/14年シーズンからは、バイエルン国立歌劇場の音楽総監督を務められます。ベルリンで指揮される時は、古巣に戻る、という感じですか」

キリル・ペトレンコ 「実は私は、まだベルリンに住んでいるのです。1月の終わりにミュンヘンに引っ越すのですが、ベルリンには11年住んだことになります。私にとって一番好ましいのは、自分の家からリハーサルに行けることです。コーミッシェ・オーパーの時がそうでしたし、今回のベルリン・フィルの場合も、家から来られました。残念ながら、フリーで活動していたこの数年は、そうできないことが多くて…」

バーダー 「ペトレンコさんは、コーミッシェ・オーパーのポストの後、しばらくフリーで活動すると宣言し、首席指揮者になることを拒否し続けてきました。今回ミュンヘンで新しいポストに就くわけですが、この決心をしたのはなぜでしょう」

ペトレンコ 「おっしゃる通り、私は一時期フリーとして活躍する道を選びました。コーミッシェ・オーパーでの年月は私にとっては本当に重要で、色々なことを学びましたが、オペラでの仕事はどうしても事務的なことに関わる必要があり、大変だったのです。それまではずっと特定のオペラハウスに所属していたので、一度自由に活動してみたかったのです。
 しかしこの生活を5、6年続けてみて、フリーでいることが段々不都合になってきました。というのは、客演指揮者というのは本質的に根無し草なんです。ホームベースがあった方がいい、という考え方になりました。ミュンヘンから声が掛かったとき、最初は非常に懐疑的だったのですが、もう一度考え直して、受けることに決めたのです。私には、特定の場所で長期的に活動することの方が向いていると思います」

バーダー 「その方が、よりよい音楽ができるといことですね。長いリハーサルができるからですか」

ペトレンコ 「リハーサルの長さという以前に、団員との人間関係のためです。というのは、ある人のことをよく知っていれば、どの日、どの時間、どの瞬間に一番よい形で、最大のものを引き出せるかが分かります。例えば、初めて客演するオーケストラの場合、顔を合わせ、リハーサルを少ししたと思ったら、もうゲネプロになってしまいます。大体、私は性格的にシャイで、すぐに打ち解けられないんです。2回目に来たときは、少し団員のことが分かっていますが、それでも1歩戻ったところから始めなければなりません。自分のオーケストラであれば、メンバーのことがよく分かっているので、効率のよい形でリハーサルを進めることができます」

バーダー 「ベルリン・フィルでも、メンバーのことが分かってきましたか」

ペトレンコ 「ええ。今回、1日目はちょっと緊張していて、2日目になると少し落ち着きました。人や状況に慣れるのに時間が掛かりますが、ベルリン・フィルは、私にとってはエベレストのようなものなので、なおさらです。ですが、今回3回目に客演して、音楽的に団員と一体化することができる、と感じています。客演するごとに、一歩一歩前進している感じです」

バーダー 「我々の方から言わせていただくと、皆あなたが来るのが楽しみなんですよ。日程が近づくと、“ペトレンコが来るね”と噂しあうんです。あなたの客演は、心から大歓迎しています。
 今回のプログラムについてお話したいと思いますが、なぜこのような構成になったのでしょう。独特の選曲だと思いますが」

ペトレンコ 「今回声が掛かったとき、まずスクリャービンの《法悦の詩》をやりたいと思いました。ベルリン・フィルとフィルハーモニーでやる曲として、合っていると考えたのです。ルーディ・シュテファンについては、私はこの作曲家を数年前に発見しました。第1次世界大戦で27歳で戦死した悲劇的な人物ですが、その才能は明らかです。せっかく埋もれた作曲家を取り上げるのですから、1曲だけではなく2曲一度に、プログラムの重点として演奏しようと思いました。ベルリン・フィルのような一流のオーケストラの定期演奏会で、きちんと再演してこそ、広い聴衆に知らしめられると思います。ストラヴィンスキーの詩篇交響曲を取り上げたのは、詩篇(ダヴィドの詩篇)には悲劇的なものがあり、それをシュテファンの運命と関連付けようと思ったのです。でも、お客さんがあまにり悲しい思いで家路につかなくて済むように、最後にスクリャービンを置きました。
 私はひと晩のプログラムは、様々な側面を持つべきだと思います。今回のシュテファンのように教育的、教養的なレパートリーを加える一方、オケマンにとって弾いて楽しい曲(今回の場合ならばスクリャービンですが)、また、お客さんが楽しめる作品を組み合わせてゆくことが必要ではないでしょうか。しかし、次回はもう少しポピュラーな作品を取り上げられれば、と考えています。実はこれまでは、ベルリン・フィルでメインストリームの作品をやるのは早すぎると思っていました。ですが、次回はオケがソラで弾けるような曲をやっても大丈夫だという気持ちになりました。その自信が生まれた、という感じです」

ペトレンコの無料映像を観る

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2015年8月24日(金)発行を予定しています。

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