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【インタビュー】 エミ・マイヤー 『Galaxy's Skirt』

2013年7月2日 (火)


 ジョン・メイヤーのサポート・ギタリストとしても活躍するデヴィッド・ライアン・ハリスがプロデュースを手掛けたニュー・アルバム『Galaxy's Skirt』は、前作『LOL』はもとより、それまでの彼女の音楽とは全く異なる表情を映し出したソウルフルなバンドサウンドに。

 そんな シンガー・ソングライターとして着実に成長し進化したことを感じさせてくれるアルバムを引っさげて、6月下旬からスタートした全国ツアーも7月いよいよ終盤戦。そのハイライトのひとつとも言える東京公演を直前に控えたエミ・マイヤーさんにお話を伺ってまいりました。


インタビュー/文・構成:小浜文晶



未知の場所に飛び込んでいったこと、私の手から離れてデヴィッドさんに一切のことをお任せしたこと、このふたつは本当にいい経験になりました。


-- ニュー・アルバムの『Galaxy's Skirt』、このタイトル曲は去年の段階ですでにライヴで披露されていたと思うんですが、今回のアルバムには、そこからさらに作り込まれたものが最終的なテイクとなって収録されている、という感じになるのでしょうか?

 ライヴで演奏していたのは、たしか去年の4月ぐらい。その時点でもう録音はされていたんですよ。「Galaxy's Skirt」に関して言えば、録音する前からピアノのパーツはほとんど固まっていたので、そういう意味では、最初のテイクにそれほど手を加えるってことはしていませんね。


-- 前回お会いしたのは1年前、『LOL』のリリースのときで。その際「アルバムのレコーディングでちょうど今スタジオに入っている」とおっしゃっていましたよね。

 あのときは、『LOL』を録りにロスへ行くたびに、今回のアルバム・プロデューサー、デヴィッド・ライン・ハリスさんと何回か打ち合わせをしていた、そういう時期でもあったんですよ。デモ作りを進めたり、アレンジを詰めていったりって。だから、『LOL』のレコーディングと並行して、『Galaxy's Skirt』のプリ・プロダクション(レコーディングの下準備)なんかもやっていたんですよ。 


デヴィッド・ライアン・ハリス (David Ryan Harris)
イリノイ州出身。ロサンゼルスを拠点に活動するシンガー・ソングライター。80年代からプロとしてのキャリアをスタート。アトランタ・ベースのファンク×メタル・バンド、フォロー・フォー・ナウ(Follow For Now)のフロントマンとしても活躍した。1994年、グループ解散に伴うソロ独立後、アレステッド・デベロップメントの女性シンガー、ディオンヌ・ファリスのソロ・アルバム『Wild Seed, Wild Flower』にギタリストとして参加し高い評価を得る。97年には初のソロ・アルバム『David Ryan Harris』をColumbiaからリリース。ソウル、ブルース、モータウン、ロック、フォークなどの要素を持つレンジの広いサウンドは、当時興隆していた”ブラック・ロック”ブームにも乗りヒットを記録した。その後は、2003年に『Soulstice』、2006年に『The Bittersweet』という2枚のアルバムをリリース。また、自身がリーダーを務めるトリオ・バンド、ブランニュー・イモータルズ(the Brand New Immortals)での活動、旧知のデイヴ・マシューズ、ジョン・メイヤー、ガイ・セバスチャン、さらにはサンタナ、リッチー・サンボラ(ボン・ジョヴィ)らのサポート・ギタリストとしても活躍している。

-- 『LOL』から丸1年、間が空いたカタチになったので、楽曲を何回も練り直したりしていたのかなと思っていたんですが・・・

 いやぁ、そんな煮詰まった感じでもなかったですよ(笑)。『LOL』が出たすぐあとに、ほとんどの曲は録り終えていたんで、時間をかけたのはミキシングやレイヤリングぐらい。曲のベースにしても去年のアタマぐらいに完璧に近い状態に仕上げていましたから。 


-- じゃあ割とゆったりとしたスパンで仕上げたというか。

 本当にそんな感じですね。メインだけ先にパンッと録っちゃって、あとは特に締め切り日とかも設けずにゆっくりと。だから、かなりストレスフリーでした(笑)。


-- それこそ、デヴィッドさんって他でも仕事を色々抱えている多忙な人じゃないですか? だからスケジュール的にも余裕を持たせていないと共同作業自体難しそうですよね。

 デヴィッドさんはオーストラリアでも活動しているし、そもそも私と同じ日程でロスにいること自体珍しかったんで(笑)、当初は最後まで一緒に仕上げられないだろうなって思っていたんですよ。その時期ちょうどデヴィッドさんは、ジョンくん(ジョン・メイヤー)のツアー・サポートに同行することにもなっていたんで。でも、ジョンくんが喉を痛めて、そのツアーがたまたまキャンセルになったんですね。去年の春先ぐらいのことなんですけど。


-- そこで時間が空いた、と。

 そうなんですよ。結局それもあって、一緒に時間をかけてアルバムのミックスをすることができた。だから、ある意味運命的にお互いのスケジュールに空きができたんですよね。


-- 今回のアルバムは「バンド・サウンド」というものがひとつのテーマになっていると思うんですが、このアイデア自体はエミさんからのものだったんですか? それともデヴィッドさんから?

 どちらともなく、自然にこうなったっていう感じですね。私がプロデュースすると、結構トリオかカルテットのアコースティック・サウンドみたいな音になることが多いんですけど、でも今回はデヴィッドさんの音で作りたいなっていうのがとにかく自分の中にあった。彼の力強いギターをフィーチャーして、彼と親しいロスのミュージシャンたちと一緒に録音したいなって。そのリクエストにデヴィッドさんが応えてくれて、色々と考えてくれた結果が今回のバンド・サウンドになったんだと思います。

 ただ、ひとくちにバンド・サウンドといっても、ジャズマンが4人ぐらい集まるのと、今回のメンバーのように、いつもアリーナ・クラスのステージで色々なジャンルの音楽を毎日演奏している人たちの集まりとでは、やっぱり全然違うサウンドが生まれるんですよね。そういう意味でも、今回サウンドのスケールがかなり大きくなったと思います。


-- エミさんの音楽人生の中で、ご自身がバンマスやバンドリーダーになってバンドを動かしていくっていうことは、これまでにもあったんですか?

 大学生の頃にジャズ・ピアノを習っていたんですけど、そのときにアルバイトみたいな感じでちょっとやっていましたね。文化祭があるときなんかに、「ピアノ弾いてよ」って誘われると、大抵私がバンド・リーダーになって仕切ってましたね(笑)。練習スタジオや日程をブッキングしたりもして。


-- 今回のレコーディングでは、どのような立ち位置だったんですか? 概ねデヴィッドさんとの二人三脚であったとは思うんですけど。

 今回はデヴィッドさんが完全にリーダーで、私は彼にリードされている、いちアーティストみたいな。だから、あまりスタジオ内では不満を口にしなかったというか・・・もちろんセンス的な部分で「これは違う」って思ったら口にしますけど、でもそういうのが今回ほとんどなかったんですよね。本当にリラックスできて、スタジオのみんなとも和気あいあいとレコーディングすることができたんですよ。


-- そういった雰囲気は結構珍しいんじゃないですか? レコーディングの現場って、普通は大体ピリピリしてるって聞きますし・・・

 (笑)そうですね・・・自分の経験から言うと、例えば「Co-Writing」(共同作曲)やプロダクションのパートナーなんかと作業する場では、結構激しく意見を戦わせたりもするんですけど、今回に限っては本当にそういうことがなかったんですよね。

 あとは、自分の中で好き嫌いがハッキリしたことと、それにプラスしてちょっと客観的に自分の作品を見ることができるようになった、この二つも大きかったのかなって。例えば「このディストーション・ギターはどうなんだろう?」って思っても、そこですぐに否定的になるんじゃなくて、一旦じっくり考えて見るんですよ、きちんと音楽的に。「曲に対してこのギターがどうプラスに作用するのかな」って。そうすると新しく見えてくるものがあるんですよね。「あ、でもこれでいいんだ」って。逆に「全然違うな」って感じたのは本当に一度もなかった。それはかなり珍しいことですね。


-- それだけデヴィッドさんを信頼していたというか。

 レコーディング前の段階でデヴィッドさんと何回も会って、お互いのセンスを確かめ合ったんですよ。そこで共通したのが、ジャンルにこだわらないところとか、変にリスナーに媚びた作品作りをしないところだったり。彼にしても、私の昔の作品をそこまで聴き込んでいたわけじゃなかったので、だからこそ何回か直接会って、そこで、「どんな音楽が好きなのか」、「どういう雰囲気にしたいのか」、「どういう楽器を入れたいのか」ってコミュニケートしたときの感覚を元に、どんなプロデュースをするかっていうことを考えてくれたんだと思います。しかも、彼と私との間に、レーベルだったりの第三者が入っていなかったのも、すごくスムーズに事が運んだ要因だったかなって。彼も遠慮せずにアレンジすることができたと思うし。


-- それってかなり大きいですよね。


 私も何も心配することなく、彼にアレンジを任すことができた。お互いにとっていいことだらけのケミストリーになったと思います。


-- バンド・メンバーもエミさんの意思を自然に汲みとって、みたいな。

 まずデヴィッドさんに私の意思が伝わって、それが彼らに伝わっていくっていう感じでしたね。デヴィッドさんと彼らはもう長い付き合いなので、ちょっとイメージを伝えただけでそれをすぐに形にできるんですね。ベースのショーンさん(Sean Hurley)とドラムのヴィクターさん(Victor Indrizzo)にしても以前から一緒にレコーディング・セッションに参加していたり、ふたりは共同でスタジオも持っているぐらいなので、そういう部分ではお互いをよく知る仲間が集まったバンドとも言えるんですよ。


-- デヴィッドさんのようなプロデューサーを間近にしたら、「いつかは私も・・・」みたいなディレクションやコーディネイトの野心がでてきたり。

 今までセルフ・プロデュースはやっていたんですけど、彼のように、元々本当に“種”しかない曲をあそこまでに膨らませる術っていうのはやっぱりすごいなって。あと、私がとにかくすごいなって思うのが、マルチに楽器や機材を操れるところですよね。ヴォーカルのレイヤリングから、プログラミング、エディティングまでひとりで全部できちゃうんですよ。

 さすがにそういうプロデューサーになれるかどうかは分からないんですけど(笑)・・・今私が他の人をプロデュースするとしたら、ここにはこういうサンプルを足して、ここにはこういうギターを足してみたいなディレクション的な感じになるんじゃないかなって。だから逆に、本当にすごいプロデューサーと仕事をしたんだなっていう実感がありますね。  


-- デヴィッドさんのアレンジが加わって最終的に出来上がったものを聴いたときっていかがでした?

 「Galaxy's Skirt」の途中にドラムが入ってくるところとか、最初に聴いたときビックリしましたね(笑)。でもすごくいいアレンジで。「I Can't Get Enough Of You」でのデヴィッドさんのバッキング・ヴォーカルも素敵でしたし。いちリスナーとして聴いていて、かなり新鮮で楽しめましたね。

 でもその後って、正直自分の作品はあまり聴きたくないタチなんですよ、私(笑)・・・もう全然違うこと考えたいんですよ。


-- と、おっしゃる方多いですよね(笑)。

 出来上がったばかりでエキサイトして聴くときと、時間が経って第三者としてクールに聴けるとき、そのちょうど中間のグレーの時期が好きじゃなくて(笑)。


-- (笑)自己批判が多くなるとか。

 そうなんですよ・・・全然音楽として聴けない(笑)。でも、こうしてリリースされてからは、ツアーのリハのために聴いているんで、もう冷静に聴き返せてますよ。なので、改めてデヴィッドさんにプロデュースをお願いしてよかったなっていう気持ちになっていますね。


-- いただいた資料にもエミさんのコメントが載っていましたよね。「デヴィッドさんと作業をすることで、視野と考え方が格段に広がった」って。

 そうやって全く今まで面識のない人にアプローチをしたり、ロスの知らない土地まで出向いて録音しに行ったことも、今から考えると、怖いこともあったけど(笑)、自分なりによくやったというか、何かに惹かれて自然とそういう行動を取ったんでしょうね。勿論そのときの勢いもありましたし。少しでも躊躇すると、やっぱり前に進めなくなっちゃうと思うんですよ。とはいえ、ロスを独りでブラブラしたり、友達と遊んだりして、レコーディング以外では結構自由を満喫できて楽しかったんですけどね(笑)。

 まぁでも、未知の場所に飛び込んでいったこと、私の手から離れてデヴィッドさんに一切のことをお任せしたこと、このふたつは本当にいい経験になりました。


-- タイトル曲の「Galaxy's Skirt」は、イスラム神秘主義スーフィーの詩人、ルーミーにインスパイアされたということなんですが。以前からこういったミスティシズムに興味を持っていたのですか?

 ミステリアスっていう感覚については昔から色々思うところがあって。何においてもそうだと思うんですけど、しばらく物事を突き詰めてやっていると、それに対して色々疑問みたいなものが沸いて出てくるじゃないですか。「果たしてこれでいいのかな?」って。私自身、曲を書き始めた頃は、いきなり曲想がフッと降りてくるとか、声を出すだけでアドレナリが出ているのを感じたりとか、ある意味すごく神秘的だった。でもそういうことを何度も繰り返して、曲を書くことや歌うこと、あとは音楽ビジネスの仕組みなんかについて分かってきたりすると、そのミステリアスな部分がだんだん無くなっていく。だけど、そういうミステリアスなところがないと、やっぱり音楽を純粋な気持ちで作ることはできないと思うんですね。じゃあそうなった時に自分は何について歌いたいのかなって、人生の中でインスピレーションの源になるものを色々と探していたんですよ。

 その中で、自分には今まで出来ていなかったこと、する勇気がなかったこと、例えばさっきお話ししたプロデュースをしてもらうために単身ロスに行ったり、多少怖い思いはあるけど知らない世界に飛び込んでいくようなことをやってみようって。それはきっと自分のプラスになるんだっていうことを考えたんですね。

 ルーミーは神様を恋人に喩えて詩を書くんですけど、私はそれに倣って、世界を恋人に喩えて、少しづつお互いが分かり合えていく気持ちを大事にしたいって人生の中で強く感じた。だからすごく書きたい曲が書けたんですよ。


ルーミー・・・・ イスラム教神秘主義に属するスーフィー教の詩人。1207年アフガニスタン・バルフ出身。本名はメヴラーナ・ジャラール・ウッディーン・ルーミー。セマー(旋舞)で知られるトルコのメレヴィー教団の創始者。2万句を越える詩がペルシャ語のコーランと呼ばれる詩集「精神的マスナビー」となった。欧米ではとても有名な詩人であり、マドンナやデミ・ムーアも彼の詩を朗読したCDをリリースしている。


-- エミさん、かなり好奇心が旺盛ですよね。常に新しい刺激に飢えているというか。

 多分そうかもしれない(笑)。これまでの人生でも、直感的というか運命的というか、なぜか分からないけど手に取った本だったり、何となく声を掛けたくなった人がいて、そのつながりから人生が大きく動いたりしてきたんですよ。本当に些細なチャンスで、「これから何ができるのか」って世界の見方が変わってくるじゃないですか。そのチャンスにめぐり合うには、それこそ好奇心をもって毎日を過ごしていないと見逃しちゃうんじゃないかなって思います。常にポジティヴでいたりオープンでいたり、ある意味リラックスしていることもそうですよね。


-- ダメダメが続くとついネガ思考になってしまうんで、なかなか難しいことですけどね。

 すごく分かりますけどね。ただ、ネガのチェインを断ち切るにはやっぱり新しいことにチャレンジするしかないわけで。そのときに前の失敗をきちんと振り返りながら、「次はそうならないぞ」って前向きに対処するのがとにかく賢明じゃないかなって。


-- さてアルバムは、今回もゲストが多彩で、「Black Sheep」にはブレット・デネン、「New York」にはジュリアン・ヴェラード、ふたりのシンガー・ソングライターが参加・共作していますね。

 ブレットさんは私が大学時代に初めて知ったシンガー・ソングライターで、その頃すでに何枚かアルバムを出していたと思うんですけど、「いい曲を書く人だなぁ」って。共通の知り合いがいたので、昔から何度かライヴに誘ってくれてたんですよ。ブレットさんは、ジョン(・メイヤー)くんのオープニング・アクトもよくやっていたんで、デヴィッドさんも彼のことは知っていた。で、私も前から彼とはコラボしてみたいなって思っていたので、ちょうどいい機会だったので、今回参加してもらい一緒に曲を書きました。


カリフォルニア州サンタ・モニカ出身のシンガー・ソングライター。ジャズ、ソウル、ワールド・ミュージックからの影響も窺わせるソングライティングと、独特の際立った歌声が印象的。決して声高に叫ぶわけではない。大音量で圧倒するわけでもない。しかし囁きかけるように歌ってもその歌声とメロディは聴く者の気持ちを鷲掴みにできる力強さを持っている。2005年にファースト・アルバム『Brett Dennen』を発表。穏やかなオーガニック・サウンドと優しいまなざしの歌詞が注目を集める。最新アルバムは2011年リリースの『Loverboy』。飾らない誠実な人柄がそのまま出た、ちょっとクセのある歌声は、静かに確実に聴く者の耳をとらえ、胸の奥へ届く。
アメリカ・ニューヨーク出身の英国在住ピアニスト/シンガー・ソングライター。マサチューセッツのハンプシャー大学在籍時にはユセフ・ラティーフに師事。2007年にケイト・ナッシュのパリ公演のサポート・ミュージシャンとしてデビュー。2008年にアルバム『The Planeteer』でメジャー・デビューを果たした。2011年、元10cc〜ゴドレイ&クレームのロル・クレーム、ジェリー・アボット、グラント・ブラックらと共作した「Sentimental」が収録された『Mr. Saturday Night』をリリースし話題を呼んだ。最新アルバムは2012年リリースの自主制作盤『Person Of Interest』。現在はブルックリンを拠点に活動している。

-- コラボは、今やエミさんの作品に欠かせないものになっていますよね。

 音楽って、ひとりで閉じ籠もってするべきことじゃないというか・・・もちろんそういう部分も大事なんですが、でもそれだけじゃなくて、何かを共感できると思えた人とシェアし合って、そのケミストリーによってどういう音楽が生まれるかっていうのを体験するのも、私にとって大切なこと。ありえないコンビほど、そこから生まれる音楽はおもしろそうなものになりそうだし、またそこから色々広がっていくんじゃないかなって。新しいメロディ、リズム、曲の書き方を発見できたり。本当、そういう場面に居合わせているのがすごく楽しいんですよ。


-- 新しい曲の書き方というお話が出ましたが、「Shine On」はちょっと今までにないサウンドだなぁと。メロトロンが入ったミニマルな感じで、ちょっぴりエレクトロニカ調というか。

 生の楽器にエレクトロニカが絡む感じ、すごく好きなんですよ。ポストロックにしても。こういうジャンルの音楽を自分なりにどう解釈して作品に取り込むか、そしてそれがみんなにどう解釈されるかっていうのは、ものすごく興味ありますね。例えば、アボガドを素揚げにしてみたら意外とおいしかった、みたいな感動(笑)。

 「Shine On」は、歌詞自体はものすごくポジティヴ。その落差というかコントラストで、音はとことんクールにしたっていうバランスですね。


メロトロン・・・・ 60年代に開発されたアナログ再生式のサンプル音声再生楽器。ビートルズ「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」、ローリング・ストーンズ「2000光年のかなたに」、キング・クリムゾン「クリムゾンキングの宮殿」、「エピタフ」、デヴィッド・ボウイ「スペイス・オディティ」といったロックの名曲にも使用されて有名になった。


-- 「TokyoTo」は、「To京都」と「東京都」のアナグラムみたいなこと?

 そうです、そうです。昔から「京都」「東京都」って、漢字で書き並べてみてもおもしろい言葉だなって思ってたんですよ。この曲ではそのコントラストを歌っているんですけど、東京は、ペースが速かったり、自分の居場所を見つけるのが大変だったり。だけどその反対で、生まれ故郷の京都は心から落ち着く場所。自分の居場所が昔からしっかりあるから。

 ジュリアンさんと書いた「New York」は、そのアメリカ・ヴァージョンというか。去年の夏に3ヶ月過ごしてたんですけど、色んな刺激があって、とても楽しい街。刺激や活気を注入するために、どうしても行きたくなっちゃう場所なんですよね。でもその反面すごく疲れるところでもあって。24時間地下鉄が走ってるぐらいだから本当にノンストップ。気が休まらないんですよ(笑)。 


-- 東京よりも?

 違う意味で疲れますね。東京には緑が少ないっていうのが私にとってはちょっと・・・もちろん明治神宮とかもありますけど。あと、光や照明がやけにブライトなんですよね。コンビニとか。アメリカでは見かけないぐらい光が強くて、私、目が弱いんですぐ頭が痛くなっちゃう。あとたまに、礼儀作法やしきたりを重んじる緊張感のある習慣にちょっと疲れたりもして・・・それがいい部分でもあるんですけどね。

 逆にニューヨークは礼儀にうるさいっていうことはなくて、かなりラフで雑(笑)。でも、それがかえってリラックスできるっていうのもあるんですよ。だから雑なところがキライでもあり好きでもありっていう。  

 とか言いながらも、5月に「Japan Day」に出演するためにニューヨークに行ってきたんですが、すぐに日本が恋しくなくなりましたけどね(笑)。みんなが優しく親切に接してくれる感じが。そういうバランスですね。


-- ニューヨークの人、そんなにアタリがキツいんですか?(笑)

 (笑)いや、意地悪っていう意味ではなくて、本当に自分の感情に対してストレートな物言いなんですよ。変に優しく物を言わないというか、ある意味回りくどくはないんですけど(笑)。でも、そういうぶつかり合いからハッと気付かされることもありますからね。


-- 「エナジー」にはどこかロバータ・フラックやアリシア・キーズのような人たちを連想させるような感じがあって。僕の中でのデヴィッド・ライアン・ハリスという人は、結構こういった音を作るのがウマイ人というイメージなんですけど。

 あぁ、なるほど。たしかにこういうソウルフルで熱い感じは得意かもしれませんね。私としてはとにかく、“強い女”をイメージして歌ってみたんですよ。割りと誰にでもあることを歌っているんですけど、会社でもプライベートでもバランスが崩れると良くないっていうような内容ですね。


-- では最後に今回のツアーのことを少しお聞きしたいのですが、ツアー・バンドはどういった編成になるんですか?

 ドラムとベースは数年来の同じメンバーで、ギターはアコースティック・ライヴなどで何度か演ってもらった人です。それとバンド編成的には初めてキーボードの方にも参加してもらいます。


-- そこで今回のアルバムの音がまたどう再現されるかっていう。

 ですよね。どうなるか分からないけど楽しみです(笑)。色々工夫を凝らすと思うので。でも、無理矢理バンド・サウンドを作る必要はないと思っているので、彼らとこのアルバムを解釈しながら、その中で根本的な部分は外さずにやっていくっていう感じになるでしょうね。


-- ちなみに今後のアルバム制作では、このバンド・サウンドをさらに発展させていく可能性も?

 今はまだ、バンド・サウンドが自分にとっては新鮮なものなので、それも楽しいと思いますね。でも、そこでまた落差を付けるようにミニマルなものを作ってみたりとか。

 CM音楽を作っているときに、弾き語りのピアノで作ったデモ・テープを制作会社に送って、でもそれが自分が思っていたものとは全く違うアレンジになって帰って来たりすると、「あ、こういうアレンジの仕方もあるんだ」っていう発見が多かったんですよ。そこで曲作りに対する考え方がすごく変わったというか、「私が書いた曲でも、アレンジ次第ではバンド・サウンドのようなものが作れるんだ」って本当に驚きでもあったんですよね。だから、この先突き詰めたいのは、例えば、ピアノをどうミニマルにアレンジできるのかだったり、そういう部分かもしれないですね。

 まぁ、いつも「先のこと先のこと」を考えがちになってしまうんですけど、でも今を味わわないのはさすがに勿体ないので(笑)。このアルバムができた喜びと、ここに収められた曲をライヴで披露できる楽しみを、今は存分に味わいたいですね。



【取材協力:プランクトン】




 Emi Meyer 『Galaxy's Skirt』


スーフィー(イスラム神秘主義)の詩人、ルーミーにインスパイアされた感動的なタイトル曲は、宇宙を恋人に例えた、世界に対する壮大なラブソング。また初の外部プロデューサーとして、ジョン・メイヤーのサポート・ギタリストとしても活躍するデビッド・ライアン・ハリスを迎え、どの曲もノスタルジックでソウルフルなバンドサウンドに仕上がっている。聴くほどに心に迫るエモーショナルな楽曲が、シンガー・ソングライターとして新たなステージへと踏み出したことを証明する、時代を超えたポップアルバムの傑作。TOYOTAプリウスCM曲「オン・ザ・ロード」アルバム・バージョン、CanonピクサスCM曲「シャイン・オン」アルバム・バージョンを収録。初回限定盤はビデオクリップ3本を収録したDVD付!


収録曲

    ディスク1
  • 01. Galaxy's Skirt
  • 02. Doin' Great
  • 03. Black Sheep
  • 04. Shine On
  • 05. I Can't Get Enough Of You
  • 06. ToKyoTo
  • 07. New York
  • 08. Energy
  • 09. On The Road
  • 10. What Would You Say

    ディスク2 (DVD)
  • 01. Galaxy's Skirt
  • 02. On The Road (PRIUS version)
  • 03. On The Road (PRIUS Japanese version)

2012年2月 The Bank Studio, Los Angels 録音


  エミ・マイヤー プロフィール
  (Emi Meyer)

アメリカを拠点に活動するシンガー・ソングライター。日本人の母親とアメリカ人の父親の間に京都で生まれ、1才になる前にアメリカのシアトルに移住。幼い頃よりクラシック・ピアノを学び友人と共演したいとの理由でジャズ・ピアノも学ぶ。18才で曲を書き出し、L.A.と東京でヴォーカリストとしての活動を始める。2007年にシアトルー神戸ジャズ・ボーカリスト・コンペティションで優勝。その後、Jazztronikをはじめ国内外の著名アーティストと共演を重ね、フジロックなど各地の大型フェスにも出演。その歌声と存在感で多くの聴衆を魅了している。09年にリリースされたデビュー・アルバム『キュリアス・クリーチャー』は、iTunes Storeや多くのCDショップのJAZZ チャートで首位を獲得。iTunes StoreではJAZZカテゴリーの「年間ベスト・ニュー・アーティスト」にも選ばれた。2010年にShingo Annen(Shing02)との共作となる全曲日本語詞の2ndアルバム『パスポート』をリリース。数々のCMソングも手掛けており、キリンビバレッジ「午後の紅茶 アジアンストレート<無糖>」TVCFで使用された「ジャマイカ・ソング」、「アヲハタ55ジャム」で使用された「フレンドリー・フェイス」は、2011年リリースの3rdアルバム『スーツケース・オブ・ストーンズ』に収録されている。

2012年にリリースしたミニ・アルバム『LOL』は収録曲「オン・ザ・ロード」がTOYOTAプリウスのCMでオンエアされ、スマッシュヒットとなった。またケン・イシイや大橋トリオとの共作曲でも幅広い層に支持されている。今年4月にニューアルバム『ギャラクシーズ・スカート』をリリースした。





今後のライヴ・スケジュール


エミ・マイヤー〈Tour“Galaxy's Skirt”2013 〉


7/4(木)東京 Shibuya O-EAST(ゲスト:デイブ・リアン)

開場18:30 / 開演19:30
前売:5,000円/当日:5,500円(税込/1ドリンク別/全自由/整理番号付)
* 入場時に別途ドリンク代500円が必要です。

7/6(土)静岡 焼津文化会館・小ホール(ゲスト:デイブ・リアン)

開場18:00/開演18:30
前売:3,000円/当日:3,500円(税込/1ソフトドリンク付/全席指定/未就学児童入場不可)

7/10(水)山形 文翔館議場ホール(弾き語りソロ)(ゲスト:デイブ・リアン)

開場18:00/開演18:30
前売:3,000円(高校生以下 1,500円)/当日:3,500円(高校生以下 1,800円)(税込/全席自由)

7/21(日)北海道 JOIN ALIVE 2013

詳細はオフィシャル・サイト


ローチケ.com でもチケット販売中!!



【インタビュー】 エミ・マイヤー (2012年4月)

百花繚乱の ”ナチュラル・ウーマン” シーンに咲き加わる、新作ミニ・アルバム『LOL(エル・オー・エル)』。HMV ONLINE インタビュー初登場となるエミ・マイヤーさんにお話を伺いました。





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    Eric Legnini / Afro Jazz Beat

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    会員価格(税込) : ¥2,052
    まとめ買い価格(税込) : ¥1,972

    発売日:2013年06月10日


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  • White (+DVD)

    CD

    White (+DVD)

    大橋トリオ

    ユーザー評価 : 5点 (1件のレビュー)
    ★★★★★

    価格(税込) : ¥4,180
    会員価格(税込) : ¥3,762
    まとめ買い価格(税込) : ¥3,553

    発売日:2012年09月19日


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  • JTK

    CD

    JTK

    Jazztronik

    ユーザー評価 : 5点 (2件のレビュー)
    ★★★★★

    価格(税込) : ¥3,080
    会員価格(税込) : ¥2,834

    発売日:2008年12月17日


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  • 歪曲

    CD

    歪曲

    Shing02

    ユーザー評価 : 5点 (8件のレビュー)
    ★★★★★

    価格(税込) : ¥3,143
    会員価格(税込) : ¥2,892

    発売日:2008年06月18日


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  • 歪曲巡礼 (Documentary Film)(+CD)(DIGI)

    DVD

    歪曲巡礼 (Documentary Film)(+CD)(DIGI)

    Shing02

    価格(税込) : ¥3,981
    まとめ買い価格(税込) : ¥3,146

    発売日:2009年08月12日


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  • WE ALL VICTIMS

    CD

    WE ALL VICTIMS

    DJ Whitesmith

    価格(税込) : ¥2,640

    発売日:2011年04月06日


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  • 夜の盗賊

    CD

    夜の盗賊

    MEISO

    価格(税込) : ¥2,619
    会員価格(税込) : ¥2,410
    まとめ買い価格(税込) : ¥2,226

    発売日:2009年12月09日


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  • CHIYORI

    CD

    CHIYORI

    CHIYORI

    価格(税込) : ¥2,420
    会員価格(税込) : ¥2,226
    まとめ買い価格(税込) : ¥2,057

    発売日:2009年06月24日


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