【HMVインタビュー】 小南泰葉 『キメラ』

--- まずはアルバム『キメラ』を完成させた今の率直な感想を聞かせてください。

人生で初めてゴールテープを切ったという感じです
逃避癖のある小南が初めて何かを成し得たのがこのアルバムです
「まずキメラを創りきろう」
それが私が今一番すべき事だと思いました
後の事は後で考えようと笑
インディーズの頃からこの瞬間に向かって皆で走ってたんです

--- この作品はメジャーデビューから、ちょうど1年の5月にリリースされます。泰葉さんにとってこの1年はどのような時間でしたか？

音作りもライブも東京での一人暮らしも全て試行錯誤の連続でした
喜怒哀楽を全ベクトル、フルマックスで生活していたような右も左も分らない状況で
最初の頃は、目隠しされて、裸で車のボンネットに括りつけられて走らされてる感じでした。

それが、途中から周りをがっちがちに固めて要塞を築き増やしていきました
自分を護る方法を探していたんだと思います
毒入りケーキを部屋の真ん中に置いて、巧妙な機械仕掛けの部屋を創る
（自宅を“逃亡と復讐の部屋”と名付けたのもそのせいです）
ピアノ線の格子で切り裂くトラップや、伸縮する棘、炎、酸、液体窒素など、
CUBEばりのトラップを仕掛けたような部屋にいました。
(怖いなぁ、、自分、、)

--- この1年間で最も変わった事は何でしょうか？

壁に話しかけるようになりました！！
独り言が物凄く増えました。
映画「キャストアウェイ」で主人公が飛行機事故で無人島に漂流し
バレーボールを見つけ顔を描いてウィルソンと名付け
可愛がったり一日の出来事を話したり時に喧嘩する、アレです。
私も正常を保ち、孤独と戦うために
自宅を「逃亡と復讐の部屋」と名付け、四方にも名前を付けました。
パソコン側はレナード
天井はジャックキボキアン博士
左は棺桶が置いてあるから棺桶職人
ベランダは星が降って降って仕方ないから世界の終りの終わり
入口の扉側は、誰がいるのか分らなくて、
でも誰かがずっと居る気がして、誰ですか？って聞いてました。

--- アルバムタイトルは、ギリシャ神話に登場する伝説の生物『キメラ』と名付けられています。このタイトルに決めた理由を教えて下さい。

私の中に棲む怪物がいます
皮膚の下に暴れ蠢いている衝動や感情が暴走して崩壊しないよう
私はキメラの手綱を持っていて
キメラは私自身私の一部かもしれないし
私がキメラの一部かもしれない
ライブで、触覚が痛い時キメラが出てくる
私の意識が無くなったり、乗っ取られたり
逆に全く出てこない時もあるんですが
いつからかそういう感覚をキメラと呼んでいました

--- アルバムには、これまで泰葉さんがライブでずっと歌ってきて、CD化を待たれた楽曲も多く収録されます。楽曲はライブでどのように成長しましたか？

特に「やさしい嘘」は一番、涙を含んで、成長していきました。

--- また、泰葉さんにとってライブとはどういうものでしょう？

ライブとは・・キメラが生まれる場所
人や空気に感動したり何かに酷く共鳴した時に反応する
レーダー、触覚が身体に憑いてるんですが、
それがズキズキ痛む場所です

--- アルバムジャケットは、切り絵師の福井利佐氏とのコラボレーションとの事ですが、どのようなコンセプトで作られましたか？

陰と陽、光と影、小南の二面性が滲みでた作品にしたかったんです
福井さんの作品には、狂気と繊細さを持ち合わせた
生命の躍動感があり、
私は特に喜怒哀楽の怒りと哀しみを感じました
私と似た所がいくつかあり・・
どんな人なんだろう、怖いのかな、暗いのかな
実際会ってみると驚くほど温かい人でした
作品から抱いていたイメージが全部覆ったりしました。

--- ロック、グランジ、パンク、バラード、弾き語り…と様々な楽曲が収録されますが、楽曲はどのような時に書く事が多いのでしょうか？

曲が降ってくるとかは、まずあり得ないですね。
残虐でサディスティックで変態的な動画や映画、薬、
本や絵画、スピリチュアルな土地や電磁波を感じる場所に
行って六感全てを刺激するんです
インプット/アウトプットを常に意識しています

--- 歌詞には、泰葉さん自身の哲学がダイレクトに反映されていると思いますが、泰葉さんにとって“歌詞を書く”のはどのような作業ですか？

キメラが担当なのでキメラに聞いてください・・・
人間が寝てる間に小人が靴を創るように
キメラが朝方まで働いてそれを次の日小南が見て
聴いて呼んで驚愕し自分に失望し絶望するパターンです

--- 歌詞の一人称を“僕”で書く理由があれば教えて下さい。

中立的な立場、中性的な人間でいたいから。

--- 「やさしい嘘」は、これまで何度もライブで歌って来た、泰葉さんにとって大切な楽曲だと思います。特定の誰かのために歌ったような、心を打つこの楽曲に関して、楽曲解説をお願いできますか？

人間の人生はまるで「ベンジャミン・バトン　数奇な人生」のようで。
始めに赤ちゃんとして産み落とされ、
やがて子供になり自我が芽生え学校に行き、親・先生から学び
成長し大人になってそして坂を下る
記憶は無くなって行き
目が衰えてきて一人でご飯が食べれなくなって立てなくなって
介護が必要になりまた子供から赤ちゃんへと戻って行く
自分がその時にはやさしい嘘で包まれていたい
家族や友達、自分の大切な人がいつか自分の事を認識できなくなる事
人間であることを認め、それらの命が終わる時、
最後の瞬間にはやさしい嘘で包んであげたい
そういう気持ちで作りました
どんな時も『やさしい嘘』は私の味方で、
いつもいつも小南をライブで助けてくれた曲です

--- このアルバムは、これから多くの人に聴かれるはずです。聴く人それぞれにとってどのような作品になって欲しいですか？

私の手を離れた楽曲達が誰かの処方箋になってくれれば嬉しいです。

--- 今後の予定を教えてください。

アルバム発売後、7月19日（金）に東京・渋谷wwwで“アルバム発売記念”ワンマンライブを行います。
「キメラ」の楽曲もいろいろやると思うのでぜひ見に来てください。

--- 最後にご覧になっているファンの皆さんにメッセージをお願いします。

「秘密結社Ｙ人Ｙ」というファンの皆さんと結成している組織があるんですが、いつか みんなで東京ディズニーランドもしくは日本で鬼ごっこしませんか？

--- 有難う御座いました。

小南泰葉 ライブ情報

● 小南泰葉ワンマンライブ「キメリカルパビリオン」
2013/07/19(金) open/start　18:15/19:00 / 渋谷WWW
チケット　3,000円（税込　ドリンク別）　未就学児童入場不可

 チケットはローチケで！