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2013年5月10日 (金)

ドイツ銀行 ベルリン・フィル
ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

ベルリン・フィルの2013/14年シーズンの予定が発表
 4月22日、フィルハーモニーで記者会見が行われ、ベルリン・フィルの2013/14年シーズン・プログラムが発表されました。会見には、首席指揮者サー・サイモン・ラトルのほか、ベルリン・フィル・インテンダントのマルティン・ホフマン、メディア代表オラフ・マニンガー(ソロ・チェロ)、オーケストラ代表シュテファン・ドール(ソロ・ホルン)が出席しています。
 来期大きなテーマとなるのは、「ベルリン・フィルハーモニー開場50周年」。黄色いテント型の建物は、1963年10月15日にカラヤン指揮のベートーヴェン「交響曲第9番」でオープンしています。これに関係する記念演奏会が10月中旬から後半にかけて行われ、ラトルの指揮でバッハ「マタイ受難曲」(セラーズの演出付き。再演)とシェーンベルク「グレの歌」、リームの新作等が上演されます。
 ラトルは「マタイ受難曲」だけでなく、「ヨハネ受難曲」もセラーズの演出で演奏。またモーツァルトの後期3大交響曲を取り上げ、録音も行われます。ジルベスター・コンサートは、彼の指揮とラン・ランのピアノ(ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第1番」)。バーデン・バーデン復活祭音楽祭の「マノン・レスコー」(演奏会形式)、ヴァルトビューネ・コンサートも、彼が振る予定です。そのほか、ラトルの演奏するプログラムとしては、ヤナーチェク「グラゴル・ミサ」、ブラームス「交響曲第3番」、ハース新作初演、ドビュッシー《海》、シューマン「交響曲第1&4番」、R・シュトラウス《メタモルフォーゼン》等が挙げられます。
 一方客演指揮者は、アバド、ハイティンク、メータ、ヤンソンス、ブロムシュテット、I・フィッシャー、ビシュコフ、ギルバート、ドゥダメル、ネルソンス、ネゼ=セガン、ソヒエフ、ハーディング等。マゼールが2000年以来14年ぶりに(!)登場し、「ドン・キホーテ」、「ドン・ファン」、「ばらの騎士」組曲のオール・シュトラウス・プロを指揮します。また、アーノンクールが、シューマン「ファウストからの情景」を上演。ソリストは、ゲルハーヘル、レッシュマン等が予定されています。バレンボイムは、ヨーロッパ・コンサート枠で出演するほか、ラトルとの共演でブラームス「ピアノ協奏曲第1番」のソロも担当。現在円熟期にある指揮者としては、シャイー、チョン・ミョンフンの名前が注目されます。
 デビュー指揮者は、ライハルト・ゲーベル、カール・ハインツ・シュテフェンス、クシシュトフ・ウルバンスキの3人。ポーランドの若手ウルバンスキが、早くも抜擢されています。
 ソリストでは、バリトンのゲルハーヘルがアーティスト・イン・レジデンスを務めます。その他ポリーニ、内田光子、メナヘム・プレスラー(デビュー)、アックス、ブフビンダー、ルプー、F・P・ツィンマーマン、ハーン、ツェートマイヤー、ガベッタ(デビュー)、メルク、レッシュマン、コジェナー、J・カウフマンが登場。言うまでもなく、これらの演奏会のほぼすべてが、デジタル・コンサートホールで中継される予定です。

ベルリン・フィルの公式サイトで一覧を見る

5月1日に、ヨーロッパ・コンサートがプラハで開催
 5月1日、恒例のベルリン・フィルのヨーロッパ・コンサートが行われました。開催地は1991年、2006年に続き3度目となるプラハ。今回の開催場所であるプラハ城は世界で最も大きい城の一つで、かつてはボヘミア国王や神聖ローマ皇帝が居住したという歴史的建造物。コンサートはスペイン広間でおこなわれ、サー・サイモン・ラトルが指揮を取っています。
 プログラムは、ヴォーン=ウィリアムズのタリスの主題による幻想曲、ドヴォルザークの《聖書の歌》、ベートーヴェンの交響曲第6番《田園》でした。
 ドヴォルザークのソロは、チェコのメゾソプラノ、マグダレーナ・コジェナーが歌っています。演奏会は、ヨーロッパ各国のテレビで生中継されています。

ベルリン・フィルの教育プログラムが10周年
 ベルリン・フィルの青少年教育活動が、今シーズンで10周年を迎えました。サー・サイモン・ラトルの首席指揮者就任とともに導入されたこのプログラムは、音楽団体が行うものとしては、世界最大級の規模を誇るものです。これを記念して4月21日、フィルハーモニーで全日イベントが開催され、ラトルの指揮でストラヴィンスキー「春の祭典」(短縮版)、ブリテン「ノアの洪水」が上演されました。
 ベルリン・フィルの教育活動は、世界的に同種の活動が行われるきっかけを作ったという意味で、新時代のアウトリーチを示唆するものでした。とりわけ映画「ベルリン・フィルと子供たち」で広く紹介され、「すべての社会層に音楽を届ける」オーケストラの役割を規定しています。現在に至るまで、計2万9千人の青少年がプロジェクトに参加。ベルリン・フィル団員や学芸員が子供たちと直接関わり、多彩なテーマによるワークショップを行っています。とりわけベルリン・フィル本体との共演は、子供たちの間で大きな人気を博しています。なおこのプロジェクトは、ドイツ銀行の支援により実現されています。
 2013/14年シーズンからは、ダンス中心のこれまでの路線から趣向を変え、合唱に重点を置いてゆく予定です。4月21日のイベント(コンサート)の模様は、デジタル・コンサートホールでも無料でご覧いただけます。

ラトル指揮の教育活動コンサートの映像を観る(無料)

 最新のDCHアーカイブ映像

アーティスト・イン・レジデンスのカヴァコスがデュティユーを演奏。ラトルの《田園》!
2013年4月20日

【演奏曲目】
ルトスワフスキ:オーボエ、ハープ、弦楽合奏のための二重協奏曲
デュティユー:ヴァイオリン協奏曲
ベートーヴェン:交響曲第6番《田園》

オーボエ:ジョナサン・ケリー
ハープ:マリー=ピエール・ラングラメ
ヴァイオリン:レオニダス・カヴァコス
指揮:サー・サイモン・ラトル


 ベートーヴェンは、交響曲第6番《田園》について「絵を描くというよりも感情の表出」であると語っています。まだ絶対音楽と標題音楽との間に厳密な違いなどなかった時代にです。ラトルは、この交響曲をかねてから得意としており、今回も名演奏を展開しています。
 プログラムの前半では、ルトスワフスキのオーボエ、ハープ、弦楽合奏のための二重協奏曲が、デュティユーのヴァイオリン協奏曲《夢の樹》と並べて演奏されています。ルトスワフスキでは、ベルリン・フィルのメンバーであるジョナサン・ケリーとマリー=ピエール・ラングラメが、デュティユーではアーティスト・イン・レジデンスのレオニダス・カヴァコスが独奏を務めています。

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無料映像。青少年プロジェクト10周年記念公演は、ラトル指揮!
2013年4月21日

【演奏曲目】
ストラヴィンスキー:《春の祭典》(ガレス・グリン編曲による管楽器と打楽器のための短縮版)
ブリテン:子どものための歌劇《ノアの洪水》

合唱指揮:サイモン・ハルシー
演出:ヤスミナ・ハドツィアメトヴィッチ
アマチュア・オケ指導:アンドレアス・ヴィットマン(ストラヴィンスキー)
アマチュア・オケ指導:ラファエル・ヘーガー(ブリテン)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:サー・サイモン・ラトル


 4月21日、ベルリン・フィルは教育プログラムの10周年を祝いました。そのハイライトとなったのがラトル指揮によるコンサートです。最初にベルリンの子どもたちで構成されるアマチュア・オーケストラによって、ストラヴィンスキーの《春の祭典》(ガレス・グリン編曲による短縮版)が演奏されましたが、それは2003年の第1回ダンス・プロジェクトがこの作品だったからに他なりません(後に、映画『ベルリン・フィルと子どもたち』で世界的に知られるようになったのは、ご存知の通りです)。
 後半は、旧約聖書の有名な物語を題材にしたブリテンの子どものための歌劇《ノアの洪水》が上演されています。高校生のオーケストラに加え、ベルリン大聖堂及びベルリン・ドイツ・オペラの児童合唱団のソリスト、またサイモン・ハルシーの指導のもとで学んだベルリンの300人の小学生たち、さらに聴衆もコラールに加わっての大規模な舞台となっています。教育プログラム10周年のお祝いに、どうぞご参加ください(無料映像)。

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ラトルのティペット《われらの時代の子》!
2013年4月27日

【演奏曲目】
ディーン:《ソクラテスの最後の日々》世界初演
ティペット:オラトリオ《われらの時代の子》
独唱:ケイト・ロイヤル、サラ・ コノリー、マシュー・ポレンザーニ、サー・ジョン・トムリンソン
ベルリン放送合唱団(合唱指揮:サイモン・ハルシー)
指揮:サー・サイモン・ラトル


 オーストラリア生まれのブレット・ディーンは、1985年から1999年までベルリン・フィルのヴィオラ奏者として活躍しました。当時から編曲や即興演奏の活動を通して、作曲家としての自己を見出した彼は、ユネスコの作曲賞を受賞したクラリネット協奏曲《アリエルの音楽》やバレエ《One of a Kind》などで国際的な名声を獲得するようになります。
 これらの成功により、ディーンは2000年に作曲家として独立しましたが、ベルリン・フィルとの関係はその後も続いています。ベルリン・フィルの委嘱により書かれた《コマロフの墜落》に続き、今回はベルリン放送合唱団、ロサンゼルス・フィルハーモニック、メルボルン交響楽団による共同委嘱作品《ソクラテスの最後の日々》が初演されました。
 後半のプログラムは、英国人作曲家マイケル・ティペットのオラトリオ《われらの時代の子》。1938年、17歳のヘルシェル・グリュンシュパンがパリでナチスの外交官を射殺したことが、ナチス・ドイツに反ユダヤ主義暴動(いわゆる「水晶の夜」)を引き起こしました。ティペットは、この事件をきっかけとして、独裁や人種主義に抵抗するべく当作品を書き上げています。バッハやヘンデルのオラトリオの影響を受けた《われらの時代の子》は1944年に初演され、ティペットの代表作となりました。今日ティペットは、エルガーやブリテンと並んで、20世紀のもっとも重要な英国人作曲家の一人と評価されています。

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 これからのDCH演奏会

ヤンソンスのキャンセルを受けて、ファン・ズヴェーデンがデビュー
日本時間2013年5月11日(土)午前3時

【演奏曲目】
バルトーク:オーケストラのための協奏曲
ブラームス:交響曲第1番

指揮:ヤープ・ファン・ズヴェーデン


この演奏会は、当初マリス・ヤンソンスの指揮で予定されていましたが、彼が健康上の理由でキャンセルとなり、代役としてヤープ・ファン・ズヴェーデンが登場することになりました。これは、ファン・ズヴェーデンにとってベルリン・フィル・デビューとなります。
 曲目は、当初のバルトーク「弦楽器、打楽器、チェレスタのための音楽」から、同じ作曲家の「オーケストラのための協奏曲」に変更されています。ブラームスの「交響曲第1番」は、予定通り演奏されます。

生中継:2013年5月11日(土)日本時間午前3時

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恒例のアバドの客演は、《真夏の夜の夢》と幻想交響曲
日本時間2013年5月20日(月)午前3時

【演奏曲目】
メンデルスゾーン:《真夏の夜の夢》抜粋
ベルリオーズ:幻想交響曲

ソプラノ:デボラ・ヨーク
メゾソプラノ:ステラ・ドゥフェクシス
バイエルン放送合唱団女声団員(合唱指揮:コンスタニア・グルツィ)
指揮:クラウディオ・アバド


 クラウディオ・アバドは、毎年5月にベルリン・フィルへ客演する際、音楽監督時代に指揮した経験のある曲と、これまで取り上げたことのない「新しい」作品とのカップリングを好みます。今回の公演におけるメンデルスゾーンの劇付随音楽《真夏の夜の夢》とベルリオーズの幻想交響曲もまさにその例で、初期ロマン派を代表する作曲家による興味深い組み合わせに、期待が膨らみます。
 1832年、この2人の作曲家はローマで初めて対面しました。ベルリオーズはメンデルスゾーンの才能に驚嘆しましたが、メンデルスゾーンの方はベルリオーズのエキセントリックなふるまいに戸惑いを隠せませんでした。当時作曲されたばかりの幻想交響曲の終楽章〈魔女の夜宴の夢〉について、メンデルスゾーンは「ぞっとするような痴態と激しさ。愚にもつかないつぶやきや叫び、金切り声に満ちている」とその異質な印象を記しています。
 メンデルスゾーンは、自らが理想とするロマン派の音楽を弱冠17歳で書いていました。それがシェークスピアの戯曲を題材にした《真夏の夜の夢》の序曲で、オベロンとティターニアが支配する妖精世界の雰囲気をものの見事に表現しています。1843年、プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム4世の命により、新たに書かれた12曲の劇付随音楽がポツダムの新宮殿で初演されました。同じ年、ベルリオーズはライプツィヒで幻想交響曲を指揮し、この2人の作曲家は再会を果たします。最初のよそよそしさから彼らは徐々に心を打ち解け、最後はお互いの指揮棒を交換したのでした。

生中継:2013年5月20日(月)日本時間午前3時

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 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

エベーヌ四重奏団、ラファエル・メルランのチェロがパリの空港税関で押収
 エベーヌ四重奏団のチェリスト、ラファエル・メルランのチェロ(グァルネリ)が、4月27日、パリ・シャルル・ドゴール空港の税関で押収された。メルランは、必要な書類をすべて所持していたため、「非申請」のゲートを通って外に出ようとしたが、そこで税関職員に止められた。税関職員は、書類の所持に関わらず「申請」のゲートを通るべきであったと主張し、楽器を押収している。メルランは、5月2日に楽器の返却を受けている。
 メルランのチェロはミュンヘンのコレクターの貸与楽器で、4年半以来彼が使用している。コレクターは、即座に貸与契約書を送付したが、フランス税関ではさらなる検査を行うことを主張した。また税関では、「ATAカルネ」の取得を勧めたが、これを申請した場合、楽器の購入価格の30パーセントの費用が掛かるという。

バレンボイムが5月末まで休養
 ダニエル・バレンボイムが、背中の痛みのため5月末までスカラ座での公演をすべてキャンセルするという。これまでに5月6日のバルバラ・フリットリとのリサイタルから降板したほか、今月後半の《神々のたそがれ》の公演をキャンセルする。
 背中の痛みは、昨年10月に転んだことが原因だという。

フランス放送フィルの新首席指揮者は、ミッコ・フランク
 ミッコ・フランクが、2015年よりチョン・ミョンフンの後任としてフランス放送フィルの首席指揮者に就任することになった。契約はまず3年。フランクは、昨年の10月から12月にかけて、チョンの代役として同オケに登場していた。
 フランクは2008年よりフィンランド国立歌劇場の首席指揮者を務めている。

次号の「ベルリン・フィル・ラウンジ」は、2013年5月23日(木)発行を予定しています。

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