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これが最新N.Y.シーン 重要Gメン作!

2013年4月22日 (月)

ギラッド・ヘクセルマン


ギラッド・ヘクセルマン 待望の新作リリース!
N.Y. ジャズ・シーンの未来は、彼らニュータイプGメンの手の中に?


 つい先だっても、ラフィク・バーティアというNYCブルックリンを拠点に活動する新進気鋭ギタリストのリーダー・デビュー作『Yes It Will』にブッ飛ばされたばかりなのだが、続けザマに、というのはまさにこのことで、こちらもニューヨーク・ジャズ・シーンの新世代Gメン筆頭 ギラッド・ヘクセルマンの新作『This Just In』も負けず劣らず腰が抜けそうなほど素晴らしいものになっている。

 ご存じの方も多いとは思うが、現代ニューヨーク・シーンのジャズ・ギタリストたちは、あたかも先頭ヒタ走る将星カート・ローゼンウィンケルの跡目継ぎをめぐるかのような熾烈なデッドヒートを繰り広げており、それはつまり、「若衆の熱情極まり乱麻するところに必ずや途あり」と詠まれるほどの美しく激しい鎬の削り合いによって方々でボコボコとギター名演が生まれる、という理想的な群雄割拠の状況が近年より明確化されているということに他ならない。

 将星がパワー未知数の勇猛果敢なカルテットを率いて『Star Of Jupiter』というネクスト・レベルの新作を世に放てば、その尻尾を掴もうと必死の若衆は驚愕しながらも目の色を変えて再度ギアをトップに入れて猛追する。そんな一枚が、ヒップホップ/ビート革命に呼応したラフィクの『Yes It Will』であり、また本作、ギラッドの『This Just In』でもあるのだ。

ジョー・マーティン(上)、マーカス・ギルモア(下)  もちろん、昨年12月のヴァンガード公演でもニューヨーカーのド肝を抜きまくったカートの新生カルテットのクリエイティヴィティというものはすさまじくも圧巻だが、「ポスト・カート」の座をめぐって修練と切磋琢磨を繰り返す彼ら若手ギタリストたちの各作品にも、独自の感性が躊躇なく爆発。発想力の豊かさはもとより、インプット〜アウトプットの絶妙な巧さなどが完全なるオリジナリティとしてそこにしっかり組み込まれていることは言うまでもない。ニューヨーク・ジャズ・シーンの未来は、やはり彼らニュータイプGメンの手の中にあるのでは? そんな気にもさせられてしまう。

 昨年、東京JAZZ2012にも登場したギラッドに関しては、これまで何度も日本の地を訪れ、そのたびに全国のジャズギター小僧たちの溜飲を下げてきたこともあって、わが国ではすでに「ポスト・カート」の大本命として見做されている存在。また昨今イスラエル=ニューヨーク上京勢の大躍進とも相俟って、今や最も新作の到着が待たれる若手Gメンと言っても大げさではないだろう。

 さてこちらの『This Just In』。ギラッドの2年ぶり通算4枚目のリーダー・アルバムとなるわけだが、録音メンツは前作『Hearts Wide Open』と同じく、ジョー・マーティン(b)、マーカス・ギルモア(ds)(祝☆チック=スタンリー・トリオ入団!)とのレギュラー・トリオ(通称:ヘックス・トリオ)に、3曲で現代テナーの雄マーク・ターナーが参加するという建付けになっている。

 然るに、前作の延長線上にある“つくり”を容易に想像してしまうところだが、ナメてもらっちゃ困るぜよと言わんばかりに、ギラッドおよびトリオ+1は、さらに種々アイデアを拡散思考的に膨らませながら、まるでジャズギター・アンサンブルのビッグバンを引き起こさんばかりの新たな駆動域に突入。総じてそんな印象を受けるアルバムとなっている。



『This Just In』 収録曲

  • 01. Above
  • 02. Newsflash #1
  • 03. This just in
  • 04. Newsflash #2
  • 05. The Ghost Of The North
  • 06. Newsflash #3
  • 07. March Of The Sad Ones
  • 08. Newsflash #4
  • 09. Nothing Personal
  • 10. Eye In The Sky
  • 11. Newsflash #5
  • 12. Dreamers
  • 13. This Just Out

  Gilad Hekselman (g,synths,Glockenspiel) / Joe Martin (b) / Marcus Gilmore (ds)
  Mark Turner (ts on M-3,9,13)


ギラッド・ヘクセルマン・トリオ+マーク・ターナー


 オープナー「Above」のマイルドな突き抜けぶりを一聴するかぎりは、下馬評通り、パット・メセニー・トリオ『99→00』やカートの『Star Of Jupiter』といった世界に追随する感触はあるものの、ギラッドの場合は何というかもう少し地に足が着いたものというか、誤解を恐れずにいえばもっと泥臭い、いわゆるアーシーな小宇宙にて帰結している。ゆえに、いずれの曲にも人肌の温かさやなだらかさがつきまとう。ターナーのジェントリー・テナーが絡む表題曲「This Just In」などは、ジョン・スコフィールド直系アウトフレーズの引用もあり、御大のグルーヴィな90年代〜テン年代初頭の諸作を彷彿とさせる肉感的な汗臭さや白熱に支配されているかのよう。

 モチーフの対象をスピリチュアルなものへと向けた「The Ghost Of The North」、ジャズギター芸能の伝統を味わいつくす「March Of The Sand」はいずれも緩やかだが、独特のフレージングやクローズ・ボイシングなどを挟み込んだソロには、さすがと思わせるセンスのよさがある。「Nothing Personal」においてもテナーとの並走やトリオとの静的対話の中、ここ一番で美味なフィルインをさらっとキメてくるあたりにはもうウットリするしかないのだ。

 先に肉感的と表現してしまったが、もっと平たく端的に言えばソウルフルになるのだろうか。「Eye In The Sky」、「Dreamer」がその最たる例であり、ギラッドの朴訥としたうたごころが、ゴムまりのように弾むリズム隊の対位的な律動とすくみ合いながらたおやかに昇天していく。ここまでくると己の語彙力の乏しさを恨むしかないのだが、五臓六腑にメロディが染み渡る、まずこれはソウルフルとしか表現のしようがない感覚!

 曲間に配置されたインタールードには、“いかにも”それらしき演出効果を図ったスペーシーなSEやプログラム音、大仰なディストーション・ギター、はたまたサン・ラ・アーケストラのような気宇壮大で突飛なアンサンブルが散見されるが、これはあくまで愛嬌程度というのか、本筋はやはり主役ギラッドとそのトリオ+1の磁場が内包する小宇宙のスペクタクルにすぎず。大義名分としての広漠なコズミック・サウンドというよりは、もっともっと身近なものにインスパイアして音を紡ぎ上げたことを感じさせ、ギラッドの人間性が為せる業なのか否か、宇宙がやけにホットな空間だということも体感できたような気がする。

 カート・ローゼンウィンケル『Star Of Jupiter』ラフィク・バーティア『Yes It Will』、そしてギラッド・ヘクセルマンの『This Just In』。この3枚のアルバムは、それぞれが質を異にしながらも間違いなく最新のニューヨーク・ジャズ・シーンを語る上で欠かせない重要Gメン作品になる、ことをここに断言したい。たすきがけ的に聴けば、それはもう痛快さも二倍三倍、果てしない!



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