LINKIN PARKのあの日、あの時 8

2012年6月22日 (金)


巧みなインターネット戦術!ファンクラブを自己メディアに!
文●有島博志(GrindHouse)

 LINKIN PARKが『HYBRID THEORY』でメジャー・デビューした2000年後半――。世はまさにインターネット大普及時代に突入し、それまでの通信 & 宣伝手段のあり方が大きく様変わりし始めていた。その時代の“潮流”にいち早く着眼し、それをひとつのプロモーションツールとして効果的に使い、急速にファンベースを広げ、確立していったのが、彼らだった。ロック界ではそれを初めて実践した“先駆者”と言っても過言ではない。いったいいつ頃からそういう“時代の流れ”を読んでいたのか。それは前々回の連載第6回で、ロブ・ボードン(ds)がこう語っていたことから読みとれる。

「(いくつものレコード会社より契約を)断られ続けたもんだから“もうイイよ、誰も契約してくれないなら自分たちで宣伝し、インターネットを介してCDを売るから”とも思ったくらいさ(苦笑)」

 LINKIN PARKと改名する前の、XERO時代のことを回想した発言ゆえ'99年から2000年初頭にかけてのことだ。普及しかけた頃にあったこのときすでに、インターネットをバンドやその音楽を伝え、広げていく上で“最良の手段”と考えていたことが窺える。そしてもうひとつ、こういう話もある。彼らのライヴを初めて観たのは2000年11月、US中西部ミズーリ州カンザス・シティのザ・ビューモントで。『HYBRID THEORY』がUSチャート初登場16位という激しいチャート・パフォーマンスを繰り広げた直後のことだ。とは言え、まだまだいちニュー・アクトの域にいた彼らは、自らの出番を終えた後、新人バンドの誰もがやるように、メンバーが代わる代わる物販ブースに入り、直接マーチャン(※アーティスト名やロゴの入ったグッズのこと)を売り、サインや写真撮影などに進んで応じていた。その夜のライヴの尋常じゃない盛り上がりっぷりや、激しいチャート・パフォーマンスから「彼らがこうして直接マーチャンを売り、ファンと交流できるのもいつまでだろう…」と思った。それから3ヵ月後の2001年2月、初来日する直前にニューヨークで再びライヴを観る機会に恵まれた。会場はマンハッタンにあるローズランド・ボールルーム。すでにヘッドライン・ツアーに切り替わっていて、3,500人収容可能な会場はもちろん、完全にソールドアウト。このときのライヴの盛り上がりようもハンパではなかったのだけど、終演後にそれまでに見たこともないような光景が眼前で繰り広げられたのだ。客電がつき、場内が明るくなったというのに、一階のスタンディングフロアにいた多くのファンたちが出口に向かうことなく、そこに留まり、なにかを待っているように見えた。「なにかあるのかね…」と思っていたら、しばらくしてメンバー全員が再び登場し、再度大歓声が上がるなか、鉄製バリケード越しにひとりひとりと交流を始めたのだ。あちこちでフラッシュがたかれる…正直かなりビビらされた。「え、ここにいる全員と握手したり、サインに応じたり…するつもり? ウッソ〜〜ん!」と(笑)。このとき自分は2階席から眺めていたのだけど、その光景はさながら“金網デスマッチ”のようにすら見えた…。初来日時に、ブラッド・デルソン(g)はファンとの交流についてこう話した。

「ああいうファンとの交流は毎公演後に必ずやっているんだ。そして、インターネットを通じてそういうことをやっているっていうことを広めている。こういうふうに築いたファンベースは強いからね。たとえラジオやTVで曲が流れなくてもストリートレベルでファンを獲得したい。ときにファンとの交流には何時間もかかることがあるけど、だけどオレたちはやりたいんだ(笑)」

 で、すかさず「だけど、このままバンドがさらにビッグになっていったら、そうした現場でのファンとの交流は物理的にも難しくなるでしょう」とぶつけた。すると、ブラッドはこうキッパリと言い切った。

「確かにね。だけどそういうふうになったら、オレたちはファンクラブを通じてさらなるいろいろな方法でみんなと交流を図っていくよ。全然、心配ないね!」

 これがLP UNDERGROUND( www.LPUnderground.com )だ。(当時)年間32ドル(4,000円弱)の入会金を支払い入会すると、さまざまな特典が受けられる(現在は年間60ドル=約4,000円と、同25ドル=約2,000円の2システムあり)。この、英文による入会方法が『METEORA』(2003年)を皮切りに、以降新作『LIVING THINGS』(2012年)までの全作品の日本盤にも封入されている。本国からの強いお達しで始まったことだ。CDにファンクラブの入会方法が封入されるというのは、ロック系ではたぶん彼らが初めてだった、と記憶する。こうして彼らはインターネット(=ファンクラブ)を駆使しつつどんどんファンベースを広げていき、ひとりひとりのファンとの関係もより深めていくのだった。そしてときに、LP UNDERGROUNDは彼ら主宰のメディアの役割をはたすのであった。

 次回は、大御所ヒップホップ・アーティスト、JAY-Zとのマッシュ・アップ作『COLLISION COURSE』(2004年)の話をお届けする。


LINKIN PARK 最新作ニュース


  • リンキン・パーク新作完成!
    リック・ルービンとマイク・シノダの共同プロデュースによるニュー・アルバム『リヴィング・シングス』が遂にリリース!

■■■ 有島博志プロフィール ■■■

 80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。
 2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
※ ※ ※ ※ ※

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