MARILYN MANSONのあの日、あの時5

2012年6月1日 (金)


初の対面取材実現!マンソンの第一印象は…
文●有島博志(GrindHouse)

 お恥ずかしい話以外の何物でもないんである(滝汗)。マリリン・マンソンに初対面取材をした、というのに、そのときのデータ的なことが虫食い状態的にところどころ欠けていて、思い出そうとしてきたけどダメだった(涙)。マンソンを見かけたじゃなく、ちゃんと会い、取材もしたのは、2枚目『ANTICHRIST SUPERSTAR』が発売され、大炸裂してからほどなくした'97年2月のこと。US東海岸マサチューセッツ州ボストン郊外で。市内の投宿先ホテルからの車移動で、それなりに長い時間を要したことをなんとなく覚えているから、たぶん街名はボストンではないと思う。小高い山の中腹の切り開かれたところに建つ規模の大きいスポーツ施設(会場名も思い出せない)が、その夜のMARILYN MANSONのライヴ会場で、サウンドチェック後に取材という段取りだった。

ボクとMARILYN MANSON

文●文・5°(g) from fade
醜悪さのなかに時折垣間見える美こそ美しい。マリリン・マンソンはそれを体現している数少ないひとりだと思う。音楽というよりその存在がすでにアートしていて、次はなにをしでかすんだろっていう期待感が常にある。またオレ自身、絵を描いていることもあって、彼の絵画や映画関係での活動も興味深い。余談だけど昔、MARILYN MANSONの来日時に、当時のギタリスト、ジョン5が実際に使用したアンプを偶然にも譲り受け、しばらく使っていたことがある。興奮した。ま、それはともかく、今後もどんな方面にその圧倒的な個性の幅を広げていくのか楽しみだ。

 施設内に入ろうと歩いているとき、その周囲がただならぬことになっていることが目のなかに飛び込んできた。前回第4回に書いた、MARILYN MANSONの暴力的な歌詞や過激なパフォーマンスが若いリスナーたちに悪影響を与える、と主張し、コンサート開催中止を強く訴える人たちによる集団的抗議行動が繰り広げられていたのだ。当時、そういうことがあちこちで起きているという話は耳にしていたけど、それが紛れもない事実であるということを知った瞬間の衝撃は相当デカかった。思わず立ち止まり、しばし見入ってしまったほどだ。過去何度も海外の至るところでライヴを観てきたけど、そういう光景を目の当たりにしたのはまさにあのときが初めてだった。'98年に『DEAD TO THE WORLD』として発売されたものの、'99年に『GOD IS IN THE T.V.』とタイトルもジャケも変更になりリイシューされた映像作品(現在廃盤)の冒頭で観られる、あのシーンだ。3枚目『MECHANICAL ANIMALS』('98年)の日本盤ライナー・ノーツにも記したけど、その抗議行動をしていたひとりからこう書かれたビラを手渡された。「今晩のコンサートについての大事な情報!どうか読んで」と始まり、こう続けられていた。

「(略)聖書では悪魔(反キリスト者)は殺し、盗み、破壊するためにやってきたとされる(新約聖書:ヨハネによる福音書十章十節より)。また、悪魔は虚言の父としても知られる。そうなるとこのバンド(筆者註:MARILYN MANSON)の音楽の歌詞やテーマがひどく不快な行動について言及していることがわかるだろう。貪欲、欲望、冒涜、奔放(薬や酒での“消耗”)が今晩、この会場にはびこる。貴方の魂の健全のために、私たちはお願いする、どうか会場に入らないでほしい!」

 これを読んだとき正直たまげた。「こういうことを真剣に訴えかけているんだ!? 日本じゃ絶対に起こり得ない!」と。取材団一行として現場にいたのは、当時のInterscope Recordsのニューヨーク・オフィスの女性プレス担当者、日本のレコード会社の男性担当者、そして自分の3人だった。で、まさにこれからサウンドチェックが始まろうとしたとき、彼女からこう忠告された。
「マンソンはすっぴん顔をメディアの人たちに見られるのを極端に嫌がるから、サウンドチェック中は絶対にステージ正面にはいっちゃダメよ」と(笑)。

MANSON’S SINGLE COVER GALLERY

「THE BEAUTIFUL PEOPLE」 (1996)
前回と同じく、今回もまた、『THE BEAUTIFUL PEOPLE』なんである(笑)。実は前回のが初回出荷分のジャケで、今回のがそれ以降のプレス分のジャケ。なぜ、代えられたのかはわからない。表題曲PVのひとコマがジャケに。日本、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ヨーロッパでコマーシャル・リリースされ、計6パターン出回った。オーストラリアでは10インチのピクチャー・シングル盤も発売された(下のジャケがそう)。ただ、現在はすべて絶版だ。

 正直言うと、「どこぞのアイドルじゃあるまいし!」と思った(笑)。しかし、「絶対に見るな」と言われたら余計見たくなるのが、人間の心理というものだ。その2人の動きを見計らいつつ見つからないよう何度かトライしたもののそのたびに彼女に止められ、「ダメだって言ったじゃない!」と咎められた(笑)。さすがに真正面から、というのは無理だったけど、なんとか真横あたりからサウンドチェック中のマンソンをチラ見することはできた。ただ、どデカいサングラスをしていたため、すっぴん顔を拝むことはできなかった(笑)。サウンドチェック終了後しばらくしてドレッシング・ルームに通され、マンソン、トゥイギー・ラミレズ(b)を紹介され、挨拶した後に立ち話に。音楽にまつわる話を少し交わしてからいよいよ取材となり、別室にいくよう指示された。で、その部屋のドアを開けた途端、照明が落とされ、けっこう薄暗くされていたことに、まずビビッた(汗)。さらに部屋の奥に目をやると、ソファに深く腰を下ろし、ガチにメイクを決めたマンソンが横のキャンドルの灯りに照らし出され、さらにビビらされた(滝汗)。確かに取材の環境、雰囲気としてはいかにもなマンソン風でバッチリだったのだけど、もうそんなことはほぼお構いなしで、ひとえに「おっかねー!」という想いの方が先に出て、正直腰も引けていた(苦笑)。与えられた時間は30分。その間その雰囲気、環境のなかにマンソンと自分の2人きり。「ど、どうしよう…」となりつつも質問を切り出した。

 自分はいわゆるネイティヴ・スピーカーではない。そのときは通訳が不在だったため、自分が直接やるしかなかった。だけど、つたない英語しか話せない自分にきちんと真正面から接してくれて、ひとつひとつちゃんと受け応えもしてくれたマンソンは、とても紳士的な人だと思えた。これが第一印象だ。そして、そのつたない英語力からも質問の意図することを即座にくみ取り、的確な答えを語ってくれた。これからは聡明さと頭の回転の速さを感じた。途中何度か“インテリ”という言葉も浮かんだほどだ。気づけば30分という時間はアッと言う間に経ち、いつしか「おっかねー!」というビビりも完全に消えていた(笑)。非常に魅力的で求心力のあるアーティストだ、という想いを抱きながら、それから数時間後に初めてMARILYN MANSONのライヴを観戦した。世にもすさまじく、とことんエンタテイメントに満ち満ちたパフォーマンスだった…。



MARILYN MANSON 関連タイトル!

 NINE INCH NAILSのデビュー作『PRETTY HATE MACHINE』('89年)と、EP『WISH』('92年)。MINISTRYの3枚目『THE LAND OF RAPE AND HONEY』('88年)、4枚目『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』('89年)、そして5枚目『PSALM 69:THE WAY TO SUCCEED AND THE WAY TO SUCK EGGS』('92年)。そうした数々の“名作”“力作”が世に出され、インダストリアル・ミュージック/ゴシック・ロックを好んで聴く人たちがそれまで以上に増殖した瞬間、その音楽はロック/メタルにより接近し、進んで異種交配を始めた。そこで生まれたのが、俗に言う“インダストリアル・メタル”だ。'93年から'95年頃にかけての時期、その“インダストリアル・メタル”の“好盤”が何枚も産み落とされた。前回取り上げたKMFDMの『ANGST』('93年)もそうだし、FEAR FACRORYの2枚目『DEMANUFACTURE』('95年)もそうだ。そして、このカナダはヴァンクーヴァー産のベテラン、FRONT LINE ASSEMBLYの『MILLENNIUM』もそう。それまでエレクトロ/エレクトリック・ボディ・ミュージック傾向が強かった彼らが、今作でもろ“インダストリアル・メタル”をやっている。MINISTRYの上記作品群に近い世界観やテイストを持ち、かなりダークでヘヴィで尖ったアプローチを聴かせる。“Surface Patterns”ではPANTERAの“Walk”を、“Division Of Mind”では同じくPANTERAの“A New Level”を想起させるギターが弾かれる。その多くを担当しているのが、デヴィン・タウンゼント(g)だったりする。“インダストリアル・メタル”が大好物な人にはぜひ、聴いてほしい1枚だ。
文●有島博志(GrindHouse)

MARILYN MANSON 最新作ニュース

■■■ 有島博志プロフィール ■■■

 80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。
 2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
※ ※ ※ ※ ※

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