MARILYN MANSONのあの日、あの時6

2012年6月15日 (金)


初めて観たライヴは攻撃力、破壊力、バイオレンス満載だった!そして、初来日へ!
文●有島博志(GrindHouse)

 当たり前だけど前回からの続きである。MARILYN MANSONのライヴを初めて観たのは、2枚目『ANTICHRIST SUPERSTAR』が発売された直後の'97年2月のことだった。US東海岸マサチューセッツ州ボストン郊外の、山んなかにあるスポーツ施設で。10,000人以上は楽勝で収容可能だと思えた場内はもう、どこもかしこも人、人、人、また人の、見事なくらいの満杯状態。オープニング・アクトはL7だった。決してグランジ/オルタナティヴ・ロック・バンドではないのだけど、元Sub Pop Records所属という背景&肩書きと、その音楽の特徴のひとつでもあった、ひしゃげた音を出すということで、その音楽の関連バンドとして脚光を浴び、人気も高まっていた女性4人組のロックンロール・バンドだ。その頃は“ライオット・ガールズ”という言い方もされていた。が、しかし、大勢の観客たちは、精一杯演奏する彼女たちにまったく興味を示さず、見向きもしやしない。スタンディング・フロアはまさに観客でギュウ詰めだったものの、あり得ないくらいに誰ひとりとして演奏に合わせて身体を揺らす者がいなかったのには正直驚いた。MARILYN MANSONの歌詞や音楽で構築される独特な世界観からしてストイックな気質のファンが多いのは想像に難くなかったけど、まさかここまでとは思いも寄らなかった。そう、この夜会場に集結した観客たちの99%以上がMARILYN MANSON目当てのとてもストイックなファンだったのだ。本来オープニング・アクトは特例を除き、どの順番で、どの時間に出ようがなんだろうが、基本“アウェイな環境”のなかで演奏するものだ。だけど、この夜のそれは完全に常軌を逸していた。

MANSON'S SINGLE COVER GALLERY

「TOURNIQUET」 (1997)
『ANTICHRIST SUPERSTAR』からの2ndシングルが、これ(絶版)。この頃から同一ジャケでそれぞれ色味を変え、B面収録も各々違う楽曲にする、というシングルをパート1 & 2の2パート形式で同発するリリース法が一般化する。上がパート1で、下がパート2だ。わけわかんない人たち(メンバーも含む)が次々に登場し、意味不明な行動をするおぞましいPVのイメージそのまんまのジャケだ。

 L7終演後に客電がつき、セットチェンジが行われている間、自分の後方にいた観客たちが次々に前に詰め出した。よりギュウ詰め度は増し、どんどんテンションも上がっていった。そして客電が落ち、ドロドロしたSEがPAスピーカーから流れ出した途端、黄色い歓声と、低音ヴォイスが一緒くたになり、ほぼ轟音と化して場内いっぱいに響きわたった。正直セットリストなんて覚えちゃいない。マンソンとトゥイギー・ラミレズ(b)がステージ最前面に出てきて、前方の観客たちを煽りに煽る。よーく観ると、ベースをかきむしるように弾く女装トゥイギーの鼻と口の周りからは鼻水ともヨダレとも思えるものが流れ落ちている。時折イッちゃったような表情を見せるその姿をしかと観たとき、心底「この人たち真剣にヤバい!」と思った。ここ最近の来日公演で観られたのとは違い、パフォーマンスは頭っから最後まで“攻めっ攻めのアティテュード”が貫かれ、尖りまくり、ヘヴィネスを極め、強烈なる攻撃力、破壊力を放った。そして、それはときにバイオレンスという言葉も頭をよぎったほどのものだった。マンソンのMCも“Fワード”だらけで、そこいらじゅうにカオスが蔓延し、盛り上がり続けた。 そして、痛感した。「こりゃ、あちこちの会場周辺で集団的抗議行動も起きるわな」と(笑)。ライヴ前に実現した、自分にとっての初対面取材で、マンソンはこんなことを言っていた。

「オレはところ構わず言いたいことを言い、やりたいことをやりたいようにやる。だから人によってはオレは“悪者”であり、“悪の権化”であり、そして“みんなが恐れるものの象徴”でもある。ロックをやっているということだけでも十分“悪者”さ(笑)。だけど、それでいい。ある意味、それもエンタテイメントで、それでオレはヘタな政治家より影響力を放っているわけだから」

 そう、ライヴで破壊力と攻撃力を強く味わおうが、そこいらじゅうにカオスが充満しようが、つまるところマンソンが追い求めて止まない、表現しても表現しても満足しないのは決してバイオレンスなんかではなく、あくまでもマンソン流エンタテイメントだということだ。マンソン自身やMARILYN MANSONのビジュアル・イメージやそれに伴う暗黙のルール、作品ごとの全体的なテーマ、歌詞、音楽、ライヴ・パフォーマンスに、取材などの公の場での発言のすべてがエンタテイメントというキーワードでつながり、くくることができる。このエンタテイメント性はマンソンにとっても、またMARILYN MANSONにとっても、まさに“生命線”なんである。

 初めてライヴを観た、その翌月の'97年3月、MARILYN MANSONはついに初来日した。東名阪全公演がソールド・アウトになるなどの大盛況だった。が、しかし、自分に思いがけないことが起こったのだった…。



MARILYN MANSON 関連タイトル!

FEAR FACTORY / 『DEMANUFACTURE』('95年)
激烈チューン「Martyr」を生み、初期衝動あふれたデビュー作『SOUL OF A NEW MACHINE』('92年)を“名作”と言う人もいる。それもわからなくはないけど、自分はなんの迷いもなく、この2枚目を“傑作”だと断言する。これまでこの関連タイトル枠で紹介してきたのはすべて、インダストリアル・ミュージック/エレクトロ系からロック/メタルに接近し、融合を図ったアーティスト/作品ばかりだったけど、今回はその逆で、エクストリーム・メタルがエレクトロ/インダストリアル・ミュージックを異種配合している。“突き抜けた感”が色濃く、異種配合のセンスも見事だ。エクストリーム・メタル・バンドがテクノをやるとこうなります的「New Breed」もめちゃくちゃカッコいい!“インダストリアル・メタル好き”は絶対に聴くべし!そして、この時代に“原点回帰”した新作『THE INDUSTRIALIST』も併せてお勧めだ。
文●有島博志(GrindHouse)

MARILYN MANSON 最新作ニュース

■■■ 有島博志プロフィール ■■■

 80年代中盤よりフリーランスのロックジャーナリストとして活動。積極的な海外での取材や体験をもとにメタル、グランジ/オルタナティヴ・ロック、メロディック・パンク・ロックなどをいち早く日本に紹介した、いわゆるモダン/ラウドロック・シーンの立役者のひとり。
 2000年にGrindHouseを立ち上げ、ロック誌GrindHouse magazineを筆頭にラジオ、USEN、TVとさまざまなメディアを用い、今もっとも熱い音楽を発信し続けている。
※ ※ ※ ※ ※

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