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【特集】 1978年のストーンズ

ROLLING STONES STORE

2011年11月11日 (金)


ストーンズ 1978



 ライドン率いるP.I.Lが一時復活、さらにはシド「My Way」が大企業CMソングに起用され、オールドウェイヴィなパンク・ファンをやきもきさせている今日この頃。そんな英国DQN系パンクスたちに「ロック鈍重化のA級戦犯」と集中砲火を浴びせられていたローリング・ストーンズ、まさにその渦中となる1978年のアメリカ・ツアーの映像がいよいよ公式リリースされる。同年6月に発表されたアルバム『女たち』は、パンクに抗うどころかディスコ、カントリー、メロウ・ソウルまでに至るエキスを吸い上げながら新境地を拓く、格の違いすら見せつけた傑作となった、とするのはファンの贔屓目だけの思い違いだったのだろうか?

 そのことを再確認するためにも『Some Girls Live In Texas '78』は打ってつけの歴史教材ともなる。また、ここで初めてストーンズにコンタクトをとる人にとっても、ヴァリエーション豊かな曲色とそのセレクト、そして何より一貫してテンションの高いパフォーマンスがぎゅぎゅっと詰め込まれているという点で恰好のガイダンスとなることは間違いないだろう。

 奇しくも12月にリリースされることが決まった『女たち』のデラックス・エディション。そちらにも勿論注目だが、『Some Girls Live In Texas '78』が、その”前哨戦”とナメてもらっちゃあ困るというもの。むしろこのステージこそが当時のストーンズを如実に映し出していると言っても、それはまったくのデタラメでも大見栄でもない。ジョン&ヨーコ、アンディ・ウォーホール、ジャン=ミシェル・バスキア、トルーマン・カポーティ、ウィリアム・バロウズ、ルー・リード、パティ・スミス、フランク・シナトラ、マイルス・デイヴィス、ウディ・アレン・・・「1978年のニューヨーク」という華やかなれど魔力たっぷりの街に惹き寄せられた ”ハンサムボーイズ” の向かった先とは? 時代のメルティングポットがより妖しく激しく映し出す、1978年のローリング・ストーンズをたっぷりと堪能できるのはまさしく本品だけ!

 本ツアー終了後に出演したあの「サタデー・ナイト・ライブ」から司会のダン・エイクロイドと社交界ジョークを飛ばし合うミックの映像、さらには2011年最新版となるこれまたミックのインタビューなどボーナス・コンテンツもこれまでになくボリューミィ。予告編トレーラー映像も絶賛掲載中!!




 
Some Girls Live In Texas '78 【+CD 初回限定盤】

 
 Some Girls Live In Texas '78 [DVD+CD]
 Verita Note VQBD10064 2011年11月14日発売 初回限定盤

【収録内容】
ディスク 1:DVD
1. Let It Rock 2. All Down The Line 3. Honky Tonk Women 4. Star Star 5. When The Whip Comes Down 6. Beast Of Burden 7. Miss You 8. Just My Imagination (Running Away With Me) 9. Shattered 10. Respectable 11. Far Away Eyes 12. Love In Vain 13. Tumbling Dice 14. Happy 15. Sweet Little Sixteen 16. Brown Sugar 17. Jumpin' Jack Flash

ボーナス映像 (日本語字幕付き)
18. ミック・ジャガー 「2011年最新インタビュー(約15分)」
1978年10月7日OAされた、アメリカNBCのTV番組「サタデー・ナイト・ライヴ」より (約21分)
19. ダン・エイクロイド&ミック・ジャガー@ (インタビュー) 
20. ダン・エイクロイド & ミック・ジャガーA (インタビー)
1978年6月20日にO.A.されたアメリカ 「ABCニュース 20/20 」(約5分)
21. リハーサル風景とインタビュー 

ディスク 2:CD
ディスク 1のライブDVD収録曲と同じになります。






 
Some Girls Live In Texas '78 【+CD 初回限定盤】

 
 Some Girls Live In Texas '78 [Blu-ray+CD]
 Verita Note VQXD10015 2011年11月14日発売 初回限定盤

【収録内容】
ディスク 1:DVD
1. Let It Rock 2. All Down The Line 3. Honky Tonk Women 4. Star Star 5. When The Whip Comes Down 6. Beast Of Burden 7. Miss You 8. Just My Imagination (Running Away With Me) 9. Shattered 10. Respectable 11. Far Away Eyes 12. Love In Vain 13. Tumbling Dice 14. Happy 15. Sweet Little Sixteen 16. Brown Sugar 17. Jumpin' Jack Flash

ほかボーナス・コンテンツなどはDVDヴァージョンと同内容となります。 

ディスク 2:CD
ディスク 1のライブBlu-ray収録曲と同じになります。





【仕様】
- DVD -
初回限定盤デジパック仕様 / 通常盤トールケース仕様 / 日本語字幕付(ライヴ本編/ボーナス映像) / 日本語解説
DVD: ライブ本編:約85分 ボーナス収録時間:約40分/音声:ドルビー・デジタル ステレオ/ ドルビー・デジタル 5.1chサラウンド / DTSサラウンド・サウンド/16:9

-Blu-ray-
初回限定盤デジパック仕様 / 通常盤ブルーレイケース仕様 / 日本語字幕付(ライヴ本編/ボーナス映像) / 日本語解説
Blu-ray:ライブ本編:約85分 ボーナス収録時間:約40分/音声:リニアPCMステレオ / ドルビー・デジタル 5.1chサラウンド / DTS HDマスター・オーディオ/16:9






購入者特典は 「ザ・ローリング・ストーンズ 1978年ツアー・ポスター」!

ザ・ローリング・ストーンズ 1978年ツアー・ポスター

 11月14日発売のローリング・ストーンズ『Some Girls Live In Texas '78』の国内盤4バージョン(VQBD10064、VQBD10065、VQXD10015、VQXD10016)いずれかをHMVオンライン/モバイルでご購入されたお客様に、もれなく「ザ・ローリング・ストーンズ 1978年ツアー・ポスター」をプレゼントいたします。数に限りがございますのでお早めのご予約・ご購入をおすすめいたします。

※ サイズ:B2変形 約480W×725H
※ HMV店舗でのご購入は対象外となります。ご了承下さい。



『女たち』 スーパー・デラックス・エディション詳細情報!

『女たち』 スーパー・デラックス・エディション

 『メイン・ストリートのならず者』に続くストーンズ デラックス・エディションの第2弾。『女たち』がついに超豪華ボックス仕様で登場! 国内盤特典は「特製カレンダーポスター」に決定!



 『女たち』のリリース後、78年6月10日のフロリダ州レイクランドを皮切りに、7月26日千秋楽のカリフォルニア州オークランドまで全24都市25公演のアメリカ・ツアーを行なったローリング・ストーンズ。1972年、1975年のUS興行と同様にビル・グラハムをプロモーターに起用したこのツアーは、小中規模会場でのギグを意図的に挟みながら、ステージ・デザインや衣装などもいたってシンプルなお誂えで行なわれた。パンク的なラフさ云々というよりは、「ケバケバしい演出より音楽そのものをご賞味あれ」と咀嚼を施した上での意味からすれば、むしろそこに60年代デビュー当時の彼らの姿を重ね、「元祖ガレージ・バンドこそストーンズだ!」と声を荒げるファンも多かったのではないだろうか。2年前のヨーロッパ、大所帯で歌舞伎まくった金襴緞子のムードは微塵もそこには残っていない。あるとすれば、”退廃の街ニューヨーク”への風刺か? 哀憐か? 憧憬か? いずれにせよニューヨークを根城にしたストーンズの摩天楼上陸作戦が布告・遂行されたというわけだ。

 小中規模ホールでのギグ敢行は、前年3月のカナダはトロント、エル・モカンボ・ギグで、目と鼻の先にいるクラウドを煽ることにふたたび快感を憶えてしまったことも一因としてあっただろう。エルヴィスが天に召され、ボランを突如失い、ツェッペリンレナード・スキナードといった老舗バンドは解散を余儀なくされ、電化ファンク/ロックに舵を切ったマイルス・デイヴィスまでもが隠居を決め込む。昔気質のロッキン仁義が崖っぷちに立たされたとする見方もあながち大袈裟ではないほどに大衆音楽を取り巻く状況というのは大きな転換期を迎えようとしていた時代。「われわれにはストーンズがいる!」とおいそれと口にしたところで、この時代の彼らに実際どこまでの求心力があったかなどは誰にも予測することは不可能であったに違いない。


Rolling Stones


 一部イギリスのパンクスから「シーラカンス」呼ばわりされたことへの”対抗意識”あわや”報復”とするのが通説だろうが、30年以上の時間の経過を経てあらためて『女たち』及び『Some Girls Live In Texas '78』をじっくり吟味していると、とかくそうした解釈の大部分が、マスコミによる二項のディス合戦を面白おかしく誘発するがための過剰報道・扇動広告だったんじゃないかと思ってしまうほど、ことさら「抗ブリティッシュ・パンク」「抗ロットン」というような決定的なパラグラフはストーンズ・サイドのアクションからはほとんど見当たらない。キースなんぞ「パンクがどうかしたってのか? あとにしろや。こちとらムショ暮らしになるかどうかの瀬戸際だっつーの」と、新興勢力の台頭にもまったく関心なしというか、それどころではないご様子。この時期のキースの私生活の混迷ぶりを考えれば、それもそうだ。「勝手にしやがれだ? そらこっちのセリフじゃ、ボケナス!」と。

 ツアーも終盤にさしかかった78年7月18日テキサス州フォートワース、ウィル・ロジャース・メモリアル・センターにおけるショウは、この年の”スタメン切り込み隊長”に大抜擢されたチャック・ベリーの「Let It Rock」で幕を開けた。71年のイギリス・ツアーでも披露されていたが、その当時の ”ロックンロール関白宣言”とは今回どうも勝手が違うなと誰もが妙な胸騒ぎを憶えながら、辛子明太子のようなミックのレザー・キャスケットにひとしきり目を奪われる。「パンクも結構だが、元祖・黒人音楽のパンクロッカーも忘れちゃいかんよ」といったストーンズ流の老婆心に身を正す者もちらほら。幾分ピッチの速い「All Down The Line」へのトリガーに十分になり得ているのは、「スピード&チャージ」がひとつのキーワードとなっていた当時のトレンドへのトライアルか? あてつけか? ...さすがに息が上がったか、「Honky Tonk Women」でバンドは一旦呼吸を整えつつ、ふたたびチャック・ベリー直系のロックンロール「Star Star」で飛ばすためアクセルを踏み込みはじめる。

 と、ここまでは何を隠そうアペタイザー。ミックがおもむろにストラトを掻きむしって飛び出せば、78年のストーンズ・ショウが本格的にキックオフ。ニューアルバムからの新メニューが7曲連続で披露されていること自体約半世紀のストーンズ史において唯一だが、そこにこそ現在進行形の15年選手ならではの意地と誇りが屹立している。ニューヨークで生き抜くゲイの試練をミック流に友好的に皮肉ってみせた「When The Whip Comes Down」はこのツアーの最初のハイライトと言えるだろうか。編集盤『Sucking in the 70's』に収録されて以来この時期の公式ライブ音源(同曲のデトロイト公演音源)にありつくのに、まさか30年の月日を要するとは、音楽ビジネスって案外ややこしいのね...と憎まれ口のひとつも。それにしても、「53番街に行けば 顔につばをひっかけられる」など、ミックのニューヨーク・ゲイ・カルチャー人脈、例えばアンディ・ウォーホールグレース・ジョーンズクラウス・ノミ、アンディ・ミリガン、トルーマン・カポーティといったような名を楽々想起させるパンチラインには生々しいものがある。ミックのあらゆるものに対する ”新しモノ好き” の血がニヒルに騒いだ、その音の結晶。

写真はデトロイト公演
 「When The Whip Comes Down」、「Respectable」、あるいは「Shattered」にしろ、そこにパンクとの賑やかな交差点が存在すると解釈するならば、それはブリティッシュ・パンク勢への対抗ではなく、お膝元の所謂「ニューヨーク・パンク」勢との間に何かしらの以心伝心めいたものがあったのではないかなと推測してしまう。双方やんちゃなイメージとは裏腹のインテリ臭を薫り立たせているという点にも微かな共通項はある。 ストーンズ、特にミックは77年前後からニューヨークの風俗・文化に魅せられてどっぷりと浸かっていき、「70年代ニューヨークの象徴」とも言われたマンハッタン区の伝説的なナイトクラブ「ステューディオ54」(ニューヨーク西54丁目)を当時の新恋人ジェリー・ホールと訪れているところを度々目撃されており、夜毎ジョルジオ・モロダードナ・サマーシックなどのミラーボール・サウンドに身体をくねらせ火照らせていたのは想像に難くないだろう。ただし「むむ、なるほどそうして『Miss You』のアイデアが生まれたわけか」とだけにとどまってしまうのはあまりにも勿体ない。むしろ伏魔殿ミック・ジャガーの本領はここから。アッパーサイドだけでなくロウワーサイドまでにも目を光らせる抜け目のなさがあってこそ ”元祖ガレージ・バンドの経営者” の面目躍如だ。パティ・スミステレヴィジョンラモーンズトーキングヘッズブロンディらが鎬を削り合っていた「CBGB's」、ジョニー・サンダース率いるハートブレイカーズが出演していた「Max's Kansas City」など、「54」からさほど離れていないリアル・ニューヨーク・パンクの巣窟をお忍びでハシゴしていた可能性だってゼロではない・・・仮にミックが足を運ばなかったとしてもロニーあたりがぐでんぐでんになって遊びに来ても・・・ともはやSFレベルの妄想だが、さもありなん、だ。

 逆に、ニューヨーク・パンク・サイドからのストーンズへのラブコールやアプローチは昔からそれなりによく知られている。初期ストーンズやビートルズをご本尊とするブリティッシュ・ビート熱、T・レックスデヴィッド・ボウイスレイドらグラム勢への憧憬などは、ヴェルヴェッツストゥージズニューヨーク・ドールズモダン・ラヴァーズといったパンク前夜のサブタレニアンたちから脈々と受け継がれていた。パティ・スミスにしろ、テレヴィジョン〜ハートブレイカーズを渡り歩いたリチャード・ヘルにしろ、彼らニューヨーク・パンクの猛者たちの多くがブリティッシュ・インヴェイジョンのファーストインパクトによってロック・ミュージシャンとなることを決意したと言っても大袈裟ではないだろうし、パティにいたっては10代のときに初めて「エド・サリヴァン・ショー」に出演したストーンズを観て、「ロックンロール・バンドの中ではじめてファックしたいバンド!」と人生観すら転覆させられるほどの衝撃を受けたぐらいなのだから。また、ミュージシャン・デビューする以前、ロック雑誌のライター仕事に携わっているときに、ストーンズの共同インタビューでインタビュアーを務めたこともあるというほどの因果関係にある。『女たち』と同じく78年の6月に3枚目のアルバム『Easter』をリリースしたパティはこの年ストーンズに最接近したニューヨーク・パンク勢と言えるだろうか。一般的に78年のアメリカ・ツアーにおけるフロント・アクトは、レギュラー起用されたピーター・トッシュが有名だが、そのほかイレギュラー的に登場した、エタ・ジェイムスサンタナドゥービー・ブラザーズサウスサイド・ジョニーヴァン・ヘイレンフォリナーらに混じって、 ”ニューヨーク・パンクの女王” の名を見つけることができるのは、パティ側の熱烈なラブコールの賜物でもある。6月12日アトランタ・フォックスシアター公演の前座に抜擢(トッシュのトラ?)され、「Because the Night」などを演奏している。パティのストーンズ・フリークぶりは、75年の「Time is on My Side」、後年のカヴァー・アルバム『Twelve』に収められた「Gimme Shelter」、さらに1977〜2007年までのライブにおけるストーンズ・カヴァーを纏めた『Live Covers Of The Rolling Stones』(ハーフオフィシャル?)という編集盤などでも判りやすく示されている。

パティ・スミス
 リチャード・ヘルは、テレヴィジョン脱退後にヴォイドスを率いてソロ活動を開始した78年に「Shattered」を早速ライブ・カヴァー(バッキング・ギター/コーラスにはエルヴィス・コステロがゲスト参加)。オリジナルとオンタイムでカヴァーしているというのは実に興味深い出来事だ。ちなみにヘルは当時のストーンズ・レコード社長アール・マックグラスと接触し「ミックとキースが君達を気に入っているから近いうちにショウを観に行くよ」とまで言われていたそうだが事の真偽は明らかになっていない。ほかニューヨーク・パンク勢のストーンズ・カヴァーでは、ラモーンズ「Street Fighting Man」、「Out of My Time」、ジョニー・サンダース「As Tears Go By」、「I'd Much Rather Be With The Boys」、「Play With Fire」といったところ、あるいは非公式盤ながらリチャード・ロイド(元テレヴィジョン)やロバート・ゴードンらの呼びかけでニューヨーク・パンク・オールスターズが78年「Max's Kansas City」に集結して行なわれた「ストーンズ・トリビュート・ライブ」の音源というブツも秘めやかな人気を博している。このライブでは、ハートブレイカーズからはサンダース、ジェリー・ノーラン、ビリー・ラス、パティ・スミス・グループからはレニー・ケイ、アイヴァン・クラールらが駆けつけストーンズへの思いの丈を四方八方にぶつけまくっている。サンダースによる掟破りの「Cocksucker Blues」カヴァーは必聴。 とは言え、当時のストーンズのコンサートの最前列で安全ピン付きのライダースに身を包んだユース達がモッシュしていたとは到底考えにくいが、少なくともニューヨーク・パンクの誕生・勃興・興隆の影にストーンズあり、とするのには何の違和感もない。  

 ジョニー・ロットンが「ピンクフロイドが大嫌い」と書かれたTシャツに袖を通して富裕層のガリ勉・中産階級のブタどもを容赦なくコキおろせば、ジョー・ストラマーも「1977年に、エルヴィスもビートルズもストーンズもいらない」と叫ぶ。挙句の果てにはストラングラーズのメンバーがストーンズの楽屋を襲撃するという始末。故郷イギリスのパンクス達はニューヨーク・パンクとの共鳴こそあるものの、どうやら槍玉にあげるべく旧体制・権威の象徴という点では意見をやや違えていたのかもしれない・・・それ以前に「誰の影響も受けていない」と突然変異的に誕生したことを強調する点においてそもそもアメリカのパンクとは本質的な存在意義を異なるものとしていた。ビートルズはもちろんエルヴィスもツェッペリンも現場を去った当時において、長者番付常連のストーンズが鬱憤たまったイングランユースの”魔女狩り”の標的となってもある意味当然なのだが、革命の歴史というものがある種そうした下からの突き上げの歴史だとすれば、ストーンズは60年代にイギリスでデビューアルバムが12週連続No.1に輝いて以来、何度もその王座を脅かされているわけであり、この時代のパンク・ムーヴメントにしても下克上的な狂騒のひとつでしかないと冷静にその動向を見守っていただけなのかもしれない。デビュー当時の血気盛んだった自らを想い起こしながら爽やかに胸を貸してはイナす、そんなぶつかり稽古のような余裕さえも感じさせながらストーンズはこの時代と向き合っているかのよう。また一方で、時代の流行を取り込むのが巧い彼らにとって「パンクも旬なうちに利用する手はない」音楽表現のひとつにすぎないことをもドライに示しているかのようなクレバーな面も窺えそうだ。さらに邪推を加えれば、ピーター・トッシュを自らのレーベルと契約させるなどレゲエにのめり込んでいたストーンズにしてみれば、イギリスの若いパンクスたちが同様にレゲエ・ミュージシャンを支持し共演などを繰り返している姿にシンパシーを抱かずにはいられなかったことも。音楽シーンの大転換期においても持ち前の雑食性アンテナを張りめぐらせながら、きっちりと現状を看破していたのはさすがと言えそうだ。

 「When The Whip Comes Down」の件から話しがだいぶ逸れていってしまったが、この曲や「Shattered」を耳にするたびに、パティ・スミスリチャード・ヘルといった「CBGB's」の住人たち、そしてグレース・ジョーンズクラウス・ノミといったゲイ・アイコンたちの顔が次々に浮かび上がり、70年代半ばのニューヨーク・アンダーグラウンドの官能的で刹那の表情がすべてそこに詰め込まれている気にさせられてしまうという声にもどこか納得せざるを得ない。この時代のニューヨーク回廊とストーンズのシナジーやケミストリーがそうさせるのか? 「When The Whip Comes Down」や「Shattered」のリフがかき鳴らされた途端マジカルな空気が充満しはじめる。人はそれを客観的に総称して「デカダンス」と呼び、ミックは60年代末とはまた種類の異なる「デカダンス」に魅せられてしまった人間のひとりだったのかもしれない。

Ronnie Wood / Keith Richards
 アッパーウエストの象徴「ステューディオ54」でのアルコールとパフュームとオーラルセックスにまみれたメモリーをオフビートに刻む「Miss You」。ディスコ・ミュージュクが世界中を席巻していた年に素早く着手し、フットワークの軽さをも見せ付けた我流のブギバンプ。スタジオ・テイクではシュガー・ブルー(harmonica)、メル・コリンズ(ts)といった遊撃手が彩りを添えるが、この野性味溢れたライブ・ヴァージョンはどうだ。「サタデーナイト・フィーバー」、「ハロー・ミスターモンキー」、「ソウル・ドラキュラ」、「インスタント・リプレイ」といった産業ディスコでは決して味わえない裏路地感とそこに立ち込めるインモラルぷんぷんの妖気。この荒廃ぶりはもはや病める近代都市のディスコ・パンクのコンテクストにまでも肉迫。やはりブラック・ミュージックを独自のセンスで昇華させたら彼らの右に出る者はいない。「Beast of Burden」にはニューソウル以降のメロウなブラック・ミュージック・エッセンスが ”おいしいところどり” のようにこれでもかと詰まっている。フェイザーで滑らかに揺らすキースとのじゃれ合いから束の間距離を取り、ロニーのゼマイティスが24小節の天の川ソロにて煌めく。その間ミックは恍惚とも千鳥足ともつかない軟体ステップで退廃の街をふらつく。これにはベット・ミドラーも、若きブライアン・セッツァーもうっとりだ。

 サポーター的な役回りで参加していた前回ツアー/レコーディングとは打って変わり、正式に ”ストーンズのウッディ” として八面六臂動き回るロニーの姿に思わず頬も緩む。おはこのペダル・スティールがしみじみとメロディを編み上げる「Far Away Eyes」はそれが顕著に、と言うかロニー自身が最も悦に入っているのだからそこにガヤの声を挟む余地は一切ないというもの。ミック・テイラーの後釜はやはりこの男しかいなかったんだなとあらためて実感。この風流なカントリー・ソングには、イアン・マクレガンの影で訥々とピアノを弾くイアン・スチュワートの姿を確認できるのもファンとしては嬉しいところだろう。高速ナンバーを立て続けに試したサム・ガールズ・セッションに「ステイタス・クオじゃないんだぞ! やってられるか!!」とブチ切れたクチだが、ストーンズならではのこうしたカントリー小唄できっちりサポートに徹するあたりはさすがというか、そこいらのぽっと出のパンク・バンドにはない職人魂やミュージシャン・シップ、そんなスチュの謂わば「大人のたしなみ」にも胸を焦がされる。暗闇からやにわにヌッと出てきて風情たっぷりの調べを残すダグ・カーショウの男前フィドルにも一票だ。「CBGB's」が元々はカントリー&ブルーグラス系のパブだったことへのストーンズ流のアイロニー、ということは九分九厘ありえないが、このご時勢にカントリーを放り込む彼らの懐の深さに、惜しみなくもう一票。

 70年代ツアーでは73年以来久々に披露される「Love in Vain」でも、ロニーを擁したストーンズならではのフレッシュな解釈がたのしめる。俯瞰すれば、ジョンスペベン・ハーパーGラブなどのオルタナティヴ・ブルースの源流に出くわしてしまったかのようなジャンク・ブルース仕立て。伝統主義者ミック・テイラーが眉をひそめそうなロニーのわんぱくスライド、ここに極まれリ。怪演にして快演だ。

 トロント裁判の判決を待つ身でもあったキースは、実際気もそぞろな状態でライブに臨んでいてもおかしくはない。お縄になればバンド自体の存続さえも危ぶまれていたのだから当然だろう。しかしライブでは伏し目がちな表情を時折覗かせるだけで、新しい弟(しかも双子の)とのギター・コンビネーションを心底たのしんでいるご様子。”声変わり”説にも頷ける「Happy」は、以前よりもドスが効いた上にホゲまくったその声に驚かされるばかりか、アップで映し出されれば瞭然、ここへきて急速に進んだと思しき見てくれの加齢ぶりにも息を呑む。甲高いトーンで押しまくった牛若丸も三十も半ばに差し掛かり、紆余曲折を経ながら本当の幸福論というものにタッチしかけようとしている。自業自得のクロスロードなれど、そんな深い感慨さえも憶えさせてくれる一幕。ここまで沁みる「Happy」は後にも先にもないのではないだろうか。

Rolling Stones
 当夜二発目のチャック・ベリー・ナンバー「Sweet Little Sixteen」を最後の助走に、「Brown Sugar」、「Jumpin' Jack Flash」で激しく振り切れるストーンズ。ここまできたらパンクもディスコも関係ない彼らの ”ゾーン” に一気に突入するだけ。ジョニー・ウィンターモーターヘッドも寄せ付けない異様なハイテンションの「Jumpin' Jack Flash」は、公私共に百出くぐり抜けたロックンロール最後の現役チャンプが年度目かの防衛に成功した、その瞬間を圧倒されながら眺めているかのよう。格闘技のような「Jumpin' Jack Flash」だ。ディスコをセコンドに付けパンクとの舌戦を力でねじ伏せ終息させたのか、悪ガキどもをオルグしてふやけたミラーボールハウスにかちこみをかけたのか否か...どちらにせよこれは、目下向かうところ敵だらけだったストーンズの生き残りをかけた死闘の記録であることにも違いない。

 それにしてもこんな衝撃映像が30年余り寝かされていたことには重ね重ね驚かされ、いよいよ解かれる封印に興奮を抑えきれない。オリジナル16mmフィルムからのデジタル・リマスタリングに加え、ボブ・クリアマウンテンによるリミックスでダメを押す完璧なサウンド・フォルム。画よし、音よし、役者よし。昨今のストーンズ・アーカイヴ発掘映像の中では、ダントツのレアリティと、世界遺産クラスのものづくり精神に出逢ってしまったかのような緻密で高いクオリティを誇る逸品。セット盤はいずれも限定生産につきお早目のご予約・ご購入を。日本先行リリース!  

 最後に蛇足ながら、ミックは、マーティン・スコセッシと映画『ディパーテッド』の脚本執筆で知られるウィリアム・モナハンと組んで、「1977年頃にディスコ、パンク、さらに新たなヒップホップのミュージックが台頭し始めてきた頃のニューヨークのレコード会社で活躍するエグゼクティブを描いた」テレビドラマ作品を制作するそうだ。ハンサムボーイズたちが勇んで行脚したこの時代のビッグアップルがいかに多彩で強烈な魔力を放っていたか、そのあたりが雄弁に描かれていればとても興味深いが。一部情報筋によれば「ミックとキースを連想させるストーリー」とも。放送開始は来年を予定しているということで、本隊再始動と併せてこちらもおたのしみに。









  • 【特集】 ”男たち”のドロくさい本音

    【特集】 ”男たち”のドロくさい本音

    『女たち』のスーパー・デラックス国内盤も無事到着。ストーンズの智恵とボブクリ匠の業とが結晶化したボーナストラック、いかがでしたか?

  • 【解剖】 『メインストリートのならず者』

    【解剖】 『メインストリートのならず者』

    『ならず者』豪華箱の登場で血沸き肉踊るのはファンだけじゃない。ミックもキースもあの夏のコートダジュールにタイムスリップ。やはり本編18曲のスルメぶりがあってこその未発表コンテンツだということ・・・・・・

  • 「レディジェン」 追加映像たっぷり!

    「レディジェン」 追加映像たっぷり!

    ボーナス・コンテンツたっぷり追加の1973年絶頂転石実況映像・・・・・・

  • ストーンズ シングルBOX!

    ストーンズ シングルBOX!

    70年代以降、ローリング・ストーンズ・レーベルより発売された45枚のシングルをまとめてボックス化!初CD化を含む貴重楽曲も収録・・・・・・

  • スーパーヘヴィ アルバム発売!

    スーパーヘヴィ アルバム発売!

    ミック・ジャガー、デイヴ・スチュワート、ジョス・ストーン、ダミアン・マーリー、A.R. ラフマーンによる「スーパーヘヴィ」登場・・・・・・

  • 【特集】 キース・リチャーズの初ベスト

    【特集】 キース・リチャーズの初ベスト

    待ってましたのリマスターに加えて、あの「Hurricane」も収録。キーフ初の公式ベスト盤リリースを祝し、もう1枚の ”自己満ベスト” の密造法もこっそり伝授・・・・・・

  • スチュに届け、友愛のブギ

    スチュに届け、友愛のブギ

    転石サウンドの屋台骨を支えたピアニスト、イアン・スチュワートのトリビュート盤が到着。ストーンズ・メンバーをはじめ、ベン・ウォーターズの呼びかけに集った心の友たち。ビル・ワイマンも参加・・・・・・

  • 【特集】 ピーター・トッシュ

    【特集】 ピーター・トッシュ

    ピーター・トッシュの『解禁せよ』、『平等の権利』が、ダブ・プレート、別テイクなどを追加した2枚組レガシー盤で登場。せっかくなので盛り上がってみました・・・・・・

  • パティ・スミス ボックスセット

    パティ・スミス ボックスセット

    ニューヨーク・パンクの女王、パティ・スミスのArista時代のアルバム8作品をまとめたファン必須のコレクターズ・ボックスが登場・・・・・・

  • パティ・スミス シングル集

    パティ・スミス シングル集

    『Horses』で衝撃のデビューを飾ってから36年。「ニューヨーク・パンクの女王」と呼ばれ高い評価を得てきたパティ・スミス初のシングル・コレクション! ・・・・・・

  • P.I.L 初の紙ジャケ

    P.I.L 初の紙ジャケ

    「SUMMER SONIC 2011」にて26年振りの来日公演を果たしたパブリック・イメージLTD。それを記念して全オリジナル・アルバムが初の紙ジャケ仕様で登場・・・・・・

  • SHM-CD アンコールプレス!

    SHM-CD アンコールプレス!

    洋楽名盤紙ジャケSHM-CDの939タイトルが、初回限定出荷のアンコールプレス・・・・・・



 
N.Y. Subterranean Love The Stones


 「ニューヨーク・アンダーグラウンドの住人たちはストーンズが大好きだった」という本稿のテーゼを受けて、「CBGB's」や「Max's Kansas City」を拠点に活動していたニューヨーク・パンクの雄によるラブ横溢のストーンズ・カヴァーをいくつかご紹介。

 ベルヴェット・アンダーグラウンドストゥージズMC5らの次世代、つまり70年代半ばアメリカン・パンク ”ファースト・ウェイヴ” の中心人物としてシーンに風穴を空けたパティ・スミステレヴィジョンラモーンズブロンディ、そしてニューヨーク・ドールズの元ギタリストという悪徳極まりないキャリアを持つ親玉ジョニー・サンダース。「ルーツを持たない。誰にも影響を受けていない」ということにある種のこだわりを持って歴史に噛みついたブリティッシュ・パンク勢と異なり、彼らニューヨーク・パンク勢はブルース、R&B、モータウン、ロックンロール、あるいはストーンズ、ビートルズザ・フーキンクスからT・レックスデヴィッド・ボウイに至るブリッティシュ・インヴェイジョン〜グラムロックの流れなど様々な要素から影響を受けていることを公言している。パティの60年代ロック、ソウル/R&Bフリークぶりは有名で、初期のステージでは自前曲もそこそこにストーンズ、ザ・フージミヘンゼムJBの曲などを勢い任せに演奏していたほどだ。77年から2007年までの間にライブで披露してきたストーンズ・ナンバーをまとめた編集盤『Live Covers of The Rolling Stones』はハーフオフィシャルのような体裁で入手が難しいかもしれないがパティのストーンズ愛を知るには最もうってつけの1枚だ。「Jumpin' Jack Flash」のアコースティック・ヴァージョンをはじめ、「Parachute Woman」、「Salt of The Earth」といった通好みの選曲がうれしい。また、2007年には初の公式カヴァー・アルバム『Twelve』をリリース。こちらには「Gimme Shelter」が収録されている。



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Patti Smith
「Live Covers of The Rolling Stones」


Twelve
Patti Smith
「Twelve」


 トム・ヴァーレインとの音楽性の違いで75年にテレヴィジョンを脱退することとなったリチャード・ヘル。元々詩人を目指していたが、ネオンボーイズで初めてベースを手にして以降、テレヴィジョン、ハートブレイカーズをわずかな期間で渡り歩き、はてはドラッグ過多に陥りながらも自己バンド=ヴォイドスを率いて『Blank Generation』という重要作を生み出し、また短く逆立てたツンツンヘアや破けたTシャツなどファッションにおいてもシーンの流行を先取り、ニューヨーク・パンクのアイコンとなっていった。音楽的には、ティーンの頃からストーンズに熱を上げる典型的なロックンロール・ボーイズ。カヴァー音源としては、過去にカセットテープで出回っていた音源に未発表テイクなどを加えた編集盤『Time』(2002年リリース)に収録された「Shattered」のライブ・ヴァージョンが有名だろうか。なんと78年のライブ音源ということで、『女たち』発表からほぼタイムラグなしでカヴァーしているのには驚かされる。ただし本人談によると本曲を演奏したのはこの一回のみということだ。こちらもカセットのみで発売(82年)されていたメジャーデビュー後のテレヴィジョン78年のライブ音源『Blow Up』には、13thフロア・エレベーターズボブ・ディラン曲と並んで、「(I Can't Get No)Satisfaction」がオーラスに収録されている。「19th Nervous Breakdown」でのブライアンのリフに奮い立たされギターを弾きはじめたというヴァーレインだけに、初期ストーンズへの傾倒ぶりはヘルのそれに一歩も引けをとっていない。


Time
Richard Hell
「Time」


Blow Up
Television
「Blow Up」


 ニューヨーク・ドールズ時代から”キース・フォロワー”としての呼び声も高かったジョニー・サンダース。年代的にはリアルタイムにストーンズ、ビートルズ、またはそのルーツとなるR&Bやブルースなどに親しんでいたことは、ドールズ〜ハートブレイカーズでしばし取り上げられるカヴァー曲にも顕著。また「ビートルズやストーンズを聴いて育った俺の素晴らしかった体験を俺のできる方法で若いコたちに伝えてやりたいんだ」と生前常々口にしていたことは有名だろう。現在比較的入手しやすいストーンズ・カヴァー音源としては、85年〜89年のライブ音源からセレクトされた『Bootlegging The Bootleggers』に収録された「As Tears Go By」、79年に元MC5ウェイン・クレイマーと組んだ幻のユニットによる80年ボストンでのライブ盤『Gang War Live』収録の「I'd Much Rather Be With The Boys」などが挙げられる。ストーンズ初のレア音源集『Metamorphosis』に収められた「I'd Much Rather〜」をとり上げているあたりがサンダースのディープなストーンズ・フリークぶりを物語っている。ハートブレイカーズの貴重音源を2CD+1DVDに詰め込んだ『Down To Kill』には、ウォルター・ルーがラモーンズをバックにリード・ヴォーカルをとった「Street Fighting Man」のカヴァーを収録。


Bootlegging The Bootleggers
Johnny Thunders
「Bootlegging The Bootleggers」


Gang War
Johnny Thunders
/ Wayne Kramer
「Gang War」


Down To Kill
Johnny Thunders & Heartbreakers
「Down To Kill」


 ジョーイもジョニーもディー・ディーも熱狂的なストーンズ・ファンだったラモーンズ。ライブでは「Around And Around」など初期ストーンズ作品でおなじみのロックンロール・レパートリーを頻繁に演奏していたそうだ。尤も音盤化されているものが少ないため、よほどのファンでないかぎり彼らのストーンズ信者ぶりは伝わりにくいのだが、84年の『Too Tough To Die』に収録された「Street Fighting Man」はオリジナルへの溺愛ぶりを丸出しにしながらも、この時期によりヘヴィでタフになったラモーンズ・サウンドで貫かれている。93年のカヴァー・アルバム『Acid Eaters』に収録された「Out of Time」は原曲に忠実なアレンジで何とも言えない滋味深さを漂白させている。


Too Tough To Die
Ramones
「Too Tough To Die」


Acid Eaters
Ramones
「Acid Eaters」


 ”パンク界のマリリン・モンロー” デボラ・ハリーがフロントを張るブロンディにも意外なストーンズ・カヴァーがある。公式ライブ盤『Live Philadelphia 1978 / Dallas 1980』には、T・レックス「Bang A Gong」イギー・ポップ「Funtime」のメドレーの合間にクレジットこそないが「(I Can't Get No)Satisfaction」のフレーズが豪快に飛び出すというファンにはうれしい仕掛けが。ただし本命はこちら。82年カナダ・トロントのカナディアン・ナショナル・エクスポで行なわれた解散コンサートの模様を収録したライブDVD。円熟味を帯びたパフォーマンスの中、驚くなかれ「Start Me Up」を堂々披露。本家の発表からわずか1年弱、「いいじゃん、だって好きなんだもん!」とデボラが上気したかどうかはさておき、いずれにせよこういうのはやったもの勝ちだと思わせるほど突き抜けたモノに。廃盤なのが残念...。デボラは93年のソロ・ツアーでも「Wild Horses」を変わらぬビューティフル・ヴォイスで唄い上げている。トーキング・ヘッズデヴィッド・バーンなども94年のツアーで「Sympathy For The Devil」をカヴァーしていたが、ニューヨーク・パンク全盛期というよりは後年になってストーンズ楽曲を ”やんちゃしていた青春の1ページ” 的にとり上げるパターンも多いようだ。


Live
Blondie
「Live」


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Blondie
「Live In Toronto」(廃盤)


 ほか、「Max's Kansas City」を拠点にしていたドラッグクィーン・シンガーのウェイン・カウンティ率いるエレクトリック・チェアーズの78年リリースのシングルに収められた7分半にも及ぶクレイジー(後半は絶叫しっ放し!)な「The Last Time」、またパンク第二のメッカ、オハイオ州クリーブランドから上京し「CBGB's」を拠点に活動。その過激なパフォーマンスから「ニューヨークのピストルズ」とも称されたデッド・ボーイズ。ハードな1stアルバムとは打って変わってブリティシュ・ビートからの影響をモロに感じさせるつくりの2ndアルバム『We Have Come For Your Children』に収録された「Tell Me」、わずか1年ほどの活動期間ながらクリーブランド・パンクシーンの最重要バンドとしてその名を馳せたロケット・フロム・ザ・トゥームズの「(I Can't Get No)Satisfaction」(ライブ音源)なども、ニューヨーク・パンク好き、ストーンズ・フリーク共に一聴の価値アリの逸品だ。


We've Come For Your Children
Dead Boys
「We've Come For Your Children」


Day The Earth Met The Rocket From The Tombs
Rocket From The Tombs
「Day The Earth Met The...」


Still Life
 
 Still Life
 ユニバーサル UIGY9082 2011年12月14日発売
 78年以来3年振りとなった81年の全米ツアーを収録した通算4枚目のライブ・アルバム。巨大スタジアムを2時間以上にわたって駆けずり回る姿は、78年ツアーとはまた異なる興奮を呼び起こす。よりタイトにスピード感溢れるものにブラッシュアップされた「Shattered」や、大会場に映える「Just My Imagination」が収録されている。掲載のものは12月にリリース予定の高音質SACD盤。こちらもお見逃しなく。





 
Let's Spend The Night Together デジタルリマスター版
 
 Let's Spend The Night Together
 是空 GNBF7547 
 左掲全米ツアーの映像版で、名匠ハル・アシュビーがバック・ステージの様子なども絡めながら、20台のカメラと空中撮影を駆使して、目まぐるしく動き回るメンバーのステージ・パフォーマンスや大会場の熱気を収録したライブ・ムービー(製作は82年)。日本でも83年に「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」として劇場公開された。『Still Life』と同じく「Shattered」、「Just My Imagination」の2曲に加え、「Beast of Burden」、「Miss You」という『女たち』の肝曲がしっかり収められている。「Beast of Burden」は82年にシングル・カットされた「Going To A Go Go」のB面にも収録された。


Shine A Light
 
 Shine A Light
 ジェネオン ユニバーサル GNBF7545 
 2006年にN.Y.のビーコン・シアターで行なわれたライブをマーティン・ スコセッシが撮ったドキュメンタリー。あらゆる角度からパフォーマンスを捉えるために18台のカメラと超一流のカメランマンたちを配置し、臨場感溢れるライブが見事フィルムに刻まれることとなった。「Shattered」、「Just My Imagination」、「Faraway Eyes」、そして「ノー・セキュリティ・ツアー」以来この「ビガーバン・ツアー」で二度目の登場となった「Some Girls」という4曲を前半から中盤にかけて畳み掛けている。やはりニューヨークに『女たち』楽曲はよく似合う。


 
Live Licks
 
 Live Licks
 Universal 2716430 
 2000〜03年の結成40周年「フォーティー・リックス・ツアー」から抜粋された23曲を2枚組にコンパイル。 ”通好み”サイドとなるディスク2には「Beast of Burden」、「When The Whip Come Down」を収録。「Beast of Burden」ではアル中リハビリから復帰した(その後また再入院...)ロニーが、ゼマイティスではなくストラトでソロを鳴らす。ややヘヴィだが中々どうして胸に染み入る名演となっている。



Flashpoint
 
 Flashpoint
 ユニバーサル UICY20203 
 日本人には忘れがたき「スティール・ホイールズ/アーバン・ジャングル・ツアー」を収めたライブ盤。1990年2月の東京ドームが巨大なディスコハウスと化した「Miss You」を収録。当時のツアーでは「Shattered」、「Before They Make Me Run」も演奏されていたが、ほぼヒットパレードのような内容を狙った盤だけに未収録も致し方ないところか。「Miss You」は他にも『Voodoo Lounge』、『Bridges to Babylon Tour '97-98』、『The Biggest Bang』といったDVDにも収録されている。



 
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 Sucking In The Seventies
 Virgin 73339 
 米アトランティックが編集し1981年にリリースされたベスト盤。目玉はやはりシングル・カットされた「Shattered」のB面に収められ、アルバムには未収録となる「Everything is Turning To Gold」だろう。印象的なリフを弾くロン・ウッドが共作者として名を連ね、メル・コリンズのサックスもフィーチャーされている ”特別感” も相俟ってコア・ファンには人気だ。また「When the Whip Comes Down」のライブ・ヴァージョン(78年7月6日デトロイト)の正規登場も発売当時ファンを大いに喜ばせた。




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 No Security
 EMIミュージック VJCP25426 
 1997〜98年にかけて行なわれた「ブリッジズ・トゥ・バビロン・ツアー」から厳選の15曲を収めたライブ盤。「Respectable」は98年7月5日のアムステルダム公演からのテイクということで、『Some Girls Live In Texas '78』から丸20年後の「Respectable」を聴くことができる。さすがに当時の疾走感にはかなわないが、ガチャガチャ感が基本的にそのままなのがうれしい。






 
Buried Alive: Live In Maryland
 
 New Barbarians / Buried Alive
 Wooden CDWDN2 
 1979年にリリースされたロン・ウッドの3rdソロ・アルバム『Gimme Some Neck』のリリース・ツアーにキースが参加することで誕生したニュー・バーバリアンズ。昔から地下流出音源が有名だったが、2006年にロニー主宰のWooden Recordsから79年  のメリーランド州ラーゴ公演を収録した『Buried Alive: Live in Maryland』が正式にリリースされた。リズム隊が急造だったため所々「?」という感じの曲もあるが、トロント裁判から解き放たれたキースが晴れ晴れと唄う「Before They Make Me Run」、さらには「Let's Go Steady」、「Apartment No.9」、「Worried Life Blues」といったカヴァーにファンの顔もついつい緩んでしまう。