【HMVインタビュー】 CHIYORI

2011年10月13日 (木)

interview
--- HMV ONLINEには1stアルバムリリース時以来、2度目の登場となります。まずは2ndアルバムが完成した率直な感想をお願いします。

全曲レコーディングが終わった時は、完成した嬉しさもあったけど、それ以上に制作が終わってしまう寂しさ名残惜さみたいなのが込み上げてました。それくらい充実した有意義な制作期間を過ごせました。

 前作リリース時のインタビューはコチラ

--- 前作以上に、アーティストとしての自信、覚悟のようなものが感じられます。前作からの2年という時間はCHIYORIさんにとってどのようなものでしたか?またCHIYORIさんご本人的に前作と今作の違いは何でしょうか?

時間かければいいってもんじゃないし、衝動だけでも作品としては物足りないし、自分的にいいサジ加減ってのがあって、そこを大事にしていきました。
そうしてく内に結局ファーストから2年くらい経っちゃったけど、納得いくまでやれました。
レコーディングも全曲一人でやらせてもらって、自分の実力や精神状態ともゆっくり向き合えたと思います。うまくコントロールできる日もあればどうやっても無理な日もあったり、ただ無心でやってるのにハマッタ瞬間もあったり。声もテンションもほんと日替わりで面白かったです。1stは初めてのことで完成へ漕ぎ付くので必死になってて結構テンパることも多かったけど、2ndはそういう意味では1stよりもっと自分の状態を客観的に眺めつつ楽しんでやれたかなって思います。
それと、7割くらい仕上がった時に3.11があって、震災後は1ヶ月くらい音楽に向かえない期間もありました。どういう歌を作ればいいのだろうかという具体的な悩みより、音楽そのものについても考えたし人生や音楽以外のことを色々考える時期でした。誰もがそうだったと思うけど今までには経験したことの無い種類の辛さを味わいました。
制作佳境だったけど被災地へ瓦礫拾いへ行って、そこでは言葉では現せないほど多くのことを感じました。その経験を制作の糧にするという気にはなれなかったけど、どうしても染みこんでしまった所はあったと思います。
でもその期間に過去を振り返ったりこれからのことを考えたり世の中を見回すこともできて、すごい時代に生きているんだなって気付いて。そうしていく内にやっぱりこのアルバムは完成させたいとじきに強く思えるようになってきました。そこからのラストスパートは勢いづいてました。

--- 『Walking to the Sunrise』というタイトルに込めた思いを教えてください。

なぜかこのタイトルしか考えられなくなってて。優しい耳障りのいい言葉で日常に寄り添うタイトルにしたかったので、朝日に向かって歩く、というのがしっくりきました。
それと、SUNRISE WALKINGという曲でも歌っていますが、私は曲作りはだいたい深夜の明け方に向けてやっていることが多いんです。少し不健康ですが、夜から次第に朝になっていくときにこのタイトルが浮かびます。普段の生活では眠って起きると朝になっていますが、夜中の制作では今日と明日の境目がなくなります。今日と明日で区切られるのではなく日々はただ陽が昇って沈んでを繰り返しているだけみたいです。

--- アルバム制作にあたって、コンセプトのようなものはありましたか?

アルバムタイトルはかなり前から決めていたので、そのタイトル通り日常的であって、尚且つ少し前を向ける曲中心にしたいという漠然としたコンセプトはありました。一人の作業なのでどうしても内省的になりがちなんですがそういったブルースも残しつつ、でもそこから一歩抜け出して私の言葉というよりは誰か別の人の立場での言葉としても歌えるといいな、と思いを巡らせながら作っていました。

--- ポジティブな内容のうたが多いと思いますが、歌詞を書く上で意識はしましたか?

結果的にポジティブなものになるようなものにしたいと考えていました。ひとえに陽気で明るいメッセージで表現するというよりは、日常の小さな喜びや素朴な感情や情景を、音と声の力で少しスケールを広げて表現したいと考えていたと思います。
ほんとはポジティブになれないことばかりで自分自身そんなに前向きな人間ではないのですが、その分そうありたいという思いが強いのかもです。

--- 日常の中で見落としがちな事にフォーカスしてうたっている内容も多いと思います。普段の生活からの“気づき”は多い方ですか?あるいは意識して拾い集めているのでしょうか?

全て日常の生活からです。歌詞の為というより普通に日常の一場面を拾い集めるのが人生の楽しみと思っています。
元々感激屋なとこもありますが、年をとるごとに日常の風景でも些細なことに感動したり興奮したりが増えてきて、その感情が染み込んで自然と歌詞になっていったと思っています。震災以降は特に日々のありがたみみたいなのを感じずにはいられなくなりました。歌の言霊として赤裸々な表現は私はできないのですが、そういったストレートなメッセージはあると思います。
でも逆に昔は感動していたことでも今は気持ちが揺さぶられなくなったりという変化もありますが。
しかし最近では歩いてるおじいさんの後ろ姿を見るだけで人生を物語っているように感じ、なんだか言葉に出来ない想いがこみ上げてきたりということも多いです。

--- CHIYORIさんの作品には独特な美しさに貫かれていると思います。CHIYORIさんが美しいと感じる基準のようなものがあれば教えてください。

人の人生も自然の営みもスケールは大きいけど儚い。それを考えると虚しい哀しいと想うこともありますありますが、でもそこに美しさや強さを感じられます。
作曲に関しては、自分の中で歌詞とメロディーラインがはまる瞬間というのを今作では特に大事にしています。そのツボが自分の個性だと思ってるし、そういうミラクルが起きるまで試行錯誤を繰り返しました。

--- Yamaan、IMG、KOR-ONE、尾島という前作から引き続きのプロデューサーに加え、STUTS、BIG BEN、BooT、そしてDOWN NORTH CAMPから16FLIPという新たなプロデューサーがCHIYORIさんの持つ世界観をさらに広げているように感じますが、その辺りはいかがでしょう?またトラック選びで重要視することがあれば教えてください。

みんな気の知れた仲だし、それぞれすごくストイックにやってる人たちなので安心してやれました。音の意味でも人間的にも信頼関係があるので私もお任せだし、彼らも私にお任せ感があって、とても自由にスムーズに作業出来ました。結構そこの歩み寄りは重要だったように思います。そのお陰で自分のテンションや制作意欲もブレなかったので、最後のミキシングやマスタリングまで思い描いてた形に近づけました。
ミキシング作業は一番近しい仲のYAMAANとやったので、彼がざっと作ってきた状態も既に私の求めてた以上のものが仕上がってたし、声の細かいディレイや音の一音一音まで時間の許す限りとことん向き合えました。
それとメリージョイのオーナーからは寄り添いながらも客観的な意見をいつももらってて何度も力を引き出してもらったし、マスタリングのINNERSCIENCEさんは聴きすぎて麻痺してた部分まで絶妙にフォローしてくれて最後の締めでは更に興奮しました。
ほんと良いメンバーに支えられたと思っています。いやー、今書きながらほんと実感しました。

--- DOWN NORTH CAMPからは、さらに仙人掌がRAPで参加しています。どのような楽曲に仕上がりましたか?また今作のプロデューサーには16FLIP、前作はHAKUCHUMUからYAHIKOを招いておりますがDOWN NORTH CAMPとはどういった存在ですか?

同世代ですごく頑張ってる人たちだし、彼らは誰にも媚びず自分達の音楽を貫いています。ポジティブで卑屈な感じも無いのでそういう姿勢に刺激もらってます。それ以前に音もラップもすごくツボです。 HAKUCHUMU (YAHIKO,OJIMA) とは、7年前私が上京したてであまり友達が居ない頃から仲良くしてて、彼らを通して繋がっていった繋がりも沢山あるし音楽の相性や好みも似てるのですごく縁を感じます。 同じようにTempleATS勢の志人やYAMAANやKOR-ONEもそういう存在です。

--- レコーディング時のエピソードを教えてください。

今回は全曲自宅でのレコーディングに挑戦しました。今年の3月に家を引っ越して生活スペースとは別に音楽作業部屋を設けて集中力が格段に上がりました。制作環境は大事だなぁと改めて思いました。 今妹と二人暮らしなんですが、レコーディングが佳境のころは家事など全て妹に任せちゃって思う存分音楽に没頭させてもらいました。ほんと助けられました。

--- 今後プロデュースしてもらいたい、作品で共演したいアーティストはいますか?

全曲同じトラックメーカーで一対一のEPなども作り上げてみたいし、海外のトラックメーカーともやってみたいです。
それとバンド活動を始めたのでバンドでの音源を今は一番出したいです。

--- CHIYORI with LOSTRAINSというバンドでのライブ活動をスタートさせていますが、これはどのようなきっかけで始まったのでしょうか?またメンバーや編成なども伺えますと幸いです。

ReggaeバンドのTamTamというグループのベースの樹音くんと知り合って、「私もバンド組みたいんだよね」とポロッと言ったのがきっかけで彼がメンバーを集めてくれました。HipHopやReggaeやSoulを通ってて私と合いそうな人たちを集めてくれました。音楽人生が変わったといっても過言ではないくらい最高なメンバーと巡り会えました。私より皆若いんですがそのぶん柔軟で良い意味の現代っ子達で学ぶことが多いです。
初めスタジオに入って音を鳴らすまでは不安だったんですが、音を鳴らした瞬間にとんでもなくやられちゃって。今は日々彼らの音に引っ張られて導かれてるのが分かります。ライブでの表現の幅がうんと広がったと思います。
編成は、ドラム(AFRO)、ベース(樹音)、ギター(SimmerDown)、キーボード(AYUMI)です。SimmerDownは"夕日の鏡"という曲で音色とソロを提供してくれてて、お陰でかなり世界観が広がりました。

--- 最後に今後の予定などを教えてください。

2ndに関してはPVやダイジェスト音源などもアップしていく予定です。私のblogやMaryJoyのホームページでアップしていくのでチェックして欲しいです。随時ライブ情報なども上げてます。
 http://chiyori.exblog.jp/
 http://www.maryjoy.net/
バンド活動は始めたばかりでまだそんなにライブやっていませんが、これから徐々に増やしていきたいと思っているので是非そちらも色んな音好きに見てもらいたいです。音源とバンドバージョンの違いもきっと楽しめると思います。

インタビュー/文:松井剛


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     CHIYORI
    『Walking to the Sunrise』

    2011年10月19日発売

    09年に1stアルバムをリリースし、その独特の歌唱で注目を集めるシンガーCHIYORI。約2年の時を経て、セカンドアルバムが完成!前作よりも明らかに深みを増した全体像。アーティストとして自信・覚悟を感じさせる素晴らしい作品になっている。より日常を意識し、日々見落としがちな喜びに目を向けた、ポジティブさを感じさせる内容も絶妙だ。独特な美しさに貫かれた幻想的な楽曲がCHIYORIの世界観を際立たせているようだ。

    [参加アーティスト]
    Yamaan(TempleATS)、IMG、KOR-ONE(TempleATS)、尾島(HAKUCHUMU)、STUTS、BIG BEN(stillichimiya)、BooT、16FLIP(DOWN NORTH CAMP)、仙人掌(DOWN NORTH CAMP)、Inner Science

    [収録曲]
    01. WALKING ~intro~ (prod by IMG)
    02. EASY BLUES (prod by OJIMA)
    03. SUNRISE WALKING(prod by 16FLIP)
    04. BACK HOME (prod by IMG)
    05. 途中下車 (prod by BooT)
    06. THROUGH MY WINDOW (prod by Big Ben)
    07. PLATFORM DUB ~interlude~ (prod by CHIYORI)
    08. FANTASIA feat. 仙人掌 (prod by 16FLIP)
    09. LOVE & LIGHT (prod by STUTS)
    10. 夕陽の鏡 ~intro~ (prod by YAMAAN)
    11. 夕陽の鏡 (prod by YAMAAN)
    12. 月の裏側で (prod by YAMAAN)
    13. 晩夏 (prod by KOR-ONE)
    14. Bonus Track : Call Me (Inner Science Remix)

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     CHYORI
    『CHYORI』

    1st Album

    ここ日本において、女性シンガーといえばR&Bによる人が多く、このCHIYORIのように周囲ほとんどがHIP HOPクリエイター(しかもコアな)というシンガーはいなかったのではないだろうか?Temple ATS、Shing02、JUSWANNA等、コアなHIP HOPリスナーから指示されるアーティストの作品への客演を経て、CHIYORIがついにソロアルバムをリリースした。ビートはもちろんTemple ATSからYamaan、KOR-1、JUSWANNAからMUTA、Shing02のdub mix等、とんでもない事になっている。民族音楽や民謡までも消化したCHIYORIの独特なスタイル。2009年も半ばにして、強烈なインパクトがMARY JOYより投下される。避けては通れない1枚だ。

    [参加アーティスト]
    Yamaan(TempleATS)、HAKUCHUMU、IMG、KOR-1(TempleATS)、Shing02、おみゆきCHANNEL、Hirotaka Nomura、MUTA(JUSWANNA)、Emi Meyer

    [収録曲]
    01. Call Me (album mix) - produced by Yamaan
    02. 踊村 - produced by Yamaan
    03. Night Dubbing feat. HAKUCHUMU - produced by 尾島
    04. imagine (interlude) - produced by IMG
    05. 星ノ降ル夜 - produced by KOR-1
    06. "悲海 - produced by IMG, dub mixed by Shing02"
    07. しとしと (interlude) - produced by おみゆきCHANNEL
    08. 雨のキミ - produced by Yamaan
    09. After The Rain - Produced by Hirotaka Nomura
    10. 涙声 - produced by Yamaan
    11. "Sunday - produced by MUTA, piano by Emi Meyer"

     『CHIYORI』リリース時のインタビュー
profile

シンガー。幼少期を声楽、独唱、合唱、遊びに捧げつつも、次第に太いベースやドラムの重低音の効いた音楽に惹かれてゆく。様々なバンド経験を経て高校時代にMUTAとDJ琥珀と出会い、彼らの地元・熊本に渡り音楽修行に明け暮れる。次第に彼らの作るトラックの上で作曲に目覚め、ジャンルに捕らわれない自由で独創的なボーカルスタイルを見出し追求していく。同時期に熊本を代表するバンド=POLY RIDDIMの活動にも携わるなど、熊本の音楽シーンで大きな信頼を得てゆく。熊本遠征中のShing02とにデモCDを渡したのをきっかけに彼のアルバム「歪曲」にコーラスとして参加。その後は活動の拠点を東京に移しプロデューサーのYamaaanと出会い意気投合、彼を通じてTemple ATSのメンバーとも関係を深めていく。熊本時代や東京上京後に知り合った同世代の仲間達と納得のいくまで曲を煮詰め、2009年にファーストアルバム「CHIYORI」を発表。その後も多くの客演やライブを精力的にこなし、新しい想像力と音楽感を育んでいる。現在はセカンドアルバム発表を視野に曲を制作中。ライブはこれまでのDJ編成に加えて、2011年からバンドスタイル:CHIYORI &LOSTRAINSでも行うようになった。これまでの代表作はファーストアルバム「CHIYORI」。主な客演にShing02「歪曲」、E.H.H project (志人×桜吹雪)「Bad Boyz Be Ambitious」、JUSWANNA「Black Box」、RUMI「Hell Me NATION」、Meiso「夜の盗賊」、おみゆきCHANNEL「おみゆきさん」、MICHITA「A FULL LIFE」、DOOBEEIS「DOOBEEIS」、Candle「月見草子」などがある。

CHIYORI official blog
http://chiyori.exblog.jp/
MaryJoy official web sitehttp://www.maryjoy.net/


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     DOOBEEIS
    『DOOBEEIS』

    GARBLEPOOR!等、奇妙な名義を使い分け臭気に満ちた黒い地下活動を続けるHIDENKAとGOUKIによるDOOBEEIS。脳内を陶酔させ覚醒させるRAP、煙漂う快楽に満ちた中毒性の高いサウンドがズブズブと深みに誘い込むアブない作品。M13「WATER ROOM」にCHIYORI参加。

     【HMVインタビュー】DOOBEEIS