【連載】Lamp 『遥かなる夏の残響』(第4回) Lamp 『遥かなる夏の残響』へ戻る

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2011年9月2日 (金)













        画像も一新、Lamp・染谷大陽による月イチ連載コラム
        『遥かなる夏の残響』第4回をお送りします。
        今回はMPBの名盤をご紹介。    





前回、60年代ボサノヴァ入門盤について書いたが、今回は、その続きとも言うべく、ボサノヴァ以降のブラジルのポップスについて触れてみたいと思う。
ポップスといっても、欧米や日本のそれとはかなり感触が異なっている。
本人たちがどういう意識で作っているかはわからないが、かなり高度で洗練されたハーモニーが多用されており、僕はブラジル音楽のそういうところに惹かれて、聴き続けてきた。



さて、まず一人目として紹介するのが、バイーア州出身のカエターノ・ヴェローゾ。
彼の音楽の魅力は、カエターノ本人の甘い歌声だろう。スウィートでセクシーだが、けしていやらしくはなく、優しい感じ。

カエターノ入門盤としてお薦めなのが、1975年の『Qualquer Coisa』。
これはカエターノの中でもかなり静かな部類のアルバム。ボサノヴァの延長として聴けるアルバムでもある。
全体的に音数が少なく、演奏はシンプル。結果、歌が前面に出ている。そして、そこがこのアルバムの大きな特徴であり、魅力に直結している。
75年ということで、生音の響きそのままに表現されているので、癖がなく誰でもすんなり入れるはず。

そんなカエターノの『Qualquer Coisa』を聴いて気に入った人にもう1枚聴いて欲しいのが、1982年の『Cores, Nomes』。
これは、僕がカエターノのソロ・アルバムの中で最も好きな1枚。
82年ということで、サウンド・プロダクションに癖があるが、聴くこちら側がそこをクリアすれば、これ以上望めない作品である。まさに人生の1枚となるだろう。
僕は、むしろ、この時代ならではのパキッとしたサウンドがとても切なく感じて聴いている。
「Surpresa」や「Trem Das Cores」「Meu Bem, Meu Mal」あたりは、まさに遥かなる夏の残響といった感じ。僕にとってはね。
どういう事を歌っているかとか、制作者の意図などはわからないけど、いつもそういう風に勝手な解釈で聴いているわけです。
上記曲含め、「Sete Mil Vezes」、「Sonhos」など、静かで美しくゆったりとした曲がずらりと並ぶ。
カエターノは、ブラジルの男性歌手の中ではかなり音程感が良い方で、聴きやすいと思うので、まずは彼の音楽に触れてみてほしい。



次は、アラゴアス出身のシンガーソングライター、ジャヴァン。
この人の商業的成功は欧米のポップス色が強くなる1982年の『Luz』以降だが、成功を収める前のブラジル色が強い4thアルバムまでの方が魅力的である。
ブラジル人然とした歌声と郷愁を感じるメロディー、切なくも不思議なコード進行と気持ち良いリズム・アレンジ。この時代にこんな洗練された音楽を作っていたことに驚かされる。

入門盤としてお薦めなのが、1978年の2nd『Djavan(Cara De Indio)』だ。
これからMPBを聴くという方には、このアルバムに収められたキラーチューンの「Serrado」や「Alagoas」がまず響くに違いない。どちらもジャヴァンの魅力を凝縮したような名曲なので、是非聴いてもらいたい。アルバムとしても、駄曲が一つもなく、かなり聴き応えがあると思う。

個人的には、切なく綺麗な曲の多い3rdアルバム『Alumbramento』がジャヴァンで最も好きな1枚だ。
特に「Dor E Prata」と「Meu Bem Querer」の切なさったらない。
他にも、「Sim Ou Nao」や「Lambada De Serpente」、「Alumbramento」、「Triste Baia Da Guanabara」などのゆったりとした美しさのある曲がたまらない。
なので、まずは2ndを聴いて、その次に3rdという風に聴き進めてもらいたい。
もっとも、右側のリンクにあるように、1枚で両方のアルバムが聴けてしまうお得盤CDが売られているので、それを手に入れれば一気にどちらも聴けてしまうのだが。

ジャヴァンは、1982年の『Luz』以降も、持ち味の土着的な感性とアメリカの商業音楽の洗練されたアレンジの融合により、かなり質の高いポップスを作り続けており、それらも、今日のポップスのアレンジの参考となるような素晴らしい出来映えなので、余裕があれば、そちらも聴いてみてほしい。
ちなみに、ジャヴァンは、上述のカエターノの『Cores, Nomes』収録の「Sina」という自身の曲で、友情出演して歌っている。



最後に紹介するのは、若きヒッピーバンド、ノヴォス・バイアノス。
彼らの音楽を初めて聴いたときは、「こんな音楽があったのか」と衝撃を受けた。
「こいつらを聴かずに過ごしてきてすごく後悔」と思わされたのは、彼らしか居ない。そのくらいの衝撃だった。

ノヴォス・バイアノスは、上で紹介したカエターノと同じバイーア州出身のロック・バンド。彼らはアメリカのヒッピー文化の影響を受けたのか、コミューンを作り、音楽やサッカーをしながら共同生活を送っていたそう。道理で、バンドの一体感が凄まじいわけだ。ハーモニーよりもそのリズムに魅力を感じるグループなのである。
そんな彼らの1972年の2ndアルバム『Acabou Chorare』は、魅力が凝縮された代表作といって間違いないはず。
若さと勢いと自由さが前面かつ全面に出ている。3人の歌い手はみんな良いし、演奏も粗いながらかなり上手い。楽曲はジャンルレスで、どこをとっても素晴らし過ぎる。
全ての音楽を同じ視線で捉えることから生まれる自由なスタイルと一体感を味わって欲しい。
おそらく2nd『Acabou Chorare』を聴いた人は、他のアルバムも気になるだろう。
そんな人には、2ndの勢いそのままに、その翌年リリースされた3rdアルバム『Novos Baianos F.C.』を聴いてみるのが良いと思う。


(文/Lamp 染谷大陽)


Lamp プロフィール

Lamp

染谷大陽、永井祐介、榊原香保里によって結成。永井と榊原の奏でる美しい切ないハーモニーと耳に残る心地よいメロディーが徐々に浸透し話題を呼ぶことに。定評あるメロディーセンスは、ボサノバなどが持つ柔らかいコード感や、ソウルやシティポップスの持つ洗練されたサウンドをベースにし、二人の甘い声と、独特な緊張感が絡み合い、思わず胸を締めつけられるような雰囲気を作り出している。 日本特有の湿度や匂いを感じさせるどこかせつない歌詞と、さまざまな良質な音楽的エッセンスを飲み込みつくられた楽曲は高い評価を得ている。これまでに6枚のアルバム(韓国盤を含む)をリリース。

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    [ 2011年02月09日 発売 / 通常価格 ¥2,500(tax in) ]     

どこを切っても現在進行形のバンドが持つフレッシュネスに溢れている。
真っ先に"成熟"を聴きとってしまいがちな音楽性にもかかわらず、だ。
そんな人達あんまりいない--そしてそこが素敵です。

- 冨田ラボ(冨田恵一) -
前作『ランプ幻想』では文字通り儚く幻想的な美しさと、巷にあふれるサウンドとは一線を画す質感を持った世界を作り上げ、あらたなポップスのフィールドを更新する傑作を作り上げた。2010年夏に発売された限定盤EP『八月の詩情』では、夏をテーマに季節が持つ一瞬の儚さを切り取った詩とその情景を見事に表現したサウンドが一体となり、より濃密なLampの世界を持つバンドの新たな可能性を提示した。そして待望のニュー・アルバムとなる今作『東京ユウトピア通信』は、EP『八月の詩情』と同時に並行して制作され、丁寧に1年半という時間を掛けて作り上げられた作品。そのサウンドは新生Lampとも言うべき、より強固なリズムアレンジが施され、これまでのLampサウンドを更に昇華させた独自の音楽を作り出している。冬という季節の冷たさと暖かさや誰もが一度は通り過ぎたことがある懐かしい感覚、どこかの街のある場所での男女の心象風景などこれまで同様に物事の瞬間を切り取った美しい歌詞を、新しいサウンドの乗せて編み上げた8曲の最高傑作。現在の音楽シーンにの中でも極めて独自な輝きを見せる彼らの奏でる音は、過去や現在を見渡してもLampというバンドしか描けない孤高のオリジナリティーを獲得し、新たな次元に到達している。



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※次回に続く(9/20更新予定)




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