無人島 〜俺の10枚〜 【Lamp編】

2010年7月27日 (火)



無人島

無人島 〜俺の10枚〜 【Lamp 編】

音楽好きには、超定番の企画“無人島 〜俺の10枚〜” !!なんとも潔いタイトルで、内容もそのまんま、無人島に持って行きたいCDを10枚チョイスしてもらい、それぞれの作品に込められた思い入れを思いっきり語ってもらいます!ミュージシャンとしてルーツとなるもの、人生を変えた一枚、甘い記憶がよみがえる一枚、チョイスの理由にはそれぞれのアーティストごとに千差万別です!
今回のお客様はLamp 染谷大陽氏!
無人島史上最大の文字数!まるで一冊の本を読んでいるような充実の内容をお楽しみください!!

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八月の詩情
/ Lamp
2010年08月04日 発売
This is goodmusic!! ぐっと来るメロディに気の聴いた歌詞。新世代の高品質ポップスを奏でるLampの5曲ミニアルバム。ミニアルバムだからって侮ってはいけません!5曲全ての楽曲が最高品質!細部まで細かいアレンジが行き届き、一切の妥協なし!タイトルの『八月の詩情』という言葉どおり、夏をコンセプトに作られた作品。けだるさ、まどろみ、夏特有の一瞬の儚さ。シティポップ〜ボッサ的な洗練されたポップサウンドからサイケデリックなサウンドスケープまで、まるでソフトロックの名盤を聴いているような、風格さえ漂う傑作です!



Lamp 染谷大陽の選ぶ10枚!

01.

Caetano Veloso & Gal Costa
Domingo
「無人島に持って行く10枚」を選ぶには、自分が日頃から愛聴しているアルバムを考えて選んでいけば良いように思えますけど、選ぶ本人の「無人島観」もまた大いに反映されると思うのですね。
僕は、無人島でなくとも生活力が人一倍ないし、無人島でサバイサルする力も人よりないように思えますが、無人島に、自分と音楽(と好きな女性一人)というシチュエーションに昔からすごい憧れがあります。恥ずかしながら。
ですので、ここに選んだ10枚は、人生の残りの時間をずっと、最果ての無人島で、そのような状況の下で過ごさなければならないのかもしれないということを想定して選んだものですので、もし「10枚」を選ぶコンセプトが変われば、選盤も変わってくると思います。
まず、どんな時でも最初に思いつく1枚。
若かりしカエターノとガルの『ドミンゴ』。これを超えるアルバムはないでしょう。これはいつでもどんなコンセプトでも選んでしまうアルバムです。なので、やはり無人島にも持って行きますね。
オノセイゲンさんのDSDマスタリング盤CDの音が好きです。すぐそこにカエターノとガルが居るかのよう。ついでに言うと、ドリ・カイミのアレンジも素晴らしい。
(Lamp 染谷大陽)


02.

The Velvet Underground
The Velvet Underground & Nico
選んだ10枚の中で、これが唯一のアメリカのもの。といいますか、非ブラジルもの。本気で選んだら、ブラジルの音楽ばかりになってしまいました。
ブラジルもの以外でいうと、The Beatlesの『Abbey Road』やCurtis Mayfieldの『Curtis』あたりも迷ったのですけど、ビートルズの場合、そのアルバムを聴ける幸せより他のアルバムを聴けない苛立ちの方が勝ってしまいそうで、1枚も選びませんでした。カーティス・メイフィールドの場合、例えば、「影響を受けた10枚」とかでしたら選んだと思うのですけど、無人島ではこれはあまり聴きたくならないかなと思って、やめました。やはり欧米の大衆音楽は構成されすぎていて、無人島音楽生活ではわりとすぐに飽きそうなんですね。無人島ではポップスは聴きたいと思えなさそうなんです。
もっと混沌としたものを聴きたいなぁと思うわけです。だからというわけではないのですが、一生好きだと思うアルバム『The Velvet Underground & Nico』。これは島が無人でも有人でもはずせません。どんなサイケ名盤にも負けない魅力があります。
(Lamp 染谷大陽)


03.

Toninho Horta
Toninho Horta
こちらはトニーニョ・オルタの1980年の2ndアルバムです。
このアルバムも「無人島に持っていく10枚」を考えたときにすぐに思いつく1枚の一つです。
僕はこのアルバムをほぼ毎日聴いていますが、飽きたことがなく、きっと今後も飽きないだろうと思うんですね。こんなにも複雑で豊かで、そして、美しい音楽は他にないでしょう。
それともう一つ、このアルバムの最後の曲「Manuel O Audaz」を聴きながら人生の最期を迎えたいという願望があるため、これははずせないなぁと思うんです。因みに、「Manuel O Audaz」を聴くときは、その一つ前の曲「Vento」から再生するともっと良いですよ。
無人島の「(今の生活より)より死に近いシチュエーション」という点を考慮すると、実はこの「人生の最期をどの曲とともに迎えるか」ということの比重がかなり大きくなるのです。 このアルバムには他にも「Saguin」や「Era So Comeco Nosso Fim」「Bons Amigo」など人生の最期に相応しい曲があります。
これを聴きながら「ああ、自分の人生、良かったなぁ」と思い、死を迎えたいものです。
(Lamp 染谷大陽)


04.

Lo Borges
A Via Lactea
※廃盤
僕の無人島での生活は、素敵な時間帯も少しはあると思うけど、恐らく、ほとんどの時間が自分のこれまでの人生、つまり、自分の過去との対峙になると思う。なぜならそこは退屈な島だから。夜は恐ろしいほど暗く、長いと思います。そんな場所なので、自分の脳の中にある観念的なことに向き合ったり、具体的な過去やふと襲ってくる感覚的な懐かしさ、色んなことに想いを巡らせる。そんな時間が多くなると思うのです。
そんなときにぴったりなのが、このアルバム。
僕が今回選んだ「無人島に持って行く10枚」の中では一番ポップなアルバムかもしれません。
といいましても、そんなに瞬発力はなく、全く飽きないんです。
ローの魅力は色々ありますが、その一つに、浮遊感のあるコード進行と裏声を含め上下に激しく行き来するメロディーの組み合わせがあると思います。6拍子の曲が多いのも特徴で、リズムに乗りながら聴くのもまた一つの楽しみ方です。
アルバム全体で素晴らしいのですが、特に出だしの4曲が凄まじいです。
このアルバムをかけて、自分の過去と向き合い、4曲目「Clube Da Esquina No. 2」に涙して、毎日過ごしたいです。そんな無人島生活が理想です。
因みに、このアルバム含め、挙げているアルバムはどれも無人島に限らず、どこで聴いても素晴らしいので、念のため。
こんな素晴らしいアルバムが廃盤のままなのは勿体無いと思います。
(Lamp 染谷大陽)


05.

Milton Nascimento / Lo Borges
Clube Da Esquina
無人島で、その魅力を遺憾なく発揮する1枚。
例えばですけど、僕ともう一人無人島に居合わせることになって、そいつも無人島用に10枚持って来たとします。それで初めのうちはお互い持ってきたアルバムを聴いていると思うんですけど、そうこう月日を過ごしている内に、そいつが「お前のあれ、今日ももう一回聴こうよ」となる1枚だと思います。
東京に居ながら、無人島音楽生活に片足突っ込んだような毎日を過ごしている僕が言うのですから、間違いありません。是非、あなたもこれを無人島に持って行ってください。
それと、このアルバムのラストの「Ao Que Vai Nascer」や16曲目「Um Gosto De Sol」は本当に神懸っています。これらもお爺さんになって、「人生良かったなぁ」と思いがなら聴きたい曲なんです。
無人島生活のプレイリストを作ったら再生回数が最多になりそうな、そんなアルバムです。
(Lamp 染谷大陽)


06.

Toninho Horta
Terra Dos Passaros
たった10枚しか持って行くことが出来ないのだから、出来ることなら同じアーティストは避けたいのですが、トニーニョ・オルタの場合、1stと2ndがどちらも甲乙つけ難く、あまりにも好き過ぎて、結局2枚持っていくことにしました。選んだ今となっては、早く無人島に行ってこれを聴きたい気分です。どんな無人島だろう。
このアルバムの1曲目「Ceu De Brasilia」という曲は、「芸術」という言葉を耳で感じることの出来る曲です。まあ何が言いたいわけでもなく、重要なのは、何度聴いても感動してしまう僕が居る、ということ。そんな音楽だということ。本当の音楽っていうものがあるとすれば、この曲のことだと思う。
「Diana」「Dona Olympia」など混沌とした名曲が並ぶ序盤が特に良いです。
こんなに素晴らしいアルバムがほとんど知られていないというのは少し哀しいです。
全国民必聴の大名盤。少し前にCDが再発されましたが、販売されている間に買っといたほうが良いですよ。
(Lamp 染谷大陽)


07.

Dory Caymmi
Dory Caymmi
※廃盤
長く裏方としての活躍していたドリ・カイミのこの1stアルバムは、彼とミナス系ミュージシャンとが合わさることによって、素晴らしい内容になっています。歌声はジャケット写真の肖像そのままでどこまでも渋く、演奏はどこまでもかっこいいです。また、ドリ・カイミ本人によるアレンジ(ストリングスや、フルートを中心とした木管楽器、グロッケン等の楽器で不協和音っぽいかなりテンションがきつい感じ)、それに、パーカッションの使い方もたまりません。ミナス一派の演奏は本当に凄いんです。
このアルバム、何度聴いても覚えられない加減が、無人島に持って行く1枚として、打ってつけだと思います。
なんだろう。この人の音楽を聴くときって、いつもより時間の単位を長く捉えているような感じ、といえばいいのでしょうか。全ての瞬間が最高に良いのに、今、自分がどの曲を聴いているとか、今、何曲目なのかとか、不思議と掴めないんですね。毎日のように聴いているのに他の音楽のように自分の中に明瞭になって来ない。そんな地味さと不明瞭さがこのアルバムの魅力の一つだと思います。
それと、この人の音楽はスケールが大きく、大自然とものすごくマッチするというのも、持っていく理由の一つです。
どの曲も恐ろしいくらい無人島にぴったりですが、特にラストの「Nosso Homem Em Tres Pontas」を無人島で聴いたらすごいでしょうね。
(Lamp 染谷大陽)


08.

Beto Guedes
Contos Da Lua Vaga
※廃盤
ミナス系のアーティストの代表格であるミルトン・ナシメント、ロー・ボルジェス、トニーニョ・オルタなどと並んで注目される一人、ベト・ゲヂス。
ロー・ボルジェスと似た感じの音楽だと言われがちですが、僕の無人島生活には彼の音楽が必要で、ローのアルバムを2枚持っていくからといって、ベトのアルバムを置いていくわけにはいきません。
曲調やサウンドは昔のポップスのようで、それでいて、プログレからの影響もあります。ブラジリアン・ミュージックっぽさはそんなにないです。ロー同様に6拍子の曲が多いです。中性的な歌声に、初めは女性かと思う人もいるようです。歌もメロディーもふらふらしていて、全体的になんだか頼りないボーカルに聴こえますが、実は絶妙な具合でリズムに乗って揺れていることに気付かされると思います。特に6拍子の曲における歌のリズムが素晴らしい。聴いていてかなり気持ちいいです。
そんな感じの変わったメロディーなので、聴いているこちらは、何度聴いても上手に口遊めないんですね。
彼の2ndアルバム『Amor De Indio』とこのアルバム、どちらも魅力的でかなり迷いましたが、こちらの方が「切なさ」が強く、無人島で過去の時間に浸るには持って来いかと思い、こちらにしました。
特にアルバム中盤3曲目から7曲目あたりの胸の締め付けられる感じは特筆に価します。
(Lamp 染谷大陽)


09.

Lo Borges
Nuvem Cigana
※廃盤
ロー・ボルジェスの1979年の2nd『 A Via Lactea』と1982年の3rd『Nuvem Cigana』はどちらも無人島での生活に欠かせないと思い両方選びました。どちらか選べといわれても選べません。すみません。
無人島生活の中でローの音楽に期待することは、若干の煌きと華やかさ、そして切なさです。
僕の「無人島観」がどういうわけかミナス系の音楽と強くリンクしているようで、その所為か、結果的にここに選んだほとんどがブラジルのミナス・ジェライス州の音楽になってしまいました。
我ながらアンバランスだなと思いますが、色々と熟考した結果ですから、納得もしています。
このアルバムでは、特に「Viver Viver」と「A Forca Do Vento」は本当に大好きで、2nd収録の「Clube Da Esquina No. 2」と同じレベルで好きです。
「Viver Viver」を聴きながら、手をぎゅっと握りたい。
「生きろ、生きろ」とそんな変なメロディーとコードで歌われたら、切な過ぎて、どうしていいかわかりません。
無人島を中心に話しを進めているように読めるかも知れませんが、ここに挙げているアルバムはどれも信じられないくらい素晴らしいですよ。
(Lamp 染谷大陽)


10.

Leila Pinheiro
Leila Pinheiro
※廃盤
今回選んだ中で唯一の女性ボーカルとなりました。10枚目は非常に迷いました。
大好きなアルバムですが、もう1枚は、例えばOs Novos Baianosのような、もっと楽しさを感じるアルバムでも良かったかなと思ったり、Sylviaのように雰囲気のあるセクシーなソウル・ミュージックでもいいかなと思ったり、色々考えました(実際、Sylviaのセクシーさは表向きの部分を言っているだけで、音楽的に本当に素晴らしいと思っています)。無人島で二人で踊ったり、二人であれこれ浸ったり時間も欲しいじゃないですか。でも、結局は切ないやつばかりになってしまって。
でも、それが僕の「無人島観」なのだと思います。
このアルバムでは、特に「Cao Sem Dono」や「Vai Ficar No Ar」ジョビンの「Espelho Das Aguas」や「Falndo De Amor」、ドリ・カイミの「A Porta」、トニーニョ・オルタの「Bons Amigos」あたりがとびきり切ないです。
自主制作盤とはとても思えないクオリティの高さ。参加メンバーがとにかく豪華で、ジョビン、ジョアン・ドナート、トニーニョ・オルタ、イヴァン・リンスなどなど。個人的には、ウッドベースのルイス・アルヴェスや鍵盤のジルソン・ペランゼッタ等の参加も嬉しいです。そして、プロデュースとコーラス・アレンジにハイムンド・ビッテンクールと来れば、悪いわけがないです。
僕は「この無人島に持っていく10枚」を選び、それらを聴きながら原稿を書くために、手持ちのCD全てを鞄に全部入れようと、CDを掌の上に重ねた瞬間、恐ろしい気持ちになりました。 なんかそこに自分の人生があるような気がして。
これらがなくなったら、僕は無人島にはとても行けません。
(Lamp 染谷大陽)