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フライド・プライド・インタビュー

Wednesday, January 20th 2016

フライド・プライド (shiho, 横田明紀男) インタビュー

アルバムごとにテーマを自在に変え、常に驚きを与えてくれるスーパージャズユニット、フライド・プライド。通算8枚目となる新作『For Your Smile』は、フライド・プライドからのメッセージがひたひたと感覚的に伝わってくる、人生の果実のようにテイスティーで心豊かな作品です。シンプルなタイトルに込められた想いや、ファン待望の全国ツアーについて、お二人に話を伺いました。

--- エネルギッシュな前作『Time For Love』から一転、新作『For Your Smile』は、フライド・プライド(以下フラプラ)の魅力のB面というか、静かな情熱みたいなものを感じました。
shiho “耳が持ってかれる声”とか“引きの強い表現力”と言われると素直に嬉しいんですけど。なんかね・・・・・・、1枚くらいBGMみたいな作品を作りたかったんです。今までの作品を聴き返すと“1曲入魂”ぶりが我ながらあつくるしい(笑)。たまにはBarで流れていて、聴いてくれる方も心地よくなれるような、インテリアのように日常にとけこむ作品を作りたいよねって。私自身、力を抜いてリラックスしながら歌いました。聴いてくれた方の顔に、自然とSmileが広がれば嬉しいです。
横田 レコーディングって、時に飽和状態になるまで精神的に付加がかかるけど、今回はストレスフリーで臨めたんだよね。ギターは、エレキを使わずフォークとガットのみでなるだけシンプルに。感情に寄り添うような細やかなニュアンスを表現できたと思う。
パーカッションで参加してくれた斉藤恵(MEG)さんと中沢剛君、ピアニストの小島良喜さんなど、あ・うんの呼吸で演れる素晴らしいミュージシャンが参加してくれて独特のグルーヴが生まれたと思う。それから最高に嬉しかったのは、僕の師匠である潮先郁男先生がD「ONLY YOU」で参加して下さったこと。生涯現役の名プレイヤーである潮先先生との共演を、作品に収録できたことは感慨深いですね。
--- ジャケットのアートワークも雰囲気ありますね。
shiho 昔のブルーノートみたいな世界観を出したくて、都内のアンティークカフェで撮影しました。ノスタルジックな雰囲気が気に入ってます。
--- フラプラのものとなった、スパイスの効いたジャズ・スタンダードが聴けるのも本作の大きな魅力ですね。
横田 ジャズ・スタンダードと改めて向き合うと、その人の生き方や哲学みたいな素の部分がいやでもさらけだされる。そこがチャレンジングで、すごくやりがいがあった。人の風評や耳や意見・・・・・・。もちろん意見は聞き入れる体制はあるんだけど、ジャズ・スタンダードに対して、今の僕らが出した自分なりの正解はコレ!と潔く提示して、好きか嫌いはあくまでリスナーの直感にゆだねる感じ。
今回のアプローチは“ザクザク”って感じが実感として近いかな。「YOU’D BE SO NICE TO COME HOME」や「A NIGHT IN TUNISIA」での、ザクっとした自由なアレンジは、誰のものにも似てないフラプラサウンドになってると思う。
--- タイトルのとおり、聴いてるうちに口角が上がってSMILEが広がる楽曲が印象的です。ボサノヴァのM8「ONE NOTE SAMBA」やM10「TEA FOR TWO」は、すっごく可愛らしい!
shiho 基本シャウト系なんで(笑)、「TEA FOR TWO」みたいに、声量を抑えて一定のバランスを保つのは、声を張るより難しかったですね。それとは真逆な歌い方をしたのが「ONE NOTE SAMBA」。ボサノヴァ=ウィスパーボイスという決まりごとに乗ったアプローチって、なんか私らしくないなって。いつものshihoらしく歌ったら、俄然曲の個性が際立ってイイ感じに仕上がりました。
--- そんな shihoさんらしさが爆発したのがM9「SO IN LOVE」?突き抜けた声のボルテージと横田さんの熱狂的なプレイに驚愕しました!
shiho コール・ポーターの名曲「SO IN LOVE」は、超ドMな(笑)歌詞もひっくるめて大好きで、ライブでもよく歌います。この曲は、私の頭の中で「横田さんの切ないコードがインサートして、そっから一気にブレイクして……」という風にアレンジが直感的に降りてきたんです。ラストにかけてヒートアップする横田さんの、弦がひきちぎれそうなプレイを体感してほしいな。
--- 本作の中で“マイルストーン”的な曲をお互いに選ぶとすると・・・・・・?
横田 ラストに入れた「SMILE」が、本作の中で重要なテーマ曲になってると思う。チャップリンが作ったジャズ・スタンダードの名曲だけど、歌詞の世界観は僕らが本作で伝えたかったメーセージそのもの。「にっこり笑って 心の傷が痛いときでも。にっこり笑って たとえ胸が張り裂けそうでも 。それだけできっと明日には、あなたのために輝く太陽の光を浴びるでしょう」という歌詞は、特にこの時代、不景気や暗いニュースで混沌としてるけど、人間にできることって上を見ることだったり、悲しいけどあえて笑うことだから、すごく共感できるんじゃないかな。今回演ってみて、シンプルで美しい曲想にたくさんの発見があった。人の心を動かす強い力を秘めた曲だと思う。
shiho ジャズ・スタンダード中心のアルバムですと言っておきながら、私が一番気に入ってるのはマイケル・ジャクソンの「BAD」(笑)。チェンジコードしたアレンジは、ライブでもお客さんが異常に盛り上がってくれるんです。あと、横田さんオリジナルの「恋愛PUZZLE」も切なくて大好き!この曲は桑山哲也さんがアコーディナーで参加して下さいました。全編スキャットで通し、ラストにワンフレーズ「When We Say Good-Bye」という歌詞を入れたんですけど。「Good-Bye」って、失恋や別れなどの悲しい意味もあるけれど、「明日また会おうね!」とか後ろ向きだけじゃないニュアンスも含まれますよね。横田サウンドは、夕方っぽい切なさの中にもシチューが恋しくなるような(笑)温かみがあるんです。
--- 昨年末のライブでも、「BAD」や「A NIGHT IN TUNISIA」「SMILE」と、本作の収録曲がフロアを沸かせていました。観客とのコール&レスポンスはもちろん、家族連れなど客層の広さもフラプラライブの特徴ですよね。
shiho そう!私はなぜか8歳の女の子からファンレターをもらうことが多くて。「shihoちゃんみたいな歌手になりたいです」「私の一番好きな歌はshihoちゃんの歌うリバーサイドホテルです」とか書いてあって(笑)。ライブでも一番前で踊りながら聴いてくれてたりして。私の中にある何かが、8歳の女子のハートに火をつけてるみたいで(笑)、これはもうすっごく嬉しいです!ちなみに横田さんは、同世代の50代おじさま達にモテまくりです(笑)。
--- 少し話題はそれてしまいますが、shihoさんは昨年2月、(故)ハンク・ジョーンズさんと共演する機会があったとブログに綴っていらっしゃいましたね。
shiho 縁あって・・・・・・。ジャズの歴史の生き証人である92歳のハンク・ジョーンズさんと、昨年2月に共演できたことは、本当に貴重な経験でしたけれど、単純にすごく嬉しかったし、楽しかったです。ハンクさんは、その数ヶ月後旅立たれて・・・・・。ハンクさんが奏でる音は、巧いとか下手とかそんなことを軽く飛び越えた、人の気持ちに届く幸せをたくさん含んだ音でした。彼がそこでピアノを弾いているだけで、一音一音に鳥肌が立つ。「ライブとは、生身の人間が奏でる二度と帰らない音であり空間。その毎回が奇蹟」ということを、ハンクさんに改めて教えて頂きました。また一人、天から見守ってくれる音楽の神様が増えたと想っています。
--- さて、昨年は音楽番組(「僕らの音楽<フジテレビ>」「ミューズの晩餐<テレビ東京>」)への出演や、「NAGOYAアカリJAZZ」や「中洲ジャズナイト」で魅せたパフォーマンスが大きな話題となりました。今年も、いよいよファン待望の国内ツアーがスタートしますね!
横田 怒涛のスケジュールです(笑)。昨年は、shihoはミュージカル「RENT」の長期公演があり、僕はソロ全国ツアーと、それぞれの経験値を高めながらパワーチャージできた1年だった。今年はフラプラの二人で、新しいことにチャレンジする1年。僕たちの音楽を聴いて下さる方々のために全力を尽くすので、期待していて下さい。
shiho ライブは、フラプラのヴォーカリストとして、そして私自身にとっての生きがい。マイクの前に立つと「ココが私の居場所なんだ」って心から思えます。今のフラプラだから表現できる音楽表現を、一人でも多くの方に感じてもらえたら最高の喜びです。 >>fin

Profile

  • フライド・プライド

●Shiho(Vo)
幼い頃よりピアノに慣れ親しみ高校の頃よりジャズピアノ、歌を始める。その後、ピアノの弾き語りをはじめ、横田と出会いJAZZライブハウスを中心にFried prideの活動を開始。JAZZスタンダードからソウル、ロックスのナンバーまでソウルフルに唄いこなす。一度聞いたら忘れられないパワーに溢れるシルキーボイス。体中から発信するJAZZスピリッツ・BLUESセンスは彼女の最大の武器であると同時に“世界”を予感させるに充分な可能性を秘めており、エキゾチックな表情を魅せる独特な雰囲気も、Fried Prideの重要なスパイスの一つになっている。ここ数年ではソロ活動多方面に行っており、ライブやCDのゲスト出演の他に、TV番組ナビゲーター、ミュージカル「RENT」2008、2010に出演するなど多彩にその才能を発揮している。

●横田明紀男(Gt)
15歳の頃から潮先郁男氏に師事、高校卒業と同時にプロとしての活動を始める。21歳の時、アルバム「DAY BY DAY」でレコードデビュー。 1986年には自身の初リーダーアルバム「MY ROMANCE」「MYSTY2」をリリース。その後、数々のギタリスト仕事を経てShihoと出会いFried Prideを結成し活動を開始し現在に至る。 他に類を見ない圧倒的なテクニックとセンスという枠を越えた感性から溢れ出る・・・ONLY ONEの音・・・は常にJAZZ GUITARシーンのトップを走り続けている。ソロ活動も宇崎竜童はじめとする様々なアーティストとのライブ共演やCDの参加。そして、「洋服の青山」などCM曲やドラマ劇伴など作家活動も積極的にこなし他のアーティストへの楽曲提供なども行っている。

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