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【対談】須永辰緒 × 小林径 for Norma Blu HMV ONLINE presents Crossover Jazz Meetingへ戻る

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2010年5月14日 (金)

interview

Norma Blu

Norma Bluの日本人DJセレクト・コンピレーション・シリーズ「Norma Blu Capitolo」としてJazztronikが第1弾を飾ったが、第2弾、第3弾が同時リリースとなった。今回のセレクトを担当したのがレコード番長こと須永辰緒とRoutine Jazzシリーズを手掛ける小林径。
今回は同時リリースを記念してポニーキャニオン本社にて音楽ジャーナリスト若杉実さんを迎えて対談を行いました。それぞれの「Norma Blu Capitolo」については勿論の事、イタリアン・ジャズについてと幅広い内容を語って頂いています。

若杉実:まずはこんな話から。おふたりの選曲が見事なまでに違っていて驚きました。

須永辰緒:確かに先に野崎(Jazztronik)くんがやってるから立場的に不利とも言えるんだけど、とりあえず自分の好きなように選んでみたら、彼の選曲と被ったのはひとつだけ。それだけハズして最終的に調整したんです。(小林)径さんのほうとは1曲も被ってないと思うけど。

小林径:いや、ひとつだけ被った、「Boom Jackie Boom Chick」(クァルテット・トレヴィ)が。でも、それはそれでいいでしょうとディレクターさんも了解してくれたんです

若杉:そこがポイントで、たとえ同じ曲が入っていてもお互いの世界ができ上がってるから、べつのものに聴こえました。構成の流れにもそうしたことは関係してくるのでしょう。ところで、お互いの選曲に関してどんな感想を持たれましたか?

小林:(須永)辰緒さんらしさが出てると思った。“なるほど、男前なジャズだな、ヨーロピアン・ジャズの硬派なところが見えやすくセレクトされてるな”ということですね。

須永:「Speak Law」(ステファニア・ラヴァ)、「Nutville」(ジャズライフ・セクステット)……スタンダードが多めなんだけど、それを今風に聴かせてると感心しましたよ。径さんがやってるルーティン・ジャズ・セクステットにもそういうコンセプトがあるでしょ。

写真:高橋慎一

若杉:Norma Bluをどのように見せようと思い選曲したのでしょうか。

須永:Norma Bluには“ヨーロッパ・ジャズの黄金期の作品を現代というフィルターを通して紹介する”という基本コンセプトがあるでしょ。冒頭に入れた「Lisa」(ソウル・4・イントロデューシング・マッティア・チガリーニ)なんかはボク好みの構成なんだけど、いまのジャズ・ファンからするとこういうのは古かったりする。2・3管で、典型的なソロ回しをするところがね。でも、こうしたフォーマット、くり返し、ループの妙というのかな、それこそボクらDJにとっては新鮮なんです。ガッツがあってファンキーなところもね。だから、こういう演奏をいまの若手に演奏させるパウロのプロデュースぶりには大いにシンパシーを感じてしまう。ただ、ひとつだけ趣味が合わないのが、彼がディスコ好きなところかな。ボクはそっちは分からない。

若杉:レーベル側の話によると、そうしたディスコ/ブギー系の作品もやりたがってるみたいですね。それはそれで面白いかもしれないけど、Norma Bluという冠をそのまま使うわけにはいかない(笑)。

小林:個人的なところだと、パウロさんと初めてお会いしたのは、むかしSHAPE OF JAZZというパーティをやったとき。実はそこにジャンニ・バッソ(2009年逝去)が来る予定だったんだけど、ちょうどそのころから体調が悪化してたらしく、急きょキャンセルになって、それじゃ申し訳ないということで、ピンチヒッターとしてパウロが来てくれたんです。でも、Norma Bluってパウロらしいというか、ほんとにイタリアらしいですよね。じゃあ何をもってイタリアなのかということなんだけど。たとえば、いまボクは原大力さんというドラマーのアルバムをプロデュースしてるんです。池田篤さん(サックス)とか大御所のミュージシャンもそこに参加してて、彼らにラウンジ・リザーズの曲とかやってもらってる。ちょっとムチャな話なんだけど(苦笑)、その曲のなかで管同士がユニゾンでハモる部分があって、そこで毎回ハーモナイズを変えてくる。ようするに彼らにしてみたらハモるのがかっこ悪いということなんでしょう。対してNorma Bluのミュージシャンはそういうところがない。いまでもストレートアヘッドなことも存分に見せている。辰緒さんが指摘したことと似ているけど、和声づけの仕方が伝統的なんだけど、べつに懐古的になってるわけでもないんですよね。

若杉:ある意味Norma Bluって、古きよき時代のジャズ、それこそBlue NoteがいちばんBlue Noteらしかった時代の匂いを感じ取らせるものがあるような気がします。

須永:まさにそうでしょう。パウロはそれをイタリアらしくというか、現代的にキッチュにアレンジしてるんだと思う、意図的にね。



profile

須永辰緒 (Sunaga t experience)

Sunaga t experience 須永辰緒自身によるソロ・ユニット。DJ/プロデューサー。 DJとして東京、大阪でレギュラー・パーティーを主宰し、また日本全国から海外まで飛び回る超多忙な日々を送る。 MIX CDシリーズ『World Standard』は6作を数え、ライフ・ワークとも言うべきジャズ・コンピレーションアルバム『須永辰緒の夜ジャズ』は、レコード会社8社から計16作のリリースを予定。国内はもちろん“SCHEMA”や”IRMA” などの海外レーベルのコンパイルCDも多数監修する。自身のソロ・ユニット"Sunaga t experience"として、アルバム3作を発表。最新作は「A letter from allnighters」(2006年 flower records)。多種コンピレーションの監修やアルバム・プロデュース、リミックス作品は延べ100作以上。"レコード番長"の冠を頂くシーン最重要人物。

sunaga t experience オフィシャルサイトhttp://sunaga-t.com/j/index.html

profile

小林径 (Routine Jazz)

伝説のクラブ<第3倉庫>を始め、日本のクラブ・シーンの黎明期から活動を始め、DJ BAR INKSTICKのプロデューサーとして<routine>他<FREE SOUL>などに中心的に関わってきた、世界的にも名が知られるクラブ・ジャズ系トップDJ。「routine」名義で2枚のアルバムをリリース。クラブ・ミュージックの観点から選んだ新旧のジャズ・コンピ「Routine Jazz」シリーズが大人気。

Routine Jazzオフィシャルサイトhttp://www.routinerecords.co.jp/