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「ベルリン・フィル・ラウンジ」第17号:内田光子大特集第2回!日本の聴衆への特別メッセージ公開 ベルリン・フィル・ラウンジへ戻る

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2010年2月18日 (木)

ドイツ銀行 ベルリン・フィル
ベルリン・フィル&HMV提携サイト
 ベルリン・フィル関係ニュース

ベートーヴェン・ツィクルス最終回は、ハイチ地震救済コンサートとして開催!
内田光子から皆様へのメッセージ(日本語)

 ラトル&内田光子のベートーヴェン&シベリウス・ツィクルスの最後の演奏会(2月20日)は、急遽タヒチ地震救済コンサートとして開催されることになりました。ベルリン・フィルは2007年よりユニセフ親善大使を務めていますが、今回のコンサート(現時点ですでに売り切れ)の収益はすべてユニセフのハイチ子供救済基金に寄付されます。なおラトルと内田は、ギャラなしで演奏することになっています。
 この日のコンサートは、デジタル・コンサートホールでも中継され、皆様からのチケット収益もそのままユニセフに寄付されます。日本をはじめ、世界の皆様にも趣旨をご理解いただき、ぜひ中継をご覧いただけますようお願いいたします(寄付はアーカイヴ再生の場合も同様に当てはまります)。
 当日のソリストである内田光子より日本語によるメッセージが届いておりますので、ご覧いただけますと幸いです(ヴィデオの末尾、[7:04]より。なお映像では、ラトル、内田、ベルリン・フィル・インテンダントのパメラ・ローゼンベルク、エマニュエル・パユ、ユニセフ親善大使でテレビ司会者のザビーネ・クリスティアンセンが、今回の救済コンサートの背景について語っています)。演奏会の詳細については、本号下の「次回のデジタル・コンサートホール演奏会」のコーナーをご覧ください。

【演奏曲目】
リゲティ:サンフランシスコ・ポリフォニー
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調
シベリウス:交響曲第2番

ピアノ:内田光子
指揮:サー・サイモン・ラトル


放送日時:2月21日(日)午前4時(日本時間・生中継)

この演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く!

新世代3D投影システムが、ベルリン・フィルの映像により初公開
 ベルリン映画祭期間中の2月19日、情報技術研究所フラウンホーファー・インスティトゥート(ベルリン)では、新世代3D投影システムのテスト上映が行われます。これは研究所内に特設された3Dシアターで実施されるもので、今回が一般初公開。ベルリン・フィルは、フラウンホーファー・インスティトゥートに協力し、デジタル・コンサートホールの映像を3D映像開発のマテリアルとして提供しています。プレゼンテーションでは、3D化されたコンサート映像が、ジャーナリストや業界関係者に紹介される予定です。

6月定期:小澤征爾の代役はビシュコフ
 病気により7月までの全公演をキャンセルした小澤征爾ですが、ベルリン・フィルの6月定期も辞退することになりました。代役には、近年当団に頻繫に客演しているセミョン・ビシュコフが入り、3回のフィルハーモニーでの公演の他、エッセン、ハンブルクへのツアーも指揮します。プログラムは、ラヴェル、バルトーク、ブラームスで、バルトークのヴィオラ協奏曲のソリストには、タベア・ツィンマーマンが登場する予定です。

ラトル&内田光子のベートーベン・ツィクルス第1〜3弾が、アーカイヴにアップ!
 ラトル&内田光子のベートーヴェン・ツィクルスの第3回目までの映像が、デジタル・コンサートホールのアーカイヴにアップされました。ここで内田は、ピアノ協奏曲第1〜3、5番を演奏。またラトルは、シベリウス・シリーズの一環として、交響曲第1、3、4番を指揮しています。内田の細やかなタッチは、ドイツ銀行ウェブでの無料放映でも紹介されましたが、アーカイヴでは随時ご覧いただけます。
 同時に、ハンガリー現代作曲家の作品群も必聴。とりわけリゲティの《グラン・マカーブル》からのソロは、コロラトゥーラ・ソプラノ(バーバラ・ハニガン)の超絶高音が抱腹絶倒の面白さです。第1回のハイライト映像では、この曲のさわりもお聴きいただけます。

第1回のハイライト映像を観る(無料)
第1回の演奏会をデジタル・コンサートホールで観る
第2回のハイライト映像を観る(無料)
第2回の演奏会をデジタル・コンサートホールで観る
第3回のハイライト映像を観る(無料)
第3回の演奏会をデジタル・コンサートホールで観る

 次回のデジタル・コンサートホール演奏会

ラトル&内田光子によるベートーヴェン&シベリウス・ツィクルス第4弾
(日本時間2月21日早朝4時)


 内田光子のベートーヴェン・ツィクルス最後の演奏会では、ピアノ協奏曲第4番が演奏されます。ピアニストにとって特別な意味を持つとされるこの曲、内田自身もかつて「一番好き」と語っていた作品だけに、期待が掛かります(ちなみに現在では、「どのコンチェルトも同じように素晴らしい」という意見だということです。前号のインタビューをご参照ください)。ラトルに関しても、第3回までの演奏では、小細工のない正統的な表現を聴かせています。ブレンデル&ウィーン・フィルとの録音以降の進境がうかがえるのではないでしょうか。
 当演奏会のもうひとつの目玉は、シベリウスの第2交響曲です。作曲家のロマン派時代を代表するこの作品を、スタイリッシュな音楽性を持ち味とするラトルがどのように仕上げるのかが聴きものです。
 なおこの演奏会は、ハイチ地震救済コンサートとして開催されます(「ベルリン・フィル関係ニュース」参照)。

【演奏曲目】
リゲティ:サンフランシスコ・ポリフォニー
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調
シベリウス:交響曲第2番

ピアノ:内田光子
指揮:サー・サイモン・ラトル


放送日時:2月21日(日)午前4時(日本時間・生中継)

この演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く!

 アーティスト・インタビュー

内田光子(第2部)
「ウィーンなまりのリズムは、私の血のなかにも流れています」

聞き手:ゲアハルト・フォルク(ベルリン・フィル広報部長)

 内田光子のインタビューの第2部は、右映像の中間部分からのものです。ここで彼女は、少女時代を過ごしたウィーンとのつながりについて語っています。ネイティヴと変わらない完璧なドイツ語を操る一方、アクセントはウィーンなまりそのもの。身振り手振り、さらには歌まで交えた受け答えは、内田のチャーミングなキャラクターを生き生きと伝えています。ブーレーズをまねる仕草や、ウェーベルンのエピソードを語るあたりは必見です。
 ここでは、音楽家としてウィーンから受ける「良い影響」について語られていますが、気になるのは「悪い影響」の答えが欠けていること。内田はかつてインタビューで、「ウィーンでは、ウイーン流のモーツァルトしか認められない」と語っていましたが、彼女が70年代以降ロンドンに住むようになった理由は、そのあたりにあるのかもしれません。

フォルク 「内田さんのレパートリーで興味深いのは、ウィーン古典派だけでなく、シェーンベルク、ベルク、ウェーベルンの新ウィーン楽派の作品を多く取り上げられていることです」

内田 「私は新ウィーン楽派のピアノ・ソロ作品は、すべてレパートリーにしています。シェーンベルクはピアノ協奏曲、ピアノ作品集、ベルクは室内協奏曲、ソナタ、ウェーベルンは変奏曲作品27です。それに《月に憑かれたピエロ》、《架空庭園の書》、ベルクの歌曲など。どうして弾くのかというと、それが美しい音楽であり、本当に弾きたいからです。大体にして、これらの音楽はもうすでに“ノイエ・ムジーク(新音楽)”ではありません。シェーンベルクの3つのピアノ曲作品11は、1909年、つまりちょうど100年前に書かれたものです。無調への第一歩であり、この年はたいへん重要な年なわけですが、100年後の今でも難しいと感じる人がほとんどです。でも私は、非常に興味深く、美しいと思います。新ウィーン楽派だけではありません。例えばブーレーズ、クルタークなども本当に優れた作品として、喜んで弾いています。ブーレーズとは共演者としても頻繫にお会いする機会がありますが、彼の音楽は非常に明晰でフランス的、実によくできていて知的ですが、同時に純粋に美学的に美しいのです」

フォルク 「実はブーレーズは、2週間前にベルリン・フィルで《ノタシオン》を指揮したばかりなのです。ご存知の通りこの曲は、ピアノの原曲をオーケストレーションしたものですが、面白かったのは、聴衆が作品を非常に好意的に受け止めたことです。終演後は、何とスタンディング・オヴェージョンが起こりました。あまり拍手が大きかったので、ブーレーズは第2番をアンコールしたくらいです。これはベルリン・フィルの定期演奏会では、たいへん稀なことです」

内田 「《ノタシオン》は私も演奏しますが、もし彼がこの曲を指揮する機会があったら、ぜひその前にピアノ版を弾かせて欲しいとお願いしてあるのです。ギャラは要りませんから、と。ピアノ版は本当に短くて、ブーレーズはそれを大幅に拡大しつつオーケストレーションしています。聴衆にその違いを聴いていただければ、とてもためになるでしょう。ちなみにこのことには裏話があって、私は今年1月、ザルツブルクでブーレーズの《ノタシオン》を演奏しました。その際、偶然ブーレーズ自身も同時期にザルツブルクに客演していたのです。そこで彼の演奏会を聴きに行き、終演後“明日の午前中《ノタシオン》を弾くんですよ”と言うと、彼は上機嫌に“あー、そりゃ行きます行きます!”と(浮き浮き、という感じの動作をする[12:57])。“そんな、ダメですよ。今日はお疲れでしょうから明日はゆっくり起きて……。”“いやー、喜んで行きます行きます!”私はこりゃまずい、という感じで非常に緊張しましたが、終わった後作品について色々とお話しすることができ、たいへん勉強になりました」

フォルク 「内田さんはウィーンに11年間住まれ、ウィーン文化を吸収して育たれました。これはピアノを弾く上でも、大きな影響となって表れましたか」

内田 「もちろんです。それにはポジティヴな面とネガティヴな面の両方があります。ウィーン古典派、ロマン派の大作曲家のなかで、生粋のウィーン人はシューベルトだけです。彼はウィーン市内第19区のヌスドルフに生まれています。ハイドンは(ウィーン人が地方出身者をけなす調子をまねて[13:54])ニーダーエスターライヒ、ハンガリーとの国境近くの片田舎の生まれに過ぎません。モーツァルトはザルツブルク人、彼のお父さんのレオポルトに至っては、オーストリアの外のアウクスブルク出身です。ベートーヴェンはライン地方の生まれですが、彼やブラームスを含めて、音楽家は皆外からウィーンにやって来たのです。ベートーヴェンはウィーンに一番長く住み、モーツァルトは最後の10年を過ごしましたが、そこで最も偉大な作品をものにしています。ウィーンという環境の影響は、絶大だったはずです。
 先ほどポジティヴな面とネガティヴな面と言いましたが、ポジティヴな面は次の点です。シューベルトにしても新ウィーン楽派の作曲家にしても、彼らはひとつの点のおいて共通しています。つまり言葉です。彼らは皆ウィーンなまりを喋っていたのです。ヌスドルフ出身者と第2区(レオポルトシュタット)出身者とでは若干違うでしょうが、それでも皆ウィーンなまりです。この言葉は、他のアクセントとはまったく違うメロディを持っています。例えばワルツ、レントラーといった郷土音楽のリズムにも、ウィーンなまりの“緩んだ”リズムが刻み込まれているのです(歌い始める[15:38])。このリズムは、私の血のなかにも流れています。実はウェーベルンがシューベルトの舞曲を指揮しているのを聴いたことがあるのですが、それがやり過ぎなくらいウィーン風なのです。私にはそれが分かるので、新ウィーン楽派の作曲家たちの楽譜に3拍子が書かれていると、すぐにこのリズムを直感します。ところがほとんどの演奏家が、それを音にしていません。私が新ウィーン楽派を国際的な場で取り上げるように務めている理由も、そこにあるのかもしれません。
 とりわけウェーベルン!これは流れるような音楽です。私の唯一の教師であるハウザー教授が仰っていたのですが、彼は学生時代、ウェーベルンの授業を受けていました。それはベートーヴェンのピアノ・ソナタのクラスだったのですが、ウェーベルンは作曲と指揮だけでは生活できなかったので、そうした授業もやっていたのです。ハウザー先生がウェーベルンの家に行くと、まだ開始まで時間があったので、ウェーベルンはひとりでピアノを弾いていました。曲は彼自身の変奏曲作品27。ウェーベルンはしばらく黙々と弾いていたのですが、ふとハウザー先生の方に振り向いて、“ハウザー君、これ、ショパンのような響きだと思わない?”と言ったのです([18:00])。この話は、本当に忘れられません。ウェーベルンは、自分の音楽がショパンのように響くと感じていたのでした。そして我々は、彼の音楽をそのように演奏しなければなりません。このことは、私自身も常に心がけるようにしています」

フォルク 「ウェーベルンは“自分のメロディーは、100年後には郵便配達人が手紙を配りながら口ずさむようになる”と言ったそうですね」

内田 「残念ながらそこまでは行っていませんが、新ウィーン楽派の作品は、私にとっては歌心に溢れた音楽です。例えばベルクは、シューマンと直接結びついています。これはたいへん興味深いことです。そしてベルクは、現代の作曲家たちに大きな影響を与えています。その際、例えばトーマス・アデスやイェルク・ヴィットマンの音楽を聴くと、背景にシューマンの音楽が聴こえてくるのです。そのように、作曲家たちの影響関係は、糸で結ばれています。私にとっては、作品をそうしたコンテクストのなかで弾いてゆくことが重要です。そのような繋がりを演奏家として示してゆきたいと思っています。でも正直なところ、私は私自身が心から愛している音楽を弾きたいだけなんです。これってエゴイズムでしょう?」

内田光子のシューマン「ピアノ協奏曲」をデジタル・コンサートホールで聴く
内田光子のベートーヴェン・ツィクルスをデジタル・コンサートホールで聴く
ブーレーズの《ノタシオン》をデジタル・コンサートホールで聴く

 ベルリン・フィル演奏会批評(現地新聞抜粋)

ハイティンクのマーラー「第7」は難解すぎる?
(2009年1月15〜17日)

【演奏曲目】
マーラー:交響曲第7番
指揮:ベルナルド・ハイティンク


 ベルリン・フィルの常連として毎年客演するハイティンクですが、昨年1月の演奏会のプログラムは、得意のマーラー「交響曲第7番」でした。ところがベルリン各紙の批評は、かなり割れています。『ベルリナー・モルゲンポスト』のガイテル氏は、要するに作品が分からないという論調。『ベルリナー・ツァイトゥング』のフーアマン氏も、「細部に拘泥していて全体が見えてこない」と批判しています。唯一『ターゲスシュピーゲル』のネーター氏が無条件の賛辞を送っていますが、全体にハイティンクの指揮という以上に、作品自体が不可解であることがネガティヴな評の原因となっているようです。この曲に精通したマーラー・ファンが聴いたら、どんな感想を持つでしょうか。

「マーラーの第7交響曲には、形式をむやみに難しくしているようなところがある。それは曲が進むほどに明らかになるのだが、演奏者は、音を文字通りパズルのように組み立ててゆかなければならない。一方では、情熱的に演奏することももちろん必要である。しかしそれは、ハイティンクの得意とするところではなかった。聴衆は80分間にわたって、いつか素晴らしい瞬間が訪れるだろうと、辛抱強く待ち続ける。しかしこの場合、演奏は含蓄に富んだものではあっても、聴く者の心を捉える力強さには欠けていた(2009年1月17日付け『ベルリナー・モルゲンポスト』紙/クラウス・ガイテル)」

「ハイティンクは中間楽章を解剖するように演奏し、例えば第1の夜の歌では、第2ヴァイオリンの不気味な伴奏のリズムが曲全体にわたっていることを明らかにした。しかしこうした分析は、必ずしも良い効果をもたらしたとは言えない。スケルツォはグロテスクな細部に拘泥し過ぎで、第2の夜の歌の管楽ソロもダイナミックがバラバラな印象を与えた。しかしハイティンクが例の騒々しい終楽章に解決策を見出せなかったことは、彼の責任ではないだろう(2009年1月17日付け『ベルリナー・ツァイトゥング』紙/ヴォルフガング・フーアマン)」

「70年代にマーラー・ルネッサンスを巻き起こした3人の指揮者(バーンスタイン、ショルティ、ハイティンク)のなかで、ハイティンクは最も思慮深い解釈を提示していた。しばしば“哲学的(文学的)”とされるこれらの作品で、形式に特別のこだわりを見せてきたことは、彼に驚くべき円熟をもたらしたと言える。爆発的表現となる個所は、ここでは形式的全体へと完璧に結び付けられているのである。それこそが、作品を音楽的に(哲学的にではない)特別なものとするものだろう。終楽章は《マイスタージンガー》的大音声に陥ることはなく、ハイドンのように明朗かつ軽やかに演奏される。ここでマーラーは、“大人のための古典”として浮かび上がってくるのである(2009年1月17日付け『ターゲスシュピーゲル』紙/マティアス・ネーター)」

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 ドイツ発最新音楽ニュース

本コーナーでは、ドイツおよび欧米の音楽シーンから、最新の情報をお届けします。

ザルツブルク音楽祭の横領スキャンダル、続報
 前号でお伝えしたザルツブルク音楽祭の横領スキャンダルが、新展開を迎えている。これまでの調査によると、疑いは1月末に解雇されたイースター音楽祭の取締役ミヒャエル・デヴィッテが、賃金を契約とは無関係に引き上げ、異常な経費を出費していたことにあるという。またデヴィッテは、イースター音楽祭のスポンサー収入から、35万ユーロ(約4,375万円)にわたる手数料を引き抜き、加えて夫人に使途不明金を送金していた。さらにザルツブルク夏季音楽祭の技術部長クラウス・クレッチュマーにも、コンサルタント料として50万ユーロ(約6,250万円)支払っていたと言われる。夏季音楽祭とイースター音楽祭は互いに独立した団体であるが、夏季音楽祭は舞台機構を持たないイースター音楽祭に技術協力を行っている。その際クレッチュマーは、他団体での活動を禁じられているにも関わらず、イースター音楽祭から以上の報酬を受け取っていた。
 現在のところ事件は調査段階であり、容疑は確定していない。しかし事が明るみになった後、クレッチュマーはザルツブルク市内の橋から身を投げて重症を負い、現在病院で治療を受けている。一方デヴィッテは故国ベルギーに戻り、オーストリア国内には滞在していない。
 ポジティヴなニュースは、2月11日にピーター・オールワードがイースター音楽祭の新取締役に就任したこと。オールワードは過去にEMIクラシックスの社長を務めており、プロデューサーとしてカラヤン自身の信頼も得ていた。彼は発表記者会件の席で、「このような事件は今後私のマネージメント下では起こらない」と明言している(写真:©Oskar Anrather)。

ルイージ、ドレスデン国立歌劇場との契約を即時解約
 ドレスデン国立歌劇場の音楽総監督ファビオ・ルイージが、2012年の契約終了を待つことなく即時退陣する声名を行った。直接の原因は、劇場側がZDFによる中継が決まっている2010年ジルベスター・コンサートの指揮を、クリスティアン・ティーレマンに振り分けたことにあるという。これを受けてザクセン州文化省は、ルイージの契約解除が無効であるとし、契約満了まで職務を全うすることを求めている。全国紙《ヴェルト》によると、ソニーで進行中のCD「シュトラウス管弦楽曲全集」は、キャンセルされる見込みだという。

ティーレマンのドレスデン・シュターツカペレにおける活動内容が発表
 ルイージの解約騒動と期を同じくして、2012年よりドレスデン・シュターツカペレの首席指揮者となるティーレマンの予定が発表された。それによると彼は、ドレスデン国立歌劇場で《エレクトラ》、《魔弾の射手》、《シモン・ボッカネグラ》、《マノン・レスコー》の新プロダクションを指揮するという。さらにバーデン・バーデン音楽祭では、ドレスデン・シュターツカペレと共に《ニーベルングの指輪》(2013年)、《ナクソス島のアリアドネ》(2012年)を演奏。ドレスデンにおける年間最低公演数(オペラとコンサート)は45公演で、かなりの量と言える。ルイージとのトラブルについて本人は、「指揮者は放送局側の希望である。自分が割り込んだわけではない」と明言している。

ショル、デッカと再契約
 過去にデッカと専属契約を結んでいたアンドレアス・ショルが、同社と再契約するという。すでに2つの録音計画が具体化しており、2月にクリスティ指揮レザール・フロリサンとのヘンデル《ジューリオ・チェーザレ》全曲(バルトリ、ジャルスキー、シュトゥッツマンの豪華キャスト)、4月に自らアッカデーミア・ビザンティーナを指揮してのパーセル・アルバムが収録される。発売は今秋とのこと。


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