Quiet Corner クワイエット・コーナー Vol.8

Quiet Corner クワイエット・コーナー

コルトレーンと現代に選ばれし“使者”

『Dear J.C. A Tribute To John Coltrane』というコンピレイションが組まれた。その冒頭に、ホセ・ジェイムズによるカヴァー「Equinox」がある。ジョン・コルトレーンのブロウにオリジナルの歌詞をつけた心震えるようなパフォーマンスは、間違いなく彼自身の奥底から湧き上がったものだ。ヴォーカリストとしての確かな歌唱力と芸術家としての表現意識、そして先達のレジェンドへの敬愛が、極めて高い位置で実を結んだ刹那の記録。これは2007年、アルバム『The Dreamer』でのデビュー前に限定500枚の10インチ・ヴァイナル・オンリーでひっそりとリリースされた貴重な音源だったが、複雑な権利関係の問題がクリアになることで、今回ついにオフィシャルでの初CD化が実現したのだ。「ジョン・コルトレーンを聴いてみたい」という、ジャズの入り口に立つ音楽ファンに向けて最初の一枚として僕が薦めてきたアルバムについて正直に話すなら、それは名門ブルーノートでのハード・バップ傑作『Blue Train』でも、“シーツ・オブ・サウンド”の完成形『Giant Steps』でも、技術・精神共にキャリアの高みに達した金字塔『Love Supreme』でもなく、誰もが親しめるであろうメロディーを印象的なソプラノ・サックスで綴った『My Favorite Things』だった。だが、これからは「Equinox」が吹き込まれた『Coltrane's Sound』を、より真摯な姿勢をもって挙げることとしたい。ホセ・ジェイムズは、そのために音楽の神様が選んだ“使者”のように思えてならないのだ。
文●中村智昭(MUSICAANOSSA/Bar Music)

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