Hayao Kawai

Books 神話と日本人の心 岩波現代文庫

神話と日本人の心 岩波現代文庫

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    brian  |  滋賀県  |  不明  |  19/July/2021

    正にあとがきにもあるように、当「神話と日本人の心」は、自分自身の心のルーツを辿ろうとした時に、日本人としての心のルーツも併せて探ろうとすると考えるが、その大きなヒントを授けてくれる一冊だと思う。  「昔話と日本人の心」も体系だった内容であったが、「神話と日本人の心」は河合隼雄がユングの分析者資格取得のための論文であっただけに、更に体系立てられていると共に日本人の考え方の源を感じることができ、集大成と言える内容である。  改めてキリスト教文化圏における個人主義と自己の確立過程との違いを感じさせられた。それは自分の中にある曖昧さや決断することの良し悪しを周囲を意識する中で逡巡してしまう様な有り様にも気づかさせられるところであった。  自己の確立を求めようとし、しかし必ずしもそのことが絶対的に求められていることでもない社会性が自分の中に揺るぎない葛藤をもたらしていたのではないかとの、曖昧模糊としていたものが、今疑いが少し晴れたような思いをさせてもくれる内容でもある。  日本人の場合、明確な自己の確立を求めようとするほど、そのことを強く求めようとはしない暗黙の家族や社会の雰囲気 があるような気がする。しかも誰一人責任と決断を無理にリードしようとはしないのかもしれない。  そんな日本人には多数決と言う民主主義が似合っているのかもしれない。「赤信号みんなで渡れば怖くない」とはよく言ったものだと思う。だからこそ平和を好み、平穏に取り繕おうとする国だから、日本は良い国であることは間違いない。  日本神話から日本人の考え方、心理を把握しようとすると、均衡・調和・恥の意識が認識されるが、グローバルな世界の中での主体性、決断力、責任感という課題を乗り越えるためには、日本神話の時代からの続いてきた日本文化あるいは日本人としての特性から大きく離れて飛躍できないことを考えると、現実的には持ち味としての均衡・調和に対する取り組みを活かすことが大切になるのではないだろうか。均衡・調和を重んじるということは民主的に物事を進められる能力であるとも言い換えられるし、具体的にはコミュニケーションや論議の中からその均衡・調和を実現して行くことが求められるのではないだろうか。  論議をすればするほど、結論がすぐ出るというものでもないが、その生みの苦しみの中から、主体性は磨かれていくのでは。  河合隼雄氏が述べているように、ヒルコをどう受け入れるのか、どう再帰させるのかの課題への対応ということだと思う。

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