デヴィッド・カヴァーデイル インタビュー！

デヴィッド・カヴァーデイル（以下 DC） :ディープ・パープルは私の原点なんだ。1973年、バンドに加入したとき、まだレコードを作ったこともない若僧だった。リッチー・ブラックモアとジョン・ロードは単なる先輩ではなく、ほとんど雲の上の存在だったんだ。彼らは第1期・第2期で偉大な功績を築き上げ、世界最大のロック・バンドのひとつだった。それにも関わらず、彼らはまったく無名のシンガーを起用する勇気を持っていたんだ。ディープ・パープルに加入したことで、私は『チャーリーとチョコレート工場』の黄金のチケットをもらったんだよ（笑）。それからの約3年間は、あらゆることを学んだ時期だった。『ザ・パープル・アルバム』はジョンやリッチーなどへの感謝を捧げた作品であり、第3期・第4期ディープ・パープルの生んだ素晴らしい音楽のセレブレーションなんだ。

DC :2012年、ジョン・ロードの代理人から連絡があったんだ。ジョンが癌を患って、体調を悪くしているってね。それで回復したら、ぜひ第3期ディープ・パープルを再結成させたいということだった。私は喜んで参加させてもらいたいと言ったけど、残念ながら彼は退院することなく、亡くなってしまった（2012年7月16日）。その出来事をきっかけに、過去にわだかまりのあった知人と連絡を取ることにした。今年の9月で、私は64歳になる。ネガティヴな感情を持ったままこの世を去るのは、後悔を残すからね。数人に連絡したうちの一人がリッチー・ブラックモアだった。彼とはメールと電話で連絡を取り合って、“ブラックモア／カヴァーデイル”プロジェクトをやる可能性があったけど、話し合いを続けるうちに、幾つかズレが生じてきた。それで今回は、私が身を退くことになったんだ。私は 40年以上ぶりにリッチーやジョン、グレン・ヒューズやトミー・ボーリンと一緒に書いた曲を聴き返して、密接に向かい合ったから、とても残念だった。そんなとき、妻が「ホワイトスネイクとしてパープル・アルバムを作ってみたら？」と提案してきたんだ。『ザ・パープル・アルバム』というタイトルは、その瞬間生まれたんだよ。

DC :ディープ・パープルのオリジナルに敬意を払いながら、現代のホワイトスネイクらしく“スネイク・アップ”したんだ。レブ・ビーチとジョエル・ホークストラという2人の素晴らしいギタリストをフィーチュアすることが、このアルバムの重要なポイントだった。さらにトミー・アルドリッジのドラム・プレイがあまりに凄まじかったんで、バンド全員に最高峰のレベルの演奏が求められることになったよ。全員がクリエイティヴなミュージシャンだったし、オリジナルを再現するだけではなく、幾つもの新しいアイディアを加えてくれたんだ。

DC :ジョエルはテクニックとメロディのセンスを兼ね備えたギタリストだ。彼はクリーンなトーンをバンドにもたらしたし、アルバムのアコースティック・ギターはすべて彼が弾いている。「ジプシー」のメロディ・パートは彼が弾いたものだし、「セイル・アウェイ」のアコースティック・ギターもそうだ。ジョエルが加わったことで、ホワイトスネイクの新章が始まることになるだろう。

DC :「紫の炎」や「嵐の使者」、「テイク・ユア・ライフ」「幸運な兵士」「ミストゥリーテッド」…第3期・第4期のアルバムで、私がソングライティングに関わった大半の曲をレコーディングしたよ。「自分が好きなあの曲が入っていなかった…」とファンを嘆かせたくなかったんだ。「紫の炎」は私が加入して最初のアルバム『紫の炎』(1974)の1曲目で、世界の音楽リスナーの多くにとって、初めてデヴィッド・カヴァーデイルのヴォーカルに触れた瞬間だった。だから私にとって、思い入れがある曲なんだ。1973年、モントルーに設置したローリング・ストーンズのモバイル・スタジオで、私はリッチーが「紫の炎」を弾くのを隣で見ていた。それから40年以上を経て、レブとジョエルが同じ「紫の炎」を弾く隣にもいたんだ。こんな素晴らしい経験を人生で何度も味わえるなんて、私は本当に幸運だと思うね。「幸運な兵士」も大好きな曲だ。故郷や君主を持たず、一人さまよう兵士というシチュエーションを、自分の人生になぞらえているのかも知れない。当時、リッチーは歌詞について「13世紀の兵士が戦場から帰還する歌詞にすればよかったのに！」と言っていたけどね。私は当時まだ生まれていなかったから、そういう歌詞を書くのは苦手だよ（苦笑）。

DC :“ザ・パープル・ツアー”は5月下旬、アメリカから始まるんだ。それからヨーロッパやロシア、南米など、世界中をツアーするけど、必ず日本にも行くよ。私が初めて日本を訪れたのは、ディープ・パープルの一員としてだった。それからホワイトスネイクでも何度も日本をツアーして、40年以上、常に暖かく受け入れてもらってきた。いつまでもロックンロール・ショーでターザンみたいに雄叫びを上げるわけにもいかないし、これが最後のビッグなロック・ツアーになってしまうかも知れない。それが出来なくなる前に、日本のステージに立つのは私の義務だと考えている。

DC :ホワイトスネイクの楽曲をアコースティック・アレンジしたアルバムを作りたいと考えているんだ。「スティル・オブ・ザ・ナイト」をボ・ディドリー風のリズムに乗せたり、「イズ・ディス・ラヴ」や「ラヴ・エイント・ノー・ストレンジャー」をアコースティックにしたりね。それから昔、日本でエイドリアン・ヴァンデンバーグとレコーディングした『スターカーズ・イン・トーキョー』(1997)の新装ヴァージョンをリリースする予定だ。それから最近、『スライド・イット・イン』(1984)のオリジナル・24トラック・マスターを発見したんだ。ジョン・ロードのキーボード・ソロが何テイクも入っていたり、ジョン・サイクスをオーディションしたときの音源も入っていた。近い将来、スペシャル・エディションを出すつもりだよ。それから、ついさっきグレン・ヒューズと電話していたんだけど、ディープ・パープルの生き残りメンバー全員がひとつのステージに立って、ビッグなライヴをやるべきだと話したんだ。自分にはどれだけ時間が残されているか判らない。だから、それを有意義に使いたいね！