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『さんかく』 吉田恵輔監督 インタビュー

Friday, June 15th 2012

interview
吉田恵輔


『机のなかみ』『純喫茶磯辺』に続く、最新作『さんかく』が公開中の吉田恵輔監督は、本作で「少女映画に対するやり残した本気を出し尽くした」と語る。ヒロインの桃役にAKB48の小野恵令奈ちゃん(大島優子ちゃんも友情出演!)、その桃に翻弄される百瀬役に高岡蒼甫氏。そして、百瀬の彼女=桃の姉、佳代役に田畑智子氏というキャストで、○でも×でもない、△な関係性をオリジナルストーリーで演出。監督は塚本晋也監督作品などの照明もされていて、今も現役で照明さんでもあるのですが・・・それは知る人ぞ知る経歴。設定やセリフがリアルでユーモラスで「ああ、わかる、わかる!」と共感の声が聞こえてきそうな本作ですが、油断すると危険!後半は予想外の展開に!?INTERVIEW and TEXT and PHOTO: 長澤玲美

少女映画に対するやり残した本気が僕にしか理解出来ない部分かもしれないですけど、「やり尽くしたぞ」って感じがありますね。


--- 最新作『さんかく』をたのしく拝見させて頂きました。『机のなかみ』を撮り終えた後、少女映画に対するやり残した本気を本作で出そうと思われたそうですが、完成されて、その本気は発揮出来ましたでしょうか?

吉田恵輔(以下、吉田) 僕にしか理解出来ない部分かもしれないですけど、自分の中では「やり尽くしたぞ」って感じがありますね。

--- ちなみにそれはどういった部分ですか?

吉田 僕の今までの作品に出てくる女の子はわりと男からの願望で人形的なキャラクターが多くて都合がよかったんですけど、実際の人間として描くと、特に少女の時期の人間性を考えると、もっと、この子は一体何をしたいのかもわからない、実際はもうちょっと不安定要素が多くて、相手のことが本当に一瞬好きだったんだけど好きだったことも勘違いだったのかなみたいな・・・すぐに冷めちゃうくらいの猫みたいな感じ、しかもそれを本人は自覚なくやっちゃうような女の子を描きたいなあと。でも、それって結構、物語としては構成しづらいんですけど、「型にはめずに自由奔放に放置した映画を作りたいな」っていうのがあって。それが今回はやれたから僕の中ではすっきりしてますね。


さんかく


--- そのような思いがありながら、AKB48の小野恵令奈ちゃんが『伝染歌』にちらっと映った時にたまたま「何かこの子は・・・」と感じる部分があったそうですね。

吉田 そうですね。他のAKB48の子達は、しゃべり方なり映り方とかも洗練されてるんですけど、何か一人、生々しい子というか、リアルっぽい子が紛れてるなって思って。お芝居を撮ってる時に素人の方がいい瞬間って結構あったりするんですよね。例えば、どっきりとかを仕掛ける時の仕掛け人って基本ね、素人みたいな奴の方がいいじゃないですか?彼女にはそういう感じが常にあるんですよね。あんまり女優女優してる、洗練されてる奴は嫌だなって思ってた時にちょうどね、彼女の鼻声であったりとか滑舌が悪い感じとか、そういうものも全ていい風に生々しくて、洗練されてないんだけど美しくて。勝手に「桃とキャラクターが近いんじゃないかな?」って気がしていて。何かビビっときたんですよね。それからは結構、彼女を注意して見るようになって、AKB48のライブを観に行ったりもして。歌ってる時はアイドルなんだけど、MCとかをやらせるとやっぱりちょっとヘンな感じなんですよね。それでちょっとずつ、「ああ、やっぱりな」とか「そうなんじゃないか」みたいな感じに思っていって。

--- 舌ったらずで、色白でぽっちゃりした感じも含めて、すごく妹っぽくてかわいかったです。『机のなかみ』では鈴木美生ちゃん、『純喫茶磯辺』では仲里依紗ちゃん、本作は小野恵令奈ちゃんと、監督はああいう女の子が好みというか、翻弄されたい願望がおありなのかなあと・・・(笑)。

吉田 そうですね。これが本気願望?というか(笑)。今までの作品はエンタメ性も考えつつっていうところもあったんですけど、今回はそういう願望がわりと強く出てると思います。

--- AKB48つながりで、友情出演として、大島優子ちゃんも出演していますね。

吉田 どうせならちょっとAKB48つながりで、ダメもとで「大島さん、いいな」って思ってオファーしたんですよね。でも、AKB48の中では友でもあるけどライバルでもあるじゃないですか?で、映画の中ではちょっとした恋愛のライバルではあるから、そういう位置関係も僕の中ではおもしろいなって思ってますね。ワンシーンしか出てないから、ファンが観たらね、「もうちょっと撮れよ」って言われそうですけど(笑)。

--- 『机のなかみ』ではあべこうじさん、『純喫茶磯辺』では宮迫博之さんと、お笑い芸人の方を主役に起用されていますが、吉田さんはお笑いの方に対しての何か特別な思いがおありなんですか?

吉田 いや、それは基本的に僕が書くキャラクター自体が三枚目が多いからですね。失礼な話、三枚目のキャスティングを考えると、どうしてもお笑いの人って一番最初に候補に出る感じでハマりがよかったんですよね。今回ももちろんお笑いの人でも全然ハマると思ったんですけど、ハマりがいい分意外性がないので、今回は二枚目であんまり三枚目っぽいイメージがない人をものすごくかっこ悪く撮ってやろうっていう挑戦もあって。それを高岡蒼甫くんにやってもらったら、すごいかっこ悪くてよかったですね(笑)。


さんかく


--- 高岡さんは二枚目のイメージが強いですもんね。

吉田 『ROOKIES』も『クローズZERO』でも、ケンカが強いみたいなイメージがあるから、中学生にボコボコにされたりしたらおもしろいなあって思って(笑)。

--- 高岡さんもそれをたのしんで演じられていたんですよね?

吉田 高岡くんは二枚目とかそういう硬派な感じはやり尽くしてますけど、彼はストイックでいろんなものをやっていきたいようなタイプの人なんですよね。だから、そういう面で言うと、フラれる役はあんまりないだろうからっていうのもあって。

--- 普段のイメージと全く違ったので、余計におもしろく映りました。百瀬が乗っているカスタムカー、ものすごかったです(笑)。

吉田 ああいう車を持ってる人がプロデューサーの知り合いに結構いたので、その中で「誰かいい人いないかな」ってことで出会ったんですけど、ああいう風にカスタムカーにしてる人って、基本的に世間の人に対して「見て!」っていうタイプの人なわけじゃないですか?それが映画の中で使われるってなったらぶっちゃけね、「タダでも出たい」って人がいっぱいいるようなジャンルだと思うんですよね。だから、わりと協力的でした。でも、あのカスタムカーの後ろの絵は、元はX-JAPANの絵だったんですよ。だけど、さすがにいろんな問題でX-JAPANはヤバイじゃないですか?(笑)。だから、「何の絵がいいだろうな」って思ってた時にちょうど、あの車の持ち主から「高岡くんの自画像を描きたいんですけど・・・」って言われて。その人の仕事がたまたま、自分でああいう絵を描くエアブラシの仕事をしてる人だから自分で描けるんですよね。でも、そのアイデアが出た時、みんな初めは一瞬ぽかーんとしたんですけど(笑)、よくよく考えたらそれってめちゃめちゃおもしろいなって思って。で、「じゃあ、その方向で」って。でも、1日2日ありましたからね、それをOK出すのに(笑)。普通、そんなアイデア出ないですよね?(笑)。あれは持ち主ならではのセンスだと思いますよ。で、しかもそれを描いたことを映画の中で一切触れないっていうのがいいなって思って。「どうしたの、これ?」って言うような会話も一切入れないまま、当たり前のように普通に走ってるのがいいなって。

--- 衝撃的でした(笑)。持ち主の方のアイデアと技術といろいろな協力があってこその、あのカスタムカーだったんですね。『純喫茶磯辺』の喫茶店の内装に通ずるダサさといいますか、センスですよね?

吉田 そうそうそうそう。でも、本人はダサイと思ってやってないので、あんまりダサイとは言えないんですけど(笑)。でも、あれがわかるっていうのはものすごくピンポイントじゃないですか?その趣味の人達はすごい好きだけど、他の人達には理解出来ない価値観というか。何にでもそうなんですけど、そういう価値観を持ってる人が結構好きで。僕もわりとそういうタイプの人間ですし。ずっと前から、カスタムカーが好きな人っていうのを映画で1回やりたいなって思ってたから、今回は百瀬のキャラクターにもちょうどいいなって。

--- 「自然体」「リアル感」というのが監督のこだわりだと思うのですが、あのオリジナルの脚本、会話はすごくリアルで生々しかったです。実体験や周りに起こったような出来事も含まれていたりするんですか?

吉田 ほとんどが僕も含めて、自分の周りの人間に起こったことの積み重ねですね。だから、生み出したアイデアっていうことよりは拾ってきたアイデアが多くて、そういう話がネタ帳にいっぱいあるんですけど、それがほとんどネタになってますね。

--- 普段から気になったことやおもしろかったことはそのネタ帳に?

吉田 いろいろ書いてますよ。何か使えそうだなって思うと大きいことからものすごく些細なことまで。


さんかく


--- わたしの知り合いに栗田くんって男の子がいるんですけど、彼は「女の子に栗ちゃんって言われると何かちょっと恥ずかしいんだよね」って言っていたことがありまして(笑)。そのやり取りもあって笑ってしまいました。

吉田 あれね(笑)。僕の家の向かい側に栗田さんっていう一個下のかわいい女の子が住んでて、僕は一個下の男の子と結構遊んでたから、「栗ちゃん、かわいいよね」って話したりしてて。みんながね、「栗ちゃん、栗ちゃん」って言ってると勝手に何かすごいエロい気分になってきて。その栗ちゃんはすごい清楚な感じの子だったんですけど、それをいつか映画の中で使ってやろうって思ってたので。でも、最初はそういう意識がありつつも言わなかったんですよ。だけど、「もう、あからさまに言っちゃえ」って途中から思い始めて、女の子に引かれるかなって思いながらも「まあ、いっか」って(笑)。

--- 今までの吉田さんの作品にも共通しているのは、”男の下心“みたいなものですよね?

吉田 それはヘンな話、(脚)本は(脚)本でエロいんだけど、別に「エロく撮ろう」って意識は一切ないんですよね。でも、本人があまり自覚がない感じ・・・体つきはすごい大人でものすごく女性っぽいのに無防備にそこらへん走り回ってる感じが撮るとエロいなあって。

--- 田畑智子さん演じる佳代が百瀬に試すように「別れよう」って言うシーンがありますが・・・。

吉田 僕ね、それで別れたことあるんですよ。

--- そうなんですか?(笑)。ちなみにどちら側?

吉田 あれと全く同じシチュエーションで(笑)。些細な下らないことから「別れる」みたいなことを彼女が言って、本当はその気がないのは何となくわかるんですけど、でも「言われたからには引けないよ」っていう気持ちもあって。「それじゃあ、嫌だよって言えばいいわけ?それって上から目線じゃない?こっちは別に別れてもいいけど」って感じで、「ああ、結構だ!」って言ったら、「嫌だ!」って泣き出して。でね、泣き出されると余計にムカついてきて、「じゃあ、言うなよ!」って。それでディズニーランドで別れたことがある(笑)。

--- ディズニーランドで(笑)。

吉田 乗り物2個目で(笑)。

--- ということは・・・帰りは浦安から別々で?(笑)。

吉田 もちろん。乗り物2個目の午前中で帰りましたよ(笑)。



(次の頁へつづきます)



『さんかく』 まだまだ絶賛公開中!


『さんかく オフィシャルサイトはこちらから!

監督・脚本・照明:吉田恵輔

主題歌:「空が白くてさ」 羊毛とおはな

高岡蒼甫小野恵令奈AKB48)、田畑智子

矢沢心大島優子(友情出演:AKB48)、太賀大堀雅秋

© 2010 「さんかく」 製作委員会


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profile

吉田恵輔(よしだけいすけ)

1975年生まれ。埼玉県出身。

東京ビジュアルアーツ卒業。在学中から自主映画を制作し、それと同時に憧れでもあった塚本晋也の作品制作に参加し、『バレット・バレエ』(1999)、『六月の蛇』(2002)、『ヴィタール』(2004)、『HAZE』(2006)、『悪夢探偵』(2007)で照明を担当。他、PVやCMの照明も。2006年に監督した『なま夏』でゆうばり国際ファンタスティック映画祭にてオフシアターコンペティション部門グランプリを受賞。長編映画監督作品としては、本作が07年『机のなかみ』、08年『純喫茶磯辺』に続く3作目。

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