哀切なウクライナ民謡が美しいノイコムのクラリネット五重奏曲
ノイコム、ライヒャ(レイシャ):クラリネット五重奏曲集
シュテフェン・ジーゲンターラー、シュターミッツ四重奏団
ベートーヴェンの友人で、ハイドンの弟子でもあった同世代作曲家、ノイコムとライヒャの書いたクラリネット五重奏曲を収録。
演奏のシュテファン・ジーゲンターラーはスイスのクラリネット奏者で、幅広いレパートリーの持ち主。若い頃から共演していたシュターミッツ四重奏団との相性は素晴らしく、歌いまわしの魅力、合奏精度共に申し分ありません。
▶
Brilliant Classics 検索
作品情報
◆ ノイコム:クラリネット五重奏曲 変ロ長調 Op.8
ノイコム[1778-1858]のクラリネット五重奏曲は、当時ドイツやオーストリアで大流行していた「ロシアの歌」を主題とした変奏曲を第3楽章としています。
「ロシアの歌」は、1808年にバーデンバーデンのパーティーで原曲のウクライナ民謡を耳にしたドイツの詩人、クリストフ・アウグスト・ティートゲ[1752-1841]が曲に感動し、ミンカという名前まで創作して自身の詩を発表。それが歌詞となって大流行したもので、曲を主題にした変奏曲を書くと楽譜がよく売れたことから、レッセル(1814)、リンデマン(1814)、ウェーバー(1815)、ベートーヴェン(1816)、ベートーヴェン(1817〜1818)、フンメル(1818)、ヘンケル(1818)、チェルニー、ゾンネンフェルト等、多くの作曲家がピアノ曲や室内楽の変奏曲を作曲。ノイコムの作品は1815年にライプツィヒのペータースからフランス語で出版。
曲は恋人に別れを告げるコサック兵士の悲しみを表現したもので、第3楽章でしっとりと描かれています。
◆ ライヒャ(レイシャ):クラリネット五重奏曲 変ロ長調 Op.89
理論家としても知られたライヒャ(レイシャ)[1770-1836]のクラリネット五重奏曲は、パリ音楽院作曲科教授時代の1820年に書かれ、1821年にライプツィヒのブライトコップ&ヘルテルからフランス語で出版されています。隙のない書法で構築されながらも工夫もみられ、第1楽章展開部冒頭のシンコペーション(5分33秒〜)など注目されます。
ハプスブルク帝国領ボヘミア王国プラハに生まれたライヒャは、11歳からはドイツの叔父ヨーゼフ・ライヒャ[1752-1795]の養子となって音楽教育を受けるようになり、ボンではベートーヴェンやジムロック(のちに出版で交流)と共に宮廷楽団で演奏。38歳でナポレオン時代のパリに移住してアントワーヌ・レイシャとなり、やがてパリ音楽院教授としてベルリオーズ、オンスロー、リスト、グノー、フランクなども指導。復古王政下のパリで暮らし66歳で没しています。
演奏者情報
◆ シュテファン・ジーゲンターラー (クラリネット)
1957年、スイスのベルン州ビール/ビエンヌに誕生。ベルン音楽院でクルト・ウェーバーに、ジュネーヴ音楽院でトーマス・フリードリに、北西ドイツ音楽アカデミーでハンス・クラウスとヨスト・ミヒャエルスに師事。1985年、マルティニー国際管楽器コンクールで優勝し、1989年から1995年までスイスのビール交響楽団の首席クラリネット奏者を務め、その後、ソロと室内楽の両方で活動。
CDは、Brilliant Classics、Oehms Classics、CPO、Sterling、Sheva Collectionなどから発売。
◆ シュターミッツ四重奏団
1985年に結成。設立当初から成功を収め、翌1986年、チェコ室内楽協会賞を受賞し、その後すぐにスイスで最初のレコーディングをおこなっています。
同年、ザルツブルクで開催されたカルテットコンクールで優勝し、以後、世界各地で活動。
レパートリーは幅広く、忘れ去られていた古典派時代のチェコ作品を復活させる一方で、現代作品にも熱心に取り組んでいます。
最初のメンバーは、第1ヴァイオリン:ボフスラフ・マトウシェク、第2ヴァイオリン:ヨゼフ・ケクラ、ヴィオラ:ヤン・ペルーシュカ、チェロ:ヴラディーミル・レイクスネル。
1995年、ボフスラフ・マトウシェクの退団により、第1ヴァイオリン奏者がヴィテスラフ・チェルノフに交代。
2001年、ヴィテスラフ・チェルノフの退団により、第1ヴァイオリン奏者がインドジフ・パズデラに交代。
2007年、ヴラディーミル・レイクスネルの死により、チェロ奏者がペトル・ヘイニーに交代。
CDは、Brilliant Classics、Supraphon、Bayer、Panton、GMS、Sunrise、KOCH、Capriccio、ASV、Bonton、VMSなどから発売。
トラックリスト (収録作品と演奏者)
アントン・ライヒャ [1770-1836]
◆ クラリネット五重奏曲 変ロ長調 Op.89
1. I. アレグロ 10:37
2. II. アンダンテ 5:37
3. III. メヌエット アレグロ 3:36
4. IV. フィナーレ アレグレット 6:21
ジギスムント・ノイコム [1778-1858]
◆ クラリネット五重奏曲 変ロ長調 Op.8
5. I. アダージョ〜アレグロ 10:20
6. II. メヌエット アレグロ・モルト 4:04
7. III. ポコ・アダージョ 5:18
8. IV. アレグロ・モデラート 6:21
ステファン・ジーゲンターラー(クラリネット)
シュターミッツ四重奏団(チェコ語ではスタミッツ)
インドジフ・パズデラ(第1ヴァイオリン)
ヨゼフ・ケクラ(第2ヴァイオリン)
ヤン・ピエルシュカ(ヴィオラ)
ペトル・ヘイニー(チェロ)
録音:2016年2月13-14日、プラハ、ストゥディオ・マルティーネク
Track list
Reicha & Neukomm
Quintets
Antonín Reicha 1770–1836
Quintet Op.89 in B flat for Clarinet and String Quartet
1. I. Allegro 10:37
2. II. Andante 5:37
3. III. Menuetto. Allegro 3:36
4. IV. Finale. Allegretto 6:21
Sigismund Neukomm 1778–1858
Quintet Op.8 in B flat for Clarinet and String Quartet
5. I. Adagio – Allegro 10:20
6. II. Menuetto. Allegro molto 4:04
7. III. Poco adagio. Thème russe 5:18
8. IV. Allegro moderato 6:21
Stephan Siegenthaler clarinet
Stamic Quartet Prague
Jindřich Pazdera violin
Josef Kekula violin
Jan Pěruška viola
Petr Hejný cello
Recording: 13-14 February 2016, Studio Martínek, Prague, Czech Republic