Trumpet Concertos: W.bauer(Tp)Wetzel(Ob)Wurttemberg Co +j.c.hertel

ヘルテル父子のトランペット協奏曲集

熱心なバロック・トランペット・ファンには、そのマルチェッロばりに泣ける第2楽章などが知られてはいるものの、まだまだ知名度の低いドイツの作曲家ヘルテル父子のアルバムです。
　父のヨハン・クリスティアン・ヘルテル（1697-1754）はヴィオラ・ダ・ガンバの名手として有名でした。彼の任地ノイシュトレリッツは、ベルリンの北方にあるメクレンブルク＝シュトレリッツ選帝侯の居住地で、その宮廷楽団は総勢15名ながらトランペット奏者が4名おり、ヨハン・クリスティアンはトランペットが活躍する華麗な管弦楽作品を数多く作曲したようです。それらはすべて散逸したと考えられていましたが、近年シュヴェーリン州の図書館で40曲ほどの手稿譜が見つかり、そのうちの2曲が録音され日の目を見ることとなりました。選帝侯の誕生日の祝典用と考えられており、イタリア・バロック流の急−緩−急のスタイルをとります。緩徐楽章ではトランペットが休むのもお約束。
　ヨハン・クリスティアンの手稿譜が現代に伝わったのは、息子ヨハン・ヴィルヘルム（1727-1789）が持ち出したためと考えられています。そのヨハン・ヴィルムヘルムは、ヴァイオリンとチェンバロの名手として活躍しましたが、出版ビジネスにいち早く着目し、腕自慢のアマチュア音楽家が演奏して自慢できるような作品を多数出版して名声を高めました。
　ここに収められたトランペット協奏曲もそうした作品で、高音域を多用した華やかなサウンドと、伸びやかに歌うメロディで当時から人気を博したようです。注目は緩徐楽章。一抹の哀愁を帯びた息の長いメロディをトランペットが奏でるトラック5や14はマルチェッロの「ヴェニスの愛」に通じる味わい。
　録音が行われたネッカースウルムは、古城街道に沿った小さな町。MDGこだわりの2+2+2レコーディングは、左右の広がりと奥行きに加えて録音会場の空間の大きさ（高さ）の再現も狙っています。これを味わうにはSACDがお勧めです。（ユニバーサルＩＭＳ）

ヨハン・クリスティアン・ヘルテル：
・3つのトランペット、ティンパニ、２つのヴァイオリン、ヴィオラ、通奏低音のためのシンフォニア（第3番）ニ長調（世界初録音）
・3つのトランペット、ティンパニ、２つのヴァイオリン、ヴィオラ、通奏低音のためのシンフォニア（第1番）ニ長調（世界初録音）

ヨハン・ヴィルヘルム・ヘルテル：
・トランペット、弦楽と通奏低音のための協奏曲第3番ニ長調
・トランペット、弦楽と通奏低音のための協奏曲第2番変ホ長調
・トランペット、弦楽と通奏低音のための協奏曲第1番変ホ長調
・トランペット、オーボエ、弦楽と通奏低音のための協奏曲変ホ長調

　ヴォルフガング・バウアー（トランペットと指揮）
　クリストフ・ヴェツェル（オーボエ）
　ハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団（モダン楽器使用）

　録音：2007年7月2日〜6日　ネッカースウルム（ドイツ）聖ディオニシウス教会