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Simon Rattle / The Berlin Years -Berlin Philharmonic (45CD)

Item Details

Genre
:
Catalogue Number
:
5419768589
Number of Discs
:
45
Label
:
Format
:
CD
Other
:
Import

Product Description


サイモン・ラトルがベルリン・フィルのハイスペックを活かした
旧EMIへの全録音を収録した45CDボックス


サイモン・ラトルとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との関係は、特に同オーケストラの首席指揮者兼芸術監督時代(2002〜2018年)に、伝統と革新の間の化学反応によって強化されました。ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、ヘルベルト・フォン・カラヤン、クラウディオ・アバドの後継者としての彼の使命は、この傑出したオーケストラを21世紀に導くことでした。サイモン・ラトルは1987年にベルリン・フィルを初めて指揮し(マーラーの交響曲第6番)、後に「その日、自分の声を見つけられるような気がした。」と語っています(当時、彼はバーミンガム市交響楽団の首席指揮者兼芸術顧問でした。1980年から1998年までCBSOの指揮を執っていました)。
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団は自治組織であり、ラトルは1999年にオーケストラの奏者によって首席指揮者に選出されました。もうひとりの主な候補者はダニエル・バレンボイムでした。オーケストラのホルン奏者のひとりは、オーケストラが直面した選択をこう振り返りました「時計の針を戻して、生きた博物館の役割を持つ、より伝統的なオーケストラになるか。それとも未来を受け入れるか?」。
 ラトルはやや型破りな選択でした。1999年当時、ラトルは18世紀後半から19世紀にかけてのオーストリア・ドイツの作品よりも、それ以降の時代の多様で折衷的なレパートリーと結びついていました。ベルリン・フィルとの16年間の勤務を通じて、ラトルはオーケストラの伝統的なレパートリーにおける権威を主張するとともに、古楽から新しい委嘱作品までその音楽の視野を広げました。
 2002年、ラトルは、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者兼芸術監督に就任しました。彼は2018年までその職に留まりました。タイムズ紙は「ラトルがもたらしたのは・・・新たな冒険精神だ」と書き、後に「サイモン・ラトルのベルリン時代の爽快で画期的な折衷主義。こうしたすべてを通じて、ラトルはオーケストラの独特の響きを維持した」と絶賛し、ニューヨーク・タイムズ紙は「純粋な壮大さ・・・そして豊かで血のような温かさ」と評しました。
 この45CDボックスに収められた旧EMIへの録音は、1994年から2012年に及んでいます。ラトルのオーケストラに対するビジョンを非常に反映しており、多彩な国々の文化的伝統に基づく交響的作品(後期ロマン派、モダニズムを感じる近代の素晴らしい作品を含む)、合唱作品、オペラ、2006年の映画「パフューム」サントラも含まれています。もちろん伝統的なオーストリア・ドイツのレパートリーには当然の素晴しい価値があります。

※歌詞対訳は付属しません。(輸入元情報)


【収録情報】
Disc1
● リスト:ファウスト交響曲


 ペーター・ザイフェルト(テノール)
 エルンスト・ゼンフ男声室内合唱団
 プラハ・フィルハーモニー男声合唱団

 録音:in concert: 15-17.IV.1994, Philharmonie, Berlin
Disc2
● マーラー:交響曲第10番嬰ヘ短調(クック版)


1999年9月24日と25日、ベルリン・フィルの次期芸術監督(2001年〜)に指名されたラトルが、指名後はじめてbベルリン・フィルを振って大成功を収めた演奏会のライヴ。
 未来の手兵との御披露目にあたって十八番の演目を持ってくるあたり、演奏会と曲目は指名を受ける以前から決まっていたとはいえ、何とも幸先の良いスタートでした。
 このクック版に対するラトルの思い入れは有名で、同版に大幅に手を入れて用いたザンデルリング盤を聴いてその可能性に開眼、自身も手を加え、EMIへの専属初録音にこの曲を選んでその存在を強くアピール、以後も再三この版を取り上げ、トレードマークとも言うべき得意演目に熟成させたことはよく知られるところ。
 ベルリン・フィルとは1996年にも演奏しており、双方まさに満を持しての録音と言え、オケの圧倒的な技量差もあって、旧録音をはるかにしのぐ切れ味鋭い見事な演奏を聴かせてくれます。(HMV)

 録音:in concert: 24-25.IX.1999, Philharmonie, Berlin
Disc3-4
● シェーンベルク:グレの歌

 カリタ・マッティラ(ソプラノ)
 アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(メゾ・ソプラノ)
 トーマス・モーザー(テノール)
 フィリップ・ラングリッジ(テノール)
 トーマス・クヴァストホフ(バス・バリトン)
 ベルリン放送合唱団
 ライプツィヒ中部ドイツ放送合唱団
 エルンスト・ゼンフ合唱団

2001年のベルリン芸術週間の目玉となった公演をライヴ収録したもの。当公演のためにおこなわれたリハーサル日数は、ベルリン・フィルとしては異例に長い、オーケストラ全体の練習が4日、パートごとの練習が4日間の計8日間となっています。演奏は非常にクオリティが高く、ベルリン・フィル初の『グレの歌』にふさわしい強力なサウンドが最大の聴きものとなっています。指揮者のラトルが打楽器出身で近・現代音楽に造詣が深いということもあってか、特殊奏法への配慮や打楽器パートの強調が実に面白く、歌曲的なアプローチとはだいぶ雰囲気の異なるものになっています。

大人数の合唱も凄い迫力で、第3部での幽霊たちの合唱にはまさに鬼気迫るものがありました。5管編成オーバーの巨大オーケストラと十分に渡り合う彼らのパワーは圧倒的ですが、それもラトルの適切な誘導があればこそでしょう。名高い男声12部合唱での仕上がりも完璧です。静かな部分でのアプローチも優れており、各パートが十分に見通せる透明度の高さは、この作品におけるシェーンベルクのスタンスが、完成までに10年を要したという年月の経過ゆえに微妙に変化していたことさえ窺わせる精妙なもので、さすがはラトルと思わせます。
独唱者陣では、山鳩役のアンネ・ゾフィー・フォン・オッターが圧巻。『グレの歌』の内面的なクライマックスでもある「山鳩の歌」における重みと深みのある歌は過去最高といいたくなる感動的な内容です。その他では、クヴァストホフの農夫&語り、ラングリッジの道化が見事な仕上がりです。

【グレの歌について】
『グレの歌』は、実在のデンマーク国王ヴァルデマール(在位1157〜1182年)をめぐる伝説にもとづいています。国王とその愛人トーヴェとの、悲しくもグロテスクな物語のあらましは以下の通りです。
この手の寓話に良くあるパターンですが、国王ヴァルデマールには嫉妬深くわがままな妃ベヴィヒがおりました(出演はナシ)。嫌気がさしたヴァルデマールは、トーヴェという美しく気立ての良い女性を愛人とし、グレの地にある狩猟用の城郭で逢瀬を重ねます。
以上が第1部のオーケストラ間奏までに描かれる部分で、間奏後に現れる『グレの歌』随一の人気曲、「山鳩の歌」では、山鳩がトーヴェの死と悲しむ王について伝え、トーヴェの死は、不倫を知った妃による毒殺であると歌います。(以上、第1部)。
短い第2部では、ヴァルデマール王が激昂して神を呪い、それが原因で天罰によって落命する様子が描かれます。
第3部は、昇天することが許されないヴァルデマール王の魂が、家来である大勢の兵士の幽霊を引き連れ、トーヴェの魂を求めて夜な夜なグレの地を徘徊する場面で始まります。
時は流れ、夏の嵐に替わって実りの秋が到来。収穫の季節にふさわしく農夫も登場し、やがて道化師と語り手も登場して、幽霊たちの壮絶な男声合唱を交えながらも、二人の魂の救済に向けて盛り上がりをみせます。
最後は混成8部合唱による壮大な太陽の賛歌となっており、女声合唱の参加による色彩の変化が、魂の救済の可能性について暗示しているかのようです。

この作品は最初、シェーンベルクがまだ若い頃に一編の歌曲として書き上げられ、その後巨大化の道を歩んだという後期ロマン派風の作品。ワグネリズムの影響、特に『神々のたそがれ』や『さまよえるオランダ人』を髣髴とさせる場面があるなど、シェーンベルクらしからぬ親しみやすさと、通常のレパートリーではおそらく最大音量と言われるその迫力ある音調、および変化に富む曲調から、これまでにも注目すべきレコーディングがいくつもおこなわれてきました。
オーケストレーションするにあたり、シェーンベルクが48段の五線紙を特注したというエピソードはよく知られるところで、その編成は、ティンパニ6、バスドラム、スネアドラム、ガラガラ、タム・タム、それにハープ4ほかを含む150人近い巨大なオーケストラに、5人の独唱者、3群の男声四部合唱、混声八部合唱を加えた300人近い声楽陣を要するという大規模なものです。(HMV)

 録音:in concert: IX.2001, Philharmonie, Berlin
Disc5
● マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調


 録音:in concert: 7-10.IX.2002, Philharmonie, Berlin




Disc6-7
● ベートーヴェン:歌劇『フィデリオ』全曲


 アンゲラ・デノケ(レオノーレ:ソプラノ)
 ジョン・ヴィラーズ(フロレスタン:テノール)
 アラン・ヘルド(ドン・ピッツァロ:バリトン)
 ラースロ・ポルガール(ロッコ:バス)
 ユリアーネ・バンゼ(マルツェリーネ:ソプラノ)
 ライナー・トロスト(ヤキーノ:テノール)
 トーマス・クヴァストホフ(ドン・フェルナンド:バス・バリトン)、他
 アルノルト・シェーンベルク合唱団

 録音:in concert: 25-28.IV.2003, Philharmonie, Berlin
Disc8
● メシアン:彼方の閃光

 1.栄光に包まれたキリストの出現
 2.射手座
 3.コトドリと婚約の都
 4.印を押された選民
 5.愛のうちに
 6.7つのトランペットを持つ7人の天使
 7.神は人々の目から涙を拭ってくださる
 8.星たちと栄光
 9.いのちの木の数羽の鳥
 10.見えざる世界への道
 11.キリスト、天国の光

完成された大規模な作品としてはメシアン最後のものとなる『彼方の閃光』は、1987年にメータ&ニューヨーク・フィルから創立150周年を記念して委嘱されたオーケストラのための音楽で、完成は1991年。初演は作曲者の死後、1992年11月5日に委嘱者によっておこなわれ、以後、世界各地で演奏される注目作品となります。

ディスクは、世界初録音となったアントニ・ヴィット盤(1993)をはじめ、チョン・ミョンフン盤(1993)、カンブルラン盤(2002)、ポルセリーン盤(1994)などがこれまでにリリースされており、現代作品としてはかなりの人気作といえる状態にあることは確かなようです。

打楽器奏者出身のラトルは現代作品に造詣が深く、バーミンガム市響時代も含め、ベルリン・フィルの指揮台でもたびたびこの作品を指揮してきました。ラトルは2004年のザルツブルク音楽祭でもこの『彼方の閃光』をプログラム、まさしく最注目コンビの現在の緊密な関係ぶりを確認することができる1枚といえるでしょう。

フルートとクラリネットそれぞれ約10人と多彩な打楽器群のサブ・オーケストラを必要とし、増強されたブラスを含む総勢128人の奏者による全11楽章からなるこの大作は、メシアン作品に貫流する宗教的性格と随所に織り込まれる「鳥の声」で際立っており、記譜された鳥の声は全部で48種に及びます。常に沈黙と表裏にあるメシアン独特の世界を、ラトルはベルリン・フィルの高精度な演奏能力を駆使して最高度に構築しています。
膨大な管楽器・打楽器の明滅と交替する弦楽による静謐なアダージョ、木管楽器の乱舞によって絶妙に直喩される鳥たちの来訪。第8楽章「星々の栄光」ではその末に圧倒的な頂点となる荘厳なコラールの全奏が到来します。終楽章は玄妙な弦に彫琢された彼岸の世界を顕現する恍惚的な大団円です。

そうした作品だけに、これまでチョン・ミョンフンがバスティーユ管弦楽団を指揮したDG盤が代表的な演奏としてよく取り上げられてきましたが、ラトル指揮するベルリン・フィルの演奏では、色彩感といい力感といいシャープさといい、文句なしに「パーフェクトな」演奏が実現されていて心地よい限り。上には上があるものです。

また、オーディオ・マニアにも受けそうなこの『彼方の閃光』は、凄まじいトゥッティと繊細なソロのコントラストが強烈な音楽でもあり、その意味でもベルリン・フィルのスター・プレイヤーたちが織り成す極上のサウンドには、カンブルラン盤(遅!)やポルセリーン盤、ヴィット盤ではまず味わうことのできない魅力が備わっているとも言えます。ある意味で、オーケストラ音楽の極点に達した作品を、現代最高のオーケストラが演奏した注目盤です。(HMV)

 録音:17-19.VI.2004, Philharmonie, Berlin
Disc9
● オルフ:カルミナ・ブラーナ


 サリー・マシューズ(ソプラノ)
 ローレンス・ブラウンリー(テノール)
 クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)
 ベルリン放送合唱団
 ベルリン大聖堂国立合唱団少年合唱団員

 録音:in concert: 29-31.XII.2004, Philharmonie, Berlin
Disc10-11
ドヴォルザーク:
● 交響詩『金の紡ぎ車』 Op.109
● 交響詩『野鳩』 Op.110
● 交響詩『真昼の魔女』 Op.108
● 交響詩『水の精』 Op.107


 録音:4-7.III. & 23?25.VI.2004, Philharmonie, Berlin
Disc12
ドビュッシー:
1. 牧神の午後への前奏曲
2. 交響詩『海』
3. おもちゃ箱(キャプレ編)
4. 3つの前奏曲(マシューズ編)


 エマニュエル・パユ(フルート:1)
 マジェラ・シュトックハウゼン・リーゲルバウアー(ピアノ:3)

 録音:in concert: 17-19.IX.2004, Philharmonie, Berlin
Disc13
ブリテン:
1. イリュミナシオン(彩画) Op.18
2. テノール・ホルンと弦楽のためのセレナード Op.31
3. ノクターン(夜想曲) Op.60


 イアン・ボストリッジ(テノール)
 ラデク・バボラーク(ホルン:2)

 録音:4,9,10.IV.2005, Jesus-Christus-Kirche, Dahlem, Berlin
Disc14
R.シュトラウス:
1. 交響詩『英雄の生涯』 Op.40
2. 組曲『町人貴族』 Op.60


 録音:23-25.IX.2005 (1), IX.2005 (2), in concert: Philharmonie, Berlin


Disc15
● シューベルト:交響曲第9番ハ長調 D.944『グレート』


 録音:8-11.VI.2005, Philharmonie, Berlin




Disc16
● ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 Op.99
● プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 Op.19


 サラ・チャン(ヴァイオリン)

 録音:15-17.VI & 16-20.IX.2005 Philharmonie, Berlin
Disc17
● ショスタコーヴィチ:交響曲第14番ト短調 Op.135『死者の歌』


 カリタ・マッティラ(ソプラノ)
 トーマス・クヴァストホフ(バス・バリトン)

 録音:in concert: 16-19.IX.2005, Philharmonie, Berlin

Disc18
● ショスタコーヴィチ:交響曲第1番ヘ短調 Op.10


 録音:in concert: 15-17.VI.2005, Philharmonie, Berlin
Disc19
● ホルスト:組曲『惑星』 Op.32
● コリン・マシューズ:『冥王星』


コリン・マシューズ[1946-]がケント・ナガノに委嘱されてホルストの『惑星』と共に演奏されるよう作曲した『冥王星』は、2000年のナガノによる初演後、同年のプロムスで大評判となり、2001年には日本初演も行われました。
マシューズの『冥王星』には、すでにマーク・エルダー指揮ハレ管や、デイヴィッド・ロイド=ジョーンズ指揮スコティッシュ・ナショナル管、オーウェン・アーウェル・ヒューズ指揮ロイヤル・フィル、ポール・フリーマン指揮チェコ・ナショナル交響楽団の演奏が登場し、さらにDVD作品まで制作されています。
占星術に関心を持っていたホルストが、太陽系の惑星についての伝承をもとに巧みに性格描写をおこない、色彩的なオーケストレーションを施した『惑星』は、演奏効果抜群のオーケストラ・ピースでもあり、英国音楽史上最大のヒット作とも言われている傑作中の傑作です。
ただし、作曲当時は冥王星が発見されておらず、占星術的伝承も存在しなかったため、組曲『惑星』が、水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星という構成となっているのは致し方のないことでした(注:2006年8月24日に冥王星は国際天文学連合の総会で惑星から除外されたため、惑星の定義はまた元の構成に戻ることになりました)。
20世紀最後の年に近づいてから、ホルストの息女イモージェンと共にホルストの忘れられた作品の整理をしたことがあるマシューズが、ケント・ナガノの依頼でホルストの『惑星』につけ加えるため、『冥王星』を作曲したことは、当初無謀な挑戦と受け取られましたが、ナガノの後、サカリ・オラモ、オスモ・ヴァンスカ、大友直人といった指揮者が取り上げ、クラシックの「続編もの」としては最も成功した作品の一つとなりました。マシューズが自信を持って故イモージェンに捧げたのも納得できる出来栄えです。(HMV)

 録音:in concert: 15-18.III.2006, Philharmonie, Berlin

Disc20
1. カイヤ・サーリアホ:『アステロイド4179:トータティス』
2. マティアス・ピンチャー:『オシリスに向かって』
3. マーク=アントニー・タネジ:『ケレス』
4. ブレット・ディーン:『コマロフの失墜』
5. トマス・アデス:『テヴォート』


【ラトルが委嘱した宇宙関連4作品(1-4)について】
ラトルが現代の作曲家たちに委嘱した宇宙関連4作品。実際のコンサートでは、前半に委嘱作品4曲の演奏がおこなわれ、後半に『惑星』と『冥王星』が置かれ、ラトルは演奏開始前に、委嘱作品4曲について「4楽章からなる交響曲として聴いて欲しい」とアナウンスをしたということです。
1曲目の『アステロイド4179:トータティス』は、フィンランドの女流作曲家、カイヤ・サーリアホによる作品。地球と軌道が似ているため、衝突の可能性が話題となるダンベル型の小惑星「トータティス」をイメージして描いた作品。
2曲目の『オシリスに向かって』は、ドイツの作曲家、マティアス・ピンチャーによる作品で、太陽系外の惑星でありながら大気の存在が確認されている『オシリス』について描いています。
3曲目の『ケレス(セレス)』は、イギリスの作曲家でラトルの盟友でもあるマーク=アントニー・タネジの作品。太陽系の小惑星のうち最も大きなものの一つとして知られており、ごく僅かながら大気と霜が存在すると考えられています。
4曲目の『コマロフの失墜』は、もとベルリン・フィルのヴィオリストで現在は作曲家として活動するオーストラリア人、ブレット・ディーンの作品。過剰な米ソ宇宙開発競争のさなか、ロシア革命50周年に無理やり間に合わせるため、欠陥だらけの宇宙船ソユーズ1号に乗せられた結果、大気圏再突入後に着陸に失敗して亡くなった宇宙飛行士ヴラディーミル・コマロフについて描いたものです(HMV)

 録音:15-18.III.2006 (1-4), 1,3.XI.2007 (5), in concert: Philharmonie, Berlin
Disc21
● 映画『パフューム』〜ある人殺しの物語 オリジナル・サウンドトラック


 録音:19-24.IV.2006, Teldex Studios, Berlin




Disc22
● ブラームス:ドイツ・レクィエム Op.45


 ドロテア・レシュマン(ソプラノ)
 トーマス・クヴァストホフ(バス・バリトン)
 ベルリン放送合唱団

 録音:in concert: 26-29.X.2006, Philharmonie, Berlin
Disc23
● ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調 WAB104『ロマンティック』(ノーヴァク版)


ラトル&ベルリン・フィルのブルックナー第4番は、ベルリンのフィルハーモニーでの録音で、バランスの良い低音と適度な残響により、現代最高のヴィルトゥオーゾ・オーケストラのみごとなサウンドを楽しむことができます。
 まず気が付くのは、各パートの技術水準の高さと連携の巧みさ、全奏における見通しの良さでしょう。
 おそらく相当に厳しかったと思われる練習の成果を反映してか、完璧に維持されるフレーズの形と、克明をきわめたリズム処理が、作品本来の情報量の多さをきちんと示してくれていて見事というほかない仕上がりです。
 もちろんラトルのことですから、ここでも大見得を切ったり、無用に情緒的な表現に傾斜したりすることはありませんが、古典的スタイルとロマン的スタイルが同居した作品本来の複雑で微妙な味わいへのこだわりにはかなりのものがあります。
 第1楽章展開部のクライマックス[09:41-]では動的でありながらも気高い美しさを感じさせる素晴らしい仕上がりを見せていますし、終楽章のコーダ[20:45]でもすべてがピシリと決まった音響ならではのただならぬ高揚感が実に魅力的です。(HMV)

 録音:in concert: 19-21.X.2006, Philharmonie, Berlin
Disc24-25
ハイドン:
1. 交響曲第88番ト長調 Hob.I-88『V字』
2. 交響曲第89番ヘ長調 Hob.I-89
3. 交響曲第90番ハ長調 Hob.I-90(第4楽章の別ヴァージョン付)
4. 交響曲第91番変ホ長調 Hob.I-91
5. 交響曲第92番ト長調 Hob.I-92『オックスフォード』
6. 協奏交響曲 変ロ長調 Hob.I-105


 ジョナサン・ケリー(オーボエ:6)
 安永 徹(ヴァイオリン:6)
 シュテファン・シュヴァイゲルト(ファゴット:6)
 ゲオルク・ファウスト(チェロ:6)

有名な『パリ交響曲(82-87)』と『ロンドン交響曲(93-104)』に挟まれた5つの交響曲、第88〜92番は、88と89番が『トスト交響曲』、90〜92番が『ドーニ交響曲』と呼ばれることもある作品群。今回はこれら5曲に加えて、協奏交響曲変ロ長調も収録しています。
ラトルはかつて、バーミンガム市響と、第22・86・102番と、第60・70・90番という組み合わせのアルバムを制作していたので、第90番については今回が2度目の録音、しかも第4楽章の別ヴァージョンまで収録するというこだわりぶりです。
ベルリン・フィルを指揮した今回のアルバムでは、各奏者の力量が卓越したものであることも手伝って、常に余裕のある心配りを見せた懐の深さを示しているのが印象的。協奏交響曲のソリスト達も、個人技に没頭することなくオケの中でのバランスに配慮し、「協奏交響曲」にふさわしい総合的な魅力をかもし出すことに成功しています。以下に、ベルリンの有力紙「ターゲスシュピーゲル」の評を掲載しておきます。(HMV)

「ヨゼフ・ハイドンとサイモン・ラトルの作る音楽は、光輝く砦だ。そこには機智という防御壁、魅力という跳ね橋、純粋なレトリックという伏兵が備わり、人生が俗悪に流れるのを押しとどめている。それは、このべルリン・フィルの首席指揮者の座するはるか高みにそびえるものかもしれないが、ラトルの指揮によるハイドンのコンサートは、その音楽の偉大さ、卓越性、そして真の冒険心をもう一度教えてくれるものだった」(ウルリッヒ・アムリング、ターゲスシュピーゲル紙、2007年2月10日)

 録音:in concert: 8-10 & 14-17.II.2007, Philharmonie, Berlin
Disc26
ニールセン:
1. フルート協奏曲 FS.119
2. クラリネット協奏曲 Op.57


 エマニュエル・パユ(フルート:1)
 ザビーネ・マイヤー(クラリネット:2)

 録音:1-3.VI.2006, Philharmonie, Berlin (1); 18-20.V.2006, Jesus-Christus-Kirche, Berlin (2)

3. ニールセン:管楽五重奏曲 Op.43

 エマニュエル・パユ(フルート)
 ザビーネ・マイヤー(クラリネット)
 ジョナサン・ケリー(オーボエ)
 ラデク・バボラーク(ホルン)
 シュテファン・シュヴァイゲルト(ファゴット)

 録音:8.XII.2006, Teldex Studios, Berlin
Disc27
● ムソルグスキー/ラヴェル編:組曲『展覧会の絵』
● ボロディン:交響曲第2番ロ短調
● ボロディン:だったん人の踊り


 録音:in concert: 29-31.XII.2007, Philharmonie, Berlin


Disc28-29
1. マーラー:交響曲第9番ニ長調
2. バーバー:弦楽のためのアダージョ


【マーラー:交響曲第9番について】
2007年10月、ベルリンのフィルハーモニーにおけるライヴ録音。前回の録音は、1993年12月にウィーン・フィルにデビューしたときのコンサートを収めたものだったので、14年ぶりの録音ということになります。
シーズンのオープニングを飾ったこの演奏は「マーラー交響曲第9番の公演は、ベルリン・フィルの指揮者として、サイモン・ラトルの最も素晴らしい業績のうちの1つでした。」とベルリンのZeitung紙で絶賛されるなど、いよいよ佳境に入ったラトルとベルリン・フィルの底力を示すものとして高く評価されていました。
ベルリン・フィルのマーラー9番といえば、往年のバルビローリ盤(1964/セッション)や、バーンスタイン盤(1979/ライヴ)、カラヤン盤(1979&80/セッション)、カラヤン盤(1982/ライヴ)、アバド盤(1999/ライヴ)という、それぞれに個性的な話題盤がすでに存在しますが、ラトルによる今回の演奏もそれらに十分に伍する強い個性を持った演奏となっています。
楽器配置は前回のウィーン・フィル盤同様、第2ヴァイオリンが右側に置かれたものですが、音が良いこともあってか情報量がさらに多く、録音が難しいとされるフィルハーモニーでのライヴ収録であることを考えると、このクオリティには驚くほかありません。
特に第4楽章アダージョにおける空間再現、立体的で奥深い響きの魅力には素晴らしいものがあり、コントラバスが入ったときとそうでないときのコントラストや、艶やかなコンサートマスターのソロから強大なトゥッティに至るまで、ベルリン・フィルならではの高度な表現力と合奏能力を、精緻なパースペクティヴの中で心ゆくまで堪能できる仕上がりとなっています。
第2楽章でのパロディ色濃厚なアプローチも、情報量が多いだけにウィーン・フィル盤よりもさらに面白くなっており、強烈なコントラバスも効果満点です。
第3楽章は唯一ウィーン・フィル盤よりも速くなった部分で、エネルギッシュでありながらも細部情報が全部耳に飛び込んでくるという驚異的な精度の演奏が繰り広げられています。
第1楽章は第4楽章と同じく、ウィーン・フィル盤よりも1分ほど演奏時間が長くなっていますが、これはラトルの求めるものがより深く大きくなっているからでしょう。複雑膨大で錯綜とした情報を立体的なフォルムの中に配置した入念を極めた音の構築は圧倒的ですが、今回はそれだけでなく、「美しさ」の希求という点でもたいへんに印象深いものがあるのです。それはたとえば第1楽章冒頭から主題が形成され始めるとすぐに気づかされることでもあり、以後、変容しながら繰り返される呈示部を通じて、この作品の底を流れる大きな要素のひとつである「美」について、対象モティーフの克明かつ美的な表現によって、構造的な面からも聴き手に徹底的に意識させる演奏がおこなわれているのが実に見事です。
美しさと構築性を兼ね備えた稀有な情報量を持つ名盤です。(HMV)

 録音:in concert: 24-27.X.2007 (1), 29-31.XII.2008 (2), Philharmonie, Berlin
Disc30
ストラヴィンスキー:
1. 詩篇交響曲
2. 3楽章の交響曲
3. ハ調の交響曲


 ベルリン放送合唱団(1)

ストラヴィンスキーは交響曲という名称のつけられた作品を5曲残していますが、よく演奏されるのは『3楽章の交響曲』『ハ調の交響曲』『詩篇交響曲』の3作品。どれも新古典主義時代に書かれ、それぞれアメリカのメジャー・オーケストラに献呈されたという共通点を持っていますが、3曲の作風は見事にバラバラなのが面白いところ。
まず興味を引くのは随一の人気作でもある『3楽章の交響曲』でしょう。もともとオーケストラのための協奏曲的な音楽として発案されたというだけあって、交響曲というよりは協奏曲風な響きと形式構造が目立っており、さらにドキュメンタリー・フィルムを通じて影響を受けたという第二次世界大戦への思いを、『春の祭典』など原始主義時代を髣髴とさせる過激なリズムと管弦楽の咆哮であらわしているのが特徴。結果として重層的な味わいの妙味がもたらされたと思われるこの『3楽章の交響曲』で、ラトルがどのような切り込みを聴かせるか注目されるところです。
一方、第二次世界大戦直前から開戦の翌年にかけて、つまりストラヴィンスキーが戦火を避けてパリからアメリカに移住する時期に書かれた『ハ調の交響曲』は、ハイドンやベートーヴェン、チャイコフスキーといった作品を参照しながら書かれたとされる作品で、ドラマティックな展開を含むソナタ形式やスケルツォ楽章が、伝統的な「交響曲」としての存在感を主張するかのような雰囲気に満ちた力作です。
現在では声楽ファンに人気の傑作『詩篇交響曲』は、もともとクーセヴィツキーから委嘱されたもので、完成後はボストン交響楽団に献呈されています。しかし、オーケストラからの委嘱作品であるにも関わらず、この作品の楽器編成にはヴァイオリンとヴィオラとクラリネットが含まれないという特殊なもので、代わりに(?)混声合唱と管楽器群、チェロ、コントラバス、ハープ、そして打楽器群が対位法的なテクスチュアを織り成してゆくのが実にユニーク。
2007年9月、ラトルはこの3曲をベルリン・フィルの定期公演でとりあげ、ベルリンのモルゲンポスト紙から下記のような絶賛を得ています。
「ストラヴィンスキーの交響曲だけで一晩のプログラムを組むというのは勇気ある企てだったが、今回はそれが報われたようだ」「詩篇交響曲が当夜のハイライトだった。器楽と歌手の特異なアンサンブルはひとつにまとまり、文字通り鳥肌ものだった」(HMV)

 録音:in concert: 20-22.IX.2007 Philharmonie, Berlin
Disc31
ベルリオーズ:
1. 幻想交響曲 Op.14
2. カンタータ『クレオパトラの死』


 スーザン・グラハム(メゾ・ソプラノ:2)

 録音:30.V-1.VI.2008, Jesus-Christus-Kirche, Berlin-Dahlem
Disc32
ラヴェル:
1. 歌劇『子供と魔法』
2. 『マ・メール・ロア』組曲


 マグダレーナ・コジェナー(メゾ・ソプラノ:1)
 ナタリー・シュトゥッツマン(アルト:1)
 ゾフィー・コッホ(メゾ・ソプラノ:1)
 ジョゼ・ヴァン・ダム(バリトン:1)
 フランソワ・ル・ルー(バリトン:1)
 ジャン=ポール・フーシェクール(テノール:1)
 モイカ・エルトマン(ソプラノ:1)、他
 ベルリン放送合唱団(1)

 録音:in concert: 24-28.IX.2008, Philharmonie, Berlin
Disc33-35
ブラームス:
● 交響曲第1番ハ短調 Op.68
● 交響曲第2番ニ長調 Op.73
● 交響曲第3番ヘ長調 Op.90
● 交響曲第4番ホ短調 Op.98


ベルリン・フィルの重厚なサウンドに圧倒される演奏。『ドイツ・レクィエム』の時とは大きく異なる分厚くパワフルな響きは、ラトルがDGに録音した同じブラームスのピアノ協奏曲第1番の轟音を彷彿とさせるほど。しかも、こちらでは、ライヴならではのノリの良さや怒涛の進撃から、名手たちがたっぷりと聴かせる繊細で色彩豊かなソロの美しさまで完璧に再現されています。
 そうしたサウンド傾向もあってか、ブラームスの込み入ったテクスチュアを、対向配置の弦楽をベースに立体感豊かに織り上げるオーケストラの共同作業は目を見張るばかりの素晴らしさで、これにラトルが自在で表現力に富むテンポ、バランス、デュナーミクを投影するのですからその情報量は膨大であり、随所に面白い聴きどころが形づくられています。(HMV)

 録音:in concert: 29.X-14.XI.2008, Philharmonie, Berlin
Disc36-37
● チャイコフスキー:バレエ音楽『くるみ割り人形』 Op.71 全曲


 リベラ(合唱)

「この音楽に心を奪われた私たちは、リハーサルをし、演奏を行い、そしてこれこそ魔法だと感じたのです。」〜サイモン・ラトル

【音楽ファンに人気のバレエ音楽】
チャイコフスキーの三大バレエの中で、音楽ファンに最も人気の高いのが『くるみ割り人形』。ドイツ後期ロマン派幻想文学の奇才、E.T.A.ホフマンの童話を題材にしたこのバレエ音楽は、原作ファンタジーの持ち味をダイレクトに伝える、チャイコフスキーとしても最大級のインスピレーションに溢れた傑作で、そのことは組曲版の演奏頻度の高さでも明らかです。
しかし、全曲版には組曲版では聴けない魅力的な音楽も数多く含まれており、特にドラマの再現性に秀でた指揮者の解釈で聴くと感銘深い仕上がりとなることが多いようです。

【ラトルの『くるみ割り人形』】
ラトルとベルリン・フィルは、2009年のジルベスター・コンサートで『くるみ割り人形』第2幕を取り上げ、演奏の素晴らしさから大きな話題となりました。今回のアルバムでは、その第2幕の演奏に加え、第1幕を新たにレコーディングして全曲を完成しています。なお、第1幕最後の第9曲「雪の合唱」には、英国の少年合唱グループ、リベラが参加しています。

【ラトルとベルリン・フィルによる万全の演奏】
ラトルといえばまず鋭敏なリズム感覚と、各楽器を表情豊かに響かせるオーケストラ・コントロールの達人ぶりが有名ですが、『くるみ割り人形』では、そうした性格が有効に機能するため、ベルリン・フィルの高度な技術によって『くるみ割り人形』が細部にいたるまでファンタジーゆたかな見事な演奏に仕上がっています。(HMV)

 録音:29-31.XII.2009, Philharmonie, Berlin(Disc36:セッション、Disc37:ライヴ)
Disc38-39
● マーラー:交響曲第2番ハ短調『復活』

 ケイト・ロイヤル(ソプラノ)
 マグダレーナ・コジェナー(メゾ・ソプラノ)
 ベルリン放送合唱団

【ラトルとベルリン・フィルのこれまでの最上の成果】
2010年10月末におこなわれた『復活』のコンサートはベルリンの批評家たちにも絶賛をもって迎えられた素晴らしい演奏内容でした。以下にベルリン・フィルとHMVジャパンの提携ページ、「ベルリン・フィル・ラウンジ」から批評を転載しておきます。

「舞台は、演奏者で溢れ返っている。彼らの威容は、まるで天を征服しようとするかのようであった。ラトルは力強いテンペラメントで、全身全霊を傾けて指揮した。演奏は、クライマックスからクライマックスにわたる劇的なもので、フィナーレでは燃え尽きるような高揚に達した。聴衆は息を呑んで演奏に耳を傾け、終演後は感激の声を上げた。ソロのコジェナーは、清らかな天上のメゾで〈原光〉を歌った。その歌声は、心に染み入るようだった(11月2日付け『ベルリナー・モルゲンポスト』クラウス・ガイテル)」

「...ラトルの《復活》は、燃え上がるような演奏だった。そこでは世界苦が歌われる。葬送行進曲の後、レントラーで弦が華麗に演奏しても、その曲調は憂愁に満たされている。全ては美しい過去の回想であり、現実は辛く厳しいのである。ピアニッシモで閉じる終結部も、ティンパニーの一撃で鬼神の恐怖を暗示する。コジェナーが〈原光〉で真摯なピアニッシモを聴かせた後、終楽章は天地をひっくり返すような音響で始まった。最後の審判を思わせる音調が鳴りわたり、舞台裏のバンダと響きあう。フルートのさえずりが聴こえると、ベルリン放送合唱団が〈復活するのだ〉と素晴らしい響きで歌いだす。そして響きは陶酔的な高みに至り、勝利の賛歌を歌い上げる。その集中力において、この公演はラトルとベルリン・フィルの最上の成果に数えられるだろう(2010年10月29日付け『ターゲスシュピーゲル』ジビル・マールケ)」

【ラトルのマーラー】
もともと現代音楽からスタートし、近代音楽にも強い愛着を示すラトルにとって、複雑で巨大でありながらも聴衆を深い感動にいざなうことのできるマーラーの音楽は特別なもので、これまでにも交響曲全曲や声楽作品など数多くのマーラー作品をとりあげてきています。交響曲第10番では補筆完成作業にも参加しており、すでに各地で指揮しているほか、レコーディングも2度おこなっているという凝りようで、ほかに第9番も再録音しており、この『復活』はEMIで3曲目の再録音ということになります。

【キャリアの節目を飾るマーラー】
ラトルはまた、キャリアの節目にあたる重要な演奏会にはよくマーラー作品をとりあげており、1991年、バーミンガムのシンフォニー・ホール公式落成式や、1998年、バーミンガムを離れる際のお別れコンサートでは『復活』を、1987年にベルリン・フィルと初共演したときには交響曲第6番を、2002年9月にベルリン・フィルの首席指揮者に就任した記念公演のときには交響曲第5番を指揮していました。

【ラトルの『復活』への思い】
「(マーラーの交響曲第2番は)12歳のときに(ジョージ・ハースト指揮の)生演奏を耳にして、指揮をやってみようという気に初めてさせてくれた曲です。マーラーは世界のすべてをひとつの交響曲のなかに詰めこもうと試み、この世界では、無名の英雄たちの死から、美と恐怖が共存する人生の記憶、そして最後の復活と救済までが巡りまわっています。おびただしい演奏者が集う広大なキャンバス上に描かれ、わたしにとっては、あらゆるオーケストラ作品の中で最も心揺さぶられる作品のひとつです」(サイモン・ラトル)

【高水準な合唱、ソリスト】
『復活』は、合唱が用いられる大作ということで、本番に至るまでの合唱指揮者の役割がたいへん重要ですが、ここではラトルの盟友、サイモン・ハルジー(ハルシー)[1958-]が彼の手兵でもある、ベルリン放送合唱団の指揮を受け持っています。
サイモン・ハルジーとサイモン・ラトルの良好な関係は、バーミンガムでの長年の共演を経て現在も続いており、録音でも、マーラー『復活』、『千人の交響曲』、『嘆きの歌』、シェーンベルク『グレの歌』や、ブラームスの『ドイツ・レクィエム』、ベートーヴェン第九、オルフ『カルミナ・ブラーナ』、シマノフスキ『スターバト・マーテル』、ウォルトン『ベルシャザールの饗宴』、エルガー:『ゲロンティアスの夢』、ブリテン『戦争レクィエム』といった作品でその成果を聴くことが可能です。
ラトルのアイデアを実際に形にしてゆくハルジーの存在が、今回の演奏の大きな注目ポイントであることはまず間違いなく、ここでも聖歌のような美しい響きからどこまでも高揚するクライマックスまで完璧なコントロールを示してくれています。
コジェナーは、1973年チェコ生まれのメゾ・ソプラノ歌手。古楽から近現代作品までとりあげる彼女は、落ち着いたトーンと、表現力豊かな歌唱で世界的に高い評価を得ています。
マーラー作品では、CDでブーレーズとの『子供の不思議な角笛』があり、映像作品ではアバドとの交響曲第4番&『リュッケルト歌曲集』がリリースされており、どちらでも見事な歌唱を聴かせていました。
今回の『復活』では、目玉の「原光」で、思い切った表情付けで若きマーラーの熱く振幅の大きな激しい思いを歌い上げていてさすが。ラトルの解釈に完全に乗り切った歌いっぷりです。
ソプラノのロイヤルは近年注目を集めてきている1979年生まれのイギリスのリリック・ソプラノ。ここでは作品に求められる澄んだ高音をきちんと出して万全のできばえです。

【ラトル&ベルリン・フィル】
ラトルの『復活』の解釈は旧盤と基本的には同じもので、マーラーが20代終わりから30代前半にかけて完成した作品の熱い表現意欲、ときに極端なまでの振れ幅を見せる若き日の気持ちを大切にしたかのような音楽が印象的。
旧盤との違いは、要所の調節がさらに巧みになって彫りが深くなり、情報量が増大して大きな流れが形成されるようになった点と、オーケストラの表現力の圧倒的な差にありますが、これにはホールの違いや録音技術の進歩も関わっているものとも思われます。

【優れたライヴ録音】
ベルリン・フィルのデジタル・コンサート・ホールでも生中継されたこの『復活』ですが、収録マイクロフォンやポジションなどは同じと思われるものの、EMIではCD化にあたって複数日のテイクを用いて万全を期しているのがポイント。また、配信よりも大幅にデータ量が多いため、当然ながら音質もずっと良く、打楽器の迫力などかなりのものとなっており、さらに合唱の透明度の高さも増している感じです。
ライヴ・レコーディングは難しいとされる『復活』ですが、この録音では困難な課題が非常にうまく克服されていると思います。大音量で味わいたい優れた『復活』です。(HMV)

 録音:in concert: 28-30.X.2010, Philharmonie, Berlin
Disc40
● ブラームス/シェーンベルク編:ピアノ四重奏曲第1番ト短調 Op.25
● シェーンベルク:映画の一場面への伴奏音楽 Op.34
● シェーンベルク:室内交響曲第1番 Op.9b(管弦楽版)


若い頃から近現代音楽を得意とするラトルは、シェーンベルクの作品もよくとりあげており、当アルバム収録曲中でもピアノ四重奏曲第1番と室内交響曲第1番にはそれぞれ旧録音が存在します。
現在では人気レパートリーとなったシェーンベルク編曲によるブラームスのピアノ四重奏曲第1番ですが、この編曲作業をシェーンベルクに薦め、初演したのはかのクレンペラーでした。
当時はヨーロッパでは演奏されることはほとんどなかったこの編曲ですが、クレンペラーは素晴らしい響きであると褒め称え、原曲以上に美しいと絶賛していました。現在の人気を予言するような高評価ですが、ラトルは今から37年前にこの曲を録音しており、さらにベルリン・フィルとのコンサートでも演奏してDVD化もされていたというお気に入りの作品でもありました。
ブラームスの濃密なメロディの美しさとシェーンベルクの雄弁をきわめたオーケストレーションの魅力が相互に作用しあった希有な編曲作品で、最後のチャールダーシュも実に気分爽快な音楽です。
2曲目の『映画の一場面への伴奏音楽』もクレンペラーにより初演された作品です。1930年におこなわれた初演は、少し前のフルトヴェングラーによる『管弦楽のための変奏曲』初演やシュタインベルクによる『今日から明日へ』の不成功とは裏腹に、聴衆から熱狂的な歓迎を受けるほどの大成功を収めています。同じ12音技法を用いて書かれた作品ながら、前2作とは対照的な成功を収めたことをシェーンベルク自身不思議がっていたということですが、それぞれのコンサートの聴衆の傾向の違いを考えれば納得できる話なのかもしれません。
ラトルのこの作品の録音は初めてですが、聴かせ上手なアプローチには定評のあるラトルゆえ、作品の面白さ創出についても期待がかかるところです。
3曲目の室内交響曲第1番はクレンペラーが米国初演をおこなった作品。交響曲史上の異端として知られる15のソロ楽器のための小編成ぶりでも知られており、ラトルは1993年にバーミンガム現代音楽グループを指揮してEMIに録音してもいました。
しかし今回の再録音でとりあげたのは、そのヴァージョンではなく、8年後に通常のオーケストラ用に編成が拡大されたヴァージョンなので、前回とは大きく異なる作品の姿を楽しむことができるものと思われます。(HMV)

 録音:in concert: 30-31.X & 5-7.XI.2009, Philharmonie, Berlin
Disc41
● ブルックナー:交響曲第9番ニ短調 WAB109(サマーレ、フィリップス、コールス、マッズーカによる4楽章完成版/1985-2008年、2010年改訂)


【ブルックナーの死去と楽譜の散逸】
ブルックナーは1896年10月11日、最晩年の住居であった、ウィーンのベルヴェデーレ宮殿の管理人用宿舎で亡くなっています。その日は日曜日だったということと、場所が宮殿敷地内ということで、ブルックナーを知る人が多かったことから悲報が広まるのも早く、住居が封鎖される前に、多くの人々や業者が家の中に入ることとなってしまいました。
その結果、交響曲第9番に関わる楽譜も含む貴重な自筆譜の数々が、記念や想い出、あるいは転売のために持ち出されてしまい、後年、その一部が遠く離れたワシントンDCで発見されたりもしています。

【第4楽章演奏に向けての多様な試み】
ブルックナーのもとに残された第4楽章の自筆譜には、さまざまな段階のスケッチが存在しており、それを素材として、フラグメントとして演奏するか、あるいは補筆完成して演奏するかという二つの選択肢がありました。
フラグメント活用の最初の重要な試みは、そうした素材を元に、オーストリアの有名な作曲家、ゴットフリート・フォン・アイネム[1918-1996]が1971年に作曲した「ブルックナー・ディアローグ Op.39」ではないかと思われます。ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮ウィーン交響楽団(1984)の録音で知られるこの作品は、ブルックナーの素材を元に自由に作曲したもので、補筆完成目的とは異なるアイネムの作品ではありますが、印象深いコラールなども含む興味深いものとなっています。
一方、補筆完成の最初の重要なものは、1981年から83年にかけて書かれたアメリカの音楽学者、ウィリアム・キャラガンによるヴァージョンで、ヨアフ・タルミ指揮オスロ・フィル(1985)によって録音され、フラグメント集も同時に収録されて話題となっていました。
そしてその次にあらわれたのが、イタリアの音楽学者ニコラ・サマーレとジュゼッペ・マッツーカにより1984年に書かれた補筆完成版で、エリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団(1987)と、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮ソ連国立文化省交響楽団(1988)によって録音され、メジャーからのリリースという事もあって前者は特に大きな話題となっています。
この2つのヴァージョンは、その後、何度か改訂がおこなわれてそれぞれの完成度を高めており、第4楽章補筆完成版の2大ブランドとしてすでにファンの間では定着した感があります。
これら以外では、メルツェンドルファーやヨゼフソン、レトカルトのものなどもありましたが、中では、ペーター=ヤン・マルテが2006年に作曲したものが興味深い聴きものとなっていたようです。

【ラトルによる第4楽章】
今回、ラトルがとりあげたヴァージョンは、ニコラ・サマーレとジュゼッペ・マッツーカによって始められ、後にジョン・アラン・フィリップスとベンヤミン=グンナー・コールスが加わって完成度を高め、1992年に刊行された「サマーレ、フィリップス、コールス、マッツーカ版(SPCM版)」の最新版。
SPCM版の原型であるサマーレ&マッツーカ版が1984年に刊行された時点では発見されていなかった素材を反映するなどし、実に26年をかけて進化してきたこのヴァージョン、マッツーカは1987年には抜けてしまい、フィリップスもその後脱退してしまったため、2004年以降の改訂作業はコールスとサマーレの二人によっておこなわれてきました。
今回使用された最新の改訂版は、一連の作業の集大成として、これまでにない大幅な改訂を加えたものとなっているのが特徴。
1992年に刊行されたSPCM版としての初版の時点では少々懐疑的な部分があったラトルも、2007年改訂版をハーディングが指揮したコンサートが成功したこともあって、このSPCM版を評価するようになり、さらに純度を高めるべく改訂の進められた今回の新しいヴァージョンには深く満足したということです。
ラトルによる実際の演奏は、まず2011年10月に、ベルリンのユース・オケであるブンデス・ユーゲント管弦楽団を指揮しておこなわれています。これにはコールスも関わって入念な解釈の検討がおこなわれ、結果として、翌年のベルリン・フィルとの演奏を成功に導くことに繋がっています。
再現部の第3主題部まで、つまりコーダの部分を除き、大まかな構想はできていたといわれる第4楽章ですが、600小節を超えるこのヴァージョンのうち、三分の一ほどがブルックナー自身により完全に作曲された部分となっています。これを基本に、バラバラに残されていた弦楽パートや管楽器パートのスケッチが補筆して加えられており、研究者たちによる創作部分は、30小節前後となっているいうことです。
しかしながら、実際にその完成ヴァージョンを聴くと、ブルックナーらしさも感じられる一方で、違和感が感じられる部分もあります。ラトルはこれについて、こう語っています。

「このフィナーレで奇妙な個所は、すべてブルックナー自身の手によるものです。ここには、彼が当時体験した脅威、恐れ、感情のすべてが現われているのです」

また、2011年来日時の記者会見でも次のように述べて自信のほどを示してもいました。

「これまでに再構築を繰り返してきた第4楽章には、非常に多くの人の手が加えられていたと思われる。今回の完成版は今まで聴かれていたものとあまりに違うことに驚くでしょう。もっとワイルドで、奇異な感じがして、当時では考えられないようなたくさんの不協和音が用いられ、時代の先端をいっていたのです。」

実際、その言葉通り、これまでのヴァージョンで聴かれることの多かった薄味な響きとは大きく異なる迫力あるサウンドは説得力があり、「テ・デウム」や他の交響曲の引用なども含めて面白く聴くことができる仕上がりを示しています。

【第1楽章〜第3楽章】
肝心の交響曲第9番本体、第1楽章〜第3楽章についての演奏は、ここのところの集中的な取り組みを反映してか、細部まで徹底的に練り上げられた凄い完成度を示すものとなっており、ラトルの隙の無い解釈の精度と、オーケストラの実力の高さを改めて証明するものとなりました。音質も優秀です。(HMV)

 録音:in concert: 7-9.II.2012, Philharmonie, Berlin
Disc42-43
● ビゼー:歌劇『カルメン』全曲


 マグダレーナ・コジェナー(メゾ・ソプラノ:カルメン)
 ヨナス・カウフマン(テノール:ドン・ホセ)
 コスタス・スモリジナス(バリトン:エスカミリオ)
 ゲニア・キュマイアー(ソプラノ:ミカエラ)、他
 ベルリン国立歌劇場合唱団

 録音:in concert: 16-21.IV.2012, Philharmonie, Berlin
Disc44
ストラヴィンスキー:
1. バレエ音楽『春の祭典』
2. 管楽器のための交響曲
3. バレエ音楽『ミューズを率いるアポロ』


【春の祭典】
ラトルの『春の祭典』は、当盤以前に3種のアルバムと1種の映像作品がリリースされています。

1977 イングリッッシュ・ナショナル・ユース管(ENIGMA)
1987 バーミンガム市響(EMI)
2003 ベルリン・フィル(BPO)
2009 ベルリン・フィル(映像)

まず最初に登場したのは、ラトルが22歳のとき、かつて自身も打楽器奏者として所属していたイングリッッシュ・ナショナル・ユース管弦楽団を指揮した全員若手のフレッシュな演奏。イギリスのレーベルからのセッション録音リリースでした。
それから10年後に登場したのが、バーミンガム市交響楽団の首席指揮者になって7年を経ていたラトルが、EMIレーベルでセッション録音したもの。演奏は細部までクリアで作品の魅力をシャープに表出したものとして高く評価されていました。
そしてその次に登場したのが、べルリン・フィルを指揮して映画のために録音されたもので、CDとSACDでも発売され、迫力あるサウンドによって話題となりました。
上記3点のディスクはすべてセッション録音ですが、映像ソフトではライヴ収録されたものがリリースされています。
当盤の演奏は、2012年に本拠地フィルハーモニーで録音されたもので、オリンピック・スタジアムで収録された映像作品の3年後、最初のイギリスでの録音からは35年後の演奏ということになります。

【管楽器のための交響曲】
『管楽器のための交響曲』は、ストラヴィンスキーがドビュッシーの思い出のために書いた音楽を発展させたもので、正確には『ドビュッシーの思い出のための管楽サンフォニー』と題されています。
どこか『春の祭典』を思わせる素材を交え、ファンファーレとコラールの交錯するバロック時代の様式へのオマージュともいえるスタイルで書かれているのが特徴。ラトルにとってはちょうど30年ぶりの録音でもあるここでの演奏は、ベルリン・フィルの名手たちとの演奏だけに仕上がりも非常に上質なものとなっています。

【ミューズを率いるアポロ】
ストラヴィンスキー新古典主義時代の作品である『ミューズを率いるアポロ』は小さな劇場でのバレエ上演のために書かれたため、楽器編成は弦楽合奏のみというシンプルなもので、なおかつバレエの様式に配慮した舞曲構成になっています。いわゆる三大バレエの原色系ダイナミズムとは正反対の雰囲気ですが、そのシンプルさが意外な人気にもつながっているのか、ラトルも1988年にバーミンガムで録音をおこなっていたので、当盤は23年ぶりの再録音ということになります。(HMV)

 録音:8-10.XI.2012 (1), 20-22.IX.2007 (2), 16-18.II.2011 (3), in concert: Philharmonie, Berlin
Disc45
ラフマニノフ:
1. 合唱交響曲『鐘』 Op.35
2. 交響的舞曲 Op.45


 リューバ・オルゴナソヴァ(ソプラノ:1)
 ドミトリー・ポポフ(テノール:1)
 ミハイル・ペトレンコ(バス:1)
 ベルリン放送合唱団(1)

美しく親しみやすい旋律を持つ作品を数多く書いたラフマニノフ40歳の時の隠れた人気作がこの合唱交響曲『鐘』。第一次世界大戦とロシア革命が起きる直前の時代、ローマに旅したラフマニノフが、かつてチャイコフスキーが滞在したという家で作曲に取り組んだというもので、テキストはエドガー・アラン・ポーの書いた人生についての詩のロシア語訳版が用いられています。作風は、メロディアスで重厚、ロマン的な味わいに富むもので、全体は4つの楽章から構成されています。
 それぞれの楽章は、人の一生を時期に分けて「銀の鐘」「金の鐘」「真鍮の鐘」「鉄の鐘」と題して象徴。
 ラトル指揮ベルリン・フィルの演奏は、合唱にラトルと親しいサイモン・ハルジー指揮するベルリン放送合唱団を迎えて行われており、純度の高いコーラスの魅力とオケの豊かな表現力を味わうことができます。
 組み合わせの『交響的舞曲』は、グレゴリオ聖歌「怒りの日」の緊密な引用でも知られるラフマニノフ晩年の人気レパートリー。ベルリン・フィルのヴィルトゥオジティを楽しめる内容となっています。(HMV)

 録音:in concert: 8-11.XI.2012 (1), 4-5.XI.2010 (2), Philharmonie, Berlin

 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 サー・サイモン・ラトル
(指揮)


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