Fritz Wunderlich(T)Historicalrecordings 1954-65

時を越え 心に響く ヴンダーリヒの芸術

天才モーツァルトはあと2ヶ月の誕生日を前にし､35歳で夭折しましたが､ここに聴くF.ヴンダーリヒも同様10日後の誕生日を前にし､1966年9月に同じ35歳で亡くなりました｡
　幸いモーツァルトがスコアを残してくれたのと同様に､ヴンダーリヒは私達に幾つかの録音を残してくれました｡その甘く優しく澄んだ声､そしてしなやかに流れるそのメロディーは何とも素晴らしく､彼特有のドイツ的カンタービレともいえる伸びやかで艶やかな声は､聴き手の心の中へ自然に溶け込みます｡
　このアルバムはオペラのアリアからオペレッタ､映画音楽､民謡と収められており､短くも幅広く活躍した彼の"燃焼ぶり"が伺える恰好のディスクといえるでしょう｡この不世出のテノール歌手ヴンダーリヒの豊かな､身を焦がす程の歌唱は常に聴き手に新鮮さを感じさせ､何度聴いても別の新しい感動を呼び覚ますと同時に､思わず涙腺をもそそる何かがあり､それが彼の尽きない魅力として今も生き続けています｡
　録音年に幅がありますが､いずれも鑑賞に損傷の無い､良好な復刻状態です｡

・ヴェルディ：「リゴレット」〜女心の歌　
・プッチーニ：「トスカ」〜星は光りぬ　
・レハール：「ロシアの皇太子」〜また一人だ　
・ビクシオ：恋について語っておくれよ、マリウ　
・アンデルス：口が黙るとき　
・ホルツバウアー：「ギュンター・フォン・シュヴァルツブルク」〜天の美しき息子よ！　
・Ａ．スカルラッティ：「ロザウーラ」〜あの哀れな心　
・グルック：「証明された無実」〜目もくらむ崖のオーク　
・シュトルツ：「チチパの王子」〜かつて春に幸福が私に笑いかけた
・カールマン：「世界を旅する」〜私の愛する人はいつくるのだ　
・ドスタル：「号外」〜カップルが踊るように　
・シュトルツ：「シニョリーナ」〜美しきイタリアよ、さようなら　
・ファル：「イスタンブールのバラ」〜おお、イスタンブールからのバラよ　
・ポンセ：エストレッリータ　
・アンデルス：雲が空を流れる　
・レハール：「ジュディッタ」〜ともよ、人生は生きる価値がある　
・マイ：歌声は世界を巡る　
・エルヴィン：奥様、お手に口付けを　
・ティリトンバ　
・ララ：グラナダ

フリッツ・ヴンダーリヒ（Ｔｎ）　エメリヒ・ズモーラ（指）カイザースラウテルン・シュトゥットガルト放送管、ほか

録音：１９５８〜６５年