深い音色の中から立ち上る
SACDサラウンドの豊かな音楽世界
【当アルバムの制作について/制作者より】
「従来、Super Audio CD制作のためのDSD方式マルチトラック録音は、SONOMAなどこの目的専用のデジタルオーディオワークステーションによって行われてきた。しかしいずれのシステムも高価で大規模なシステムであり、可搬性の点でやや難があった。この種の機材を利用した経験から、移動と設置においてより軽快な機材への期待が膨らみ、やがてこれを実現すべく自社でDSD対応オーディオインターフェイスを試作することとなった。平行してASIO2.1のDSDモードでデータを記録するソフトウェアも製作した。
収録はサウンドステージの定位を表現するワンポイントマイクをメインとし、楽器への近接マイク、空間表現のためのオーディエンスマイクを加えたマイクアレンジにより行われた。
3日間のセッションでは6〜7チャンネルのDSDデータ(1bit/2.8MHz)を長時間連続して取得し、Windows7マシンに記録することができた。
編集・整音は、DSD編集ソフトウェアが完成していないため、DSDデータを24bit/176.4kHzのPCMデータへ変換した後ProToolsIHD上で行った。
その着手の段階で、楽器に対する距離の異なる各マイクが捉える直接音に注目し、各トラックの位相を整理する作業を慎重に実行している。
こうして作成されたサラウンド音源の無伴奏コントラバス曲の部分において、マイクとサラウンドチャンネルの関係は一対一に限定されており、いわゆるミキシング処理は行われていない。ここでソースに対して行った処理は、各チャンネル間の音量バランス調整と、最小限のEQ処理のみである。この簡潔さゆえ、SACDサラウンド再生では各点のマイクが捉えた音響の特徴が失われることなくそのまま再生される。その結果、性質の異なる音響の混合による濁りの発生を回避し、音響の明瞭さと、空間の特徴をそのまま再現するサラウンド感が得られることを期待している。(2つの二重奏曲についてはフロント3チャンネル間でミキシングが行われている。)
榊原氏と共演者の方々の生き生きとした演奏を収録することができ、充実した内容のアルバムの形に結実したことは大変意義深いことと思う。」(etendue)
【収録情報】
1. クヌート・ギュトラー:グリーンスリーブスによる変奏曲
2. クロード・ドビュッシー:シリンクス
3. 萩京子:ダンス・オブ・アコルダンス・アンド・ディスコルダンス
4. エミール・タバコフ:モティヴィ
5. ジャン・バリエール:ソナタ ト長調
6. ベルンハルト・ロンベルク:ソナタ変ホ長調
榊原利修(コントラバス)
本橋 裕(チェロ:5)
高柳安佐子(コントラバス:6)
録音時期:2012年9月
録音場所:名古屋市、熱田文化小劇場ホール
録音方式:ステレオ(DSD/セッション)
SACD Hybrid
CD STEREO/ SACD STEREO/ SACD 5.0 SURROUND
1本のコントラバスをSA-CDサラウンド再生で聴く醍醐味。各チャンネルの位相を周到に合わせ込む以外はほとんど手を加えていないので、非常にリアルな音響空間が現出する。少し音量を上げ気味にして聴いてほしい。おそらく低音楽器ならではの生々しい迫力に鳥肌が立つような感動が味わえるはず。(長)(CDジャーナル データベースより)