スクロヴァチェフスキ生誕100年を記念して母国ポーランドの貴重音源が初CD化!
指揮者・作曲家のスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ[1923-2017]の生誕100年(2023年10月3日)を記念して、母国ポーランドのワルシャワ・フィルハーモニーのアーカイヴから1956年の録音が初CD化。正規盤の無かったモーツァルトのレクィエムや、若き日の快速テンポによる『英雄』を含む興味深いリリースです。
スクロヴァチェフスキはポーランドのルヴフ(現ウクライナのリヴィウ)に生まれました。4歳でピアノとヴァイオリンを学び始め、特にピアノで目覚ましい才能を発揮して11歳の時にはデビュー・リサイタルを行うほどでしたが、第2次世界大戦中に手にケガを負い、その後は指揮と作曲に専心します。1946年以降はヴロツワフ、クラクフ、カトヴィツェのオーケストラで指揮者を務め、1956年にはローマで行われた国際指揮者コンクールで優勝。2年後にはジョージ・セルの招きでアメリカ・デビューを果たしました。
1956年から59年にかけて、ポーランド国内ではワルシャワ・フィルのポストを得て定期的に指揮。ここに収められた2つのコンサートでは世界へ羽ばたく前夜の指揮を聴くことができます。全6曲中、『英雄』を除く5曲にはスクロヴァチェフスキによる正規録音が無かったので貴重なリリースと言えるでしょう。
スクロヴァチェフスキは1947年にカロル・シマノフスキ国際コンクールの作曲部門で入賞し、フランス政府の奨学金を得てアルテュール・オネゲル[1892-1955](とナディア・ブーランジェ)に師事しているので、自作(初演)と師の作品を組み合わせた2月11日のプログラムは師への敬意を込めたものかもしれません。後半に置かれたモーツァルトのレクィエムは作曲家の生誕200年であることにちなんだ選曲と思われますが、結果的に前年秋に世を去ったオネゲルへの追悼のような形になりました。4人のソリストと合唱団は声を張った熱唱に傾きがちで、このあたりには甚大な犠牲を出した第2次大戦から10年余りという時代の空気も感じられます。その中で意外なのは「ラクリモーサ」の結びの「アーメン」。ここは多くの場合、悲しみのどん底から救いを求めるかのような絶唱になりがちですが、スクロヴァチェフスキは柔らかな発声と控えめな音量で歌わせ、最後は消え入るように終わらせています。
6月22日のプログラムでは、前半後半を通じてこの人らしい精彩に富んだ演奏を聴かせます。『英雄』の演奏時間は44分余り。ザールブリュッケン放送響盤(2005年)も読響盤(2012年)も弛緩とは無縁の充実した演奏でしたが、それらに比べると当盤の演奏時間は5分ほど短く、若きスクロヴァチェフスキの覇気が漲る演奏となっています。
ブックレット(ポーランド語と英語)は表紙込みで84ページもあり、楽曲解説や演奏者の紹介に加えて当日のコンサート・プログラムの表紙写真やオーケストラと合唱団のメンバー全員の名前が掲載されるなど、丁寧な作りになっています。
※すべてオリジナル・テープからCD化していますが、ベートーヴェンの『英雄』ではマスターに起因するゆがみが少しあるとのことです。(輸入元情報)
【収録情報】
Disc1
1. スクロヴァチェフスキ:プレリュード、フーガとポストリュード(1946-1948)
2. オネゲル:交響曲第2番(1941)
Disc2
3. モーツァルト:レクィエム ニ短調 K.626(1791)
Disc3
4. エンニオ・ポッリーノ[1910-1959]:交響詩『サルデーニャ』(1933)
5. ゴッフレド・ペトラッシ[1904-2003]:管弦楽のための協奏曲 第1番(1934)
6. ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調 Op.55『英雄』(1803)
ステファニア・ヴォイトヴィチ(ソプラノ:3)
クリスティナ・シュチェパンスカ(メゾ・ソプラノ:3)
ボグダン・パプロツキ(テノール:3)
ヴィトルド・ピレウスキ(バス:3)
ワルシャワ・フィルハーモニー合唱団(3)
ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮)
録音時期:1956年2月11日(1-3)、6月22日(4-6)
録音場所:ワルシャワ・フィルハーモニーホール
録音方式:モノラル(ライヴ)