クラウス/R.シュトラウス・デッカ録音全集(5CD)
ウィーン・フィル、フルニエ、ゴルツ、他
ウィーンの生んだ名指揮者、クレメンス・クラウス[1893-1954]は、戦後、ウィーン・フィルやバイロイト音楽祭、ザルツブルク音楽祭のほか、バイエルン放送響、バンベルク響などに出演する多忙な生活を送っており、指揮活動のピークを迎えていました。
クラウスは若い頃からリヒャルト・シュトラウスに信頼されており、『アラベラ』『平和の日』『ダナエの愛』『カプリッチョ』の初演を任されていたほか、『カプリッチョ』では台本も書くという親密な関係でもありました。
そのクラウスが、戦後、ウィーン・フィルのセッション録音に取り組んでいたデッカ・レーベルで1950年からおこなったのが、前年9月に亡くなったR.シュトラウスの作品のレコーディングでした。『英雄の生涯』に『ドン・ファン』、『ツァラトゥストラ』『ドン・キホーテ』『家庭交響曲』『ナクソス島のアリアドネ組曲』『イタリアより』 『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』という有名作品に加え、オペラ『サロメ』全曲という傑作の数々が、モノラルながら優れた音質で遺されています。
【ウィーン風な名演群】
クラウスとウィーン・フィルのコンビならではの濃密な表現、そのどこまでもウィーン風な洒落た味わいは実に見事。
『英雄の生涯』の「英雄の敵」の木管群や「英雄の引退」での美しさ、「戦場の英雄」での金管の輝かしい吹奏、『ツァラトゥストラ』での弦の素晴しい美感などさすが。ちなみに、両曲ともに重要な役割を果たすヴァイオリン独奏は、ヴィリー・ボスコフスキーが担当し、ウィーン風な素晴らしいソロを聴かせています。
作曲者と親しかったクラウスにかかると、『家庭交響曲』の描写的性格も雄弁をきわめたものとなり、『ドン・キホーテ』でも、フルニエの気品あるチェロと、各変奏曲の濃やかな描写が魅力的で、『ナクソス島のアリアドネ』から編まれた組曲では、優雅な感覚に満たされてもいました。
終曲の主題に「フニクリ・フニクラ」が使用されていることでも知られる交響的幻想曲『イタリア』でのアプローチは旋律美を巧みに生かしたもので、オケの濃い目の音色と相乗効果を発揮して鮮度の高い表情が描かれていました。
『サロメ』全曲では、サロメ歌いとして有名だったクリステル・ゴルツを起用しているのもポイントです。初回生産限定盤。(HMV)
【収録情報】
Disc1
R.シュトラウス:
・交響詩『ドン・ファン』 op.20
録音時期:1950年6月
・交響詩『英雄の生涯』 op.40
録音時期:1952年9月
Disc2
・交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』 op.30
録音時期:1950年6月
・交響詩『ドン・キホーテ』 op.35
録音時期:1953年6月
ピエール・フルニエ(チェロ)
エルンスト・モラヴェク(ヴィオラ)
Disc3
・家庭交響曲 op.53
録音時期:1951年9月
・『ナクソス島のアリアドネ』〜管弦楽組曲
録音時期:1952年9月
Disc4-5
・交響的幻想曲『イタリアより』 op.16
録音時期:1953年12月
・交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』op.28
録音時期:1950年6月
・楽劇『サロメ』op.54 全曲
録音時期:1954年3月
クリステル・ゴルツ(ソプラノ:サロメ)
ハンス・ブラウン(バリトン:ヨハナーン)
ユリウス・パツァーク(テノール:ヘロデ)
マルガレータ・ケニー(メゾ・ソプラノ:ヘロディアス)、他
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
クレメンス・クラウス(指揮)
録音場所:ウィーン、ムジークフェラインザール
録音方式:モノラル(セッション)