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mari夫 さんのレビュー一覧 

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/10/03

    NHKのイタリア・オペラ団でスリオティスとコソットのこの曲を聞きにいったら初日の不調でスリオティスが降りてしまい、代役は比較すべくもなくてコソットばかりが目立つという始末だったのを思い出す。この盤でのスリオティスは絶好調で、力強く美しい。カラスと比べるのはギリシャ生まれの宿命とはいえ気の毒だが、ああいう表現のヒダの深さをまだ20代半ばだったスリオティスに求めるのは酷で、一幕はややモノ足らないが、二幕は充分感動的だ。コソットも最高のアダルジーザだが、それ以降の絶頂時に比べると声は柔らかく若々しい。ただそのためノルマとアダルジーザの年齢差とかがあまりくっきりしない憾みは否定出来ない。デル・モナコは負傷後の声だが、輝かしさは減じていないが、少し声が細くなっていると言うか剛直さが失われている。まぁ、若くなっているともいえなくはない。ヴァルヴィーゾはここでは可もなく不可もなしというところかなぁ。カラスを聞くなら私はステレオ盤より音は良くなくともヴォットーとのミラノ・ライブをとる(シミオナートのアダルジーザのためも大いにあるが)ので、ステレオのファースト・チョイスとしては当盤としたい。

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     2016/09/08

    全く素晴らしいアルバム。ヒストリカルどころか結構新しい(90年代)録音なのに、この値段とは。演奏は全く「眼から鱗」ものの新鮮さ。ガット弦特有のはりのある低音にのって(ロックみたいという感想は当たってる)、縦横無尽に「音楽」している。囚われるものの何もない自由な音楽。『四季』やブランデンブルクのようなポピュラー曲もいいけど(昔の永遠の名盤だったはずのイムジチが何ともダルで重ったるく聞こえる)、そうでない曲たちの楽しいこと。あの時代の前衛だったんだね。日頃聞いているヒストリカルのレパートリーとは、テンポやリズムやバランスの感覚がまるで違っている。ちょっと脳内革命をされている気分ですね。

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     2016/09/08

    全く素晴らしいアルバム。ヒストリカルどころか結構新しい(90年代)録音なのに、この値段とは。演奏は全く「眼から鱗」ものの新鮮さ。ガット弦特有のはりのある低音にのって(ロックみたいという感想は当たってる)、縦横無尽に「音楽」している。囚われるものの何もない自由な音楽。『四季』やブランデンブルクのようなポピュラー曲もいいけど(昔の永遠の名盤だったはずのイムジチが何ともダルで重ったるく聞こえる)、そうでない曲たちの楽しいこと。あの時代の前衛だったんだね。日頃聞いているヒストリカルのレパートリーとは、テンポやリズムやバランスの感覚がまるで違っている。ちょっと脳内革命をされている気分ですね。

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     2016/08/25

    翌年の「オテロ」と並ぶパニッツァ/マルティネッリの晩年ヴェルディもののメト・ライブ。パニッツァとボダンツキーに日本で光を当てた山崎浩太郎氏が、それらに開眼した恩を無限に感じておられると書いたのがこの「アイーダ」。演奏のレヴェルも音質のレヴェルも「オテロ」と同等。ヒストリカル愛好者の想像で補う力は必要だろうが、ノイズはともかく、音自体は明快な方だし、力はある。山崎氏が彼らを一推しにする根拠はリズムだそうだが、私にはむしろテンポと流れのような気がする。トスカニーニの剛直な運びではなくて、もう少し推進力とキレが目覚ましい演奏だ。氏のいう凱旋の場よりもむしろ三幕以下の方に、この演奏の真骨頂があるような気がする。「オテロ」では少し細身のデル・モナコと言う感じだったマルティネッリは、ここでは少しロブストなビョルリンクって感じかな?四幕は暗い墓の中にしては輝かし過ぎの観もなくはない。チーニャは凄い美声とは思わないが、立派なアイーダで申し分ない。あとピンツァのランフィスが凄い。 カスターニャのアムネリスは柔らかめの声なので、チーニャと差がつかない憾みがあるのと、三幕はやはり多少迫力不足(シミオナートとかとくにコソットとは比べられない)。モレッリのアモナスロは少し軽い声だが(これは何といってもカプッチルリ)、娘との掛け合いは悪くない。「オテロ」ほど穴のないキャストではないということと、この祭典的なオペラでは、もう少し音が良かったらなぁ感が残るので☆四つ。でも一聴に値する。

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     2016/08/13

    リーフレットにNAXSOSのマーストンが理想的な原盤が見つからなかった事情を書いているが、38年録音ならこの程度は覚悟しなくてはならないだろう。所によっては結構派手な傷の音もする。しかし、それでも、これは凄まじい名演である。主役の三人が申し分ないレヴェル。マルティネッリはデル・モナコよりはやや細身の声だが(結構似ている)、全く素晴らしいオテッロ。ティペットのイヤーゴもゴッビに勝るとも劣らない。レートベルクはドイツ人だが、イタリア・オペラとの違和感は感じさせず(ほんのちょっぴり喉に力が入っているかなぁとは感じるけれど)、まずは文句ないデズデモーナでしょう。いずれもステイル的にも古さを感じさせない。三人トータルでは他のどの名盤をも凌ぐのではないか?しかしこれを更に評価高からしめるのはパニッツァの指揮。冒頭からもの凄いテンションで一気に駆け抜ける。トスカニーニやカラヤンやクライバーをすら忘れさせる雷鳴の指揮!この音だから「最高」とはあえていわないけれども、ヒストリカルのファンならば必聴の名盤であることは否定出来ない。リーフレットでジョセフ・ホロヴィッツが、これを聞くと、自分が聞いていたレヴァイン時代のメトでは如何に歌手たちが冷淡でダルで適切さに欠けたサポートに足を引っ張られていたかが良くわかると言っているのは、至極納得が行くコメントだ。

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     2016/08/12

    フルトヴェングラーの正規盤中心のベートーヴェン交響曲全集がこの値段とは‥‥隔世の感がありますねぇ。モノーラルなんて聞かない、とかいう方も世の中には結構おられるようなんで、それだと最初から見方(聞き方?)が違ってしまうでしょうから、隔世も何も骨董品が安く出ただけだろうといわれるかもしれない。そもそも、フルトヴェングラーの同曲異演盤どころか、異リマスターを聞き比べておられるコアなマニアから、安いから有名な演奏なので一度は聞いてみようかというファンでは最初から話が合いそうもない。私は中庸というと変だけれども、最近はあまりしょっちゅうフルトヴェングラーを聞いているわけでもないし、もっているのはこれと別の演奏(ライブ)が多いし、ましてやリマスターの比較うんぬんは分りませんが、だからコレクションの穴を埋めておこうと思って買った(程度の)組みです。感想は二つ。まず音はかなりいい(もちろんフルトヴェングラーものとしてはですが)。ライブの第九があまり歪みがなく聞けるのは有り難いし、スタジオの最初の録音であまり芳しくないといわれてきた七番もとても聞き易くなっています(例の女声の混入もない)。ライブである第二と第八は確かに悪い音だけれども、演奏の熱気が分らないほどではないし、ストックホルムのオケも今までよりマシに聞こえます。もうひとつは、これまでやっぱりフルトヴェングラーはライブでなくちゃと思っていたけれど、これらのスタジオも立派な演奏であるという(今更もいいところの)発見。それも音質の改善の恩恵かもしれない。これからも織り交ぜて聞きたい、ということで、個人的には申し分ない全集と思いました。でもほんとに安いよな!いいのかそれと思うのはオールド・ファンだけかなぁ。

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     2016/08/06

    偶然マイクが二本立っていてそれをミキシングしてステレオにしたとかいう俄には信じられない話で、51年録音だし、ま、値段も安いし、ダメ元だと思って買ったのだが、聞いてびっくり、正真正銘のステレオ(といっていいのか、でも確かにそう聞こえる)でトスカニーニのヴェルレクが聞けるとは!疑似ステレオの芯のないふやけた音とははっきりと違う。いやはやヒストリカル・ファンには近年の大ニュース、大発見だとレコード会社のお先棒を担ぐようないい方だが、本当にそうなのだから仕方がない。亡くなる直前の実験的なライブ・テークに劣らない出来だ。独唱者の声も格段に膨らみを増したし、貧血症的なトスカニーニの録音というイメージは一掃される(元々悪名高い8Hスタジオではなくカーネギーホール録音だったことも幸いしたかもしれない)。それは最新録音と比べてはいけない(ヒスノイズはあるし、歪みもある。弦楽器の定置はやや甘い)が、トスカニーニをこの音で聞けるとは僥倖としか言いようがない。もはやモノ録音で聞く意味はない(といってもきっといや違うという頑固な人はいるだろうけど)。演奏については今更いうまでもないでしょ。いやはや、有り難たや有り難たやとディスクを拝みたい気分だ。

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     2016/07/18

    クレンペラーと言う複雑な個性がブラームスというこれまた複雑な個性とどうまみえるかということだが、色々と面白い。一番の両端楽章のような壮大でダイナミックな音楽よりも、かえって四番とか各緩徐楽章とかの方が面白い。アルカイックな進行とそのはざまから漏れてくる叙情(決してワルターとかフルトヴェングラーのように手放しでロマン的ではない)のバランスが真骨頂だろう。複雑な声部の絡みの処理も一筋縄ではいかない。テンポは実は平均してそんなに遅いわけではなく、かつ動きがないわけでもない。ところどころでユーモラスなところさえあるけれども、ニコリともしないでやっているという感じ。音は年代としてはこんなものだろうとは思うし、改善されたと思うが、60年代になってからの声楽付きのに曲と比べると、交響曲の方はやや豊かさとか膨らみに欠ける。その分かどうか、聞き手は、エモーショナルには指揮者の懐には入らせてもらえないと言う感じが残ることも事実。その辺はもう少し聞き込むと違うかもしれない。ということだから宿題が残された(まだ完全に納得したわけではない)と言うことで☆一つ減点。声楽付きの二曲は当然☆5つクラスで三人の歌手も含めて最上級の名演。

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     2016/07/11

    ボックスに12枚のヴィニールLPから10枚のCDへと書かれているように、いわゆる「板起こし」である。ボックス裏面にはそのオリジナルLPのジャケットが印刷されている。古いモノだと音源自体が古いので、保存状態も含めて板起こしの方が劣っているとは限らないと思うが、この辺の録音になると、私がもって被っているものを比較すると、やはりこちらの方が明らかに音が甘いというか圭角が落ちているし、奥行き感にも乏しい。この値段だしとは思うが、ルービンシュタインはホロヴィッツやリヒテルみたいに鬼面人を驚かす態の表現はしなくて、一聴(?)平凡に弾く。実は微妙な所のニュアンスの奥の深さと風格がこの大家の大家たる所以なので、この「甘さ」は、比較すればだけれど、マイナスに働く。
      そんなこともあってこのアルバムでとりわけ価値があると思ったのは、チャイコフスキーとブラームスの二曲の協奏曲のライブ。爆演は嫌った巨匠だし、落着いたスタジオ録音も素晴らしいけれども、間の取り方の緊迫感はやはりライブならでは。前者のラインスドルフとのスタジオ盤も実に立派な巨匠芸だが、スリリングという点ではこのライブに分がある。音は良くないけれども、微妙さを通り越した興趣が横溢している。ブラームスは、一番がどれも素晴らしいのに比べて、この二番は、二つのスタジオやクリュイタンスとのライブも、どれも幾分平板に聞こえて、曲と演奏の間に隙間を感じて、今ひとつ納得していなかった。けれども故郷でやったこのライブは、素晴らしい。豪放にして闊達で、文句なくこのアルバム中最高のものだといいたい。オケはあまりうまいとはいい難いが、60年のワルシャワ・ライブとは信じられないくらい音は良い(当時の東側のライブ一般とは大違い)。てっきり貧弱なモノ録音を予想していたら、多少はレンジが狭いとはいえ、立派なステレオ。クリップスとのベートーヴェンも、私としては世評に高いバレンボイムとの録音以上に壮年期の元気さを残したこの録音を買いたい(是非全曲聞いてほしい)。ショパンの二番はちょっと音が古い。ラフマニノフもリヒテルと並ぶ天下の名演だが、これは音の甘さのために彫りが浅く聞こえる。グリーグも同じかな?。この辺はやはり板起こしでないCDで聞いてほしい。モーツアルトは、本来ルービンシュタインとは音楽性のあり方が違う感じだが、それを埋めるに十分な立派な演奏。シューマンもモーツアルトとは違う意味で音楽性に違いがある(シューマンの不健康なアンバランスさがない)という気がするけれども、やはり立派な演奏。ショパンの二曲のソナタも甘い音のせいか、突き抜けるものには欠けて聞こえる。リストはとても素晴らしい。
      室内楽の二曲は、シェリングとのベートーヴェンは実は未聴だったが、とくにクロイツェルはそれが悔やまれるくらいの名演。瑞々しく切り込み鋭いシェリングに、含蓄の深いルービンシュタインのピアノ。ブラームスのソナタと並んで同曲中トップクラスだ(でもLPからということなのか、少し後に録音された八番が入っていないのは残念)。新100万ドル・トリオの二曲でイニシアティブをとっているのはルービンシュタインよりはハイフェッツで、この二人の作曲家らしくなくグイグイと突き進む。わが巨匠も端々で味を出すれども、ちょっと陰に隠れがち。あまり居心地良くなかったんじゃないかなぁ。ピアチゴルスキーはどうも音が平板でいいと思ったことがあまりない。この板起こしだとルービンシュタインの本当のところは伝え切れていないという意味で☆一つ減点。でも安いから買って損はない。

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     2016/07/01

    モントゥのブラームス、とくに初めての四番を含むとなれば買わなくてはと買ったが、期待は満たされなかった。基本的には音が良くない。ヒストリカルを聞き慣れている私にしてもそうだ。商品化をするほどの音質とは思えない。四番はステレオといえばステレオだが、膝上録音並み。どなたかがおっしゃるイコライザーは分らないけれども、二次側で補正出来るレヴェルとは思えなかった。ただし演奏はとても素晴らしそうで、尚更隔靴掻痒でフラストレーションが残る。一番もコンセルトへボウとの演奏を聴いたことがないので始めてだが、音はずっと良い。ちょっとハイ上がりすぎるがこの時期のライブなら十分。演奏は意外などほどフランス式。ボストン響は当時はそういうオケだったんだなぁ、という感じで、一番としては壮大とか重厚とかまして威丈高という感じではない。これのみ商品化する価値は充分あるが、少し肩すかしの感もなくはない。二番もかなり劣悪な音で、力演なのは窺えるが、LSOとのステレオ版は言うまでもなく、SF響とのモノ盤と比べてもこれをわざわざ聞く意味はあまりない。三番は少しいいけれども、基本的には同じ。NYフィルの熱演は分るけれども、マンチェスターでのライブの方がモノにしてもずっと音が良い。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/06/29

    皆さんおっしゃるように63年ライブとしては破格にいい音がする。死の前年の演奏だが、モントゥはそれが弛緩には全く結びついていないことが驚異。細かい声部まで聞こえ、バランスが煉られた演奏だ。5番のフィナーレはボストン盤と比べてもテンポの激変が大きく、要所要所で見栄を切るようなところがあるが、メンゲルベルクやストコフスキーのようなアクドさはないところがモントゥのモントゥたる所以。絶叫型のチャイコフスキーにはしていない。この年齢でなお変化を求めたというところは素晴らしい。ただボストン盤よりもいいかというとそうもいえない。好き好きでしょう。協奏曲は多分これだけしかないので貴重なドキュメントだが実に立派な演奏。大家の棒です(ロメジュリも同様)。オグドンは豪快闊達だが、とくに個性的とは思わなかった。しかし、ウィーンのライブでこの音質なら、前年のコンセルトへボウとの引越し公演の「幻想」もそうであって欲しかったなぁ(オケの威力が半端ない。未亡人も述懐しているように会心の演奏だったのに)。

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     2016/06/18

    半分づつの1cd盤よりこの2cd盤の方が半額というのはどうなんだろう?でも演奏は素晴らしい。かつての巨匠たちは、バッハの理念と対峙しながら厳格な音の伽藍を一丁のヴァイオリンで構築しようという感じだったけれども、ファウストはもっとさりげなくすっとバッハに接近している。シャコンヌですらそうだ。ノンビブラートの古楽流だが、それだからというより彼女の感性を通したバッハ像だろう。とりわけ三拍子系の舞曲の生彩は目覚ましい。強いていえば一枚めの方がより自然態が完成しているかな?

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     2016/06/10

    仰天ものは39年ライブの「エグモント」。蔵は板起こしではなかったの、と思ったら一部の曲はかつてLP として出たそうで、そこからの復刻と言うことらしいが、私のもっているアンドロメダの全集よかずっと生々しい。そのせいで火の玉のような凄まじい気迫の演奏が展開する。五番は、昔からトスカニーニのベストといわれているが、全集のライブの方が演奏・音質ともに上。ハイドンは意外にいい音で、リーフレットにもあるように重いというか、フル装備のハイドン。今日基準にすれば超やりすぎだが、生命力は凄い(そういう曲なのかという疑問符をつけなければ)。椿姫は全曲盤より柔軟な表情が聞けるが、音はかなり落ちる。ということで平均して☆4つ。

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     2016/06/09

    タカーチの旧盤だが、音は目(耳?)を見張るほどのもので、古さは感じない(もっとも新盤は聞いていないので比較上ではない)。ただし、下のレビューワーの方が「あまりにもハデハデ」というのは分らなくもない。とくに響きの厚い一番がそうだが、ブラームスの質朴な感じはないから、モダンかつ美麗すぎる音と感じる人がいても不思議ではない。ABQにもそのきらいがあったが、まるでオケみたいな勇壮な響きで超絶的なテクシックが展開される。カラヤンとBPOみたいともいえなくはない。ただ二番とか三番とかはもっと目の詰まった表現だし、五重奏曲もブダペストみたいにマジャール風ではなく、むしろ優麗な演奏。好き好きでしょうね。ベートーヴェンやバルトークと比べてその辺の留保があるため☆四つにしました。この値段なら五つでいいんですけど。

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     2016/06/07

    「オランダ人」。デッドな音(その分明快ではある)も相俟って、ライナーの指揮はモノクロ時代のアメリカの活劇映画のようにハードボイルドだが、それをバックにホッターとヴァルナイの黄金コンビが理想的な名唱を繰り広げる。ホッターの述懐の深さ、ぐんと遅いテンポのバラードにおけるヴァルナイの憑かれたようなゼンタ。エリックが馬鹿にいい声と思ったらスヴァンホルムとは恐れ入った。スヴェン・ニルソンのダーランも水準を超えている。デッドな音で損をしているのは合唱で、雰囲気と奥行き感に欠けるが、まぁ仕方がないか。
                                           「タンホイザー」。序曲の出だしから少しの思い入れもタメもなく開始するセルだが、チェロの合いの手に力が籠るとどんどん盛り上がり、ヴェヌスブルグも、版が違う(ドレスデン版)のですぐに終ってしまうが、各幕の幕切れはクールなセルとは思えない凄い迫力。ヴィナイのタイトルロールは野太い戦前風の英雄テナーで立派。ハーショウのエリザベットは美声ではないが、出だしから力が入った熱演。珍しい(?)ヴァルナイのヴェヌスとの違いもはっきり。ロンドンのヴォルフラムも後年のような品のない声でなくまずは及第。

                                               「ローエングリン」は、オケが少々寸詰りぎみの音だが、ラインスドルフは、二幕の二人の女声のやりとりの背後のオケとエルザの大聖堂への入場のシーンなどはなかなか切々として聞かせるし、三幕の前奏曲も颯爽としている。メト・デビューして間もないヴァルナイのエルザは若々しいが、勁い声で白鳥の騎士などいなくとも自分で難関を解決しそう。メルヒオールは大分太った姿の写真が興ざめで、かつ遠方からの声が不調を思わせたが、近づいてくるとさすがに凄い。ただ最後の別れは少々泣きすぎで古めかしい。ワルターの最初の「大地の歌」のソロだったトルボルクのオルトルートは期待ほどではない。適役ではないのかも。スヴェドのテルラメントは少々大げさだが悪くない。
                                  「ラインの黄金」は録音は悪くないが、指揮、歌手共にどうということはない。飛び抜けているのはホッターだけ。ドンナーなんか情けない声の田舎芝居だし、アルベリヒも声が出ない。日本人だけの公演だって今ではこれよかずっとうまい。
        「ライン」より11年も前の「ワルキューレ」は、鮮明さに欠ける音。ラインスドルフはこれで大分損をしているような気がするが、前年に急死したボダンツキーの代りとしてメトのワグナー路線を背負った彼はまだ30歳前で歌手やオケから軽く見られていたというが、むしろ健闘の部類。メルヒオールのジークムントはさすがに素晴らしく、一幕で父ヴェルゼに呼びかける悲痛な叫びの素晴らしさよ。この威力には抗し難い。マージョリー・ローレンスのジークリンデは、旧式だし特筆する所のない声だが、体当たり的な歌唱でメルヒオールと拮抗している。ブリュンヒルデのフラグスタートはさすがに立派だ。その後のヴァルナイにもニルソンにもないひんやりとした気品と神聖な風格があるが、戦後のものよりさすがに若々しい(ただし録音の関係で高音が割れるのが残念)。ヴォータンのヒューンは聞いたことのない名前だが、当時のメトの看板ワグナー・バリトンだったらしく、アメリカ人だが立派な歌唱。しかし二幕の最後で二人の千両役者が交錯する部分の途中から音が更に貧弱になり(レンジが狭い)、二人のディグニティを弱めているのは残念。この問題は三幕にも継続され、熱演なのに今ひとつもどかしい。しかしそれでも幕切れはやはり感動的。
                                               ボダンスキーの「ジークフリート」はさらに三年前の録音だが、音は「ワルキューレ」よりむしろ聞き易い。この演奏を有名にした山崎浩太郎氏の記述だとリマスターの出来不出来が多いとのことだが、これがどっちなのかは分からないが、メトに保存されていた音源からの復刻という触れ込みでもあり、この年代のライブでこれよりいい音は期待しづらい。ボダンスキーの指揮は、この時代として驚くほどデフォルメがなく、テンポも速めなモダンな演奏で、緊密にして迫力も不足しておらず、今のヤノフスキを思わせる。ロマン的と言うよりむしろザッハリッヒなワグナーだからアメリカで受けたのは良くわかる。歌手陣も充実している。フラグスタート(目覚めのシーンの凄い声!)とメルヒオール(ノートゥングを鍛える二つの歌のますらお振り!けどボダンスキー・カットというか繰り返しの省略で短い。メルヒオール良く納得したなぁ)の千両役者ぶりはいうまでもないが、ホッター以前の名ウォータンであったショルの高貴な歌唱、三幕でそれと渡り合うトールボルクのエルダやラウルケッターのミーメも素晴らしい。例外はハビッヒのアルベリッヒで、いささか情けない声だが、出番少ないのでまぁ許容範囲内。
        同じボダンスキーの「神々」は「ジークフリート」より一年しか前ではないのに、原盤の状態が悪かったのか、音が大分悪いのが残念。レンジが狭いというか音がかなり潰れている。ノイズも凄い。許容範囲外と感じる人も少なくないだろう。カットもあって快速の「神々」だが、一幕の二重唱から「ラインの旅」にかけてはそのまま一気に奔流のような盛り上がり。二幕中盤の進行も一気呵成で見事。流れで引っぱるタイプなのかもしれない。音の悪さが恨めしい(葬送行進曲はこの音ではさすがに厳しい)。でも終幕はそれでも感動的だ。ここではブリュンヒルデはフラグスタートではなく、前記ジーグリンデだったローレンスで、同じように体当たり的な歌唱だが、神聖感はないし、自己犠牲ではやはり弱い。メルヒオールは申すまでもなく、無比のジークフリート。死の場面の感慨の深さは彼が不世出のジークフリートであったことを、この音の中でも感じさせる。凄いのはルードヴィッヒ・ホフマンのハーゲンで、フリックをも凌ぐかもしれない憎々しさ。
                       黄金コンビに加えてボダンスキーがタクトをとる38年の「トリスタン」は比較的珍しい音源らしいが、音自体は明快なもののレンジが狭く、特に低音がでないのが惜しい。演奏は前奏曲(モダンな指揮と思ったらポルタメント続出。三幕のはもっと凄くてメンゲルベルクばり)からして素晴らしいのに。幕が開くとフラグスタートは最初から絶好調。後年のフルトヴェングラー盤よりずっと若々しく力に溢れている。レンジの狭さは女声にはあまり気にならないが、男声のとくに低い所がラッパ吹き込みみたいで、クルヴェナールのヒューンは立派な声(すぎるかも)なのに惜しい。二幕は名高い(?)ボダンツキー・カットが凄いが、不自然に途切れるわけではないし、音楽は白熱を極める。二人の主役はいうまでもなく「神」の歌唱で、ブランツェルのブランゲーネも錦上花を添えている。エマニュエル・リストの得意役マルケ王も立派。
                     「名歌手」はこの中では録音も新しいだけ良好。ライナーの指揮はメリハリと推進力をもった見事なものだが、前奏曲など結構大きなアゴーギグを多用し、必ずしもザッハリッヒではない(ロマンティックともいえないから、ドラマティックというべきか?)。二幕のロマンティックなところとドタバタのさばきもうまいものだ。三幕の祭典性にも欠けるところはない。歌手は皆優れている。男性中低声部があまり区別がつかない点が難点だが、当時のウィーンでの代表的ザックスだったシェフラーのザックスはうまいし、ロスアンへレスのエーヴァは、多分ドイツのリリック・ソプラノ風にしようというのか常々の彼女とは違う硬質な声の作りでアンサンブルに溶け込んでいるし(でも本当に彼女?)。ホップのワルターもとても良い。名演である。超長文失礼しました。

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