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Papachan さんのレビュー一覧 

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     2018/09/26

     このコンビのペッテション、回を追うごとに、どんどん充実した演奏になっています。今回のアルバムは、ペッテションのなかでも、もっとも有名、かつわたしのもっとも苦手な2曲の組み合わせですが、そんな苦手意識もどこかへふっとんでしまいました。このコンビのペッテションの魅力は、明晰さ、見通しの良さに由来する説得力の高さにあるとわたしは考えていますが、今回もその期待を裏切らない見事な演奏です。特に今回の第7番には、自信だけでなく、かくあらねばならぬ、といった確信や信念のようなものまで感じられます。今年5月に、ウィーンのムジークフェラインの大ホールに、このコンビの第7が鳴り響き、大成功だったとか。そんなニュースも納得できる出来栄えです。両曲とも最高の演奏と断言することに、何の躊躇もありません。

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     2017/08/27

     期待通り、いや期待以上の名演でした! この傑作は、初演者であるコミッショーナ指揮ストックホルム・フィルの、確信に満ちた名演奏(1981)がCD化されていますが、これはそれを凌駕すると言ってもいいでしょう。一見軽そうに見えながらも、弛緩したりぎくしゃくしたりするところがなく、ペッテションの確固たる世界を築き上げているのは、先に発売された第13番の演奏と共通しています。それでいて、リンドベリィの棒は第13番以上に雄弁になっています。52分休みなしの作品なのに、「もう一度聴きたい」と、続けて2度も繰り返して聴いてしまいました。BISのペッテション・シリーズとしては、残るは第12番のみ、ということになるのかもしれませんが、個人的には、かつてアツモンやセーゲルスタムの指揮で録音した5曲も、このコンビで再録してもらえたら、と思います。

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     2017/08/27

     正直、思い切り期待外れでした。世評が高い割には、なぜかいままで聴いたことがなかったので、聴いてみましたが……。勢いはあるが流れはぎくしゃく、とてもではないが感動できるものではありません。何度か聴き直した結果、どうやら、これはケルテスではなく、ウィーン・フィルに問題あり、というのが私の結論です。若きケルテスの棒より、自分たちのやりたい音楽をやりたいように歌いだす。それを指揮者は自分の音楽にしようと、必死にあおりたてる。そのせめぎあいを、世間では熱演とか刺激的とか受け取っているだけなのでしょう。皆さん、ウィーン・フィルの音は素晴らしい、と先入観や固定観念だけで聞いていませんか。いくら個人の力量が高くても、こんな勝手なアンサンブルではダメです! 指揮者とオーケストラが一体となって燃え上がるバーンスタインの旧盤(NYP)と比較すれば、その差は歴然。聴いていて、ケルテスが気の毒に思えてくる「新世界」です。併録のセレナードは大変な名演ですので☆3つにしますが、「新世界」だけなら☆2つがいいところです。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/08/10

    非常に切れ味鋭く、それでいて繊細かつユニークな演奏が多いと思います。テクニックと表現力は見事というより外にありません。しかし、彼への世間一般の評価同様、このボックスに収められたCDで演奏されている「音楽」も、最上級に素晴らしいものと、「あれれ?」と思うものが混在しています。白眉はラヴェルの「ガスパール」とプロコフィエフ6番、これは今後これを超える演奏が出るのかな、と思えるほど。意外に(?)スカルラッティやバッハ、あるいはハイドンなどが聴きごたえがありおもしろい。チェンバロを意識せず、あくまでピアノとして弾こうとしているのが素晴らしいと思います。しかし、モーツアルトは幻想曲以外は「?」。極めつけの問題作がブラームス。Op.76-1を選んだのはいかにも彼らしい選曲で、これは遅いテンポが見事にはまった、彼がこの曲に求めたものが見える名演ですが、次のOp.118-2は何だろう。アファナシェフ以上の遅いテンポで、しかもそれが何の必然性も持たないため、完全に音楽が空中分解しています。協奏曲がこれまた問題作。もっともこれはアバドの責任によるところが大きすぎます。ショパン2番は最高の名演でしょう。自在な弾きまわしのポゴレリッチをアバドがよく支えています。正直言って、アバドの演奏、特に協奏曲のサポートは、私の聴く限りダメなものが多く(ペライアとのシューマンは特にひどい!)、正直まったく期待していなかったのですが、これは大番狂わせ。ショパンの協奏曲は、意外にオケが重要で、オケがひどいと全部台無しになります(典型がルービンシュタイン/ウォーレンシュタイン盤)。きっちり充実した響きで、それでいてピアノを十分に立てなければならないという、なかなかの難物だと思うのですが、その点アバドの演奏は完璧です。しかし、チャイコフスキー1番は予想通りの(?)アバドの凡演にひきずられ、せっかくのピアノも台無し。この14枚の中で、これが一番ダメかな。その他も、ショパンのスケルツォ1番や4番のような超ド級の名演奏から、ラヴェルのワルツのような空中分解したものまで玉石混交(?)。とにかく凡演はひとつもありません。素晴らしいか、「あれれ」かのどちらかしかありません(要は聴き手の好みに合うか合わないか、ということかもしれませんが)。一人の演奏家のボックスで、こんなものも珍しい。というわけで、ボックス全体とすれば、中をとって☆3つにするしかないな、というところです。しかし、勝手気ままに弾いているピアノでは決してない、計算しつくされた、それでいて自由奔放で豊かな表現のできる稀有のピアニストだ、ということは声を大にして言いたいと思います。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/07/27

     名盤(迷盤?)ひしめくブラームスの最晩年の小品集ですが、1枚だけ人に推薦する盤は、と問われたら、迷うことなくこの盤をあげます。極端に遅いテンポで、いかにも深淵をのぞかせるような(それでいて中身に乏しい)、アファナシェフやポゴレリッチのような演奏とは異なります。むしろ、あっけらかんとするほどに明晰であり、テンポを揺らしたり妙なアコーギクをつけたりなど、余計なことはほとんどしていません。それでいながら、聴かせる何かを持っている、といったらいいのでしょうか。私も一度聴いただけでこの演奏の良さを理解までには至りませんでした。しかし何か放っておけない、また聴きたくなる魅力があるのです。何度も繰り返し聞いた結論として、これほど丁寧かつ真摯に曲に向き合った演奏は珍しいのではないでしょうか。今まで聴いてきたブラームスの演奏にこびりついていた「垢(=先入観)」を洗い流してくれた演奏、といったら言い過ぎでしょうか。アウストボーの名前は聞いたことはありましたが、実際の演奏に接するのは当盤がはじめてでした。当盤から判断する限り、大変な実力者だと思います。こんな廉価でこの名演奏が手に入るとは! 彼のOp.76が廃盤というのが本当に惜しい!

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     2016/07/27

     高校時代に初めて買ったLPがこのブラームス。すでに1枚1300円の廉価盤でした。だからというわけではないのですが、極めて愛着のある一枚です。私がこれまでに聴いた中でも、ギレリス/ライナー盤、フライシャー/セル盤と最上位を争う名演奏です。リヒテルのピアノは上出来ですが、それよりもこの盤でとにもかくにも素晴らしいのは、ラインスドルフのバックです。当初ライナーとの共演の予定が、そりがあわず、急遽ラインスドルフに交代したとか。リヒテルのピアノを最大限に生かしながら、すべてを自分の掌中に収め、実に堂々たる音楽を築き上げているのは立派。一流の芸術家の仕事です。この盤についてラインスドルフの伴奏を非難するコメントを他のカップリングの盤で見かけましたが、逆にラインスドルフでなければなしえない、緻密でありながらのびやかな演奏がこれなのです。この曲に関しては、ギレリスがライナーと、リヒテルがラインスドルフと、それぞれアメリカで見事な演奏を残しながら、のちにヨーロッパで再録音したものが指揮者に恵まれない(ヨッフムはギレリスを鈍重な伴奏で押し潰し、マゼールは弛緩した演奏にリヒテルを巻き込んだ)というのも共通しているのは、何かの因縁でしょうか。「熱情」ソナタも悪くありませんが、当盤でまず聴くべきはラインスドルフの見事な「技」です。

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     2016/07/24

    徹底して磨き抜かれた音の響きは確かに素晴らしいものがあります。その点において、ドビュッシーは名演奏と呼ぶのに、何の躊躇もありません。ショパンのマズルカも、これはこれでおもしろいと思います。しかしその他は「?」ばかりです。協奏曲は、その演奏の良しあしはともかく、カラヤンがそうしていたように、指揮者がソリストを含め、すべてをきちんとコントロールできないと、歪んだ、あるいはいびつな演奏になってしまいます。ベートーヴェンはその点特にいけません。ジュリーニが、言うなればオケを「横に振る」ことで、ミケランジェリのピアノの美しさを際立たせようとしたのでしょうが、本末転倒の極みです。そもそも納豆のように粘る(?)ジュリーニと、ミケランジェリでは目指す方向性がまったく違っています。したがって、全体としてはひどく締まらない演奏、と言わざるを得ません。その点ではクライバーとの共演が仮に実現したとしても、この盤以上にちぐはぐになるであろうことは想像に難くありません。モーツアルトは、そもそもミケランジェリがすべてをコントロールするつもりでガーベンを指揮者に選んだのでしょうが、そもそもモーツアルトが彼の音楽性に合わない上に、やや演奏が崩れ気味なのは、「wilhelm」さんご指摘の通りだと思います。得意曲だという、ベートーヴェンの4番ソナタもやや期待外れ。いちばんいけないのがブラームスのバラード。音楽が流れていません。表面上の音響の美しさで比較すれば、確かにギレリスの上をいくかもしれませんが、ドビュッシーのような弾き方でブラームスを弾いても音楽は流れないのです。したがって、出来上がった音楽はギレリスに遠く及ばないのです。不世出の名ピアニストの、貴重な録音であることは間違いないでしょうが、私にとっては、残念ながら彼の欠点を強く印象付けるものとなってしまいました。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/07/11

     ラインスドルフの本来の実力の高さを知るうえで、格好の名盤です。特に交響曲第2番と第6番は、最高の名演奏といってよいと思います。ラインスドルフの評価が低いのは、今日の音楽評論家、愛好家諸氏の嗜好が、爆演型の演奏に偏向しているからではないか、と思えます。ラインスドルフの録音と実演は、だいぶ異なるものであったそうですが、録音として残されるものは、聴衆へのアピールのための余分な強調を排した、作品本来の姿でなければならない、という思いがあったから、とも思えます。このプロコフィエフは、よく耳をすませば、正確なアンサンブルに裏付けられた、極めて品の良い音楽が聞こえるのです。プロコフィエフの音楽は、その性格上特に、はったりとこけおどし、あるいはアクロバット的なテクニックだけで聴かせる空疎な演奏のほうが、むしろ第一印象はよいだけに、この演奏のうけは正直よくないのかもしれません。しかしここにある演奏を耳にすれば、現在高い評価を受ける演奏の多くが、いかに「音楽」になっていないかがわかると思います。第2交響曲など、ぐちゃぐちゃしたうるさいだけの演奏が「名演」と評されていますが、そんな演奏を聴いてこの曲にうんざりされた、あるいは拒絶反応を起こした方が多いのではないのか、と思います。もちろん、そんな演奏ではこの名曲の魅力はわかりません。ラインスドルフの演奏は、実によく整理された、見通しの良い明晰な演奏で、この曲の本来の姿を見事なまでに提示しています。第6交響曲も、この曲に貼られた「晦渋」というイメージが、いかに的外れなものであり、どれだけ奥の深い音楽であるかがわかる、最高の名演奏です。いわゆる「爆演」による興奮をお求めの方にはお薦めできませんが、本物の演奏による、プロコフィエフの音楽の奥の深さ、素晴らしさをお求めの方には、絶対のお薦めです。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/07/02

    これぞ21世紀のスタンダード! これさえあれば他の全集はいらないとまでいえるだけの、恐るべき完成度を誇る全集です。古楽器によるインチキ臭い演奏、フルトヴェングラーやクナッパーツブッシュのようなおどろおどろしい演奏が大嫌いな私には、「こんなベートーヴェンが聴きたかった」と思える、新鮮で生き生きした躍動感にあふれる演奏です。「箱庭的な演奏」「おおらかなスケール感や伸びやかさに欠ける」などのご指摘がありますが、いったいどこからそのような印象を持たれたのでしょうか? 私には全くの見当はずれに思えます。正直、シベリウスを指揮するヴァンスカの演奏は、悪くはないけれど、飛び抜けてすばらしい演奏か、と問われると疑問に思えることが多かったものです。ミネソタに移ったという話を聞いても「アメリカのオケにヴァンスカの音楽性は合うのか?」という疑問が先に立っていました。これを聴いてヴァンスカという指揮者、そしてミネソタ管の底力を改めて見直しました。第1番はラインスドルフ/ボストン、第8番はセル/クリーヴランドというのが私のファーストチョイスですが、これらに十分匹敵する、切れ味鋭く緻密な、それでいて広がりのある見事な演奏を聴かせています。第3番は終楽章の最後の追い込みがやや物足りないという点を除けば、無敵の名盤であるセル/クリーヴランドに十分比肩しうる名演奏でしょう。少なくとも、私が今まで聞くことのできた「エロイカ」の中で、セルとヴァンスカの両者に並びうる演奏は、ただのひとつもありません。私はこの3曲が特にすばらしいと考えます。もちろん他の曲も正確無比なアンサンブルによる磨き抜かれた演奏であり、これはダメと思えるようなものはひとつもありません(下にご指摘のあった第4も、さすがにムラヴィンスキーまでは届かないにしても、クライバーやオーマンディなどの名演奏には十分比肩しうる、切れ味のよさと伸びやかさを両立した名演奏だと思います)。奇を衒ったところは何一つないのに、非常に新鮮な演奏。セルやラインスドルフ、オーマンディといった20世紀の名演奏に並ぶ、いやそれらをも凌駕しうる全集として、絶対の自信をもって推薦します。

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     2016/06/27

     「ピアノ版チェリビダッケ」とでもいうべきでしょうか。磨き抜かれた音響は確かに素晴らしいものです。ここまで音響を磨いたため、ここまで極端に遅いテンポになったとも考えられるでしょう。ある意味魅力的であり、この演奏が好きだという方は、中毒症状すら起こしかねない演奏です。しかし、これらの曲は、ほんとうにこんなに絶望的に暗い曲集でしょうか? 少なくともここに表現されたような「瀕死のブラームス」ではない、と私は断言します。酸いも甘いも、喜びも悲しみもすべて包み込んだ、晩年のつぶやきがここにはあります。この演奏を絶賛される皆さんは、このCDに添付された浅田彰の文章、そしてアファナシェフ自身の「文学」に引きずられ、先入観を抱いたまま聴いていませんか? これらがどれだけブラームスの音楽とは縁遠いことか! 遅いテンポのために音と音の間隔が開いている、これをもってブラームスの晩年の世界は新ウィーン楽派に通ずるなどというのは、自己満足の解釈の極みです。結局アファナシェフがここで表現しているのは、ブラームスの音楽そのものではなく、彼の目に映ったこれらの曲集の「文学」でしかないのです。したがってこの演奏にブラームスの「音楽」を求めれば求めるほど、違和感を強く感じてしまうことになります。アファナシェフの「文学」が通用しないOp.119-4は、名演として私も高く評価します。しかし、それ以外は全く共感できない演奏です。遅いテンポが問題なのではなく、そのテンポが絶望的な曲想の表現以外に、何の必然性もないこと、したがって空疎な、間延びした「音響」しかそこにないことが問題なのです。例えば、有名なOp.118-2ひとつとってみても、この演奏のほぼ倍のスピードであっさり弾いてしまったケンプの演奏(ちなみに私はケンプというピアニストはあまり高く評価していませんが)のほうが、よほど心に沁みる「音楽」ではないでしょうか? 演奏だけなら☆3つでもいいが、ライナーノートの浅田彰の、先入観を与えるだけの感傷的な文章がひどすぎるため、残念ながらさらに☆1つ減点です。

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     2016/06/22

     バッハなどの個性的な演奏が頭に焼き付いていて、あの調子でブラームスを弾き崩されたら聴いていられない、といままでは入手をためらっていた1枚でした。最近ブラームス晩年の小品集、特にOp.118-2にはまり、その理想の演奏を追い求めていました。その理想の姿がグールドだとは、思いもよりませんでした。「遊悠音詩人」さんご指摘のように、伴奏のはずの声部が前面に押し出される個所がいくつもあります。しかし、これが本来の姿ではないのか、と思わせる説得力がこの演奏にはあります。アファナシェフやポゴレリッチなどの、音響のみにこだわった「瀕死のブラームス」演奏とは大違い、ここにはむしろ微笑しているかのような、本来のこの曲の美しさがあります。このCDは、ぜひオリジナルの曲順そのままで通してお聴きになることをおすすめします(その意味で、「うーつん」さんのご指摘はごもっともだと思います)。そこにはグールドが仕掛けたストーリーがあるように思えてなりません。本来ゆっくり弾いてもよさそうなOp.119-1を早めのテンポで弾き、Op.118-1を風のように流したあとにOp.118-2で締めくくるというこの構成は、グールドの演奏の真価を確かめる上で非常に重要です。他のピアニストの演奏をこの曲順にプログラムして聴いても、ここまでの感動にたどり着けないのは、ある意味当然かもしれません。

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  • 9人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/06/15

     誰が言い出したのか、ギレリスのピアノは「鋼鉄」と比喩され、彼の演奏は常にそのイメージ、いや先入観をもって聴かれてしまったように思います。しかしながら、この「鋼鉄」は、あまりにも一面的な評価にすぎません。実際の音に耳を傾ければ、どれほどの透徹したリリシズムをもっていたかはすぐにわかります。このセットで特に驚いたのはショパン、とりわけ第3ソナタ、第3楽章の表現の深さ、そして第4楽章の冒頭の鮮烈さには驚きました(恥ずかしながら、彼がショパンを録音していたことは、このセットを開けるまで知りませんでした。お粗末)。しかしながら、なぜ☆4つか。協奏曲がいけません。モノラルの「皇帝」は見事です。しかしステレオの協奏曲はいけません。ブラームスはヨッフムの指揮が鈍重(スケールが大きい、とはまるで違います)で、せっかくのピアノの名演をぶちこわしにしています。よく比較対照されるゼルキン/セル盤には、ピアノではなくオーケストラの差で遠く及びません。第2番はライナーとの旧録音のほうが、オーケストラははるかに素晴らしい(ピアノだけなら新録音のほうがいいとも思えますが)。モーツアルトは、もっといけません。巷ではベームのモーツアルトは高評価で、神聖視する人さえいますが、何も考えていないのではないのかと思えるくらい凡庸の極み。27番だけとっても、同じウィーン・フィルによるカーゾン/セル盤のバックとは雲泥の差。したがってギレリスのピアノもいまひとつさえないという感があります。それでも、ブラームスの独奏曲(とりわけOp.116が素晴らしい!)、グリーグの抒情小曲集などの名演がそれを補って余りあります。ベートーヴェンのソナタ全集が完成できなかったのが何とも惜しいのは言うまでもありませんが、残された素晴らしい演奏に耳を傾けることにしましょう。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/03/02

    これは見事! この名曲の決定的名演奏と言ってよいのではないでしょうか。先にリリースされた第16番も優れた演奏でしたが、これはそれ以上の名演奏です。このコンビのペッテションのうち、第9や第6などは、先行するcpoの全集盤の演奏の影響がどことなく感じられる点、やや不満でもあったのですが、先の第16番や今回の第13番に至って、リンドベルイはようやく自身の揺るぎない解釈を演奏に反映できたのでは、とも思えます。第9も第13も長大なのには変わりありませんが、その質は全く異なります。長い逃走の末、諦めの歌が静かに流れる第9と異なり、第13は螺旋階段を67分にわたりかけ上り続けるような曲想であり、最後は盛大なフィナーレで終わります。だからこそ、この曲の演奏にはぎくしゃくしたところがあってはいけません。何より一貫した大きな奔流のようなものが求められます。この曲を、リンドベルイは実にふわっと演奏しています。余分な力が入っていません。それでいて実に大きな音楽のうねりが感じられます。だからこそ、一気に聞きとおせるし、ある意味第9を突き抜けたところに存在する、この曲の真の凄みがわかる演奏ではないでしょうか。今までフランシスのやや硬い演奏(cpo)でしか聴けなかっただけに、この演奏の存在価値は本当に大きいものがあります。

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     2015/09/14

     シベリウス自身は第6について作曲段階で「激しく情熱的な性格……最後はオーケストラ全体が大混乱となり、主要主題はその中で溺れる」とカーペラン男爵に説明していたといいます。この第6にはらむ一種矛盾した抒情と狂気を、もっとも純粋に再現したのが、このバーンスタインの演奏ではないでしょうか。この演奏はシベリウスの交響曲が、インターナショナルな普遍的な価値を持つ作品であることを世に知らしめた最初の全集ではないでしょうか。1960年代中ごろ、まだ全集としては、コリンズのモノラル録音と、渡辺暁雄の旧録ぐらいしかなかった時代に、シベリウスの普遍的な価値を伝えようとするバーンスタインの情熱が、ひしひしと伝わってくる演奏です。その白眉がこの第6でしょう。この曲のベストの演奏とは言えないとしても、この演奏を避けて第6を語ることはできないはずです。第1や第4にも見られるこの荒さは、マゼールの旧盤のような、指揮者の強引すぎる解釈によるものでなく、作品自体に備わっていたものをバーンスタインが引き出した結果であるのです。シベリウスを北欧の叙情的な作曲家としてしか考えない方、バルビローリの激甘の勘違い演奏を、最高のシベリウス演奏とお考えになる方には、この演奏は向きません。しかし、ベルグルンドや渡辺暁雄などの名演の良さがわかる方には、ぜひ一度は聴いてみていただきたい全集です。そう、忘れてはいけません。このボックスに収められたフランチェスカッティとシッパースによるブルッフの第1協奏曲は胸のすくような快演! 個人的にはこの曲のベストとしてあげてよいと思います。

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     2015/05/20

     今から15年以上も前に買ったらしいのですが、なぜか聴かずにお蔵入りしていました。CD棚を見たら「あれ、こんなの買ったっけ?」と、新品同然にビニールをかぶっていたこのCDを発見。とりあえず聴いてみようかと、プレーヤーに入れてびっくり! いや、このリコーダー協奏曲、大変な名作ではないですか。フルオーケストラにリコーダーでは張り合えませんから、弦楽合奏にチェレスタ、ヴィブラフォンという編成ですが、この編成が生み出す独特の音色と、リコーダーが実によくマッチし、そこはかとない愉悦と哀感が感じられます。ほかのどんな協奏曲からも味わうことのできない品の良さは特筆すべきでしょう。いや、こんな名曲を長年お蔵入りさせてしまっていたことに後悔しきり! 一気に愛聴盤になりました。フルート協奏曲2曲も悪くありません。ホルンボーは交響曲と弦楽四重奏曲ばかりが注目されますが、多数残されている協奏曲にも、掘り出し物がたくさんありそうです。

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