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村井 翔 さんのレビュー一覧 

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     2009/11/23

    ドキュメンタリー部分では『春の祭典』でやったように斬新な管弦楽法の妙味をとことん解明してくれるかと期待したが、これは残念ながら外れ。その代わり、作曲者の幼年期からハリエット・スミスソンとの結婚までの物語は良くできている。例によってティルソン・トーマスがパリや作曲者の故郷、ラ・コート=サンタンドレまで出向いての丁寧な収録。私はこのような映像作品でのオーケストラ演奏の収録は断じてナマ演奏の等価物ではないし、あってはならないと考えているので(この点ではNHKの某ディレクターと正反対の立場)、「キーピング・スコア」シリーズの工夫されたカメラワークは演奏会映像の理想だが、この曲もまた映像としては素晴らしい出来ばえ。ただし、演奏そのものは決して熱く煽り立てることがなく、軽みと明晰さを備えている。それならば、この曲のスコアリングそのものが生み出す奇怪さをもう少し追求して欲しかったところだが、洗練され過ぎていて、あと一押しが不足。

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     2009/11/23

    ドキュメンタリー部分では、ほぼヴォルコフの偽書『ショスタコーヴィチの証言』通りの解釈、すなわち終楽章は「強制された歓喜」であり最後はハッピーエンドではなくむしろ葬送行進曲という解釈をスコアの内在的分析によって跡づけてゆく。実際にオーケストラを使った、アナリーゼの実演はなかなかの見ものだ。演奏部分はロンドン、ロイヤルアルバートホールでのプロムスでBBCが収録したライヴなので、いつもほどの凝ったカメラワークは見られないが、巨大なスケールと繊細さを兼ね備えた素晴らしい名演。前述の解釈で演奏しているので、終楽章冒頭は普通に始めて強烈にアッチェレランド、中間部以降は考えうる限り最も遅いテンポだが説得力は絶大。第1楽章再現部冒頭の遅いテンポも凄まじい圧迫感だし、第3楽章の寂寥感も心に沁みる。

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     2009/11/22

    舞台は荒廃した世界、聖杯騎士団をカルト宗教のような硬直した集団としてネガティヴに描くなど、基本コンセプトはフリードリヒ、クプファー以来の『パルジファル』演出の延長線上にある。コンセプト自体の見せ方はクプファーの方がうまいと思うが、レーンホフには珍しく一貫性のある解釈でこれも悪くない(特典映像で演出家自身が演出意図をべらべら喋ってしまうのは、ちょっと興ざめだが)。アハスヴェール(さすらいのユダヤ人)であるクンドリーが死ぬことによって救われるというエンディングが反ユダヤ主義的、女性蔑視的と物議をかもして以来、ワーグナーのト書き通りの幕切れはほとんど見られなくなったが、この演出ではアムフォルタスが死んだ後、パルジファルは受け取った聖杯王の冠をティトゥレルの遺体に返すと、クンドリーに続いて騎士団を見捨てて出て行ってしまう。聖槍を掲げるグルネマンツのもとからも騎士たちが一人また一人と離れて、新世界を目指す彼らについてゆく。歌手陣ではマイアーが相変わらずの貫祿。前述のような演出方針もあって、彼女がこのオペラの「主役」になってしまっている。一方、題名役のヴェントリスは見た目が役のイメージに合わない。アクの強い保守頑迷なサルミネン、弱々しく女性的とも言えるハンプソンは、いずれもこれらの役の伝統的イメージとは正反対だが、完全に演出意図通りの歌唱。細身でシャープな指揮も新世代の『パルジファル』にふさわしい。

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     2009/11/09

    映画版を除けば『マクベス夫人』三組目の映像。舞台を現代に移し(この読み替えに関しては、諸手を挙げて賛成ではないが)ハードな性的表現を見せるクーシェイ演出(ネーデルランド・オペラ)、喜劇的・風刺的な効果も含めてバランスが良く、別の曲の一部を間奏曲に転用したり、エンディングがオリジナルと異なるなど意外に大胆でもあるヴィンゲ演出(リセウ歌劇場)、この二つに比べるとかなり苦しい。性的な表現が控えめなのは演出のポリシーであって、それはそれで構わないが、他に見せるべきものが何もなく、凡庸と言わざるをえない。歌手陣もボリスと老囚人を兼ねるヴァネーエフ(クーシェイ演出版と同じ)、セルゲイのクニャーエフなどは良いが、主役のシャルボネは古風な「毒婦」風演唱のために共感できない。ボリスに毒入りキノコを食わせた後、体を寄せて性的に挑発するなど「悪女」路線は演出の方向でもあるので、歌手一人の責任にするわけにはいかないが。私がこのオペラを初めて観た1992年のクプファー演出、ケルン歌劇場来日公演でも振っていたコンロンの棒は手堅い。

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     2009/11/09

    久しぶりに日本で見たメータはメタボ体型を脱して、渋いおじいさんになっていた。音楽の方も少しスリムになったようだが、若い頃のギラギラしたところが無くなって見事に枯れてしまった。一昔前ならベームのような巨匠として崇められたはずだが、そういう時代ではなくなってしまったのと、メータ自身のレパートリーが渋さの似合わぬものばかりであるところがこの指揮者にとっての不幸。マーラーも特に5番ではポリフォニーのセンスが弱いのと、(オケと録音のせいもあろうが)色のパレットが少なく、ほぼべったりと一色で塗られてしまっているのは致命的。オケの力量としては格段に下、マッスとしての力がないPMFオーケストラを鮮やかに統率してみせるティルソン・トーマスと比べると、残念だが旧世代の指揮者というレッテルを張らざるを得ない。

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     2009/11/08

    結成15年目のベルチャ四重奏団、昨年のバルトークに続いて古今の室内楽曲の最高峰に挑んできたが、これが驚異的な名演。弦楽五重奏曲は第1楽章から二つのチェロが雄弁に動き、いわば「死の影」を強く刻印する。第2楽章ではこの上なく美しい音が紡ぎ出されてゆくが、中間部の激動を経た後の繊細さは痛々しいほどだ。もっと能天気に奏でられることも多い終楽章がこんなに傷つきやすい、デリケートな音楽であることを教えてくれたのは、この演奏が初めて。ト長調四重奏曲の長大な第1楽章も痛いほどの緊張がみなぎっている。哀愁に満ちた第2楽章も全く痛烈な表現で、個人的には『死と乙女』に少しも劣らぬ傑作と考えるこの曲の真価を余すところなく明らかにしている。ベルチャ四重奏団はシューベルトをヤナーチェクやバルトーク並みの表現主義的な音楽に近づけたとも言えよう。ここまでの2曲があまりに凄いので、比べるとやや普通に聴こえてしまうとはいえ、『死と乙女』も、もちろん迫力と繊細さを兼ね備えた素晴らしい演奏。

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     2009/11/08

    もともとワイルドな曲調を持つ『スコットランド』はアーノンクール、ブリュッヘンの好演から見ても、ピリオド・スタイルとの相性の良さは明らか。さて、そこでピリオド最過激派ファイの登場だが、第1楽章第1主題の確保から早くも一気にテンポが上がり猛烈な響き。贅沢な不満を言えば、すべては想定範囲内とも言えるが、アダージョ楽章の対旋律の強調などはやはり面白い。N響に客演したホグウッドの凡演にがっかりした後だけに大いに溜飲が下がった。弦楽のための交響曲中、最大の大作である第11番も素晴らしい出来で、打楽器入りの「スイスの歌」を第2楽章に入れて演奏している。

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     2009/11/04

    はっきり言ってアバドはどうしても好きになれない指揮者だが、新生ルツェルン祝祭管を組織して以来、特にここ2〜3年の演奏水準の高さは、アバド嫌いをも黙らせずにはおかぬものがある。2008年夏のルツェルンのハイライトは幻想交響曲だったと思うが、なぜかCDが発売中止なので、これで我慢するしかない。このDVDの白眉は最初の『テンペスト』。すでに2回録音、BPOとのライヴ映像もあるアバドの得意曲だが、下手にやると茫漠たる感じになりかねない曲を見事な起承転結で聴かせる。ラフマニノフは、今やバリバリ弾くのは流行らないわよと言わんばかりの粋で繊細な演奏。『火の鳥』では緩急、強弱、声部のバランスなど様々な面で音楽の「とがったエッジ」を滑らかにしてしまうアバドの悪い傾向が出た。むしろ優美といっても良い、安定した演奏だが、この曲本来の前衛的な趣きは消されてしまっている。

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     2009/11/03

    むしろモダンでシャープな感覚のアルゲリッチ、クレーメル、マイスキー組に対して、世代としては遥かに若いラン・ランがホロヴィッツばりのグランド・マナーを見せるのは面白い。レーピンもクレーメルに比べれば、ごく普通の(悪い意味ではなく、ごく普遍的な)ヴァイオリニスト。前の盤とは対照的なコンセプトにも柔軟に対応できるマイスキーはさすがに懐が深い。強烈なコントラスト、熱狂的な盛り上がりを見せるリカド、サレルノ=ソネンバーグ、メネセスの演奏は忘れがたいが、現在、入手不能のようなので、ロマンティックなチャイコフスキーぶしを堪能したい人には第一に推せる演奏。前述の二組のように、この曲では意外にもヴァイオリニストが演奏の性格を決定することが多いが、これは明らかに一番若いラン・ランが主導している演奏だ。

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     2009/11/03

    LPの印象ではもう少し音が悪いと思っていたので、大変きれいにCD化されているのに驚いた。サヴァリッシュ、シノーポリ、ショルティなど近年の世代に比べるとやや武骨ではあるが、指揮の構えは非常に大きい。色々な演奏を聴いてみると、むしろベームの方が古典的な凝集力の強い特殊な指揮であり、カイルベルトの方が一般的なアプローチだったと言える。オペラハウス再建落成記念という特別な機会の祝祭的演奏なので、ホッターが伝令使などという信じられないような豪華キャストが組まれている。ビョーナーの皇后が見事なハマリ役だったことは再確認できるが、例によって表情を作りすぎるF=ディースカウは好みを分けよう。染物師は芸術家の表象だから、これもありとは思うが、一声で善人と分かるようなキャラではない。ライヴゆえ仕方のないことではあるが、かなりカットのある版なのが残念。

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     2009/10/26

    11年間苦楽を共にしたオケとの別れにあたって指揮者がこの曲を選択するのは良く分かるし、インタビューによれば、故郷の広島でこの曲を演奏することにも相当の思い入れがあった様子。私も当日、会場にいた一人だが、その特別な曲のライヴ録音がサントリーホールの聴衆らしからぬ盛大な会場ノイズに見舞われたのは全く御愁傷様。フライング気味の拍手は残してあるが(実際にはもっと早いタイミングで拍手が始まったと記憶しているし、私も拍手は不要と思う)、終楽章終盤は明らかに録り直しが行われたようで、CDとしては問題なし。夜ではなく日曜午後の演奏会だったのも(この点、6月28日夜というライナーノートは誤り)、録り直しの可能性を計算に入れた設定だったのだと思う。さて、肝心の演奏について。指揮者の思い入れのほどは第1楽章第1主題の凝ったフレージングからして一目瞭然だし、オケも本当にうまくなった上に誠心誠意の演奏だったと思う。問題はやはりテンポ。大阪フィルとの第5の件から見ても、この遅さはオケが曲を咀嚼しきれていないせいではなく、指揮者の確信犯的な解釈と見るべきだろう。もちろんご存じのような曲だから両端楽章が遅いのは全く構わないし、シャイーのように推進力を犠牲にしてもポリフォニックな、彫りの深い彫琢をめざそうという行き方があってもいい。それでも第2楽章の第2ワルツ、第3楽章の基本テンポなどについては、遅さを必然と納得させられるほどの説得力が感じられなかった。残念。

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     2009/10/25

    2008年NHK音楽祭での爆演が記憶に新しいブルッフが文句なしの快演。ラプソディックな奔放さ、濃厚な歌い回しに加え、第1楽章第2主題のような小技も効かせるようになり、同郷の先輩、チョン・キョンファと肩を並べる域にまで来た。ブラームスも遅めのテンポかつ攻め口が基本的に同じパターンなので、やや単調さを感じさせるが、全く臆することなく決然と曲に向かって行く姿勢は気持ちよい。録音はEMIらしからぬ、低域の厚い重厚な響きがしている。

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     2009/10/25

    サロネンの20世紀音楽は定評あるところだし、後期ロマン派への相性もパリでの素晴らしい『トリスタン』で確認済みだったが、ここまでやるとは。スコアを隅々まで掘り起こしたような精密さは、もちろん期待通りだが、馬の疾駆する様を描いた第1部第3曲や第3部の亡霊たちの合唱では、得意の精緻さを多少犠牲にしても表現主義的な表出を優先させているのが印象的。他方、抒情的な部分では、たっぷりしたロマンティシズムがある。難役ヴァルデマールに挑むのは、原詩の作者ヤコブセンと同じデンマーク出身のスティグ・アンデルセン。『指輪』のジークフリートも歌うヘルデンテナーだが、従来このパートを歌ってきた歌手に比べればリリックな、若々しい歌声の持ち主であるのが好ましい。イソコスキもドラマティック・ソプラノではないし、山鳩のグロープも大柄な歌を歌う歌手ではないから、このあたりは指揮者の意図に従った人選だろう。最後の語り手は内容から見て女性が担当した方がふさわしいと前から思っているが、アバド盤以来のバーバラ・スコヴァがまた素晴らしい。

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     2009/10/17

    ヤンソンスのマーラーは1、2、5、6、9番と聴いて、どれも感心しなかったが、初めての納得できる出来ばえ。この曲には交響曲の理念そのものを茶化すような、恐ろしく破壊的な側面があり、ラトル、インバルなどそうした面に焦点を当てた演奏もあるが、これはごくまっとうなロマン派交響曲というコンセプトでの演奏。緩急の対比を大きくとった第1楽章は極めてパワフルだし、終楽章もパロディはあまり意識せず、オーケストラのためのヴィルトゥオーゾ・ピースと割り切っているが、ショルティのようにドライに徹するわけではない。つまり、ロマンティックな味わいを残しつつも、平衡感覚よりはむしろ押しの強さを優先させた演奏だが、それが説得力に結びついている。ライヴゆえ、録音は強奏でやや混濁するが、精緻ではあるものの「中立的」で演奏の旗色が見えないジンマンなどより、よほど魅力的。

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     2009/10/11

    もはやデセイが歌うことのない夜の女王、オランピア、ツェルビネッタがそれぞれ二種類ずつ見られるのが本当に貴重。この三役に関してはグルベローヴァなど論外、デセイが史上最高、空前絶後と断言してはばからない。パリの『魔笛』、ザルツブルクの『アリアドネ』、『ルチア』仏語版は全曲の映像が放送されたことがあるが、いまだ商品化される気配はなく、その録画はわが家の宝物となっている。「歌う女優」デセイの凄まじい真価はその『ルチア』と『ハムレット』(これは幸いに全曲DVDあり)で遺憾なく発揮される。メトで録画されたと噂される『ルチア』伊語版はDVD化されるのだろうか。カラスの舞台を見たことのない私にとっては、ルチア役も歌と演技の相乗効果ではカラス以上と思える。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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