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ねずみ さんのレビュー一覧 

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     2021/06/13

     ”NWE SEASON”と銘打った、実質”LAST SEASON”の第1集です。
     それまでも何本かあった1話50分の倍の尺で作られた、撮影も編集もテレビドラマのスペックを超えた映画並みのクオリティがあります。
     ポアロ作品特有の複数の容疑者の中に潜む意外な真犯人、その心の奥にじっと隠された犯行動機、ポワロや読者(あるいは視聴者)を惑わすトラップのように仕掛けられた輻輳するエピソード…、最後にポワロが解き明かす真相は、いつも「なるほど」と唸らせる、時にカタルシスのような爽快感と、時に運命に翻弄されながらも愛する人を守ろうとする想いが垣間見えて、感動のフェナーレへと導いてくれるようです。
     1930年代のイギリス、ロンドン。西欧のドラマに馴染みの無い自分は、複数人の容疑者を含む登場人物の名前と顔を一致させるのに一苦労で、謎解きに繋がる重要なシーンも見落とすなど、ポワロ作品を本当の意味で楽しめるまで時間がかってしまいましたが、何作品か、それも繰り返して観ている内に、すっかりこの名作探偵ドラマにはまってしまいました。
     特にポワロシリーズの最終章を飾るこれら5箱のBOXセットは、心に残る名作・大作4本入りのお買い得盤です。欲を言えば、Blu-ray化して、もう少し廉価でセット販売してもられるとありがたいです。

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     2021/05/23

     夏の清涼感漂うイラスト・ジャケットと謎解きゲームのように暗喩的なユニット名…。日本版Airplayのようなコラボレーションは、ソフトに洗煉された楽曲群という点で、解説されているByrne & Barnessという例えがしっくりきます。
     楽曲もアレンジも演奏も、そしてボーカルも、寸分の狂いなく組み立てられている、本物のプロの仕事です。少しの”隙”もなく、完成度が高過ぎて、そのことが欠点というか、要するに、欠点のないところが唯一の”欠点”のようにも思えてしまいます。
     個人的には後半4曲の極上に耽美なフローターが秀逸で、これこそ和製AORの一つの到達点なのでしょう。
     ラストのウィスパーなメッセージ・ソングがいつまでも心に響く、まさに東北新幹線の車窓に走る緑のラインのように”エバー・グリーン”なアルバム、といったところでしょうか。「名盤」です。

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     2021/04/27

     いつものように屋根裏部屋のおもちゃ箱的な粒ぞろいの作品集を届けていただきました!
     個人的な出色はここ最近の最高傑作と言っていいタイトル曲「23歳」と、先日の謝罪会見で種明かしされた珠玉のバラード「キセキ」、それとテクノポップ三部作の完結編(?)「メモトキレナガール」の3曲です。
     KANさんがプロのキャリアを始める前夜の想いをクロニクル風に綴った「23歳」は、単に自身の23歳の頃の想い出話に止まらず、今の時代を生きる23歳に向けたメッセージ・ソングでもあるのです。シンプルでフラットなメロディが頭の中を心地よくループしていきます。
     「キセキ」は前作の「安息」の続編のような趣のある作品で、音符の紡ぎ方が琴線を震わすドラマチックな逸品です。
     「メモトキレナガール」は天才KANさん渾身のスピード感とユーモアに富んだキワモノ作品ですが、そのテクノ・アイドル・ポップスへのこだわりと楽曲の完成度の高さには、ただただリスペクトです。
     先行シングルの「ポップミュージック」も懐かしさと楽しさがいっぱい詰まっているし、ラストの切ない「エキストラ」は、これはこれで完成度の高い、ある種KANさんの十八番、といった感じで、しっかりとアルバムを締めてくれています。

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     2021/04/25

     「01」表記がされえいるように、3部作のリーディングとなる(予定の)ディスクガイドですが、ルーツとなる同名のガイド本にあったアルバム収録曲名を排除して、レビューに特化した、著作者渾身の集大成本となっています。想い入れの強い一押し作品は紙面、イコール情報量のボリュームで推察できるようになっていて、かつての”1アーティスト1作品”という制約がないのもいいですね。
     期待は本作よりも深度を増したレアな作品集の第2弾でしょう。AORというフィルターがマストなのでしょうが、Light Mellowという切り口を拡大解釈されて、隠れた名盤も幅広に取り上げられてはいかがでしょう。
     3部作完結と言わず、番外編の続編の出版も気長に待っています。

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     2021/04/17

     個人的な白眉は「ウィズ・ザ・ビートルズ With The Beatles」。
     主人公が高校生だった1964年の高校の廊下ですれ違った名前も知らない同級生の少女が大切に抱えていたLPレコードが、足早に通り過ぎるその少女を”(主人公の)耳の奥で小さな鈴を鳴らす”ほどの鮮やかな印象を残していきます。
     この作品で綴られている胸を詰まらせる哀しい物語の重要なエピソード(あるいはシンボル)として、しっかりと語られています。

     作品自体の感想は置いといて、個人的なテーマは、「もしも自分が高校生だった頃に”耳の奥の小さな鈴を鳴らす”ほどの名前も知らない少女と高校の廊下ですれ違うとしたら、彼女は一体どんなLPレコードを抱えていなければいけないか」、です。
     自分の場合、1976年から78年にかけてが”あの頃”に当たりますが、例えばビリー・ジョエルの『ストレンジャー』では少し軽いし、スティリー・ダンの『エイジャ』ではやや重い気がしますし、イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』やフリートウッド・マックの『噂』では時代を反映してはいるもののメジャー過ぎて”鈴を鳴らす”までには至りません。大好きなアル・ステュワートの『イヤー・オブ・ザ・キャット』ではジャケットがカラフル過ぎて、少女の美しい印象が薄らいでしまいます。
     パズルのピースは簡単には見つかりそうにありません。
     やれやれ、です。

     個人的な”謎解き”はともかく、こんな時代に、自分にとって久しぶりに”愛すべき一編”に出逢えたことを素直に喜びたい気持ちでといっぱいです。
     村上さん、素敵な物語をありがとうございました。

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     2021/03/03

     3枚組の豪華記念盤を入手したことで、かつてのシングル・アルバムは中古市場へ、と目論んでいたところに落とし穴がありました。
     かつての輸入盤に納められていたボーナス・トラック3曲のうちの2曲が拾われていなかったのです。
     その1曲というのが、自分の琴線に触れるほどの佳曲「Candy Came Back」で、この曲が欠けているのが非常に残念でなりません。というわけで、我が家の『24 Carrots』は、大小2枚が仲良く棚に並んでいます。

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     2021/03/03

     解散後、それぞれの道を歩み始めたビートルたちが、リンゴ・スターというハブを介して繋がれたコンピレーション的なアルバム、といったところでしょうか。
     シニカルなジョン、カインドなポール、ナイーブなジョージ、それぞれがリンゴの歌声を意識した作品を提供し、レコーディングにもリトル・ヘルプ以上のプレゼンテーションを提供しています。
     個人的には清々しい午前6時のワン・シーンを切り抜いた「シックス・オクロック」と、映画のエンドロールを観ているようなアルバムの余韻に浸ることができるラスト「ユー・アンド・ミー」が秀逸です。映画といえば、サウンドトラックのようなスケール感のある「想い出のフォトグラフ」(「思い出」よりもしっくりくる)もいいですね。どちらもジョージとの息の合ったコラボレーションが光っています。
     豪華なゲスト陣にも恵まれて、ジャケット同様、大作と言っていいスターの風格を見せつけた1枚といったところでしょうか。

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     2021/03/01

     この知る人ぞ知る隠れ名盤の再発を待ち望んでいた輩には、タイトルをそのまま転写したような奇抜なジャケットもしっかりと受け入れてしまっていることでしょう。それもそのはず、捨て曲無しの充実した内容の1枚だからです。
     とにかくクールでポップなメロディに彩られた楽曲の展開力・構成力が素晴らしく、洗練された小気味よい演奏とのバランスも最高です。
     決してメインストリームの焼き写しではない確かな個性がここには存在していて、しかも、コンテンポラリーな洋楽を聴き尽くしたマニアも唸らせるクオリティを持った作品です。北海の氷の世界から届けられた、アイスべきペパーミント・グリーンな1枚です。

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     2021/03/01

     長年待って、待って、待ち続けて、ようやくCD化が実現した1枚です。
     佳曲「Why Not Me」以外にも、小気味よいライトでポップな楽曲が詰まっています。
     欲を言えば、同時期にヒットしたSuzan Antonとのデュエット曲「Killin’ Time」もボーナス収録してほしかったところですが、悪乗りはいけません。発売当時のLPレコード盤の忠実な再現を素直に喜びましょう。
     「生産限定紙ジャケット仕様」に過敏に反応して、金も無いのに禁断の2枚買いをしてしまったのは、私だけでしょうか。

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     2021/03/01

     AT40に唯一の足跡を残した「Together」だけの一発屋、というのが、これまでの自分のTierraに対する評価でした。
     が、しかし、このアルバムを切り口に、いくつかの音源に出会うにつれて、その先入観はいい意味で打ち砕かれました。
     クリーミーなファルセットが醸し出すどこまでもスウィートな音場世界は、浸り過ぎると抜け出せなくなってしまいそうなくらい甘美な夢の国へ誘ってくれるようです。
     この手のラテン系甘味印のグルーヴは、インドネシアやフィリピン辺りの東南アジア系ロマンチック・メロウな楽曲群や、ハワイ産のウォーミーなAORサウンドと比べても、テキーラのように情熱的なアルコールを含ませた濃厚な甘さが漂っていて、まさに、甘く危険な香りのする逸品です。

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     2021/03/01

     最近、未発表のライブ音源を復刻したアルバムが多くリリースされていますが、個人的にはライブ・アルバムへの関心は低く、積極的に触手を伸ばすことはありません。が、このアルバムには、ある目論見があって、40年以上の歳月を経て、購入することになりました。
     その目論見は「Rich Girl」のライブ・テイクを聴くこと。何を今さら、といった感じなのですが、この作品は自分にとって正味2分ちょっとのスタジオ録音版が唯一無二の存在で、12インチのロング・バージョン全盛前夜の、コンパクトな楽曲として完結していたのです。40数年間は。ところが最近、動画サイトで流れていた77年当時のライブ映像に出会ってからは自分の中のベクトルが変わってしまいました。
     この愛すべき小品が、実に活き活きと、それでいて最後の着地までしっかりと構成されていて、ボーカルも無理なく無駄なく演奏されていたのです。もちろん原曲の雰囲気を損なうことなく、むしろ原曲の持つシニカルでありながらカジュアルなエッセンスが溢れんばかりフレッシュだったのです。まさに飛ぶ鳥を落としていた頃の2人のベスト・パフォーマンスといった感じで。
     この1曲に出会うためにも、このアルバムを手に入れるしかありません。単なるヒット曲のステージ版と侮るなかれ、です。これだからお宝探しを止められないのです。

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     2021/02/28

     タイトルどおり、『恋人たちのアルバム』です。
     ジェントルでセンチメンタルな「哀しみの序章 Bluer Than Blue」が収められているだけも十分なのに、その後に上品なカクテルをいただいているような「Almost Like Being In Love」を持ってくるなんて。しかも、その後に続くのが小粋でお洒落な「25 Words Or Less」でしょ。何とも心憎い演出です。
     レコードでいうA面の5曲の流れも完璧で、彩豊かな風景の中を、歩いて、休んで、また歩く、といった王道の展開をくりかえした後に、少し重めの空気感を持つシックな楽曲で締められています。
     B面は前述の3曲の存在感が際立っていますが、ラストには”アルバムの締め”に相応しい、「家に帰ってきてよかった」と思わせるような珠玉のスローバラードが配置されています。まさに、”癒されるアルバム”です。
     

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     2021/02/28

     かつて2in1CDとして発売されていたアルバムが遂に単独発売されました。
     個人的にはヒットした「哀しみの序章」が収められたアコースティックな名盤『恋人たちのアルバム(The Album)』が1番のお気に入りなのですが、よりコンテンポラリーで洗煉されたこのアルバムなども大いに惹かれます。
     オープニングのタイトル曲のゆったりとした入りから、聞き心地の良いメロディアスなナンバーがいっぱい詰まっています。
     圧巻はRandy Goodrumの丁寧なカヴァー「Savin’It Up」に続く「You You You」。小林克也さんの洋楽TV番組で使われた楽曲で、イントロを聴いただけで思わずにやりとさせられます。
     しっとりとしたバラードも用意されていて、後半はやや力を抜き加減で最後は”風と共に去りぬ”といった感じですが、心にやさしい残り香を漂わせてくれるアルバムです。

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     2019/01/07

     昭和の終わりの頃、大阪の書店でスタイリッシュな装丁の分厚いソフトカヴァーが目に留まり、何気なくページを捲ってみたところ、全米TOP40を追いかけていた自分には未知のレコードが多く掲載されているこの本に出会いました。
     自分が特に興味を惹かれたのは、知っているアーティストに関して、定番のヒット作とは違ったアルバムがいくつも推奨されているところでした。

     本作は、80年代中ごろの東京におけるクリスタルでブリリアントな都市生活の過ごし方を演出するための最適かつ最良の音楽について、朝、昼、宵、そして夜、それぞれのシーンや様々なシチュエーションにフィットするアダルト・コンテンポラリー系のレコードを田中康夫氏自らが自身のコレクションの中からセレクトし、スパイスの効いた小気味のいい文体に少し毒のあるエピソードも織り込みながら、地方在住の洋楽初心者にも分かりやすい解説を施し、類似の関連盤のカタログ付きで丁寧に紹介されています。
     綴られた一つひとつのエッセイには音楽に対する風刺や批判などはなく、アーティストや作品のレアな周辺情報も含め、十分な説得力を持つ充実した文章からは、田中康夫氏の音楽という都市生活の最良のパートナーへの造詣の深さが窺えます。

     特筆すべきは、当時のトレンドを反映したトーキョー・ライフを下敷きにしているにもかかわらず、取り上げられている作品群が色褪せていないこともあって、昔のニュース映像のような古さを全く感じさせず、むしろ、あの頃の空気感が伝わることで当時の時代背景の中での輝きを今に蘇らせてくれています。
     近年、あの頃のAORやCity Popの名盤群が次々とCD化復刻されている中、自分にとってこの本は、新たなお宝発掘のためのガイドブックであり、トレジャー・マップとして大活躍しています。
     
     ところで、本作の30数年ぶりの復刻は実に画期的でありがたいところでしたが、個人的には、ライト・グリーンとライム・イエローの斜めストライプの表紙、ムック本のようなソフトカヴァー仕様、余白を効果的に使った段組み構成の紙面、巻末のディスク情報も当時のクレジットの完コピ、といった、国鉄時代の時刻表復刻版のように、オリジナルの装丁のままで完全再現してほしかったところです。

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     2018/12/17

     「City ”Pop”」に派生した「City ”Soul”」という切り口に興味をそそられ、「ディスクガイド」と打ち出しながら、中身は収録曲をセレクトした楽曲解説という踏み込み方に共感させられました。
     かつて『全米TOP40研究読本』というBillboard誌のヒットチャートを下敷きとした複数筆者による楽曲解説本がありましたが、まさにそのスタイルを踏襲し、ブラック・コンテンポラリー(個人的にはAORとは一線を画しておきたい)に軸足を置いて編集されています。
     アルバム・ジャケットも掲載されているので、カラー刷りというのが嬉しいところでもあります。
     個人的には80年代までがストライク・ゾーンなのですが、定番曲のみならず、「このアルバムでこの楽曲を選ぶとは…」といった意外な拾い物もあったりして、眠っていたお宝の発掘にも一役買っています。
     未開の90年代以降の鉱脈については、今後じっくり付き合うこととして、まずは所有アルバムに埋もれた推薦曲の掘り起こしに勤しんでみようかと思います。
     個人的には、年代の節目ごとに添えられたニッチなコーナー企画である「J Pop」のセレクション(10選)に、賛否も含めて、目を奪われてしまいました。

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