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風信子 さんのレビュー一覧 

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  • 7人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2017/01/04

    往きて到れば其は己なり 故里と呼ぶ世界なり シベリウスが自己の世界を音楽にし得たとき音楽の使命は果たされた 晩年30年間は沈黙が友となった それは第二次世界大戦を中核とする激動の20世紀だった 音楽に託し謡うべき世界は消滅したが 語るに値する世界は音楽の中で無限の愛に包まれてある 第7交響曲が全てだ コリン D.&LSOが実現している完璧な演奏 曖昧な霧に包まれた見通しの効かない世界はもうそこにない 全てのモチーフが明快に聴き取れ音楽世界全体は澄み切っている 「第7」は単一楽章の小振りな交響曲などではない 水と森を駆け抜けた風が無辺の宇宙へ吹き抜ける 風は自由と大地を礼賛して消えていく 人びとを鼓舞し祝福する微笑みに満ちた交響曲だ 振り返ればこれまで第7と対極にあると見えていた第6交響曲もこの第7に通じていた シベリウスがロマン派ドイツ音楽の呪縛から脱した第3交響曲以降が秀逸で 交響曲全曲通して明晰で透徹した演奏が施されている それだけに人気曲「第2」が魅力を佚した感がある 後掲の交響詩風に演奏すべきだった わたしは5chを7chに拡大してBlu-ray Audioで聴いた この玲瓏を極めた響きに耳を奪われ 北欧音楽の冷涼な肌に触れた思いだ 寒の入りに衷心より最高の推薦をする   

    7人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2017/01/04

    愛聴している音楽 そして唯一の録音 音色を問わずして思想を語るなかれ 音楽に封じ込められた魂から生きる綾を紐解くに楽器(声)の音色は不可欠なfactorだ ホルン・トリオは悲しみに打ちひしがれた人の音楽だ 慟哭とも聞こえる叫びが谷間にあるいは森の中に谺している 19世紀のナチュラルホルンの音色が ベーゼンドルファーの音色が そしてストラディヴァリに引かれたガット弦の音が如何なるブラームスの想いを伝えることか ぼくは心が人生の枷に掛かったときこのホルン・トリオに耳寄せる ブラームスが泣いている いっ時泣き声に耳傾ける いつしか涙涸れ声も嗄れ 無言で立ち上がり 歩き出す 心の中の嵐はまだ吹き過ぎちゃいないが 歩き出す‥ ホルン・トリオにホルンはなくても音楽は成立している ユニゾンの多用は執拗でさえある ホルンがブラームスにとって特別な楽器だったことを語っている 人生に寄り添う人を得なかった人の孤独が続く「雨の歌」と「幻想曲集」にも影を落としている だが人はどこまでも一人で行くのだと知るには良い音楽だ 今更推薦もないが この盤を称揚する人があまりに少ないので せめて弱虫でない人にだけでもお奨めしたいものだ    

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 12人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/12/24

    如何にせん この歓びを 総身に温かい血が往き渉る 勇躍と郷愁の念が胸の扉を叩き 今扉を開け放とうとする 蘇ったケルテス&LSOのドヴォルジャークは青春の息吹と血潮の滾りを呼び覚ました LPでは伝わり辛かった楽器と人間の音色や息遣いを届けてくれた 世界は魅力あるものに生まれ変わった 新しい共感の喝采を送った Blu-ray Audioを7chで聴いたが 嘗て繰り返し聴いても心の腑に落ちてこなかった交響詩や序曲がこれほど深く沁みて来ようとは想像だにしなかった 不惑を越えて間もなく不帰の旅に出たケルテスを惜しんで40年余 世界も人も変わった だが ズロニツェの鐘を聞いて未来へ船出した若きドヴォルジャークが放った希望の声をケルテスは受け取って歩き続けた わたしもケルテスを経てその希望の声を忘れずに歩いてきた ドヴォルジャークの音楽は生きる希望だ いつもわたしを勇気付けてくれる 軽やかで温かい紗で包んでくれる また歩こう今を明日へ 今日がクリスマスだったことを思い出した 何と言う贈り物を頂戴したことか 感謝 衷心より今年最大の推薦をさせていただく

    12人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/12/05

    記憶の泉は創作の源 遺跡の都”イタリア”から未来の天才が登場することを予感させる見事な一巻 汲めども尽きない創意の湧き水に浸るこの喜びはどうだ ヴェネツィアQの奏弦の潤いあればこその感慨だろうが 音楽はイタリアから発してイタリアに還っていく感が湧き出て止められない 向かい来る星雲に次々と飛び込んでいくとき数多の音楽の記憶が蘇る それにしてもボッケリーニ星の森にダースベーダーが隠れていようとは‥これは余談 ハイドン世代の多作だったボッケリーニ作品から選奨された15曲の流れでもうため息が出る 続く全6曲のバッジーニだがこのロマンの風吹く作品が珠玉 コンサートで終ぞ聴いた憶えがないのは勿体ない 三人のオペラ作曲家ヴェルディ プッチーニ サンドナーイの1曲をかそけき声で歌った後 レスピーギの2曲へ 燃えるような激しい表現は望むべくもないヴェネツィアQだが 軽妙洒脱を旨とするスタイルがいよいよ真価を発揮する 中世以来のイタリア音楽を振り返ることで未来へ向かおうとするレスピーギの骨頂と意匠を見事に描き出している そしてマリピエーロの8曲が来る 復古主義から出発して未来へ踏み出した音楽は未だ市民権を得ていない コンサートで聴くことも叶わず録音も希少であればこれほど嬉しいことはない 願わくばピツェッティとカゼッラのSQも演奏して欲しかった マリピエーロが8つの作品に施した技法の違いをヴェネツィアQの透明感あるサウンドと解像度の高い演奏で聴きながら 衷心より最高の推薦をする   

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/11/26

    歩み出るや軽々と舞い上がり天宙を翔けて行ったペガサス それがブラームスだったと思い知る演奏だ 飛び立つ時蹴った地に湧き出た清浄な水は今も泉となって澄み渡り世界を潤している ピリオド・ピアノを要してブラームスを引き続けるリットナーの協奏曲は待ちに待った逸品となった 第2協奏曲の出現は今か今かと気が急いてしまう 19世紀一世を風靡したエラール・ピアノの特徴は「木」の反響音と言ってしまうと 20世紀「鋼」の音響と較べて弱く響かないから表現力に劣ると即断しがちだが然にあらず 反響が反響を生む重いサウンドが好みの耳には不満でも 颯爽と駆け生きとし生けるものに命を吹き込んで行く天馬の息遣いを感じる時 世界は輝くサウンドに包まれる このピアノの高音の美しさには比べるものがない リットナーがエラールを選んだ事由はこれなのではないか ブラームスもコンチェルトも苦手なわたしがしばしば耳傾けることになると思う 衷心より一聴をお奨めする 

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/11/23

    昼のコーヒーショップでバンドが奏でる 客はスウィングする身を収め切らずステップを踏み始める テーブルの間で テラスで踊る人も出る カフェ・ツィマーマンは斯くあったかと幻想が眼前に広がる演奏 ハルステッドとハノーヴァー・バンドがこんな素敵なDiscを残していたことを知らなかった それがわたしだけなら嗤っていただきたい もしまだ未聴の方あれば ぜひ手元に取り寄せられることをお奨めする   

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/11/23

    語るがごとく歌い 歌うがごとく舞う ついに来たのではない いつも歩く路を今日も歩んでいるベートーヴェンだが 感動は新ただ 日々生まれ変わり加わる発見に胸はずむ 無限の未来が開けている青春音楽の軽やかなこと 細やかなこと おおらかなこと清々しく幸福感に包まれる ベートーヴェンとはかくも希望を語る人だったか 肩並べてどこまでも逍遥したい 語りたい 歌いたい 踊りたい そんな音楽がここにある この新鮮な風の中から最高の推薦の弁を送りたい    

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  • 10人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/11/21

    総て初稿を以てブルックナー交響曲の真影とする主張を貫いた見事な全集 全曲大らかなテンポに乗って裕に謳うブルックナーは美しい ハンブルグPOの演奏は永く賞賛される ヤングがブルックナーのスコアを崇敬さえしていることが窺える丁寧な運びに感銘を受ける ブルックナーが記した音符は一音たりとも疎かにせず命を与えられて鳴り響いた この全集を称揚するに止まるを知らない がしかし言わなければならない 呪いのようにブルックナーの”百年の孤独”の影を引き摺っていることも このヤングの耳でさえ因襲の幻聴に冒されている 0番は疲れた人が彷徨うかのようなテンポ感を失った演奏 ヤングのAllegroは総じてゆっくりだがAdagioは遅すぎる 5番は加えてアラ・ブレーヴェを無視した部分が散見する 特にAgagioの冒頭は6/4から4/4へと振り分けてはいるがこれで2/2の疾走感は失せた 自ずと5番全体が肥大化して コントラプンクトの妙が伝わってこない 対位関係は同時にだけ存在するのでなく 時間差でも共鳴し合う音楽をブルックナーは書いている 7番も残念なことに重たく湿った空気に包まれてしまう 第1楽章はMに至って漸くアラ・ブレーヴェの音楽になる始末だ Adagioは遅すぎるが驚くことにDの3/4 Moderatoを無視する 何かに取り憑かれたように一貫してテンポを変えない ブルックナーが最も忌避したものは停滞と絶望だ 鈍重で咆哮するブルックナーともう決別したい 爽快に語り合えるブルックナー その真の姿を表出できる演奏家が現れますように

    10人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/11/19

    弦楽四重奏とフランス音楽を愛する人へ 返礼と言おうか 少し早いXマスの贈り物かしらん 何とも素敵な小品集が届いた ドビュッシーの第1前奏曲集から「遮られたセレナード」を標題に掲げる 演奏もドビュッシーとファリャで織り出されたタペストリー一帯をクライマックスに 前をシュブリエ ビセー フォーレとフランスのエスプリの内核で埋め ラヴェルを挟んだ後はサティ プーランクと未来へ放射する光彩で構成する強かさをベドリッシュQuar.は示す 夜も更け灯火を落とす窓も多くなった 少し音量を絞ってもう一度初めから聴こう 囁くように伝えよう 人知れず美しく生きる君に奨めるDiscだ と

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/11/18

    今 戦争レクイエムを演奏する意味を知る 四年前の演奏だが もう手に入らないDiscと化しているこの”レコード” 初演したLSO三度目の録音は居ても立ってもいられない衝動が身内を駆け回る切迫感をわたしに齎した それは戦後22年を経てもなお作曲したブリテンの心境なのだと感じる 70年を越えて無戦を続けるわたし達も再び三たびここへ帰ってこなくてはならない 未来へ窓を開いた都市の輝く建造物の森の中で 傷ついた裸の壁を見上げなければならない それは幻でも影でもない 音楽は戒めの刃となる 刃は常に研かれることを望む 次に生まれたものが磨くのだ ネルソンスが パッパーノが‥ いつか戦争が地上から消え去る日まで ボストリッジが ”What passing-bells”と歌い出すだけでわたしは胸が詰まる 最後キーンリーサイドと一緒に ”Let us sleep now‥”と歌い消えるとき 戦場に立ったことにないブリテンもわたしも石を飲み込んだかの苦痛を覚える ノセダ&LSOの「戦争レクイエム」の復活を願う

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/11/09

    妖艶な美しさに引き込まれるヴァイオリンの音で聴くショスタコーヴィチ 第1番は第9交響曲に続いて書かれ 失望の「第九」が巻き起こした批判の嵐の下お蔵入りとなった 鎮めの第10交響曲発表後漸く日の目を見たが 気が抜けた麦酒宜しく音楽に込められた作曲者の声は時宜を逸していた あの戦後の時の渦中でしか響き得ない声があったのだが もう届かなかった だから遠くで鳴っているお囃子のように見えない祭り模様を想像するような聴き方をしていた少年時だった 十余年後の第2番もショスタコーヴィチの晩年と同時代に青春期を生きた者には交響曲から受けた同時代性の共感と衝撃を受けなかった だからわたしにはこのツィンマーマンとギルバートの演奏が初演の出会いだ 20世紀の古典として鑑賞した 第1番には戦争に傷ついた魂と出発の号砲に勇みたつ意気が 第2番には第14・15交響曲へ続く道が見て取れた ヴァイオリンの美音有りて初めて繙かれた物語と言おう 繰り返し耳傾けられる美しい作品となった 衷心より推薦する  

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/11/07

    バービー・ヤルの後に コンチェルトが書かれるとは想像できなかったので チェロとヴァイオリンのための第2協奏曲は初出した時から妙な違和感を抱いた記憶が消えないで来た 両曲の第1番に親しんでいた耳には異質な世界が展開されているように聞こえた 自ずと第1に比べて鑑賞頻度が落ちた 一廉のチェリストが第2チェロ協奏曲を演奏すると期待して耳傾けたが 第1を凌駕する感動と印象を残す演奏に出会えなかった だがついにその長年の不満を解消する演奏に出会えた ディンドとノセダ 二人のイタリア人音楽家が迷宮の森から連れ出してくれた その演奏の根幹はリズム感と歌心だ 特に第2番はラルゴが長々と続く冒頭の気分を引き摺って後半のアレグレットから音楽の躍動感を殺いでしまう傾向がある この間策に嵌らず ショスタコーヴィチの強烈な訴えと夢を伝える見事な幻想曲を齎らしてくれた 衷心より推薦する

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/11/06

    ご機嫌如何 左様ですか ではご機嫌よう といった木で鼻を括ったような音楽 9番がお気に召さなかった御上へのご機嫌取りか目眩しか知らないが 軽妙明朗な形態に潜む先鋭に気付かず9番を軽佻浮薄と非難した盆暗のお気に召すフォームで重厚豪快に鳴らして見せた交響曲が10番と言い習わされてきた だからかどうか知らないが10番の演奏というと重層した響の塊で 線や波としての音形の流れや交差が見えなかった 常に重苦しい響の霧に閉じ込められた印象ばかりが残った 9番は好きで繰り返し聴いてきたが10番とは疎遠になっただからこのネルソンス盤にもなかなか手が伸びなかった 聴いて霧が晴れた 10番も9番と同じ精神から生まれた作品であることを証明した演奏 人も音楽も見かけで誤魔化されてはいけない この反骨と風刺は紛れもなくショスタコーヴィチだ 日和った姿の欠片も見えない 悪徳と無知を破顔い飛ばして音楽は終わる ボストン市民と共に喝采した 衷心より一聴をお奨めする

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/11/02

    涙と感傷を払拭して登場した決定盤 私的嗜好で恐縮だが 10番完成稿を聴くときカーペンター版を愛好している 付帯要素の少なさが好ましいこと 聴後の余韻が軽いので繰り返し鑑賞に臨めることなどがその由だ しかしクック版でカーペンター版に比肩し得る演奏のできる演奏家が出た ベートーヴェン シューベルト シューマン等でピリオド楽器とその演奏法を取り入れて新たな命を吹き込み衆人の瞠目を引いたダウスゴーがその人だ 今度はマーラーをしかも10番復元版とは驚いた ここでもピリオド奏法は効力を発揮している 初めて芸術性を問える域に達している ギーレンを超えて即物的演奏を成し遂げているからこそ見えるマーラー像と聞こえる言葉がある 決して終焉の告白ではない 今だ未来へ眼差しの光は放たれている 尽きせぬ憧れは死せず 音楽は常に今を生き次なる瞬間を待ち望むと謳っている ダウスゴーに全集への野望はありやなしや 成らずとも1番6番9番はぜひ聴かせてほしいと願う 希望に膨らむ衷心より推薦する   

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/10/31

    オネゲルの急進性を前面に表出した快演 優秀録音と相俟って待望を叶える優秀盤が登場した オルゲルはコンチェルタートな音の運びからラプソディックを作風と見られる ある意味起承転結が見えづらくとらえどころがない印象を残す だがオネゲルの音楽は行く方を見失うことがない急進的作品なのだ 求心性ある音楽とも言い得る ヴェンツァーゴ&ベルンSOはその核心を突いて明快な演奏を展開している オルゲルの交響曲は2番以外は祝祭か鎮魂の折に書かれている 3番と5番は鎮魂曲だが性格は大きく異なる この二曲を併録した見識を賞賛する 祝祭曲の1番4番そして闘争と祈りの2番の録音がその他の管弦楽曲共々為されることを期待している 衷心より推薦する
     

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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