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蟹缶 さんのレビュー一覧 

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     2013/01/09

    アシュケナージと言う演奏家はピアニストとしては巨匠だけど指揮者としてはぼんくらというのが大方の評価だろうと思うし自分もほぼ同感である。ただしコンセルトヘボウとのラフマニノフの交響曲全集のような超絶名演もあるので一概に斬って捨てるのもはばかられる。このマーラーの1番は彼としては場外ホームランの部類ではあるまいか。同じユダヤ系でもバーンスタインのような油ギトギトのネチッコイ演奏に辟易している僕は非常に清新な感動を受けた。アシュケナージは従来の劇場化したマーラー像にとらわれずこの曲を交響曲としてシンプルに鳴らしている。あらゆる声部をバランスよく整えて美しく鳴らす事に執心してるようだ。そこら辺が他のレビュアーの低評価につながったのかもしれないが逆に僕にとっては好ましい点である。1番はマーラーとしては習作の部類なので大仰に演奏すると綻びを感じてしまう。余白に(1番とつながりの深い)「さすらう若人の歌」を入れたのはいいカップリングだ。マルクス・アイヒェはバイロイトでも歌っているが非常に素晴らしいバリトンである。若々しい美声で明瞭な発声でマーラーを歌うのに相応しい歌手だ。将来エクストンが「子供の魔法の角笛」を録音するなら是非この歌手を使って欲しいと思う。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/12/15

    たしか現支配人のピーター・ゲルブが「メトのライバルはヨーロッパの劇場でなくブロードウェイだ 」と語った。その言葉の意味するところは無教養な観光客をもターゲットにしているメトではヨーロッパのオペラハウスの様に実験的な頭でっかちの演出は許されない、という事だろう。つまりメトの演出家はオーソドックスな演出を好むお上りさんと同時に新聞評を書くNYの辛口批評家をも満足させなければならない、という難問を突きつけられるのだ。そういう意味ではこのロベール・ルパージュの演出こそメトにおける演出のあり方のみならず今後のオペラ上演はいかにあるべきか?という問いに対する非常に説得力ある回答だろう。演出そのものは衣装や小道具等はオーソドックスでありながら目新しさはと呼ばれる未曾有の巨大舞台機構に集約させている。は時にライン河になり、森になり、魔の炎になりワルキューレ達の乗る馬にもなる。一台を駆使して場面転換の多いの情景を巧みに変化を付けつつの長大な四部作をひとつの作品として統一感を出している。ルパージュ演出はアクロティクな仕掛けも面白いが丹念な演技指導も功を奏してたんなるコケオドシでは終わっていない。何よりこの演出はメト以外では絶対再現不可能という意味でこの劇場の財産だろう。何しろとてつもない加重の掛かるゆえに近代的なメトの舞台ですら補強せざるを得ず、巨大すぎて分解不可能になり結局劇場備え付けになったそうだ。つまりはこの演出が廃棄させるまでメトに設置されたままになる。制作費を減らすために幾つかの劇場で共同演出する事が当たり前になったオペラ界だがこの演出に限り門外不出となった。今後もこのを劇場で見たければメトへ行くしかない。そういう意味でもこうやって映像で見られるのは貴重といえる。歌手もメトらしいオペラ界のスターを集めた豪華キャストである。急遽代役立ったジークフリートのジェイ・ハンター・モリスいかんせん役不足だが他のメインキャストは非常に充実している。デボラ・ボイト、ブリン・ターフェル、ヨナス・カウフマン・・・ら歌も演技も上手いキャストをずらり揃えてまさに壮観である。指揮は前半二作はレヴァインが振り後半二作はルイージが手掛けたために音楽面ではやや違和感を感じないでもない。ただ元々は一作毎に全くスタイルが違うので致命的というほどではないだろう。最後に出来るならDVDでなくBlu-Rayを買う事をお奨めする。この上演は特に高画質高精細で見る方が感動がより深まるに違いない。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/06/10

    ショルティのワーグナーは名高い指輪も含めて演奏自体は凡演・駄演ばかりだがこの「マイスタージンガー」旧盤と「パルジファル」は実にすばらしい。もっともショルティはこの録音に不満でシカゴのオケと再録音した。新盤を聞くと旧盤とは真逆の<ハンガリーのチンドン屋>ショルティ(笑)らしからぬハッタリのないすっきり精緻で室内楽的な演奏を目指しているのに驚かされる。要するにこの旧録音は彼が理想とする「マイスタージンガー」では無かったのだろう。そういう意味ではこの録音はあくまでショルティのワーグナーというよりデッカとウィーンフィルのワーグナーなのだろう。ただウィーンスタイルのワーグナーという意味ではかけがえの無い録音といえる。この録音での二幕の夕暮れの音楽はショルティとは思えない叙情性があってさすがは普段オペラハウスで弾いているウィーンフィルならではの味だ。ノーマン・ベイリーのザックスは格調のある堂々たる歌いぶりでカリスマ性を感じさせる。コロのヴァルターはカラヤン盤より快調だ。しかし歌手で特に見事なのはベルント・ヴァイクルのベックメッサー。後に稀代のザックス歌いになるヴァイクルがその敵役を歌っているのも面白いが声の美しさと表現力は圧倒的でザックスをたじたじにさせるベックメッサーは異色かもしれない。ただ彼のお陰で普通は長すぎてややもたれるザックスとベックメッサーの丁々発止のだまし合いと駆け引きの面白さはこのオペラの数多い録音の中でも最高だと思う。とはいえ全体的な仕上がりは指揮者の才能の差でカラヤン盤の方が上かと思うがカラヤン盤のあまりパっとしない音質のEMIに比べデッカのチームの録音の優秀さはこのCDの利点だろう。

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  • 8人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/05/11

    待ちに待った映像がやっとBlu-Ray&DVDで発売された!
    去年のNHKBSのバイロイト中継で見たが、このプロダクションはバイロイトのみなずオペラ上演として近年まれなる成功作だと思う。
    音楽面はいうに及ばず何といっても舞台が素晴らしい。プレミエの時の写真だけ見た時はなんて酷いデタラメな演出か?!と腹立たしさすら覚えたのだが、実際に中継映像で舞台を見ると予想とは全く違う魅惑的な舞台だった。
    これほど斬新かつ挑発的でありながら観客のイマジネーションを刺激する説得力のある演出は本当に稀だろう。
    個人的にはゲッツ・フリードリヒのトンネル・リングやタルコフスキーの「ボリス・ゴドゥノフ」に匹敵する名演出だと思う。
    バイロイトではカタリナ・ワーグナーの「マイスタージンガー」も非常に面白い舞台だった。
    ただカタリナ演出の場合は若い演出家の経験不足ゆえのアイデア倒れや混乱も無きにしも非ずだった。
    その点ノイエンフェルス演出は見事にプロフェッショナルだ。
    これほどにパロディ、引用、異化効果、メタファーによる多層的な意味やイメージの洪水で過剰過ぎる情報量でありながら、見た目はあくまでシンプルであり一つの美意識で統一されている。
    この演出の場合予備知識を与えず見た方が良いので細部についてはあえて書かないが、最後の<胎児>についてネット上でも議論を呼んでいるので一言。
    これははじめてみた時は自分もネガティブな感想を持ったが、何度か見直すと演出家が言わんとする事が理解できたような気がする。
    原作のゴットフリートは少年だが少年に率いられるブラバントの国や軍隊など未熟な胎児が統率するるのと一緒だ、とブラバントの暗い未来を暗示しているのであろう。

    音楽面も舞台に劣らず高レベルである。
    タイトルロールのクラウス・フローリアン・フォークトは2010年のプレミエ初日で降りたヨナス・カウフマンに代わり「マイスタージンガー」と掛け持ちで残りの舞台を勤め以後も出演している。
    カウフマンのワイルドなルックスと硬質な声に比べるとフォークトは長身の優男で中性的な優美な声は半神のローエングリンにうってつけである。
    アネッテ・ダッシュも美人で華もあり声も綺麗だし演技も上手い。
    このオペラの場合主役二人が見た目も良いと舞台が映える。
    ペトラ・ラングは見た目が小柄なのは残念だが声はパワフル。
    ラジライネン、ツェッペンフェルトと脇役も揃っている。
    指揮は今一番乗りに乗ってる指揮者の一人のアンドリス・ネルソンス。
    まだ若手と言われる歳ながらまるで巨匠指揮者のような老獪な指揮ぶりであり抜群の安定感である。
    ティーレマン等に比べるとネルソンスのワーグナーはドイツ的な響きがやや希薄だがこのオペラの場合は必ずしもマイナスではないだろう。
    ただ正直この演出は初心者(や頭の悪い人間)には全く向かない。
    伝統的な「ローエングリン」を求める向きにはアバドのDVDかペーター・シュナイダー指揮のヘルツォーク演出のバイロイト盤あたりが良いと思う。
    とはいえ音楽的にも素晴らしいので映像を消して音だけ聴いても十分楽しめるとは思うが。

    8人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/02/15

    かつてLDで発売されていた懐かしい映像だ。その頃はよく見ていたし自分でDVDにダビングして焼いた時見直した。舞台は二十年前の演出なのでさすがに今の目で見ると古臭く感じる部分もないではない。特にこういう現代演出は古び方が速い。ただ歌手は概ね役柄に相応しいルックスが揃っているので視覚的に違和感を感じる事はないし、クプファーの演出としては特に過激でもなく順当な部類なので腹が立つようなものではない。
    バレンボイムはベルリン・フィルとのスタジオ録音のCDもあるが、オーケストラは歌劇場のシュターツカペレ・ベルリンの方が経験も多いせいだろう音楽の流れが自然だ。歌手もパルジファルはイェルザレムよりエルミングの方がいい。トムリンソンはカロリー過多な歌で世捨て人には不似合いだがこの演出では合っているだろう。「パルジファル」はCDなら数々の優れた録音があるが映像付きとなると音楽面も揃っているのはウォルフガング・ワーグナー&シュタインのバイロイトのDVD位しかない。このDVDはそれに次ぐスタンダートといえるかもしれない。ちなみに男性にとっては二幕でワルトラウト・マイヤーのシースルーの衣装の透け乳首を拝める事もモチベーションを高めるだろう(笑)。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/12/20

    シェロー演出は「ラインの黄金」が最もよく、次いでこの「神々のたそがれ」が出来がいいと思う。ブルジョワ社会のギービヒ家の退廃的な雰囲気はヴィスコンティ風。そこに神話の世界から鎧を着けたジークフリートが乱入する異物感は鮮やか。2幕の群集の扱いも上手い。ただ幕切れの部分は炎がしょぼいので民衆がのんびりキャンプファイアーを眺めている雰囲気。全くカタストロフィも感じさせず拍子抜け。
    ユングは相変わらず冴えない声だが「たそがれ」ではかなり健闘している。2幕で家臣たちに詰め寄られ「誰か武器を持ってきて一緒に誓え!」と憤然と言い放つ処などは他のテノールより上手いとさえ感じる。他キャストは全体的に小粒。フランツ・マツーラは声はともかく演出家が強調されるせいもあるがじじむさい。ハーゲンがフリッツ・ヒューブナーの代わりにマッテイ・サルミネンだったらなお良かった。グィネス・ジョーンズが声も素晴らしく見た目も存在感で圧倒してる。長丁場でも一向に息切れしないパワフルな声なので自己犠牲でも安心して聴ける。ブーレーズの音楽作りはワーグナーにしてはあまりに精緻なので録音が良くないと良さが生きない。僕が買ったDVDはフィリップスの旧盤で音質が非常に悪かった。別途発売されているCDはDVDとは全く別次元の良好な音質なのでオケを中心に聴くならCDを買って音だけじっくり聴く方がいいかもしれない。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/12/20

    この「ジークフリート」はプレミエではコロが歌ったが降板してユングになったのは残念。コロであればこのジークフリート役を声の面でも演劇的な面でも説得力のあるものにしただろう事は間違いないと思う。ユングは見た目も華がないし声もキャラクターテノールのような癖のある声質(彼は後にバイロイトでミーメを歌う)なので到底ジークフリートには相応しくない。ただシェローの演出のジークフリートは英雄というよりヒッピー的な怒れる若者という位置づけなので演出には合っているといえなくもない。代わりに完全に主役を食っているのがハインツ・ツェドニクのミーメ。陰険な小悪党だがどこか憎めない可愛らしさをも同時に感じさせる。あまり声の大きくない彼は本来ワーグナーのオペラには向いていないと思うが、ブーレーズの繊細な音楽作りのお陰でそういう声量不足は全く感じない。マッキンタイヤは三作ではもっとも向いている。演出も1幕のさすらい人とミーメの腹の探り合い騙し合いは実に面白い。割合良く出来ている演出だと思うが、3幕のブリュンヒルデが登場してからの演出がアイデア不足というかテンションが落ちてしまいありきたりな芝居だなあ、と昔から思っていたが後にパトリス・シェローがゲイだと知って納得。ホモセクシャルな演出家にとって少年が美女をキスで目覚めさせラブラブなんてド・メルヘンなボーイ・ミーツ・ガール話には全く興味が沸かなかったのだろう(笑)。グィネス・ジョーンズは見た目も美人で演技力もある人なので上手い演出なら名シーンになっていたところだろうに残念。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/12/16

    ズヴェーデンの「ローエングリン」が非常にすばらしい出来だったので、「パルジファル」も大いに期待して聴いたのだがこちらは残念ながら出来はやや落ちる。ズヴェーデンの音楽作りは非常に流麗で音響的に磨かれており「ローエングリン」と同じスタイルなのだが、ロマンチックオペラと違い最晩年の楽劇である「パルジファル」となるともっと重厚さが欲しくなる。主役のフォークトも半神のローエングリンにはぴったりな中性的な美声だがパルジファルにはやや個性不足。この役には(特に2幕では)もっと激しいドラマが欲しい。ホルのグルネマンツは良かったと思う。ダライマン、シュトルックマンは普通の出来だろう。とはいえ特別に欠点がある演奏というわけではなく普通に聴くには不満はない。ただ「パルジファル」の場合はクナ、ブーレーズ、ショルティ、カラヤンから最近のティーレマンに至るまで優れた音盤が非常に多いので新たなCDにはもうひとつサムシングを求めてしまう。付属のDVDは「ローエングリン」ではPALだったがDVD二枚の全曲、こちらはNTSCで日本人には観やすくなって良かったがハイライト盤になってしまった・・・。ズヴェーデンのワーグナーがもし今後発売される時は付属の映像は割高になってもブルーレイで全曲入れて欲しい。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/12/16

    この「ワルキューレ」は演出も音楽面もいい部分と悪い部分が共存している。特に従来のドイツ的なワーグナーを求めると完全に肩透かしを食う。ブーレーズの音楽作りはワーグナーをまるでドビュッシーでも演奏するように繊細に鳴らしている。リリックな部分では独特な良さもあるのだが、2幕の決闘シーンやいわゆる「ワルキューレの騎行」のように音楽が大きくうねる部分ではダイナミックな盛り上がりに欠けている。しばしば欲求不満を感じる。歌手の点でも同じ。ジークムントのペーター・ホフマンとジークリンデのジャニーヌ・アルトマイヤは見た目は美男美女で双子という設定も非常に説得力があるのだが、肝心の声の点ではどうも頂けない。この頃はヘルデンテノールが払底していたので止むを得ないのだが、ホフマンは声の力感に欠けるし最近のワーグナーテノールに比べると表現も単調だ。グィネス・ジョーンズは見事。後年ほどヴィヴラートが酷くないし痩せた美人でありながらドラマティコの強靭な声を響かせている。マッキンタイヤは貴族というより成金みたいな雰囲気だが「ライン」のヴォータンよりは向いている。シェローの演出は芝居も緻密でイプセン劇みたいな雰囲気。ブーレーズの音楽に合っているといえなくもないが、神々や英雄の話を単なる上流階級のファミリードラマ化していいのか?という疑問も感じる。個人的には読み替え演出にも全然抵抗はないし現代演出だろうがオーソドックスな演出だろうが刺激的で面白ければどちらでもいい。ただワーグナーがあえて神話劇として象徴させてる世界全部を人間のチマチマした世界に置き換えてしまったら欠落する部分も多いように思う。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2011/12/16

    ブーレーズ&シェローコンビの指環ではこのラインの黄金が一番成功していると思う。
    他の三作は優秀なワーグナー歌手が居るのが前提だが、このオペラはアリアらしい聞かせどころが少なく歌手のアンサンブルに重点が置かれ突出したスター歌手は必要ないからだ。
    そういう意味では概ね歌手も嵌っている。
    特に狂言回しのローゲを演じるツェドニクが実に見事。
    マッキンタイヤのヴォータンは演出上は悪辣で卑劣な貴族階級という役どころだが、声も演技も朴訥見た目も野暮ったくややミスキャスト。
    ただプレミエで大騒動を巻き起こしたシェローの演出は、その後の現代演出を経た見た目で見ると普通というか何のひねりも何もなく感じる。
    オペラ演出は生ものでありこういう演出でも古びるのはいかんともしがたい。
    とまれ国内盤がこれだけ安く買えるのはいい事だし見ておいても損は無いと思う。

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  • 8人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/09/23

    安い!安すぎる!!!最新(でもなくなったが)のデジタル録音のモーツァルトの主要オペラ七作がかくも手ごろな値段で手に入っていいものだろうか?
    近所の図書館にあったので「イドメネオ」以外は全部聴いてるが演奏は全て文句なしの一級品である。DG(これはアルヒーフレーベルだが)はこの頃ガーディナーとレヴァインをカラヤンとバーンスタインの後継者にしようと必死でごり押ししていたが結果的に大失敗だった。膨大なレパートリーを持つレヴァインとは違い、ガーディナーは酷かった。近現代のレパートリーでは忙しすぎて楽譜をさらう時間が無かったのか、ウィーンフィルの楽員にも名指しで不勉強をなじられる始末だった。結局愚にも付かない駄盤を量産するだけで終わった。ガーディナーもいつの間にかレコード会社からリストラされ今では業界でも影が薄い存在になってしまった。しかしこのモーツァルトは彼の本領の古楽の分野だけにそういう問題は全くない。同じ古楽出身でもやたらと奇異な事をやりたがるアーノンクールなどとは違い、至極真っ当な正攻法なスタイルなので誰でも安心して楽しめる。溌剌として聴いていて心が浮き立つような演奏ばかりだ。しかも歌手も非常に良くほとんど不満を感じる事はないだろう。まだ若手だったジルフリーやターフェルが現在トップスターになっている事からも歌手の選定の確かさが分かるだろう。ここまで演奏と録音が揃ったモーツァルトのオペラ曲集がこれほど手ごろな値段で買えるということはそうそうあるまい。無くなる前に買うべし!

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  • 11人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/09/18

    全10作品の個々の演奏の細かい評価はとても書ききれないので止めるが、一人の指揮者のワーグナー作品の演奏としては非常に高レベルでありまとめて買ってもがっかりする事はないと思う。
    ワーグナー歌手が最も払底していた時期だけに個々の歌手については不満を感じるキャストもないわけではないが、バレンボイムの指揮は非常に安定しており現代のワーグナー演奏のひとつのスタンダードといって良いだろう。
    この全集はフルトヴェングラーの物真似と揶揄される事の多かったバレンボイムが、バイロイトでの経験を経てひとかどのワーグナー指揮者として成長する過程の記録でもある。
    ただし指環とマイスタージンガーはヴィデオ収録の音源の流用である。観客無しの映像収録とはいえ演技する歌手の発する足音等のノイズも入っている。発売済みのDVDで映像付きで見る方がより楽しめる。

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     2011/09/18

    ベームの「指環」はその歴史的意義は既に存在しないのは明らかだがw「ワルキューレ」はその中では許容範囲であろう。
    何といってもキャストの凸凹が激しい他の三作に比べると歌手が比較的揃っている。
    中ではジェイムズ・キングが一際優れている。彼はおそらく戦後バイロイトに登場したジークムント歌いとしては一二を争う存在であろう。後に同じ舞台に立ったペーター・ホフマンやらポール・エルミング等は比較にならない。まさに正真正銘本物のヘルデンテノールである。逞しくりりしい声と精緻な歌唱スタイルは現代のテノールと比べても全く古く感じない。
    ニルソンは個人的には決して好きな歌手ではないが、ドラマティコとして歴史に残る歌手なのは誰の目にも明らかだろう。
    この二人の大歌手の全盛期のライヴ録音という点でかけがえの無いレコード(記録)といえる。
    リザネクは何故かベームが重用していた歌手だが汚い声と古臭い発声で聴いててうんざりする。
    テオ・アダムは後年優秀なバスバリトンに成長するが、この頃は経験不足かまだ不安定で鼻声がやや耳障りだ。
    ニーンステットのハーゲンはまずまず立派。
    ベームの指揮は例によって終始セカセカしてて落ち着きが無い(時々キングが歌いづらそうだ)が、「ワルキューレ」は無能な指揮者がのろいテンポで振ると退屈きわまるオペラなので早い方がまだマシだろう。
    僕は全曲盤の他に昔出ていた「ワルキューレ」1幕だけのCDも持っているが、キングを聞くだけならそこだけCD一枚聴けば充分かもしれない。そっちの方が安いしw

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     2011/08/11

    バイロイトに新風を吹き込んだカタリナ・ワーグナー新総裁自身の新演出である。賛否両論というより実はほぼ否定一色だった訳だが私の評価はほぼ最大級の絶賛である。これほど衝撃的で説得力のある演出というのもは滅多にないと思う。マイスターや徒弟達の世界を美術学校に置き換えるというのは現代演出としてはむしろ普通であり何も驚くにはあたらない。驚かされるのはその表現だ。3幕においてそれまでマイスター達から浮いている存在だった前衛主義者のハンス・ザックスが急に保守反動に立場を翻し、1幕で体制に楯突きペンキを塗りたくって暴れていた怒れる若者ヴァルターも牙を抜かれてすっかり大人しくなり体制に取り込まれてしまう。終幕のザックスはさらに独善的な巨匠と成り果ててしまうシニカルな幕切れ。思うにこの演出が非常な批判を浴びたのは典型的な芸術家の堕落の構図を非常に説得力のある(しかもあけすけに)見せた為ではないかと思う。若い頃は斬新な作品を生み出していた天才芸術家が年をとると芸壇の権力者に成る例は洋の東西で枚挙にいとまない。ハンス・ザックスとヴァルターがたった一日で革新から保守へと鞍替えする節操のなさには苦笑する他ない。特に見事なのはあの美しい五重唱を歌う二組のカップルに額ぶちが降りてきて「家族の肖像」が出来上がるくだりだ。この秀逸な発想を思いついただけでもカタリナは天才的な演出家と言っていいと思う。ただし、絶賛しつつもこれこそ最高の演出とまで思えないのは芸術家の堕落でない真の芸術家の道を指し示す事までは出来ていない点だ。形式主義者のベックメッサーも駄目、保守化するザックスも駄目・・・では結局はただのニヒリズムでしかない。「マイスタージンガー」という作品が表現する芸術家の理想像は表現出来ないからだ。それに意地悪く見ればワーグナーのひ孫でバイロイト音楽祭の総裁という権力側の人間のカタリナが作品の中で反動主義者を糾弾してみせるのは自らを大衆の味方に見せようとするアリバイ作りのポーズと思えなくもない。・・・とはいえこの演出が与えた衝撃のお陰でこの作品を見て今後ハンス・ザックスを素晴らしい人物と見る事は不可能であろう。カタリナの父のヴォルフガングの奇を衒わない演出はこの作品においては気に入っていたのだが、ひとたび娘の演出を見てしまってからはただの凡庸な演出にしか思えなくなってしまった。とにかく良かれ悪しかれ衝撃的な演出であるのは間違いないのでワーグナーに関心のある人間は一度は観るべき映像である。腹を立てる人も多いとは思うが。
    音楽的にはかなり理想的なキャストというべきだろう。特にクラウス・フロリアン・フォークトのシルキーな美声には終始魅惑される。フランツ・ハウラタはやや癖があるがパワフルな声でこの演出には相応しい。フォレは非常に伸びやかな声でザックス以上に素晴らしい。付け加えればダヴィットのノルベルト・エルンストも大器の片鱗を感じさせる。ヴァイクレの音楽作りはワーグナーの淀みや粘着力とは無縁でまるでオペレッタでも指揮するように軽やかである。演出に合ってるともいえるし演出面に劣らず音楽面も斬新さを感じる。

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     2011/07/02

    評判がいいところを思うともしかすると元の録音ではそれなりに聞けるのかもしれないが、このCDはDGオリジナルズの場合リマスタリングが酷すぎる。
    DGオリジナルズのリマスタリングはヒドイ物が多いがこれは一際劣悪である。
    オルフはヨッフムの音楽性にはあまり合ってないのかもしれないが、野卑さや迫力に欠けるしオケも今の一流オケの水準からすると精度が低いのが難点だ。
    ソロはヤノヴィッツとシュトルツェは絶品だ。
    フィッシャー・ディースカウも上手い事は上手いがわざとらしすぎる。宗教曲やリートならまだしも「カルミナ」ではやり過ぎだ。
    競合盤のほとんどなかった昔は名盤扱いされたのかもしれないが、今のように雨後の筍のように「カルミナ」が録音される時代になってみると取り立てて特色のない平凡な出来といえる。

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