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Tan2 さんのレビュー一覧 

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     2021/04/14

     これは非常に面白い着眼点で書かれた本です。通常、我々が作曲家のエピソードを「点」として把握し、その作曲者の生涯の中でそういった「点」をつなぎ合わせて前後関係を「線」にするのが精いっぱいで、通常の理解はせいぜいそこまでで終わってしまいます。また、他の作曲家や演奏家との交流があるにしても、その「線上」のエピソードの一つに過ぎません。
     しかし、この中山右介さんの本は、たくさんの「個別の作曲家の動線」があちこちで交差して「面」を描いていたという視点を提供してくれる点で画期的です。シューマンとメンデルスゾーンの交友は有名だし、シューマンが駆け出しのショパンを「諸君、帽子を取りたまえ。天才だ!」と批評したのも有名ですが、それにとどまらずに、同時期のパリやベルリンやドレスデンに、リストやワーグナーや、はたまたベルリオーズまで登場し、同じ場所にいたりニアミスしていたりと、実にいろいろなことがあったのだということが分かります。確かに1830〜1850年という限られた期間の、ヨーロッパ主要都市の音楽界という狭い社会であれば、そんなことが起こっていても不思議はないことにあらためて気づかされます。
     そんな中で相互に触発されながら次々にいろいろな音楽が生み出され、作曲家同士も互いにリスペクトしたり対抗心を持ったりしながらダイナミックに発展していったことを思いつつ、音楽に耳を傾けるのも一興かと思います。

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     2021/04/14

     現代日本におけるロシア文学界の権威である亀山先生による、スターリン時代のソビエトにおける芸術家たちの活動の記録です。その中の1章が「テロルと二枚舌〜ショスタコーヴィチの闘い」に充てられています。
     内容は、スターリンからの批判に「答えた」とされる交響曲第5番から説き起こし、その批判の対象となった「ムツェンスク郡のマクベス夫人」の何がスターリンに嫌われたのか、批判を受けて撤回した交響曲第4番とはどんなものだったのか、「批判に答えた」とされる交響曲第5番に引用・埋め込まれた「秘密」などについて論じています。
     先生は1994年に初めてショスタコーヴィチの音楽に向き合ったそうなので、2002年に発表されたこの本で、音楽が専門ではないながらここまで深く議論を進めていることには驚きです。根っからの音楽好きと、ロシアの歴史や文化や人間性に(もちろん言語にも)精通された先生のなせる業なのでしょう。
     先生はこの本以降さらに深く広く音楽を聴き、内外のショスタコーヴィチの研究や文献にあたられて、その集大成として2018年に「ショスタコーヴィチ〜引き裂かれた栄光」を公表されています。ショスタコーヴィチが目当てなら「ショスタコーヴィチ〜引き裂かれた栄光」の方をお勧めしますが、それ以外のスターリン時代の芸術家として、小説家、詩人、映画監督(セルゲイ・エイゼンシテイン)などにも興味があれば、ぜひこの本もお読みになってはいかがでしょうか。
    (星の「マイナス1」は、ショスタコーヴィチ以外は興味の対象外であったから)

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     2021/04/13

    月刊誌「レコード芸術」に「傑作?問題作?」というタイトルで連載されていたものを単行本としたもの(吉田秀和賞、サントリー学芸賞を受賞)を、さらに文庫化にあたって「日本之巻」と「世界之巻」にまとめ直したものです。著者の片山氏はCDレーベル Naxos からシリーズで出ている「日本作曲家選輯」を企画している仕掛人であり、日本の近代・現代クラシック音楽について語らせたら右に出る人のいない通です(でも専門は政治学者)。
     その語り口は「世界之巻」にも生きており、片山先生が展開する音楽論・演奏論がつまらないはずはありません。
     ただ、雑誌記事の「まとめ直し」なので、一貫した息の長い議論でもないし、ひとつの視点から全体を概観したものでもありません。その点で僭越ながら「マイナス1」。
     片山先生には、まずは「日本の近代・現代クラシック音楽史」に関する首尾一貫した著作をお願いしたいと思いますが、その先にさらに「世界のクラシック音楽の現代史」に関する著作も、ぜひお願いしたいと思います。

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     2021/04/13

    月刊誌「レコード芸術」に「傑作?問題作?」というタイトルで連載されていたものを単行本としたもの(吉田秀和賞、サントリー学芸賞を受賞)を、さらに文庫化にあたって「日本之巻」と「世界之巻」にまとめ直したものです。著者の片山氏はCDレーベル Naxos からシリーズで出ている「日本作曲家選輯」を企画している仕掛人であり、日本の近代・現代クラシック音楽について語らせたら右に出る人のいない通です(でも専門は政治学者)。従って、その「日本之巻」がつまらないはずはありません。
     ただ、雑誌記事の「まとめ直し」なので、一貫した通論・通史でもないし、ひとつの視点から全体を概観したものでもありません。その点で僭越ながら「マイナス1」。
     片山先生には、ぜひ「日本の近代・現代クラシック音楽史」に関する首尾一貫した著作をお願いしたいと思います。

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     2021/04/13

    ドビュッシーは、近代フランス音楽にとどまらずに20世紀の音楽に大きな影響を与えた作曲家にもかかわらず、その生涯や音楽の成り立ちなどについてきちんとまとめられた一般向けの本は少ないです。全く傾向の異なるラヴェルと一緒にされて「印象派」というレッテルで片付けられることも多いです。もっとも、身勝手な女性遍歴(生涯に2人の女性を自殺未遂に追い込んでだ)など、その伝記はあまり「文部科学省推薦図書」にはなりにくいとは思いますが。
     その意味で、この本は一般向けのドビュッシーへの道案内として優れた好著だと思います。
     ドビュッシーの生涯にはいろいろ「へぇ〜」があり、9歳の時に最初にピアノを習ったモテ夫人は詩人ヴェルレーヌの義理の母(ヴェルレーヌの妻がモテ夫人の娘)だとか(その後ヴェルレーヌ、ボードレール、マラルメなどの詩人と交友することになる)、パリ音楽院の学生時代にアルバイトでロシアの資産家未亡人フォン・メック夫人(チャイコフスキーのパトロンとして有名)一家の夏の旅行中の家庭教師を3シーズンも務めるなど(フォン・メック夫人はドビュッシーの作品をチャイコフスキーにも送って意見を求めたらしい)。
     そんなこんな、ハチャメチャで波乱に富んだ人生から、あの響きが作り出されたのだと考えると、音楽と人生が深くかかわっていたことにあらためて気付かされます。
     この客観的な評伝と、ピアニストの青柳いづみこさんの中公文庫「ドビュッシー〜想念のエクトプラズム」を併せて読むことで、内面・無意識の世界にも立ち入ったドビュッシーの宇宙をより深く立体的に捉えることができると思います。

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     2021/04/13

    ピアニストで優れた物書きでもある青柳いづみこさんによるドビュッシーの評伝です。学者でも評論家でもない、まさしく「演奏家」の立場から(といってもかなり「学者」的視点ではある)、ドビュッシーという人間とその作品に切り込んでいる名著だと思います。青柳さんの「ドビュッシー愛」がにじみ出ています。
     ドビュッシーについては、一般向けの評伝として松橋麻利さんの著作(音楽之友社の「人と作品シリーズ」)があり、こういった「客観的評伝」と併せて読むと、ドビュッシーに対する「立体的」なイメージが出来上がると思います。その意味で両方をお読みになることをお勧めします。
     特に、晩年のドビュッシーが意欲を持っていたエドガー・アラン・ポーの原作に基づくオペラ「アッシャー家の崩壊」については、ほとんど手付かずなので松橋さんの著作ではほとんど触れられませんが、この青柳さんの著作では結構執念深く追跡されています。そういった「ドビュッシーの内なる意欲」や「執念」にこだわって迫っているのがこの本の特徴と言えるかもしれません(この本の副題はそんな意図で付けられているのでしょう)。

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     2021/04/13

    ラヴェルは有名な割にはその生涯やどのような考えをもって生きたのかを紹介した本は少ないです。たとえば、なぜ生涯独身であったのか、恋愛はしなかったのか、同時代人(ドビュッシーやストラヴィンスキー、フランス6人組など)との関係は、などなど。
     そういったラヴェルの生涯や作品を丁寧にまとめた一般読者向けの好著だと思います。
     断片的に語られる「ローマ賞」をめぐる確執、ドビュッシーの「グラナダの夕暮」の盗用疑惑、第一次大戦での軍隊志願、ヴォーン・ウィリアムズやガーシュインとの関係、晩年の健康障害と衰弱など、いろいろなことを体系的に整理して、ラヴェルという生身の人間に少しだけ近づくことができます。ただし、やはり「心の中」にまで入り込むことは無理なので、なぜ結婚しなかったのか、晩年はどんな状態だったのかを正確に推測することは不可能ですが・・・。
     ラヴェルのピアノ曲、管弦楽曲、自作や「展覧会の絵」などの管弦楽編曲などに興味をお持ちの方は、その根底に存在する「ラヴェルという人」の生きざまやその美学に心をはせてみてはいかがでしょうか。

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     2021/04/11

     タイトルに偽りありです。「楽譜でわかる20世紀音楽」ではなく、「20世紀音楽にみる楽譜の風景」ともいうべき内容です。つまり、「20世紀の音楽は、どのような楽譜として書かれたのか」ということ。音楽を「聴く」立場の読者ではなく、音楽を「演奏する」もしくは「作曲する」人のための本です。
     「あとがき」には、こに本は国立音楽大学で行われたセミナーの講義録であると書かれていますが、本の紹介にはそんなことは一言も書かれていません。もちろん、一般の読者でも音楽に造形の深い人、楽譜を詳しく読める人、「楽譜」に興味のある人にはそれなりに面白いところがあるのかもしれませんが、一般読者向きとは言えないでしょう。
     この本を読む目的を明確にした上でお買い求めください。

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     2021/04/10

     現代日本におけるロシア文学界の権威である亀山先生によるショスタコーヴィチ論である。先生は1994年に初めてショスタコーヴィチの音楽に向き合ったそうである。そして2002年に発表された「磔のロシア〜スターリンと芸術家たち」、2012年の「チャイコフスキーがなぜか好き」でもショスタコーヴィチについて
    語ってこられた。根っからの音楽好きと、ロシアの歴史や文化に(もちろん言語にも)精通された先生のショスタコーヴィチ論は、そこいらの音楽学者や音楽評論家とは全く異なる視点から展開されている。とはいっても、内外のショスタコーヴィチ論や通説・俗説にも精通されているので、全体を見渡した幅広い議論をしているところが素晴らしい。数々の「引用」や「パロディ」「類似」「裏の意味」などについてもほぼ網羅されているようである。
     約400ページに及ぶ大著で価格もそれなりにするが、ショスタコーヴィチの人生や「音楽家と社会・政治・歴史との関係」に踏み込んで、いまだ解明されていない「ショスタコーヴィチの謎」「二枚舌」や「音楽の中に仕込んだもの」を探ってみたい人には必読の書であるように思う。少なくとも、現時点で日本語で読めるショスタコーヴィチ論としては最高のものではあるまいか。

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     2021/04/09

     意外にリヒャルト・シュトラウスについて書かれた本は少ないです。最後のドイツ保守本流の作曲家として、いわゆる「後期ロマン派」に属する交響詩やオペラを数多く残し、交響詩や「ばらの騎士」などのオペラはヨーロッパでは定番中の定番で演奏頻度も非常に多いですが、その生涯や生き様が体系的に書かれたものはほとんどありません。その意味で、この岡田暁生氏の著作は貴重です。
     リヒャルト・シュトラウスは、前半生の19世紀中にほとんどの交響詩や管弦楽曲を書き終え、後半生の20世紀になってからはもっぱらオペラを作曲しました。
     そして、晩年にはナチスから「帝国音楽院総裁」にまつりあげられ、1940年には日本の「皇紀2600年奉祝曲」まで作曲しています(この曲、ほとんど演奏も録音もされません)。第2次大戦後の1949年まで生きていて、最後まで作曲を続けていました。絶筆の「4つの最後の歌」なんて実に感動的です。
     いわゆる「職人的芸術家肌」の政治音痴だったのですね。
     そんな人間・人生を知ることで、ほんの少し音楽が深く味わえるかもしれません。
     「西洋音楽史〜「クラシック」の黄昏」(中公新書)などの優れた著作の多い岡田氏のそもそもの研究対象がリヒャルト・シュトラウスだったということからも、充実した内容になっています。

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     2021/04/09

     この楽譜は、ショスタコーヴィチが密かに作曲して仲間内で楽しんだいわくつきの曲の日本版です。もちろん生前には公表されておらず、作曲者没後の1989年にチェロ奏者で指揮者のロストロポーヴィチがワシントンで初演して一躍有名になりました。
     いうまでもなく、ソビエトでは芸術の規範として「社会主義リアリズム」を掲げ、それに反する「西欧ブルジョア的芸術」を「形式主義」として批判しました。「ラヨーク」とはロシアの「からくり人形芝居」です。つまり「版形式主義的ラヨーク」とは、「ソビエトの芸術の規範に沿った人形芝居」といったもので、スターリンやジダーノフ(ショスタコーヴィチらの音楽を「形式主義的」と批判した共産党幹部)を模した人物が登場します。
     ということで、ショスタコーヴィチが共産党からの批判を「皮肉った」内容になっています。
     ショスタコーヴィチ自身が「注書き」や「出版社から」といった前書きも書いており、タイトルの注書きには「音楽防衛部(OMB)の発表によると、著者たちを検索中である。OMBは彼らが検挙されることを確信している」などと穏やかならぬことが書いてあります(もちろんジョークです)。
     しかし、その程度に当局に露見したら身に危険が及ぶような曲だったわけです。
     この日本版には、訳詞は当然ながら、そういった「注書き」や「前書き」、そして必要な解説がそろっています。
     この曲の録音は国内では発売されていませんが、輸入盤にはいくつかありますので、この楽譜・訳を見ながらCDを聴いてみると面白いと思います。ショスタコーヴィチのシニカルなユーモアを存分に味わえること請け合いです。

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     2021/04/09

     有名で愛好者も多いにもかかわらず、シベリウスは謎に満ちた存在だ。その音楽は「作りもの」であることを超越して宇宙や自然に通じている。20世紀という激動の時代に生きながら、「目新らしさ」や「革新」「思いつき」といったものを排除して、一種「あるべくしてあるもの」という音楽を書き続けた。それでも「保守的」「古めかしい」ということだけでは済まされない、人を惹きつけるものがある。そして、晩年の30年にも及ぶ沈黙。
     そういったシベリウスの生涯と作品を、平易に適切な内容と分量で提供してくれる好著である。
     交響曲、それも1、2番ばかり、そして若き日の「フィンランディア」ばかりが演奏される作曲家の全体像をあらためて把握して、知られざる音楽にも耳を傾けるきっかけを手に入れたいと思う方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。思いっきり、フィンランドを訪れてみたくなります。

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     2021/04/09

     このところ、いわゆるクラシック音楽の中の「現代音楽」に関する本がいくつか出ている。20世紀、特に20世紀後半以降のクラシック音楽は、一般人には近寄りがたい「専門家」だけの領域であった。この本は、「あとがき」に書かれているように、「類書がほとんどない」「現代音楽の世界が十分に知られていない」ことから一般向けにかかれたもので、新書の形態なので確かにとっつきやすい。
     しかし、書かれていることは「音楽を文字で説明する」もので、「主流、中心的」な幹の部分と、やや些末な枝の部分とがうまく整理されていないこともあり、やはり「現代音楽の全体像」「全体の流れ」を把握するにはなかなか至らない。この本を道しるべに、自分で少しずつ実際の音楽を聴いて行かないことには、結局目先は開けてこないようだ。
     とはいっても、これまでほとんど何もないところに与えられた「道しるべ」であることは間違いなので、この方面に興味のある方は一読して「現代音楽」の領域に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

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     2021/03/20

     オンライン配信やYouTubeが普及したせいか、録音をセットものCDにして廉価販売するケースが増えてきて、愛好家にはうれしい限りです。このCDセットもそんな中の一つ。超レアな「ヴィラ・ロボスの交響曲」がこのような「全集」の形で手に入るなんて・・・。
     最近では、サンパウロ交響楽団による Naxos 盤も出ましたね。
     ちょっと興味を持った音楽を、実際に「音」として聴くことができるのは本当にありがたいことです。しかもひと時代に比べれば十分廉価に。
     音楽とは「時間を共有する芸術」なので、CD7枚分の音楽はそれだけの時間をかけないと聴けません。少し深く立ち入ろうと繰り返し聴こうとすれば、さらにその分の時間が追加で必要となります。聴いた後で「無駄な時間を過ごした、損した」ということがないように、事前に「評判の良い演奏」「定番もの」とか「評論家の評価の高い演奏」ばかりを聴いてしまう傾向がありますが、それだけでは自分の「耳」や「鑑賞眼」が育たないし、「一期一会の掘り出し物」に出会うチャンスもありません。
     その意味では、このセットは「良いものを見つけた!」という感じです。
     サンパウロ交響楽団による Naxos 盤はまだ聴いていませんが、そのうち聴いてみたいなと思います。
     こんな「掘り出し物」がまだまだたくさんあるんだろうなあ、とほっつき歩き回る日々が続きそうです。「財布」もそうだけど、時間が足りない・・・。

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     2021/03/19

     20世紀初頭のドイツ音楽を語る上で無視できないのがマックス・レーガーなのですが、20世紀初頭のドイツ音楽が演奏されることはほとんどありません。一部の例外はリヒャルト・シュトラウスとマーラーぐらいでしょうか。
     レーガーは、マイニンゲン宮廷楽団の楽長(ハンス・フォン・ビューローや若き日のリヒャルト・シュトラウスも務めた)の経歴を持ついわゆる「ドイツ伝統音楽」の中でのたたき上げであり、ドイツ3大Bやワーグナーの跡を継ぐ作曲家を自認し、対位法や主題の変奏を得意としていたようで、同時代の若手であったヒンデミットやプロコフィエフも影響を受けたといっています。
     しかし、第一次大戦中の1916年に43歳で早世したこともあり(極度の肥満や暴飲暴食、ニコチン中毒などに起因する心筋梗塞だったらしい)、その後の「ドイツ帝国崩壊」の歴史の中で忘れ去られていったようです。
     レーガーが活躍したのは1900〜1910年代であり、フランスではいわゆる「ベル・エポック」と呼ばれる時代ですが、ドイツではレーガーたちの「保守的」な作曲家とシェーンベルクらの「革新的」な作曲家が拮抗する混沌とした時代であったようです。結果的にどちらも「主流」とはなり得ず、第一次大戦後の「モダニズム」の時代を経てナチスの文化統制と戦後のナチス文化否定の中で、結局「20世紀前半のドイツ音楽」という「定位置」が形成されないまま今日に至っているようです。
     その頃の音楽が実際どんな音を奏でていたのかという手掛かりを知る機会はほとんどなかったのですが、このところいろいろな企画が登場してリスナーの選択肢が増えました。
     マックス・レーガーに関しては、Brilliant から旧東ドイツの音源を中心とした作品集(室内楽、オルガン曲を含む11枚組)、DG からは1980〜90年代の西ドイツの指揮者、オーケストラによる管弦楽曲集(管弦楽を伴う歌曲も含む 12枚組)が出ています。
     この Warner の作品集CDは、管弦楽曲が古い録音(一部モノラル)なので、室内楽や歌曲の演奏者にこだわるのでなければ他のセットをお聴きになるのがよいと思います。

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