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音楽鑑賞及び芸術促進サークル さんのレビュー一覧 

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     2012/03/15

    【作曲家及び作品情報】

    Dodheimsgardによる1999年発表作品。

    Dodheimsgardはノルウェーの作曲家で、本作品「666 INTERNATIONAL」は3rdアルバムの位置づけになる。

    この時点での彼らの音楽は一般に、Post/Shoegaze Black Metal(あるいはCyber Black Metal)の枠組みで語られることが多い。


    【作品について・概説】

    本作品において楽曲展開の中心を担うのは、やや殺伐としたトレモロを駆使するGuitarパートにあり、背景にあたる空間は異常に無機質な電子音及びピアノ(キーボード)パートが溶け込んでいる。また、Bass、Drumsはそれに追随することになるが、特に特徴的な点は「明らかに生ドラムではない」音でリズムをとる音色が、相当大胆に打ち込まれている点である。さらに、楽曲展開についても興味深く、変拍子を交えながら知らぬ間に盛り上がりを見せる局面が多くある。


    【作品について】

    やはりどう考えても、この時点でこれ程「Cyber」な音楽を創造した彼らの発想力・実験精神には驚かされる。現在「Cyber Metal/Trans Metal」を掲げる作曲家は以前より増加したように思うが、本作品は私自身、今聴いてみてもそれらに容易に埋没しない面白さを感じる。

    音楽については上述の通りであるが、音の交わり方・重なり方は不可思議な程、良い意味で「不均衡」なのである。そうした不安定さが一種のとらえどころのない恐怖を煽りたてることに成功しており、また、聴けば聴くほどに発見する「音」も多い。

    そして、私が中でも特筆すべきと考えるのは、「語り」なのか「演説」なのか、果たして「メロディー」なのか、およそ分類不可能なこと極まりないこのVocalパートである。聴き手に一切「精神的安定」がもたらされることはない。楽曲が繰り広げる世界を見事に取り込み、体現した素晴らしい内容である。

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     2012/03/15

    【作曲家及び作品情報】

    Merrimackによる2006年発表作品。

    Merrimackはフランスの作曲家で、本作品「OF ENTROPY AND DENIAL」は2ndアルバムの位置づけになる。

    また、このMerrimackは一般にBlack Metalの枠組みで多く語られる。


    【本作品について・概説】

    本作品において楽曲展開の中心を担うのは、やや荘厳な色彩を放つトレモロGuitarであり、和音構築から主旋律のラインまでをほぼ一貫して担当する。若干アルペジオ等を絡ませたリフも印象的である。音質はある程度クリアな方で、Bass等が埋没することがなく、明確に楽曲の流れを追ってゆくことが出来る。また、速度は全体として速いものが多いが、展開する中で急激に速度を落としたり、あるいは疾走し始めることも同様に多いため、「絶え間なく」高速を維持する系統ではない。

    全体として、やや長めの楽曲が立ち並んでおり、聴き通すには人にもよるが若干体力と気力を要するかもしれない。


    【本作品について】

    一面、「闇」である。

    「アルバム」という作品の単位を考えた場合、冒頭の楽曲は、自らが当該作品にて表現しようとする「世界観」「思想観」、すなわち自分たちの領域へ聴き手を誘う、あるいは選別するという意味において非常に重要な役割を果たすということはもはや言うまでもない。それが、「イントロ」であったり「第一楽曲」であったりするわけであるが、それも数々の作曲家の中で実験が行われ、また、洗練されてきた歴史がある。「コンセプトアルバム」であれば、なおのことである。

    だが、恐らく、「…(Of Ashes and Purification)」と副題が付けられた、本作品のイントロ及びTrack02へ。私が推測するところ、言わせる人に言わせれば、相当クオリティーが高い。

    徐々にfade inする淀んだ闇が、一瞬の間を置いて、決壊する。

    変調のバランスがとりわけて美しく、見事な暗黒の世界が花開く。

    批判の介在する余地は既に無い。

    「音楽に何を求めるか」。そして「Black Metal」に求めるものは何か。それは、千差万別であろう。

    中でも、「暗い」「力」を求める方へ。

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     2012/03/15

    「作曲家及び作品情報」

    Taakeによる2002年発表作品。

    Taakeはノルウェーの作曲家で、本作「…Bjoergvin…」は2ndアルバムの位置づけになる。

    彼らの音楽は一般に「Black Metal」の枠組みで多く語られる。


    「本作品について・概説」

    本作品において、楽曲展開の中心を担うのは、独特の和音を携えるメロディックなトレモロパート及び、hatefulに攻め立てるキザミパートを切り替えるGuitarであり、Drums、Bassがそれに併走する。速度はやや速めの楽曲が主体であり、一部クリーンヴォイス(僅か一瞬)及び、トレモロパートにやや複雑に絡んでくるピアノ旋律を組み込んでいる。また、よく聴くと実は拍子も一定ではないが、一つ一つ楽曲内の流れに違和感なく溶け込ませている点は流石である。


    「本作品について」

    本作品は、どちらかといえば「Nattestid…」(1st)・「…Doedskvad」(3rd)のあたりをお聴きになられ、是非他の作品も聴いてみたいという思いがある方に推薦したい。

    「Black Metal全般」でも、「メロディックなBlack Metal」でもなく、あくまで「Taake」の音楽を求める方に。

    一貫してプリミティブな音質と荘厳・勇壮なメロディーで押し切った前作「Nattestid…」に続く作品ではあるが、本作品は相当程度に紡がれるメロディーから発せられる色彩が異なる。むしろ、何度聴いても「色」が感じられない。彼らの持つ音楽の非常にニヒリスティックな世界観を前面に押し出したような作品である。

    表紙のアートワークが、その何たるかを物語っている。

    しかし、一切「ダークな」旋律を用いずに、それを表現する楽曲構成並びに和音構築はやはり彼らならではの独創性がある。

    完全に色彩を失った世界が広がっている。

    故に他の作品に比べ一見「地味」な印象を受ける方がいてもおかしくはないだろうとは、私自身も予測はあるが、あえてそこを押し切って冒頭で述べたように紹介しようと考えた。

    非常に丁寧に創られている作品である。

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     2011/08/19

    [作曲家及び作品情報]

    Woldによる2008年発表作品。

    Woldはカナダの作曲家で、本作品「Stratification」は3rdアルバムの位置づけになる。一般にWoldはHarsh Noiseの枠組みで多く語られる。

    このWoldも正確には「Band」として定義されるというよりは、あくまで一作曲家として捉えるほうがより適切かもしれない。WoldはObeyという方とFortress Crookedjawという方が、作曲及び作詞を手掛け、楽曲に登場する「効果音」は主に後者が手掛けているようである。


    [本作品について・概説]

    本作品において、楽曲展開の中心を担うのはGuitar(?)であり、何重にもわたる空間の大半を占めている。ただ、Guitar自体から発せられるNoiseもそうなのだが、Drums(?)らしき複雑に崩れかかったパーカッションや、その他、難解な電子音、さらにそれと一体化した絶叫Vocalの効果もあり、全体として明確に一つ一つの音色を識別することはおよそ不可能な楽曲が淡々と持続してゆく。しかしながら、一方で、よく耳を澄ますと、その膨大なNoiseの中に見え隠れする、どこか冷たく荒涼とした「音」が注ぎ込まれていることもまた事実であり、聴き方次第では大きく印象が変化するとても興味深い内容である。


    [本作品について]

    先ほど、「聴き方次第では大きく印象が変化する」とコメントさせていただいたが、実を言うとそれは、私が彼らの音楽に初めて触れたときに感じた感覚を、そのまま表現したものである。

    Noiseの中に霞む、独特の閉鎖性や感情を削ぎしたような冷たさを携えた荒涼とした世界。

    錯綜する精神。

    私は、この作品にこうした要素を現時点で見出している。

    しかしながら、この作品の難しさは、私のこの程度の稚拙な言葉で表現できるほどのものではない。とにかく、その難解さが「並でない」のである。一般に「Harsh Noise」という枠組みを挙げたとしても、ある程度その系統の音楽を耳にしたことのある方であれば、そのジャンルの持つ、他の音楽からの独特の「乖離性」は創造するに難くないのではないだろうか。

    彼らもまたそうした作曲家のうちの一つであることには、私自身、微塵も疑いを抱かないのであるが、その「音の捉えにくさ」あるいは「提示される世界観の捉えにくさ」においては、他者と一線を画す側面がある。

    しかし、私は先に述べたような不可思議な感覚をそのNoiseの中に見出して以来、その底知れぬ白く染まった隔絶された世界に、今なお惹かれ続けている。

    Noiseの領域まで日常的に足を踏み込んでいる方に限られるかもしれないが、そこに何らかの「美」を見出せるという方には私がここで言わんとしたことも、あるいはもっと鮮明に伝わるのかもしれない。

    どうしても「難解」であることは否めないが、実に美しい芸術作品である。


    [Art Work]

    本作品の表紙のアートワークはS.F.J.Nichollという方が手掛けられたようである。画像で見る限り何が描かれているのは若干わかりにくいが、実は表紙に描かれているのは馬にひかれる「ソリに乗った人物」であり、それが一種の「暗さ」をも窺がわせる寒々しい雪景色の中に浮かび上がっている。また、内側も同様のコンセプトで統一されている。彼らの音楽の核心に迫る鋭いアートワークである。最後になってしまい申し訳ないが、こちらも今後のご活躍を心から期待したい。

    以上

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     2011/05/18

    [Coldworldによる2008年発表作品]

    Coldworldはドイツの作曲家で、本作品「MELANCHOLIE2」は1stアルバムの位置づけになる。一般にColdworldはBlack Metalの枠組みで語られていることが多い。

    また、Coldworld も厳密に「Band」として定義されるという分けではなく、G.B. という方が全ての作詞・作曲を手掛けられているとのことであり、あくまで一作曲家として捉えるのがより適切であると思われる。


    [本作品について・概説]

    本作品においてまず主体となるのは、やや荘厳且つ幽玄な色彩を放つトレモロGuitarであり、時折アルペジオ等を上手くリフに挟み込んでいる。全体として音の数は多い方で、ベースラインや緩急のあるDrumsパート等、かなり精緻に楽曲自体は構築されており、「Band Sound」としての完成度は非常に高く、加え、ストリングスパート、Industrial なコーラスパート並びに電子音、その他様々な音色が随所に溶け込んでいる。速度は楽曲にもよるが、総合すると「疾走」パートも多く存在する。


    [本作品について]

    私が最も興味を惹かれたのは、とりわけ「Dream Of A Dead Sun」(Track 01)の冒頭のリフ等において用いられた、一種「神秘性」や「壮大さ」、そして独特の陰りを持つ、メロディーの「運び」である。使用される「音の数」が多いこともあり、高音域のラインと低音域のラインが一瞬噛み合わぬようで、ふと次の瞬間には美しく、悲しく溶け合う、といった不可思議な旋律が度々現れる。細かく音を分析すればするほどに謎めいたリフもいくつかあり、彼が如何なる音楽的背景の持ち主なのかといった点は一層興味深いところでもある。

    また、「音楽的背景」と言えば、恐らく彼のBackgroundは通常人が想像し得る枠組みを遥かに超越しており、そうしたことから生まれる一種の「柔軟さ」が楽曲の節々から感じられる。中にはEnya(!?)系統の影響がかなり顕著に現れる楽曲もあり私自身、驚愕せざるを得なかったのをいまだに覚えている。

    加え、楽曲の構築力も先に述べたように非常に水準が高く、ストリングスパートや電子音、その他様々な音色を駆使し、静寂に包まれた幻想的な空間を描き出す場面もあれば、アトマスフェリックながらも展開を見せる激しい側面も持ち合わせており、絶叫Vocalだけが悲痛に木霊する白く染まった景色はあまりに眩い。

    気品溢れる、儚くも美しい作品である。


    [アートワークについて]

    ちなみに、ジャケットにおけるデザイン及びレイアウトは、Trist/Sperber Illustrationen社属するBenjaminという方が手掛けられているそうで、非常に繊細で且つ美しく、楽曲から広がる静かで神秘的な世界観と見事にタイアップした作品である。こちらも今後の更なるご活躍を心から祈っている。

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     2011/04/18

    [Blut Aus Nordによる1996年発表作品]

    Blut Aus Nordはフランスの作曲家で、本作品「MEMORIA VETUSTA I」は2ndアルバムの位置づけになる。一般にBlut Aus Nordは Black Metalの枠組みで語られていることが多い。

    [本作品について・概説]

    本作品は全編を通して、相当程度の厚みを持つトレモロGuitarが押し出されており、単音フレーズ(ソロパート)や、独特の余韻を残しながらキザまれる局面が、複雑な楽曲展開に呼応してゆく。また勇壮な男性コーラス、並びにストリングスパートも溶け込むように巧みに挿入されており、叙情的なメロディーラインはおそらく彼らの作品の中で、最も充実していると感じる。

    [本作品について]

    サウンドプロダクションが、前作「ULTIMA THULEE」と極めて類似しているが故に、多少比較を折り込みたい。

    独特の「息苦しさ」や「寒々しさ」が強調された前作と比較して、本作品は類似のサウンドプロダクションながら、それとは全く異なる世界観を提示することに成功している。前作では若干埋没していたBassラインが、まるで生命が宿ったかのように躍動感を得、一貫して「重く」「冷たく」波打っていたGuitarは、まるでオーケストラを思わせる音の数の中で時に低音域、時に上へと広がりを見せ、その幻想的で且つ荘厳な世界観が一気に開花している。

    また、楽曲展開も非常に劇的で、落とし所では激しくもゆったりと美しい旋律が注ぎ込まれており、この点もまた、一種の「無生命観」を演出した前作の沈み込むGuitarやKeyboardのリフレインとは対照的であり、より「楽曲という単位を意識なさったのか、「間合い」が的確に突き詰められている。

    究極的「不協和音」を極め、今なおその実験的精神を探求し続ける彼らが、一糸乱れぬ本気の「和音」を構築すると、どれほど恐ろしい存在となりうるか、ということを証明した一枚ではないかと私は考えている。

    遠く悲しき記憶の断片を、そっと拾い上げてゆくようで、また何故か不思議な距離感を携える、幽玄・荘厳な名作である。

    あくまで個人的ではあるが、私自身は初期の彼らの作品がとても好きである。

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     2011/04/04

    [Saturnusによる1996年発表作品]

    Saturnusはデンマークの作曲家で、本作品「PARADISE BELONGS TO YOU」は1stアルバムの位置づけになる。一般にSaturnusはDoom Metalの枠組みで語られていることが多い。

    [本作品について・概説]


    本作品において、まず主体となるのが激しく切りつけるような歪んだ重低金属音と、所謂Metal的な要素を突き詰めたかのような力強くもまた美しい音色を使い分けるTwin Guitarのパートであり、また、その背景をストリング及びコーラスパート等を中心にしたKeyboardが彩る。さらに、そうした多くの音の中にあっても埋没せず、叙情的な数々のフレーズと繊細な距離感を保ちながら、独特の和音を構築するBass、並びに一打一打、深く、更に深く沈み込み、楽曲展開どころか「瞬間」の抑揚すら体言せんするDrumsが見事に調和する。

    [本作品について]

    もはや、其処に「言語」の介在する余地は無に等しかった。体中から血の気が引いてゆく。その感覚だけを無意識に自覚していた。

    ここで紡がれる空間が、聴き手に対して一種「雪原地帯」のような白銀の世界を連想させるのは、恐らくは、喪失感や無生命感に溢れたこのIndustrialなコーラスパートが存するためであろう。現在の映画音楽は印象派の系譜に位置づけられるとのことであれば、類似の手法を用いるとそうしたイメージが、或いは浮かぶことも在りうるのかもしれない。

    しかし、「自然」という存在は実に様々な姿を私たちの目の前に提示する。風の無い夜にただ深々と雪が降り積もる世界は一種「幻想的」で、「神秘的」かもしれないが、その存在はまた同時に「生命」という概念を知りえない。時に世の万物の存在を一瞬にして無に帰せしめる如くの激しさも確かに携えている。「何か」を失い、狂い、揺れ惑い、ただ呆然と其処に立ち尽くす主人公の姿が、涙とともに目に浮かぶ。

    語りとDeath Voiceを見事に使い分け、そうした感情の起伏を見事に伝え、移入させてしまうVocalの卓越した感覚は、既にこの段階で完成している。また、作品全編を通して、楽曲と楽曲の間に、微かだか「小鳥のさえずり」が導入されており、これが、作品全体にわたる静寂とその悲痛さを、助長する。

    また、彼らが「死」に対して、独特の思想間を持ち合わせていることも、楽曲を聴くと同時に詩を追ってゆくことで、実感できる。恐らくこの「PARADISE BELONGS TO YOU」という表題。想像以上に切実である。

    これ以上のコメントは避けさせていただいた方が良いと考える。

    もはや、説明不要の名作である。

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     2011/04/02

    [Sleeplessによる2001年発表作品]

    Sleeplessはイスラエルの作曲家で、本作品「Winds Blow Higher」は1stアルバムの位置づけになる。一般にSleeplessはProgressive Metal(Rock)の枠組みで語られることが多い。(※ 以下補足事項参照)

    このSleeplessも、正確には「Band」と定義されるというよりは、あくまで一作曲家として捉えるほうが適切かもしれない。SleeplessはDavid Bandayanという方とMaor Appelbaumという方が作曲及び詩を手掛け、どちらも少なくともクレジット上のみですら、10種類近く、或いは十種類以上の楽器をこなす実力派の演奏家でもある。

    [本作品について・概説]

    本作品は、Bassが主体となって楽曲を展開し、物静かで繊細なDrumsがタイアップしながら、その他様々な楽器が特有の鬱空間に彩を与える、という楽曲形態が取れられている。シンセサイザーをはじめ、ジャズを思わせるようなしなやかなピアノ、女性Vocal、トランペット、そしてGuitarと、数え切れない音の数である。また、後述するが、その楽曲構築力は並外れている。

    [本作品について]

    複雑怪奇な並外れた楽曲構築力、ならびに展開力に裏打ちされた、閉鎖的、且つ壮大な、悲愴空間。まさしく傑作である。

    まず、驚かされる点は、前述の楽曲自体の構築についてである。私自身が聴いた限りでは、彼らはおそらくジャズ系統の音楽的バックグラウンドの持ち主であり、多彩な楽器の組み込み方や、いわは即興演奏を思わせる、規律を逸脱するその方法論により、すでにジャンルの「枠」が「融解」している。そうした点も相俟って、この奇跡的とも言える、困惑と、怒り、そして悲壮感の激流、またそれとは対照的な一貫して閉鎖的な精神の静寂の「融合」が成立している。

    また、彼らには独特の空間支配力があり、その表現空間を3重・4重にも活用し、先に述べた大量の楽器が、どれも互いに音色を損なうことが無い。聴けば聴くほど発見する「音」も多く、彼らが如何に、しなやかでありながらも、密度の高い楽曲を製作しているか、ということが切実に伝わってくる。たとえば、主体となるBassラインを追ってゆくだけでも、その緩急と抑揚を見事に体現する、その音の打ち込み方に驚かされる。

    人間の精神世界における「静」と「動」。両局面を、透徹した感覚と技巧を持って、鏡の如く映し出す儚くもまた美しい芸術作品である。少なくとも、私はそう確信している。

    [補足事項]

    ※このSleeplessについては、一般的ジャンルとして如何なる枠組みで語られるのかという点、多々あるようである。

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