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きづかい さんのレビュー一覧 

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2023/12/21

    京大オーケストラの「親方」

     京都・東大路通を北上し、熊野神社前 (現在は「東大路丸太町」などという、味気ない名前になっている) を過ぎ、「近衛通」交差点を過ぎると、(かつては)「京大交響楽団」と大きく書かれた看板が掲げられた、古めかしい木造平家建てが目に入った。
     京都のオーケストラ史を一人で背負ってきたかのようなこの建物は、実は当時他の大学オーケストラ・メンバー羨望の的だったのだ。1960年代の終り頃、私はオケ仲間と共にこの京大オケBOXへの潜入を試みたことがある。湿気の多い草深い道を踏み分け入り口に辿り着いた時、中から得も言われぬ美しいメロデーが流れ出て来た。見ると、弦楽器奏者がドヴォルザークの「アメリカ」第2楽章を練習しているところだった。
    「うまいッ、上手すぎる! 」
    そう思った時、メムバーの前に背丈が180センチもあろうかという老人がいることに気がついた。
    それが近衛秀麿氏・・・「親方」だった。
    当時は私たち下っ端の若者でも、朝比奈氏を「オッサン」、近衛氏を「親方」と呼んでいた。
    「アメリカ」は弦楽四重奏だから通常指揮はいらないのだが、親方はゆったりと右手を動かしていた。
    その動きには、ほとんどリズムの「点」が感じられなかった。
    親方の顔は、夢見るように彷徨っていた。
    私は、生まれて初めて「音楽を生み出すための指揮」に巡り会ったような気がした。
    BOXの中には戦前のものと思われる古めかしいポスターが所狭しと貼られ、長い長い歴史の重みを放っていた。

     後日、親方指揮する京大オケの定期演奏会を聴くため、私はオケ仲間と京都会館第一ホールに出かけた。その時のプログラムでよく覚えているのは、ブラームスのヴァイオリン・コンツェルト (独奏/外山滋)、それにモーツァルトの「ジュピター」だ。
    クラリネットの入った近衛版の「ジュピター」は、とても暖かい響きだった。
    「今日クラリネットを吹いた奏者は、生涯ただ一度の「ジュピター」演奏に、感慨もひとしおだったことだろう」みたいなことが、たしかプログラムに書かれていた。
     親方が京大オケを振った1970年前後の録音がリリースされるという。名門とはいえアマチュアの演奏がこのようにまとまって出るというのは、それなりのニーズがあるからだろう。
    今回のCDに、私が京都会館で実際に聴いたブラームスのヴァイオリン・コンツェルトや近衞版のジュピターが含まれていないのは残念だが、今日では絶対聴くことが出来ない、親方の「リズムの呪縛から解放された独自の世界」を体験できるのでは、と今から期待している。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 8人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2021/11/29

    まだ聴き始めたところですが、やはり他には得難い物凄い、そして余りにも人間臭い指揮者だったのだ、と驚愕しいます。少し前VENIASから72枚組のライブCDが出た時、それまでのクレンペラー感がぶっ飛び、「これは只者ではないな」と思ったのですが、今回のコンツエルトゲボウのより良い音質のライブによって、その思いは確信へと変わりました。やはりオケが上手い!味わい深い音色・パワーを持つ奏者達が皆この異常な指揮者のタクトの虜となり、本気を出している事がよく分かります。私はメンゲルベルクが大好きなのですが、彼が亡くなった1951年に演奏された「ロマンテイツク」第4楽章で、メロデイツクな旋律にポルタメントが現れ、思わず涙してしまいました。
    タラップから落っこちて複雑骨折・全身大火傷のほか、数限りない病気…脳の良性腫瘍を摘出した後極度の躁状態となり、起こしたトラブル数知れずという人物に、神は至高の才能を与え給うたのです。しばらくは、この全集だけを聴き続ける事になると思います。
    モーツアルトの25番など、現代の指揮者がもしこのようなテムポを求めたら、間違いなく全てのオーケストラから総スカンを食らう事でしょうね。

    8人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 13人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/08/19

    まさに待望の全集!! ピリオド楽器の窮屈な響きに疲れ切っていた私にとり、まさに干天の慈雨(宇野功芳風?)の如きプレゼントである。バロック音楽が伸び伸び、生き生きと自然に演奏されていた時代の、これは貴重な全集だ。
    中から一曲、ジャン・ジャック・オーベールの「4つのヴァイオリンのための協奏曲イ短調」をぜひ聴いてみて欲しい。本当に素晴らしい曲!!
    私事で恐縮だが、パイヤールさんが発掘してくれたこの作品に惚れ込んだ私は、思いきって氏に「楽譜を送ってください」と頼んだ。すると氏は快く応じてくださり、「See you very soon !」と記された暖かいお手紙と共に、手書きの楽譜を送って下さったのである。その後何度か演奏させていただいたのだが、感謝の念は今も募るばかりだ。

    13人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2018/09/14

    まさに奇跡の復活! 癖のない伸びやかな声、安定した歌唱はそれだけで魅力だ。この歌手をCDにしてくれたぐらもくらぶにひたすら感謝。北のみずみずしい歌声から、戦前歌謡の最上の姿を改めて堪能した。一言で言えば「癖のない東海林太郎」といったところか。しかしほとんどの録音がまだ10代の頃になされたのだ。現代の歌手たちの幼稚さ、未熟さに改めて思いを致してしまう。リマスタリングも素晴らしい。ノイズを削った貧弱なSP再録が多い中、低音が豊富で情報量も多い。
    戦後の眞木不二夫と共に、是非一人でも多くの方々に聴いて頂きたい夭逝の歌手である。

    0人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 14人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2018/01/20

    わが最愛のストコ先生が帰天されて、もう40年になるという…その時キングからフェイズ4のレコードが1.300円でドチャッと出て、サイフをはたいて全て購入したのを昨日の事のように思い出す。「ストコ先生とカザルス先生は永久に死なないんだ!」と信じていた、無垢で純粋な少年の心が懐かしい。最近は何故か、四季や白鳥湖の録音がバッタ盤で出回ってるフェイズ4録音(これが結構いい音!) だけど、ようやくまとまった形で正式リリースされるのは大歓迎。既に出尽くした感のある録音ばかりだが、ライブ盤やリハ音源 (RCAのはリハ途中で止まったりして、悲惨だった…)もついてるので、やはり買わないわけにはいかない (商売上手い!) 。今後はストコ先生の最も脂が乗っていた1940〜50年代のコロムビア、ビクター系録音も集大成されるといいなー。his orchestraでのビクター盤のチャイコの5番、コントラバスが二人しかいないのに、録音のトリック使って10人位いるみたいに聞こえるあのストコ魔術を、最新のリマスタリングで是非改めて聴きたいものだ。
    最後に。皆様、アメリカ響とのクリスマスコンサートの録音を聴かれた事、ありますか? これほどコントラバスが説得力を持った演奏は、他にありません。

    14人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 7人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2017/08/25

    何と詳細な商品説明!! CD到着が凄く待ち遠しくなりました。よくぞこれだけ集めてくれたもの。双極性障害にタラップ転落、寝タバコによる全身火傷などなど・・凡夫には想像出来ぬ凄すぎる人生。「クレンペラーの演奏はライブは好不調の差が激しく音も貧弱、晩年のスタジオ録音は鈍重」という先入観がありますが、この機会に彼の音楽を改めて味わい直したいと思っています。

    7人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2013/08/06

    まさかこのような録音がCD化されるとは思ってもみなかった。私事で恐縮だが2008年、井上道義指揮によりショスタコーヴィチ/交響曲全曲演奏が行なわれ、私は第11番、第12番の演奏にNフィルの一員として参加した。そして、この2曲が真に優れた傑作である事を初めて知る事が出来た。会場はこの本邦初演と同じ日比谷公会堂。傾斜のきつい階段を昇ると、そこはまさに戦前の世界だ。ゲネプロの合間に座った客席では、息苦しいほどのオーラに襲われた。それはこの会場で様々な力演を奏でた先人たちの、魂の叫びだったのかも知れない。
     上田仁は1950〜60年代、東京交響楽団が苦しい運営状況だった頃、ひときわこだわりを持った選曲を行なった指揮者だった。ショスタコーヴィチでは第5番のほか第7番から12番までの日本初演を一人で全部やっており (!)、第12番はスタジオ録音によるレコード(ステレオ)も残している。(東芝/JSC1010) 当盤の批評は芳しいものではなかったが、この時期にこの作品の演奏・録音を残した事自体が画期的な事だったのだ!! 他のライブ録音も、もし残っているなら是非リリースして欲しい、と心から思う。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2013/05/14

    以前とんぼちゃんのベストアルバムがリリースされた時「未発表音源やラストコンサートのCD化も望みたい」とレビューに書き込んだが、まさか本当にリリースされるとは思ってもみなかった。今の時点で採算が取れるとは思えないこのアルバムのリリースを決断された関係者の英断に、心より拍手!!
     よんぼの喉の不調もあって解散のやむなきに至った「とんぼ」だが、今は無き名古屋・港湾会館でのこのラストコンサート、痛む喉を振り絞るように歌われる「遠い悲しみ」など、何度聴いても涙してしまう。失われた声の輝きを補って余りある「よんぼ」のひたむきな姿勢を、「とんぼ」と共に青春を歩んだファンは決して忘れないだろう。

    0人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 10人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/09/03

     橋本國彦は明治37 (1904 ) 年9月14 日、東京本郷の弓町にて橋本源次郎の次男として生まれた。幼くして大阪に移り、大阪府立第一中学校を卒業後、東京音楽学校本科器楽科 (ヴァイオリン)に進み、卒業後は研究科において器楽・作曲を修めた。昭和9年から12年まで文部省留学生として欧米に遊学し、フェリックス・ディック、チャールス・ラウルトップ、エゴン・ヴェレシュらに指事し、またアロイス・ハバ、エルネスト・クシェネック、そしてアーノルド・シェーンベルクら当時の前衛作曲家たちの門を叩いた。
     帰国後は母校に籍を置き、嘱託、講師、助教授、教授と昇進した。作曲のほか、ヴァイオリン演奏や指揮もなした。昭和22年、東京音楽学校作曲科主任教授の職を辞任し、鎌倉市極楽寺の自邸において専ら作曲につとめたが、翌年夏頃から胃癌を発病し、昭和24 (1949) 年5月6日、ついに帰らぬ人となった。享年わずか46歳であった。
     橋本の交響曲といえば、1940年に皇紀2600年を奉祝し書かれた交響曲第1番ニ調が有名で、ナクソスの「日本作曲家選輯」第1弾としてリリースされている。(CD 8.555881/沼尻竜典/東京都交響楽団) しかし1947年に日本国憲法公布を記念して書かれた第2番の交響曲ヘ長調は、作曲者指揮する東宝交響楽団 (現・東京交響楽団)により5月3日に初演 (帝国劇場「新憲法施行記念祝賀会」されて以後、こんにちまで再演されていない。
     交響曲第2番は1947年の3月から4月という、わずか2か月の間に鎌倉・極楽寺の自邸で書き上げられた(4月16日脱稿) 。曲は三管編成で、ソナタ形式による第1楽章と変奏曲による第2楽章からなり、現在自筆スコアは日本近代音楽館に寄託されている。その表紙には、2枚の「日本国憲法/発布記念」切手が貼られ、タイトルの署名もそれまでの「國彦」が「国彦」へと変わっているのが興味深い。戦時中東京音楽学校作曲科主任教授という立場から、時局に迎合する作品を多数作曲した橋本はその責を問われ、母校を去ることとなる。(後任は伊福部昭であった) 鎌倉に蟄居同然の暮らしを余儀なくされた橋本だが、自らを新しい時代に何とか生かして行く道を懸命に模索していたのだ。この第2交響曲は戦時中の第1番とは対照的に、来たるべき新しい時代を祝う明るい曲想に満ちており、橋本のエネルギーが込められた演奏時間灼35分の大作である。しかし・・・第1楽章の最後のページには「1947年3月4日起稿 - 3月26日脱稿 (Beethovenの命日)という書き込みが・・・橋本は1年後の夏に、死の病となる胃癌を発病することになる。理不尽な逆境の中、ひょっとしたら彼は自らの悲劇的な運命を予想していたのでは・・・と考えるのは穿ち過ぎだろうか?
     第一楽章はいきなり憧れに満ちたアレグロ・モデラートの主題が奏でられる。全体に明るい雰囲気で貫かれ、その明快な展開や習熟した管弦楽法は、同時代の邦人作曲家の中でも一際抜きん出ている。第2楽章「フィナーレ」は変奏曲で、橋本の多彩なオーケストレーションを堪能することが出来る。 
    (編成 =  3 (Picc.) -2 (C-Ing) -2 (B.Cla) -2 (C.Fg), 4-3-3-1, Timp, Piatti, Tri-Ing, G.C, T.M, Hp. Str. )
     今回橋本の母校・東京藝術大学が総力を挙げ、「日本作曲家撰輯」エキスパートの湯浅卓雄氏の指揮のもと、この第2交響曲が作曲・初演以来実に64年振りに世界初録音CDとして日の目を見る事となった事は、例えようもなく意義ある事と云わねばならない。
     終戦直後、「戦時体制に協力した芸術家」たちの責任を問う追求は熾烈を極めた。日本音楽界の重鎮・山田耕筰も例外ではなかった。しかし政治的手腕に長けた山田がこの難局を上手く乗り越えたのに対し、芸術家肌で政治に疎かった橋本は、その全ての社会的なステータスを失った。このように、真に音楽的な評価以前の外的要因により、間違いなく戦前期最も才能に恵まれた作曲家であった橋本の作品が現在、歌曲「舞」など一部の作品を除いては、ほとんど忘れ去られている事がとても理不尽に思えるし、また残念でならない。橋本もさぞや無念であったことだろう。私たちは今こそ、改めて橋本の音楽を先入観抜きで聴くべきではないだろうか。

    10人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/05/04

    「よんぼ」の高音は本当に素晴らしかった・・・「とよ」とのハーモニーも絶妙で、バックのアレンジもストリングスが美しく (奥入瀬川など最高!!) 、とんぼちゃんはいつ聴いても私を甘酸っぱい青春時代に連れて行ってくれます。いま、このような叙情的な世界を聴かせてくれるグループが皆無なのは本当に寂しい事ですし、現代の若者にとっても不幸な事ではないでしょうか。(やはり時代なのかなあ・・・)
    とんぼちゃんでCD化されているのは通販限定の2枚組アルバムと1st「貝殻の秘密」 (現在廃盤)のみです。他のアルバムもCD化してほしいのですが、きっとセールス的に無理なのでしょう。そんな中たった14曲ではありますが、とんぼちゃんのベスト盤がリリースされた事は、やはり喜ぶべき事ではないでしょうか。個人的には初期の未発表録音や、今は無き名古屋港湾会館で行れたラストコンサートを、CDで是非聴きたいところです。
    ところで先日よんぼ (市川善光さん)のコンサートが名古屋でありましたが、仕事で行けませんでした。返す返すも残念です・・・。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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