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うーつん さんのレビュー一覧 

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     2024/02/13

    鏡の迷宮に迷い込んだような曲集という印象を持った。「瞑想」というアルバムタイトルからすればもう少し静かで穏やかな曲集かと思った。が、数回聴いて前述のとおり、鏡の迷宮に迷い込みその光や映る影や気配に眩惑され、自分が果たしてどこにいるのか、そもそも自分が本当にそこにいるのか・・・そんな感覚になった。音はキラキラと変化し、楽想も変容する。しかし外的にあちこちを旅するような感じでなく、自分の内面を鏡で視るような不思議な感覚。私としては「瞑想」というより「沈思」といった言葉の方がこのディスクに合うのでは、とも感じる。シュタイアーの自作『Anklange』には特にそういった感触があると思う。一般的な意味での瞑想を考えるより、チェンバロからはじき出された音とその余韻である響きを静かに、そして深く聴いてその音の向こう側にある「何か」を考える・・・そういった意味で「瞑想」を捉えてもらうとよいのではないだろうか。シュタイアーの意欲作、ここにおすすめしてみたい。

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     2024/02/06

    有名な大作揃いでない不利を感じさせない良盤といえるだろうか。
    響き渡る壮大なオルガンを想像するより、会衆の親密な集まりで流れる小さな音楽を想像してもらえたらいいのではないだろうか。
    派手ではないがじっくりとオルガンの豊かで温かい響きを愉しめるのがおすすめ。大曲だとどうしても曲の構造とか音の絡みに耳がいってしまうがこういった小曲集だとオルガンの滋味深い響きの変化に耳を傾けていけるのに気付いた。演奏時間も短いため集中も途切れにくい。私のような聴く耳を持たない者には親切な構成ともいえそうだ。

      ところでこのシリーズ、ジャケット写真デザインが巻貝尽くし。パイプの形状のイメージ絡みなのか、巻貝の巻き方の数理的な法則(があるらしい…)からパイプの音出しの数理的な仕組みを連想したものなのだろうか。4巻目の当盤でようやくその辺に思い当たった。本来の意図は判らないがデザインの美しさも見ていて愉しい。個人的な感想だが、良いディスクはジャケットデザインも良いと思う。

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     2024/01/11

    クララ(または女性)の立場から見たシューマンのリートという印象を持った。先日入手し愛聴している「シューマン:『詩人の恋』、クララ・シューマン:歌曲集 ユリアン・プレガルディエン、エリック・ル・サージュ、サンドリーヌ・ピオー(カタログNo:ALPHA457)」とペアで聴くとなかなか面白いと思う。
    プレガルディエンがロベルトの立ち位置からクララを歌い、当盤のサンプソンはクララの立ち位置からロベルトを見るというのが私の見立て。
    プレガルディエン盤の『詩人の恋』の4曲目「Wenn ich in deine Augen seh’ 」の中で「Ich liebe dich」と歌う部分にピオーの声を忍ばせクララを想起させる演出にハッとさせられるが、当盤では「子供の情景 op.15」をところどころに登場させロベルトの存在を表しているような気がしてならない。

    曲目、配置、伴奏、そしてサンプソンの清楚であり、かつロベルトの「在りし日」を回想しているかのような歌い口に静かな感動をもらった気がする。お薦めです。

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     2024/01/11

    華々しく歌うより、詩に寄り添いピアノと共に歌う雰囲気のディスクと感じた。
    曲目の内容からか、詩の醸し出す気配からか美しく軽やかな歌声の中に「死」と呼ばれる安らぎを仄かに感じるのは考えすぎだろうか。
    ピアノ伴奏も派手過ぎず好ましい。特に「水の上で歌う D.774」における、寄せては返すさざ波、または湖面をさらう風の行き来 −それは移ろい消えてゆく人生を表すかのよう− を表現するような切ない演奏は格別。歌に彩りと影を添えていく伴奏だと思う。
    ディスクは「別れ D.829」で静かに締めくくる。「楽園」の手前にある別れ。それは辛いものではなく、来たるべくしてやってくるものとして諦観を含めつつも肯定的に受け入れていくもの・・・そのように私は考えてしまった。

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     2023/12/29

    曲から見える風景がフッと変わるのが興味深い。ピアノ伴奏が本来あるべき形なのだろうし、正直に言って「その方がいいな」とも思う。だが伴奏の経験豊富なA.シュマルツによる編曲ならシューベルトの歌曲の雰囲気を壊すことはなかろう、と入手にふみきった。様々な楽器に風景や心象の機微などを演じさせながらそれほど過度には立ち入って来ず、ピアノ伴奏と同様の効果を生じさせている。上品で「良い趣味」の仕上がりでホッとした。オケによる音楽の波に乗ったゲルネの声はこれまた安心して落ち着いて聴ける。

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     2023/12/28

    リート歌手のすばらしさは声や歌い方だけで測れないものだと思う。いろいろな作曲家、時代、作品群を俯瞰して曲を組み合わせひとつの視点を提示できる才能も加わるのだと、このディスクを通じて感じた。

      生と死とは、お互いの間を揺れ動き、互いに見つめあう・・・遠いようで実は隣り合わせの二つの状態と感じている。生から見れば死は遠い未来、死から見れば生はついさっきまであった過去なのだろうが、実は同時に存在するコインの表裏みたいなもの。そんなことに思いをはせたくなるこれらの曲目は練り込まれ、味わい深い。この曲たちを、プレガルディエンは極端に高揚したり落ち込ませず淡々と歌い上げる。ゲース(おそらく彼もこのプログラミングに一役買っているのだろう)の煽らず、かつ親密に歌を支える伴奏も聴きごたえがある。

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     2023/12/26

    はっきり、くっきりとした演奏の中にふんわりとロマン的な香りづけがなされた演奏と感じた。ロマンティックといってもこってりとしてない、仄かにそしてとても爽やかな類のもの。奏者それぞれが古楽から現代まで弾きこなす面々だからか、HIP的な奏法と現代音楽で磨いた譜読みと演奏の深みに加え、各自に備わっている音楽への理解が融合した純度の高い結晶のような演奏だと思う。

    ロマンティックも度が過ぎるとくどくなるし、シューマンの豊かな室内楽で即物的な味気ない演奏も聴きたくない。その意味でちょうどよいバランスの調合が行われたこのディスク・・・長くじっくり愛聴できる一枚と評しておきたい。お薦めです。

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     2023/12/12

    冒頭のヴァイオリンの音が出たとき、ふと風が頬を撫でたような錯覚を覚えた。以降、フルート、ヴィオラとハープのためのソナタもチェロ・ソナタも同じように、室内で聴いていながら風や草原や空気の香り、日差しの暖かさ、曇りの時の肌寒さ、そして雨ふりの際のにおいのような空気感を感じさせる音楽が漂っていた。そして間に挟まれたピアノの独奏が室内にいることを思い出させてくれた。

      なんとなくだがドビュッシーの音楽、ことここに収められたソナタたち(とピアノ曲たち)は変に頭で考えず音たちが織り成す雰囲気に身を任せて聴くのも面白いのかな・・・なんて、つらつらと考えた。ここに集まった芸術家たちによる美しく儚い音楽の戯れを愉しむ。たぶん、(私だけかもしれないが)そんな聴き方がこのディスクにぴったりなのかもしれない・・・。お勧めです。

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     2023/12/02

    C.プレガルディエン(1956年生)はベテランとなった今も若々しい歌唱と解釈、自由な発想で私たちにリートのすばらしさを伝えてくれる。2020年収録のこのディスクも60歳を超えたと思わせない凛々しさと瑞々しさを含んでいるのがうれしい。
     「白鳥の歌」をアルバム前後に上手にちりばめ、中間にリーダークライス(op.39の方)を挟む構成。その順番が整っており作曲者や詩の違いを乗り越えて、一つの大きな自由な括りの歌曲集のように聴くことができると感じた。
     元々、リーダークライスを聴きたくて入手したが、全体を体験し「素晴らしいディスクに巡り合えた」と思える佳品。リートを愛する方に、これからリートの森に足を踏み入れたい方にもぜひ聴いて楽しんでいただきたくレビューを記しておきます。

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     2023/12/02

    J.プレガルディエンが(若いのだから当然だが)若々しく歌い上げたシューマンへのオマージュ。エリック・ル・サージュのピアノ伴奏(1856年製ユリウス・ブリュートナーによるオリジナル楽器の音がまた落ち着いて深みを湛えて格別)、ピオーの参加など多彩に愉しむことができる。クララの作品がもう少し入ってくれたらと思うのはぜいたくな注文。

      メインプログラムである「詩人の恋」も若き詩人の切なる心情がストレートに歌われて素直に惹きこまれた。歌唱には随所に工夫がみられ、実に新鮮。ピアノ独奏曲が挟まれ歌の流れを汲みつつも程よいアクセントとなり、一夜のプログラムとして全体を楽しむことができる。夜にしんみり聴くと余計に心に沁みてくる、そんな佳さをもったアルバムとしてお勧めしたい。

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     2023/11/26

    父子共演を愉しみ聴くことができる喜び。
    (録音当時の)数年前なら「クリストフの息子」と言われていたであろうが、ここ最近の活動の拡がりから「ユリアンの父親」と言われ方が変わるかもしれない。いわれ方が何であれこのプレガルディエン父子2代が歌曲の世界に及ぼす影響は大きいものであろう。
    盟友であるM.ゲースとの「2+1」で、(シューベルトを軸とした)歌曲を趣味良く男声二部に編曲し歌いあう。「家でふたりで歌曲を楽しく歌ってみよう。」という感じで始まり、父子で半ば「プライベート」的に仕上げたような趣き。リートの深みを探求するというより、歌って愉しむリートの心安さを感じる一枚。決して低レベルの内容ではないと思う。ふたりの瑞々しい歌い口と声は聴いていて安心できる。

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     2023/11/26

    ごつごつとした峻厳たる岩山を登るかのようなハンマークラヴィーアと感じた。

     ここに聴けるハンマークラヴィーアは流れも良くなく、至る所で躓かないよう歩みが遅くなる…。これは悪く言っているのではなく、そこにこそアファナシエフのベートーヴェンに対する信条告白があるように思える。音符として残されているメッセージをそれこそ一歩一歩確かめるように、踏みこんでいき、山頂に向け独りで挑んでいるような感覚を覚えた。第3楽章も独りで岩だらけの道を黙々と歩いている時のような集中と忘我の混ざり合った情感を感じた。第4楽章のフーガも岩山の厳しさに気圧されながらも全身を使って這い上るような、もはや岩山と自分自身の闘いであり、一体化にも思える。アファナシエフにとっては、それほどにベートーヴェンの存在が、そしてハンマークラヴィーア・ソナタが他を圧するほど孤高の厳しさを持っているのだろうと推察する。

      胸がすくような爽快なハンマークラヴィーアを聴きたい方にはお勧めできないが、ハンマークラヴィーア・ソナタ(そしてベートーヴェン)に対するひとつの考え方がこうして提示されたことをお知らせしておきたい。

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     2023/10/27

    音質はしっとり、演奏はゆったり、重心はどっしり。落ち着いて聴ける3番と4番だ。元気な演奏もよいが、このような眼を閉じて深呼吸しながら耳を傾けられるブラームスは、やはり良いものだ。何か特別な事をやっていないが、所々で瑞々しい響きや楽器の掛け合いは、何度も聴いていたはずなのに新鮮に心に沁みてくる。

     ホールの特性か音の採り方か伸びやかな音響とまろやかなブレンドが心地よく音楽に浸ることができる。それでもブロムシュテットの年齢で予想されそうな「いぶし銀」のような感触はなく、経験と知見の積み重ねにより、演奏が古色蒼然というより、かえって若々しさを芽吹かせたような感覚だろうか。

      今年(2023年)の秋に来日し3番を指揮する予定だった。私もチケットをとり楽しみにしていたが、残念ながら来日中止となってしまった。その渇きを癒す意味で入手したが、聴くほどに中止となったことが悔やまれる内容だ。ぜひ体調を万全にしていただき、来年笑顔で日本の指揮台にのぼってほしいと切に思う。

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     2023/06/12

    感動よりも、一抹の寂しさや心に在る痛みを感じてしまった。曲目がその趣きをもっているのだが、やはりメジューエワ演奏による1925年製ニューヨークスタインウェイの音がそう感じさせるのだろう。

    即興曲D935は華やかなピアニズムと正反対の楚々とした佇まい。小曲2曲は少しばかりほろ苦さを含んだ口直しのような雰囲気。ソナタD784はシューベルトならではの心の叫びに胸がしめつけられるよう。メジューエワの奏する音楽は外面に表出されず、内面に沈潜していく。その音を探す過程で心の裡にある痛みや孤独も拾い上げていく…。それはシューベルトの感じていたものとは異なるのかもしれない。が、シューベルトのピアノ曲、またメジューエワの演奏は「心の裡」にそっと手を差しのべる魅力があると思う。

    CDを、そして音楽をどのように表現し、これから入手を考える方々に提示するのか、方法は人それぞれだろう。学識的な物言いは私のような学無しにはできないので他の方にお任せしたい。それでも、上のような稚拙な表現でも「手に取ってみようか」と思っていただければ薦める甲斐もあるというものだ。

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     2023/06/10

    一音一音が充実、心のこもった演奏が収められている。今回の再録音は期待を上回る出来と感じている。新チクルスの第1弾である前作(2020年 即興曲集D899等、BJN1015)に感銘を受け入手。およそ100年前のピアノを得て彼女が表現したい内容が余すところなく歌い込まれていると感じた。

      まず1曲目のD845冒頭から密度の濃いピアノの音に支配されていて軽い部分がない。といっても深刻すぎる重い内容でもない。その後のD664も愛らしさの中に影がそっと潜んでいる事を物語っている。 D894も淡々と夢のように歌が歌われる中で悲劇(または狂気?)が襲いかかる怖さが私の心をも揺さぶってくる。10年ほど前の録音も素晴らしい演奏だったが、そこと比較するなら…衣一枚脱ぎ捨て軽やかになりながらその振幅は大きくなったと言えばいいだろうか。


      総じて思うのは…、この新チクルスは、メジューエワが楽譜を仲介として心に響いてきた声をそのまま鍵盤に写し取っている印象。シューベルトのソナタ集を聴くというより、作曲家の心を聴き解く演奏と考えている。

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