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mari夫 さんのレビュー一覧 

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/05/11

    素晴らしい『全集』だ。録音は色々と寄せ集めには違いないから、玉石混淆になりそうなものだが、殆どが最高レヴェルの名演である。掛け値なしの「最高」はタカーチによるSQの全集。同曲はこれまで6-7セット持っているが、結局は60年のジュリアードに帰っていったけれども、ようやく、より新しくより素晴らしい演奏(と録音)に出会えた。オケ演奏の多くにフィッシャーとブダペスト祝祭管を得たのも大きい。他の曲でいくつかを担当しているショルティとブーレーズのCSO 吹き込みが、ちょっと角が丸くなっている巨匠芸でやや喰いたらない所を見事に補っている。ショルティやブーレーズでなくて良かったと言わせるとは凄くないですか?彼らに加えてコチシュを得たピアノ協奏曲もSQに匹敵するレヴェル。これまた本全集についているアンダとフリッチャイの歴史的名演をようやく超えたと言えるのではないか?
                           コチシュは大部分のピアノ独奏曲も担当しているけれども、これらも録音共々とてもいい。知らない曲も多くて、初期はドビュッシー風とかシェーンベルク風とかもあるけれど、段々バルトークらしくなるし(でもリスト・ハンガリー狂詩曲そっくりみたいなのもあって―実際ラプソディという曲が弦のも含めて幾つもある―、リスト結構バルトークしていたんだなぁとか)、子供の曲とかも楽しい。ピアノといえばアルゲリッチを得た(パートナーは違う)二台のピアノと打楽器のための協奏曲とソナタも凄い。キョンとムローヴァのヴァイオリン協奏曲二曲はともにやや物足らなくて、ムローヴァでは無伴奏ソナタの方が張りつめたダイナミズムで素晴らしい。協奏曲はどちらもちょっと緊張感が足らない。ヴィオラ協奏曲のバシュメットも思ったほどではなかった、残念。ネムタヌ姉妹の二台のヴァイオリンの無伴奏ソナタもとてもいい。無伴奏ではないソナタではムターがやはり良い。ラプソディは、シャハムは民族色の点でなかなかいいけど線は細いと思ったら、チェロの方のラプソディが獰猛な独奏で、名前を見たら何とシュターカー。これは凄い。納得。
                                   声楽曲は民謡の蒐集・編曲が多いが、それなりに面白い。歌手も不満がないが、いいのはやはりユリア・ハマリ。「青髯」は有名な名演で、かなり古い録音だが、全く音質面での不満はないし、ケルテスは最後の方になるほど感銘を増す。歌手二人は当時おしどり夫婦といわれたルートヴィッヒとベリーだが、ルーヴィッヒは素晴らしい。ベリーも悪くないし、妻を閉じ込めてしまわざるを得ない男の悲哀は不足していないが、一方の性格である冷徹な公爵の存在感という感じはあんまりない。
          最後の三枚はもっと古い、いわば「歴史的名演」が収められている。だったら、バルトークの自演も入れてよとないものねだりを言いたくなるが、仕方がない。アンダ・フリッチャイについては上述の通り、今聞いても名演で、音質も改善されたような気がする。フォルデスからリヒテルに至るピアニスト達のらなり時期的にも、録音的にも(モノからデジタル・ステレオまで)幅の広いピノ曲集も聞き応えがある。とくにフォルデスは目覚ましい。一番新しいリヒテルのはその割に音が良くないし(ライブでモノ?)、演奏もさほどではない(後年のリヒテルはどうも音の粒の立ち上がりが鈍い。前記コチシュと比べてもそうだ)。セーケイとメンゲルベルク・コンセルトへボウのヴァイオリン協奏曲の39年という一番古い年代のライブ(初演)は、実に熱っぽい名演で、ムロ−ヴァより遥かに聞き応えがある。作曲の依頼者でもあるセーケイはシゲティもかくやという名演で、メンゲルベルクも恰幅が良く迫力に富んでいる。思い入れの深さが並大抵ではない。音質が良かったら今でもトップを張るだろう。第一楽章が盛大な針音で始まる(今もっている盤よりもノイズが多いがその分音はちょっぴりいいかな?)が、徐々に収まり、二楽章以降は気にならないレヴェルに落着く。ともに54年録音のフリッチャイの「弦チェレ」とドラティの「不思議な役人」(こっちはずっと後のデジタル録音がある)はともにやはり緊迫感に満ちた最高級の名演。やはり核の脅威がダモクレスの剣よろしく頭上にぶら下がっていた頃の演奏は迫力が半端でない。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/04/25

    素晴らしいCDだ。ファンにとっては神の演奏が聴ける。バックハウスの晩年の演奏はやはり年齢によりムラがあると思うが、亡くなる三ヶ月前のこのベルリン・ライブはよほど調子が良かったのではないか?ミスタッチは「ワルトシュタイン」で散見(聞?)されるが、何よりあの重いタッチと音色が健在なことが何より嬉しい。ベヒシュタインだからというのは皆さんのいわれる程気にならないが、演奏のせいもあって華やいだ気配を添えている感はある。それが素晴らしいステレオの音で聞けることに感謝したい。『田園』は興が乗っていたのか、かなり動きの多い、というかライブならではのノリの良さが目立ち、老人はいつもより早足で田園を逍遙する。心の泡立ちを抑えられないかのようだ。渋くて動きの少ないスタジオ盤とは好き好きだろう。Op.31-3でもそれは継続しており、如何にも嬉しそうに音楽が生起していく。老人の低回趣味はいささかも見られない。スケルツォの若やいだ心の弾み方はどうだ。最後のリサイタルで弾けないで終ってしまった終楽章もここでは闊達極まりない。天衣無縫といおうか。「ワルトシュタイン」は、スタジオ録音が早い時期のために音質が今イチであったので、この録音の方がバックハウスの壮大なピアニズムを遥かに味わえる。フィナーレは少し疲れたかなぁという感もあるが、全体としては迫力満点で豪快そのもの。85歳時で死の少し前の人の演奏とは思えない。Op.109(CD二枚目はこれだけ=17分)もライブらしい即興性が目立ち、主題のモチーフからして冒頭の十六分音符を短く切り上げ付点音符に引っ掛けるように弾く所がスタジオ盤と違い、アゴーギグも大きい。ここも好き好きかもしれない。でも最後の変奏曲はやはり感銘深い音楽だ。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 24人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/04/17

    クリュイタンスの第一集ボックスのレビューで、第三集をオペラにして、是非とも『ボリス』を入れて、ほかにも『ペレアス』とか『ホフマン物語』とか『ファウスト』とか『カルメン』とかも、と書いたら、いきなりそれが実現した。しっかし、なんてことだ、一組づつ揃えたワグナーもの(一々レビューも書いたので今回は割愛)まで一緒とは!56枚中24枚ですよ、4割強。といいつつも、やっぱり欲しい。仕方なく、ワグナーは友人に譲って買い直し(涙)。しかし『カルメン』とか『ペレアス』とか『ファウスト』は二組づつとはねぇ(『ファウスト』は主役の三人が同じ。でも『ホフマン』だけは何故かステレオの新盤は抜き)。
                                             
                  クリュイタンス、本当は劇場育ちの指揮者で、パリでもまずオペラ・コミックの指揮者になって、それから音楽院管の常任になったんだっけ。フランス・オペラ通じゃないので、正直知らないオペラも結構あるんだけど、さすがにうまいもの。同じフランス系の巨匠でもモントゥとかミュンシュとかオペラ指揮者じゃないし(モントゥはバレー指揮者だったけど)。録音は、一番古い48年の『ホフマン』旧盤も含めて、各々意外に悪くない。それは香りみたいなものはどうしても飛んでいる(と思う)けれど、明確な音だし、骨格は良く出来ている。この時期までのヨーロッパはまだローカル色が残っていて、オケもそうだし、歌手も戦後にベルカント風に修正された奇麗に伸びる声と言うより、どことなく同時代のシャンソン歌手の雰囲気に近い。「オペラ座」というより、往年のオランピア劇場って感じ?その点でとくにいいのは『ホフマン』だなぁ、そういう曲だし。今回省略された国際キャストの新盤ではそれはないだろう。『カルメン』のスタジオ盤はコミック版として知られた演奏だが、もうひとつはケルンのライブで何とドイツ語のグランド・オペラ版で驚いたのだけれど、実は初演は不評で最初の成功はドイツ語上演だったとか(ニーチェはそれで聞いたのか知らん?)。ホップのホセとかベリーのエスカミーリオとか、どんなものかと思ったが、まぁそれなりです、悪くない。けどタイトル・ロールはちょっとなぁ。スタジオ盤の方が小粒だけどいいです。『ペレアス』もスタジオとその半年ちょっと前のミュンヘン・ライブの二盤だけれど、両方フランス語で、歌手もフランス勢。ミュンヘンのオケも結構頑張って香りを消していない。好みで言うと主役の二人はスタジオ盤よりこっちの方が好きかもしれない(ロス・アンヘレス大好きだけど、そういう役とは言いながら、ちょっと田舎の少女っぽ過ぎる)。歌手が立派なのは「イスの王様」で、ミショーもいいけど、ゴールが立派。クリュイタンスの指揮も凛とした品格と迫力に富んでいて素晴らしい。ところでイスと言うのは古代の王国の名前なんだけど、『椅子の王様』と堂々と書いた(別の演奏の)ジャケットが何処かにあったぞ!マジか?『鶯』は、三大バレーの前後に作曲されて、後半は「春祭」風と言う評があるけど、ストラヴィンスキーは「火の鳥」のライブくらいしかないクリュイタンスの貴重な吹き込みで(「放蕩児の遍歴」のフランス初演したそうだが)、これもいい。「ペトルーシカ」とか「春祭」も聞いてみたかったなぁ。
                                  それでもって、本命の『ボリス』。何といっても音が良い。クリュイタンスものとしては一番いいくらいではないか?来日公演で日本のオケを絶望させたともいわれたP.C.O.の美音が再現されている。音が今イチとされているラヴェルの管弦楽曲集と時期もホールも同じなのに、確かにこちらの方が音に奥行き感と膨らみがある。この音でラヴェルが聞けないのは何故なのかと無念なほど。コルサコフ版だと言う事もあってか、フランス系の指揮者だからと言う理由か、CD化が何故にかくも冷遇されたのかと思うけれども、ようやく本懐を遂げて満足、万歳。原典版の土臭さは確かにないけれども、この序幕の荘厳さや三幕のボリスの二つのアリアに挟まれた場面の心理的な描写の迫真感よ!クリュイタンスのオペラ指揮の練達ぶりもここに極まれり、と言う感じ。クリストフの迫真の名演も実に傑出している(匹敵するのは生で見たチャンガロヴィッチだけ。こっちも何とかCD、それ以上にDVD化して下さらんもんですか、NHKさん)。カラスのトスカとかデル・モナコのオテッロとかのレヴェルだ。迎合的に書かれたと評判の良くないポーランドのシーンだって結構素敵(リアーのマリーナがはまり役)。ブルックナーだって悪評さくさくの改訂版の再評価が起きている昨今、良く書けていることは否定出来ないコルサコフ版をそんなに白眼視することはないと思う(ならラヴェル版の「展覧会の絵」も止めるべし)。もうひとつのステレオの『ヘンゼル』も永らくCD化で冷遇されていたものだが、委細を尽くした名演。カラヤンの映画の『薔薇』以来ご贔屓のローテンベルガーのグレーテルというのも嬉しい。もちろんゼーフリートもいい。VPOというのも有り難い。ワグナーは重複を避けますが、音が悪すぎる『パルジファル』以外はトップクラスの名演。日本ではどうしてもコンサート・レパートリーに片寄って、その指揮者の代表的名盤というとそっちの方ばかりが上がりがちで、クリュイタンスも、やれラヴェルだ、「幻想」だ、フォーレのレクイエムだとかいわれがちだけど、本領はオペラにあったのだということを納得させてくれるボックスだ。買い直しは業腹だったけれども感謝したい。長文ごめんなさい。それにしてもこの名盤にまだレビューがなかったとは。

    24人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/03/01

    ブラームスはいくつも録音があるデ・ヴィート得意のレパートリーで、私的にはヨッフムとの吹き込みを好むけれども、このシュワルツとの録音も名演には違いない。知性とパッションを兼ね備え、品格にも溢れた演奏。問題はこれしかないチャイコフスキーだけれども、これは本当にデ・ヴィートなんでしょうか?どうもキレがない。ロッシ指揮のオケも締まりがないし。ブラームスは☆5つだけれども、チャイコは1つしかつけられない。音はブラームスのソロは悪くない音だが、オケはスタジオとしては今イチ。チャイコは聞けないほどではないが、それよりも落ちます。それもあって、平均すれば3つだけれども、失望が大きかったので2つにしておきます。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/02/18

    オラトリオというか後期風の荘厳・深刻な箇所とジングシュピールの素朴な風とが混在しているオペラですが、クレンペラーみたいに情動的でなく構造的というかザッハリッヒな演奏だと、それがはっきりと出てきます。繕うつもりもないと言うか。この辺が評価の分かれ目になるのでは?私的には、ベートーヴェンがオペラに習熟していなかったというか、ミサソレになりそこねた(あの演奏があるわけですから)ちぐはぐ感が払拭出来ない想いは残りました。音質はとてもいい。同じ年のフィルハーモニアでもベームの「コシ」よりこっちの方がいい。歌手も素晴らしい。ルートヴィッヒは柔らかい声なのであんまり男っぽくはないのですが、傑出したレオノーラだし、ヴィッカースもいつもの老け声がこの役だと気にならないばかりか、二幕の最初のアリアの力強いこと。フリックの(名ハーゲンとは別人の)素朴なロッコもいい。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/02/12

    中学生の時に、好きだった北欧神話とニーベルンゲンの叙事詩のオペラがあると聞いて、唯一の全曲盤だった「ラインの黄金」(LPです)を買ってもらい、「ヘダー・ヘダ・へドー」と雷鳴に陶然となり、「入城」の音楽のダイナミズムに痺れ、以来、間をおきながら発売されるショルティ―VPOの「指輪」に完全に「洗脳」されました。CD時代になってクナやカラヤン、ベームなどの「指輪」に「浮気」し、ショルティとはご無沙汰。ということで値下げされれば「指輪」だけは買い直そう、と思っていたら、何とそれ以外も十曲併せてのセットとは!しかも昔でいえば楽劇ワンセットの値段で!買わない手はない、と入手。
        これはやはり、ショルティ―VPO―デッカの全体芸術ならぬ全体録音芸術ですねぇ。既に第一作の「黄金」からして殆ど完成の域に達していたと思います。音質面でも、58年から85、6年まで殆ど遜色はない。オケ部に関する限り、これは本当に見事な出来です。指揮者とオケはそりが合わなかったという人がいるけれども、VPO も皆が皆古き良きウィーンではなかったでしょう。劇的な迫力やスケールの大きさだけではなく、内面的な描写や雰囲気の醸成なんかもかなりいけてます。むしろ私的には、最後のシカゴでの「オランダ人」が一番喰いたらない思いを残しました。ショルティが円熟してしまい(?)、オケがVPOでない、ということに。CSOが劣るというのではないけれど、指揮が多少強引でも、それをカヴァーするVPOの内声の厚さとかニュアンスの豊富さ、オペラティックな表情には欠けているような気がしてなりません。同じオケとデッカだからか、対極的な芸風のはずのクナを思わせるところすら結構あります。ただひたすら押しまくっているわけではない。他の方のレビューにもありますが、「トリスタン」は久々に聞き直したら音も随分良くなっていて、自分も含めて今までの評価が低すぎたと思いました。(若い)ショルティなんて、という先入観があったのではないかしら?ベームなどの「トリスタン」に比較されても互角以上に主張し得る演奏です。とはいっても、例えば「タンホイザー」ですが、やはり「浄化」の部分よりも、ちょっと世紀末を引きづった20世紀初頭の「キャバレー」文化を思わせるヴェヌスブルクの濃厚さの方がより聞き物には違いありません。
         歌手に関していえば、60年の半ばくらいまでがオペラの黄金期で、それ以降はやや下り坂と言う印象を拭えません。つまり、この点では初期の「指輪」にはアドヴァンテージがある。ブリュンヒルデとイソルデを唱うニルソンはちょうどいい時期で、ベームとのバイロイト・ライブになると、輝かしさはともかく声の柔軟性は失われてきています(大阪で生を聞いた時もそんな感じでした)。ホッターのヴォータンは、「ジークフリート」は見事ですが、「ワルキューレ」ではもう下り坂。キングとクレスパンのヴェルズング兄妹役とナイトリンガーとシュトルツェのニーベルング兄弟はともにベストの名唱で、ことに後者の名人芸は他に替え難い。ヴィントガッセンは盛期を過ぎて若い声ではないけれども、「神々」で死の瀬戸際に記憶を蘇らせる場面を彼のように感動的に唱える歌手は他にいないでしょう。その「神々」ではハーゲン役のフリックが実に見事な悪役ぶりで、とくに二幕はオケ共々目覚ましい。ところがそのフリック、グルネマンツでは同じ人とは思えないくらいの変貌で、お見事。ホッターにも似た深々とした名唱。パルジファルに再会したところくらいから聖金曜日の音楽にかけて、フリックもショルティも見事で、音楽は深い呼吸のうちに生起していきます。ティトゥレルに廻ったそのホッターとD=F.Dの親子も素晴らしい対比で、心に深く傷を負った後者の歌唱は、ショルティの棒と相俟って実に緊迫した空間を作っています。カラヤンのアルベリッヒだったケレメンのクリングゾルは、表現的には申し分ないけれども、声の点ではナイトリンガーに一枚譲るのは仕方ないか?ルードヴィッヒのクンドリーは二幕の目覚めの所がいいですが、声としてはヴェヌスも含めて少々明る過ぎ。「ローエングリン」のドミンゴとノーマンのスター・コンビは、ともに立派だけれど、役としてはドミンゴは現世的すぎだし、ノーマンは少し含み声で、夫共々迫力不足のオルトルートの方がヒロインみたい。ベイリーは、オランダ人には迫力が今イチ、ザックスにしてはふけ声で、ポーグナーでもいいような感じ。コロは、ワルターではさすがにいい声ですが、美声があまり武器にならないタンホイザーやパルジファルは、どうなのかなぁ?そもそもパルジファンルではあまり声の状態も良くないみたいだし。けれど、皆さん各々の時代的には最高の面々には違いありません。どの曲も録音も含めればまず第一に指を屈すべき演奏ではないでしょうか?

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/01/30

    ここのレビューも評価が分かれているようですが、ネガティブな評価は演奏というより音質に関わる(それもリマスターの)もののようです。確かにLP の時の記憶(だからあてにはりませんが)と比べて初期のCDは乾いた潤いのない音で幻滅したので、今回安くなったので買い直ししました。見違える程よくなったとは思いませんでしたが、改善されたようにも思います(どうも所によって残響のかけ方が違うように聞こえるー効いている方が聞きやすいーのだけれども、違うかしら?)。ベームの謹厳実直な音楽が、何故この逸楽的な曲とこんなにも絶妙に合うのか、と思いますが、そこにこの盤の価値があるのでしょう。フィルハーモニアの音が、やや乾燥気味と言うか、色気にとぼしくて(録音のせいかもしれない)、その辺がやや減点要素かな?歌手は見事なメンバーですが、久々に聞くとシュワルツコップはうまいことは無類だけれども、ややつくり過ぎて、ふけ声にも聞こえます。ルートヴィッヒは良いけれども、ベーム旧盤の時の方が匂い立つような若さでは上でした。男性陣には不満はありません。皆さん立派。格ではやや落ちる(かもしれない)ベリーが健闘している。ということで、星一つ分の留保。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2016/01/21

    この曲の名演と言えば、トスカニーニのは歌手の如何や録音は別として聞かなければならないものとして別格とすれば、カラヤンの新旧両盤と若き日のムーティのこれが挙ることに衆目は一致している。とにかく歌手は揃っているし、ムーティの指揮も意気軒昂というか颯爽というか立派なものだ。音もEIMとしたら上等な音質で不満はない。カラヤンの演奏が暗い運命劇という雰囲気を漂わせている(とくに新盤はより重く暗くなってワグナー的ですらある)のに対して、これはイタリア・オペラ的な熱狂と華やかさに満ちあふれている。指揮者だけではない。ラダメスにしても、ドミンゴの声は明るく、カラヤン盤のベルゴンツィやカレーラスよりも開放的だ(終幕は、場面と合わせると、ちょっとそれが過ぎると言う気はしないでもない)。タイトル・ロールでは、品格ではカラヤン旧盤のテバルディだが、何故か声の輝きは絶好好調のものではなく、新盤のフレーニは声は素晴らしいもののスケールがやや小さく、このカバリエは、平均的に文句を付け難い。この盤で断然精彩を放っているのはアムネリスのコソットで、ダイアモンドのような硬質の輝かしい声で他を圧倒している。カラヤン旧盤のシミオナートの老練なうまさに比べて、とにかく力、また力。若さの勝利。カラヤン旧盤でやや弱かったアモナスロは、新盤とこのムーティ盤はカプッチルリを得て理想的。初めてこの曲を聴くなら、当盤がお薦めと言う他のレビューには賛成。不満は出ないだろう。私的には好みはやはりカラヤン旧盤だが、これももっていたい(ので改めて買いました)。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2016/01/18

    HMVでは入手出来ないCDのレビューを書くのもどうかと思うのだけれど(すみません。私は別経路で入手しました)、これまでずっとケンペンのCDのことを書いてきたので、これを落とすことは出来ない。ひとつは、ケンペンが辿った悲劇的なキャリアを辿った、ニーク・ネリッセンのリーフレットの文章がとても興味深く、指揮者としてのキャリア・メーキングのためにメンゲルベルグのアドヴァイスでドイツ国籍を得たケンペンが、ナチの占領下の故国に帰ってきて活動したことが(彼がナチに共感があったとか党員だったとかいう証拠はなかったとネリッセンは書いている)、戦後ナチのコラボとして激しく叩かれることになったということらしい―コンサートで楽員が退去したり聴衆が騒いだり。そういえばメンゲルベルグも同じ理由で遂にステージに復帰出来ず失意のうちに世を去るのだっけ。
      ケンプとのブラームスは有名なベートヴェンの協奏曲全集と同じコンビですが、ケンプはブラームスの協奏曲をどちらもスタジオで録音しなかったこともあって貴重なテイク。フランスのオケで冒頭のホルンからヴィブラートのかかったフランス風の音ですが(お世辞にもうまくはない)、ケンプは通常の彼のイメージとは違って、ごつい、無骨を極めた演奏(残響がない音のせいもあるかも)。ミスも多いが、一聴には価するし、ケンペンの伴奏も、オケはともかく、立派なもの。ロメジュリは今までも出ているが、オケも含めて圧倒的な迫力の名演。怒濤の寄り身。初出のマーラーや如何に、と思ったら、これも名演。遅めのテンポで恰幅が良く、とくに最初の三つの楽章はワルターをかなり彷彿させる。三楽章のコントラバスのソロがうらぶれた感じなのもワルターに似ている。フィナーレは怒濤の寄り身は健在ながら、ロマンティックに粘る所はワルターよりもこってりした味(メンゲルベルク譲り?)で堪能させる。録音は良いとはいえないが、演奏を味わうには、この手のヒストリカルを聞き慣れれておれば、大丈夫でしょう。

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     2015/12/18

    ブラームスの四番は、ブルックナーの同じ四番とかプロコフィエフの「ロメオとジュリエット」と並ぶチェリの得意中の得意のレパートリーだった。日本でも読響及びミュンヘン・フィルとの公演があった。私的にはこのパリ・ライブと同年のSROとの演奏が気に入っていたのだが、これは随分感じが違う。それはリーフレットに鈴木淳史氏が書かれているようなオケの気質の違い(ドイツのオケは不感症だというのはいいすぎだが、気持ちは分からないでもない)によるところが7、音源に近い録音によるところが3ということろだろうか?シュトゥットガルドでの演奏が全体のパースペクティブがよく見える(聞こえる)のに対して、パリでのこれは、部分部分での奔流のような勢いが先立っている。ドイツ人の音楽がどうしてもタメをつくりがちなのに対して、こっちは、鈴木氏も四楽章に関して書いているように「前のめり」がちなのだ。最初聞いた時は少しやり過ぎなのではないかと思ったが、改めて聞いてみると、これはこれでやはり見事な物だ。これだけのエネルギーを発散させたブラ四は他に殆ど聞いた事がない。ルーセルも鈴木氏の言うように「巨大な造形」だが、こっちはそこまで緻密、巨大(要するに最晩年のブルックナーみたいな)な曲なのかな、とは思った。洒落っ気など薬にしたくもない。悩むところだが、どちらかというと未だ不感症なシュトゥットガルドに指を屈したいので、こちらはルーセルのこともあり星四つにしておきます。

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     2015/12/17

    デ・ヴィートとヌヴーの各レパートリーを漁りながら、ともにベート―ヴェンの協奏曲に行き着いたのは、偶然とはいえ、素晴らしい体験だった。ともに彼女たちのレパートリーの中での最高の遺産であることも。このレヴェルだと、比較と言うよりともに持ち得たと言うことに我が身の幸運を感じるべきだろう。これまで埋もれてきた、デ・ヴィートがレコーディングできずに終ったことを痛恨事としていたこの協奏曲の「発掘」となれば、音質の貧しさはやむを得ないだろうと覚悟していたが、何という事か、耳を疑うほどの高音質。もっとあとの時期のEMIの、明確だが香りや奥行き感に欠けた音と比べて、格段によく、デ・ヴィートのシルクのような美音を堪能できある。演奏は、いつも直情径行のヌヴーに比べて、一歩下がった奥ゆかしさを感じさせるデ・ヴィートとしては珍しく、表現的な意欲に満ちた熱演で、各所でアゴーギグが多用され、テンポも変化する。もう少しでやり過ぎになりそうだが、そこはデ・ヴィートで最後の線でエレガンスを失わないのは本当にさすがだ。ロマンティックだが、古典の格調を裏切らず、精神の気高さを感じさせないではおかない。ヴァイオリニストとして、音楽家としてのデ・ヴィートの高邁さを痛感させる至高の演奏だ。他の二曲も既発売のスタジオ録音とは違う演奏(ピアニストも違う)。これらも少し古い録音だが、音は上等で、演奏も最高である。ブラームスのニュアンスの深さ、ヴィタリの踏み込みの深い格調と熱気、いずれも最高といわないでおくことはできない。最高の収穫として感謝したい。

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     2015/12/12

    ファンからすれば21世紀の今頃になってクナのワグナー・レパートリーの中で「欠番」になっていた「ローエングリン」の「出現」はまさに事件であり、祝福だろう。クナはバイロイトではこの曲を振らなかった。これはハルトマンのもっと保守的な演出で(同時期にヴィーラントはシュトゥットガルドでこの曲の新演出をかけたのだと言う)、もう死に近づいていた老巨匠も安心して指揮が出来たのかもしれない。彼の古巣であったミュンヘンでのワグナー演奏のライブ録音は「トリスタン」(50)「名歌手」及び「黄昏」(いずれも55)以来だが、63年なので音質が劇的に向上しているかという期待は残念ながら裏切られるだろう。やや音のエネルギーに乏しい「トリスタン」よりは良いが、55年の二演目よりは、音の明確さには欠けている。テープの保存状態が良くなかったのかもしれない(劇場の副支配人のアーカイブにあったのだと書かれている)。でも、まぁ、期待しすぎなければ、クナの唯一無二の「ローエングリン」を堪能することは十分出来る。最初の前奏曲は音質もオケもともに不安定だが、それはやがてリカバーされ、クナ独特の大見得切った迫力が、とくに各幕のエンディングで聞ける(とくに三幕の幕切れのティンパニ!)。三幕の前奏曲と結婚行進曲は、如何にもバヴァリア風と言うか田舎風の素朴で豪放磊落な演奏。これぞクナと言う感じです。当時のこの歌劇場の常連を揃えた歌手たちも素晴らしい。ホップの若々しいタイトルロールが名乗りを上げるところはクナの前奏共々に感動的。ビヨルナーとヴァルナイのスェーデン勢二人も素晴らしい。他の男声陣も文句ない出来映え。それとこのカバーのデザインもとてもいい。

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     2015/11/27

    LP時代にいくつかもっていて、バーンスタインにはない中部ヨーロッパ的な暗さをもった表現主義的な演奏と思っていた。値段も安い(昔なら一曲分だ)ので買って久々に聞いたが、こんなに分離の悪い音だっけ。モゴモゴとした音で切れがなく、色彩感にも乏しい。確かにEMIには元々その傾向がある。けれども同じEMIのマーラ―でもクレンペラー(私がもっているのはリマスターが好評のフランス盤)のより古い音の方がずっといいのはどうしたわけ?。だから、一番、四番、大地の歌など、色彩感や自然描写的な曲はどうも冴えがなく聞こえる。他の劇的な構えが強い曲はまだ良いが、やはりメリハリに、ということは彫りの深さに乏しく聞こえてしまう。演奏のせいというより、この録音のせいでテンシュテットは随分損しているような気がする。ただ、それは(LPではあまり感じなかったけれど)オケの非力のせいもあるかもしれない。生で聞いたこのコンビ(マーラーじゃなくてブルックナーだったけれど)は、やはりあんまり冴えない音だった。日頃古い録音を聞いていることの方が多い自分が、こういうコメントをするとはと思うけれども、50年代のデッカとかRCAとかこれよりずっと鮮明な音がするのだから仕方がない。お前の再生装置のせいだろとかいわれると否定しようもなくて困るのですが。でもこの音だと分かっていたら買わなかったのになぁ。ファンの方ごめんなさい。

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     2015/11/27

    これも素晴らしいアルバムです。メニューインとの二重奏曲集は今となっては古いスタイルかも知れませんが、彼女の単独の曲と同じく凛とした叙情が美しい。二曲のベートーヴェンはシルクのような気品をもった音で、鋼のような強靭な音楽と優雅な叙情をともに描き出しています。これらの最上の演奏のひとつでしょう。それ以上に素晴らしいのはフランクのソナタで、アリストクラティックなヨーロッパ文化の奥深さを感じないではいられません。アプレアの伴奏も例によって控え目ながら素晴らしいものです。デヴィートも満腔の信頼を置いていたのではないでしょうか?音質は年代としてはまずまず良好な方。

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     2015/11/25

    BPOの後の録音が同じように安く手に入るカラヤンのBOXシリーズの中では、あまり売れない方なんでしょうね。けれども、実は間違いなくトップクラスのお宝BOXです。発見の楽しさという点では群を抜いているといっても良い位。このところ、ステレオ時代になって覇を唱える指揮者たちの50年代の(主にモノの)BOXを、ベイヌム、ベーム、クリュイタンス、(あとBOXではないけれどケンペン)と買ってきて、トスカニーニもフルトヴェングラーも健在だった頃にも彼ら「若手」が素晴らしい音楽をしていたということが分かったのですが、カラヤンもまた例外ではなかった、というか、とりわけ目覚ましい指揮振り。バイロイト・ライブである程度予想はついていたけれども、わざわざモノか初期ステレオのレコーディングを買わなくとも、と思っていたのは大きな間違い。一部のファンたちがカラヤンはこの頃の方がいいといっていたのは知っていました。このBOXリーフレットでも、「カラヤンの黄金時代?」と(付きではあるけれど)書かれていました。基本的にこの時代の方がより軽くより精確であるという評価ですが、R.シュトラウスの三曲やブラームスの交響曲(三番だけ何故かない)、あるいはシューマンは、それだけではない。「ドン・ファン」やブラ1に聞かれる、余分なものを削ぎ落とした上での熱狂的なまでの推進力(トスカニーニの影響が見え隠れする?)の凄まじさは、それ以後のVPOやBPOとの演奏には聞かれないものです.けれどもしなやかさを失わないのはカラヤンならでは。ブラ―ムスでは奇数番はいつでも名演ですが、偶数番は、後のBPOとの吹き込み(どれも)に、どうも楽曲の雰囲気とうまく噛み合っていないという感じをもっていました。これらの演奏は、そのもやもやを払拭する快演。強いて言えば、脂分の抜けたオケの音色が若干音楽を明るく筋肉質にしすぎている感はあるけれども、中間楽章での管のうまさ(とくに4番)、細部の周到な仕上げと音楽の溌剌さは際立っています。この二曲は、当時はモノしか発売されず、何故か疑似ステレオが出た時期もあったということですが、今回のは真性のステレオで、意外に良好な音。溌剌さといえば、モノとステレオで入れ直しのあるJ.シュトラウス周辺の音楽も、BPOとのドイツ音楽BOXのものより遥かにこちらが勝っています。VPOのエレガンスはさすがにありませんが、あの永遠の名演『蝙蝠』と同じ時期の演奏だと思えば合点がいきます。モーツアルトは「ハフナー」とか「プラハ」も同様に、溌剌とした、後年のタメをつくり重心が後に行きがちの演奏(それも今風ではないけれど好きですが)とは違う、若々しい名演。とくにステレオの『プラハ』はすっきりとしながらも千変万化の妙が実に美しい。対してBPOとの29番は、その後の演奏と近い、厚い響きの演奏(でも良い)。39番はモノとステレオと同時期の二つの版が入っていますが、後者だけ二楽章の反復をしていない(もっと後年のDG録音二種類はしています)。別テイクなんでしょうか?57年ベルリン録音はモノとステレオの端境期だったようですが、ワグナーとかシューマン(英グラモフォン誌の“full-blooded treatment”という形容の通り、スマートどころか野太い迫力すらある名演。)はモノ。僅か数ヶ月後に録音され、結構良い音で聞けるブルックナーの8番とは大きな差があるのが惜しい。とくにワグナーはこの時期にせよ今イチ抜けの良くない音なのが残念(フルトヴェングラーのライブより良いとも言えないくらい)。60年になると同じワグナーでもステレオでずっと良い音ですが、演奏はどちらも全く素晴らしい。フィルハーモニアよりも明らかに表現のキャパシティが上がった重量級の音楽が聴けます。その後のスマートでモダンなマニエリズムとは別の純正な音楽的感興が横溢した名演です。ブルックナーもかなり優れた演奏で、DGのBPO録音より良いかも知れません。しかし、ワグナーものや、カラヤンのこの曲のベスト聖フローリアン・ライブ(VPO)と比べると、良い音といっても後の録音と比べると少しキレがない音のせいかも知れませんが、部分的に緊張力が持続しない箇所がいくらかあるような気がします。最後の最後もちょっとなぁ。でもBOX全体としたらこの値段で、ほんと十分ですよ。文句言ったら罰が当たる。確信的なアンチでなければ絶対に買って損のないBOX.

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