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ねも さんのレビュー一覧 

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     2021/06/16

    本書は、15年にわたり貧困と関わってきた著者が、コロナ禍の貧困のありようを綴ったもの。ウェブマガジン「マガジン9」に連載されたものがベースとなっている。コロナ禍による貧困の問題は底が深い。日本の賃金低迷が長きにわたっていること、幾度となく比較対象として触れられるリーマンショックの後遺症ともいえる部分もあり、副題にあるように「底が抜けた」というのが実態なのかもしれない。著者たちのもとにきた相談者の状況を見ると、貧困というより、命の危険が迫っている人も少なくない。コロナ禍で大きな打撃を受けたのが飲食業・サービス業であり、そのためリーマンショックに比較して女性が多く追い込まれていると指摘している。また、生活保護を受けなければならないレベルなのに、拒否する人が多い背景として、2012年頃の生活保護バッシングを挙げているのも説得力を持つ。貧困者の増大は人道的な観点からも問題だと思うが、社会の不安が強まり、治安面も含め貧困に陥らない人も不安にしかねない。決して、他人事ではないのだ。

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     2021/06/14

    悪いとは思わないが、素晴らしいと絶賛できるほどではない。読後の感興としては同じポーランド人によるものとしては『アウシュヴィッツ後の反ユダヤ主義』には全く及ばない。

    ただ、それでも冒頭の熊の話は興味深い。ブルガリアで伝わる「踊る熊」で見世物になっていた熊たちが、解放されたものの、徹底して管理された森に押し込められる。もちろん、見世物時代に、実質的には虐待と言える扱いからは解き放たれたわけだが、管理された森で手にした「自由」に関しても何か違うと感じざるを得ない。
    また、グルジアのスターリン博物館に務める人々の心情も不思議だ。スターリンの誤りや犯罪は明らかだと思うのだが、それを認めない人が少なくない。これは第二次世界大戦中の日本の支配層に対する一部の人たちの評価と通じるものがある。プーチンやトランプ、習近平といった政治家が支持される理由と繋がっているだろう。

    訳者が「訳者あとがき」で触れているように、「熊」にも社会主義崩壊後(キューバは違うが)に資本主義に転換した国で苦闘する人たちにも「自由」への戸惑いは共通している。ただ、「自由」の難しさを予見することはそれほど難しかったのだろうか(私の周囲には、私を含め、それなりの人が予見していた)。多くの人が意図的に触れなかった気がしてならない。

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     2021/06/13

    主人公のサムにとって、4歳年上の兄ジェイソンは、自慢の兄だ。サッカー部のキャプテンで学校では知らないものなどいない。そんな兄が、自分はトランジェンダーで、男でいることを続けられないと、家族の前で告白した。サムにとってはもちろんだが、国会議員で首相の座を狙う母とその秘書である父にとっても、驚天動地の話…。サムは学校でいじめの対象になり、両親は、母の政治生命に関わると考え右往左往。サムも父母も偏見を持っているわけではないが、身内の話となれば、それほどスームスに、ジェイソンの気持ちを受け入れられず、その様子が巧みに描かれている。一方で、思ってもいない人が理解を示したりもしていて、そういった意味でもリアルだと言える。ラストに、3人が出す答えは、予想通りとも言えるが、本書の眼目は過程のあることを考えると、大きな問題ではない。もし、自分の周りの誰かが、ジェイソンと同じような言動をとったらと考えながら読むことが大事なのかもしれない。

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     2021/06/13

    名前はよく聞くオランウータンだが、知っていることは?、と問われると、知らないことが多い。個人レベルでも、チンパンジーやゴリラに関する知識の方が多い気がする。
    オランウータンはアジアにしか生息しないし、集団生活をしないといった基本的な知識に加え、何を食べているのか、どういった子育てをしているのか、といったことが、著者自身の研究生活で知り得たことをもとに、具体的に書かれていて分かりやすい。また、どのような調査を重ね研究しているのか、過剰な森林伐採などを含む環境破壊が、オランウータンの危機とどうかかわっているのかなどについても解説されている。
    居住地域にもよるとのことだが、けっこう我慢強い食生活を送っていることなど興味深い話が少なくなく、何となく知っているつもりでいたことが多いことも分かった。人間を害するわけでもないのだから、オランウータンのが住む森がこれ以上、破壊されないことを祈るばかりだ。

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     2021/04/29

    タイトルに「12」とついているように、12曲が収録されているが、作曲者がすべて異なっている。阿木燿子・宇崎竜童、荒井由実、伊勢正三、イルカ、谷村新司などなど豪華なラインナップだ。「湘南アフタヌーン」の作曲者・山田つぐとは山田パンダのこと。「恋の予感」は太田裕美自身の作詞・作曲。1976年の発売当時から裕美ファンには人気が高いアルバム。同時期にシングルカットされたのは、「最後の一葉」だが、後に「君と歩いた青春」(作詞・作曲は伊勢正三)もシングルカットされている。
    私は、太田裕美は声質も含め「ぼく」という歌詞が最も似合う歌手だと今でも思っている。そういった部分が遺憾なく発揮されたのは「君と歩いた青春」だろう。この曲は先に伊勢正三の「風」のサードアルバムに収録されたもののカバーだが、どちらのアルバムでも人気が高かった曲で、今も多くのファンに支持されている。シングルカットが5年後の1981年でなく1976年当時であれば、かなりヒットしたと思われてならない。同曲のファンでもアルバムバージョンのアレンジのファンは根強くいる(私もそうだ)。
    時代もあるし、太田裕美という存在もあって、全体にフォーク色が強いものの、地味ながら今でも根強いファンを持つ曲が多い。私も「あさき夢みし」「失くした耳飾り」「ミモザの下で」「恋の予感」などは今でも時に聴いている。ちなみに私は、「なごり雪」よりも「君と歩いた青春」を、伊勢正三の最高傑作だと考えている。

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     2021/04/25

    17世紀後半のイングランドを舞台にしたミステリー。医学を学ぶヴェネツィア人のコーラがイングランドのオックスフォードにやってくる。そこで知り合った雑役婦サラの母を治療したり、学者などを訪ねたりしながら過ごしていると、大学教師の毒殺事件が起きてしまう。その事件で犯人として検挙されたのがサラだった…
    最初の手記はコーラによるものだが、さらに上下巻併せて他の3人による手記で、毒殺事件を含めた関係者の動き、それぞれの利害に対する思惑などが様々に描かれている。当然ながら、コーラが知らないことを他の3人が書くこともあれば、コーラがあえて書かなかったと思われることを違う人物が書いていることもある。芥川龍之介の『藪の中』(映画『羅生門』の原作の一つ)を思い浮かべる人も多いだろう。
    ただ、クロムウェル没後の王政復古によりチャールズ二世時代のイングランドが日本人にとってあまり馴染みがないこと、ボイルやローワー(ロウアー)などの実在の人物もそれほど知られているわけではないこと、さらに旧教と新教、イギリス国教会などのキリスト教の問題などを考えると、必ずしも楽に読めるものではない。しかも、殺人事件は一つで、極端に言えば、その「解釈」の問題になっているので、スリルもない。
    シェイクスピアの『リア王』らしき舞台のシーンがあったりすることも含め、多少ペダンチックな楽しさもあるが、誰にでも楽しめるミステリーとは言い難い。

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     2021/04/24

    “パンクの女王”とも称される著者の青春時代の回想録。写真家として知られるロバート・メイプルソープとの出会いと別れを綴ったもの。二人の若き日の写真などがかなり収められているのも嬉しい。ほかにも、ジャニス・ジョップリン、ジミ・ヘンドリックスらも登場し、1960年代後半からのアメリカにおけるアートシーン、ミュージックシーンが臨場感あふれる筆致で描かれている。当時のアメリカ文化に興味がある人には、打って付けとも言える一冊だろう。
    ただし、誤訳や誤植が目立つ。『俺たちに明日はない』を『僕たちに明日はない』、ポール・ヴェルレーヌをポール・ヴァレリー、“水兵”のセーターを“水平”のセーターとするなど、ちょっと信じられないレベルである。特に著者のアルチュール・ランボーへの敬慕を考えると、ヴェルレーヌとヴァレリーを間違えるなど考えられない。
    いい本だが、その辺りのことを気をつけて読んだ方がいいし、可能であれば、原著とも比較した方がいい。
    内容だけなら★は5つだが、誤植・誤訳で★2つを減じた。

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     2021/04/23

    江戸川乱歩賞受賞作品である。著者は、松本清張賞をかつて受賞しているだけあって、手練れである。
    元刑事の藤巻は軽度認知障碍であることを知る。別れた妻は亡くなっており、かといって大学生の娘に迷惑をかけるつもりもない。そんな藤巻に娘が実習先の介護施設の前に放置されていた身元不明の老人について相談してくる。その老人も認知症らしいのだ…
    身元不明の老人の過去がかなりスムースに明らかになっていくが、元刑事という設定があるので不自然さがない。そして、老人の過去と藤巻自身の過去が関わっていく過程は面白く、スリリングだ。ただ、老人の過去に関しては、あの時代のあの空気感を知らない人がどれほど理解できただろうか。また、謎の全体像に関しては、やや荒唐無稽に流れてしまっている。藤巻に関しては不満はないが、娘の印象がやや弱い。終盤での活躍を考えると残念だ。それでもラストには救われた。

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     2021/04/22

    書名にあるように、江戸時代及び明治初期の捨て子について書かれた本。ただ、当時に現代的な統計があったわけではないので、総数だとか傾向だとかではなく、様々な文書に残された情報を丁寧に辿っている。
    江戸時代の捨て子は、どこに捨てられたのか、どのような状態だったのか、拾った人たちはどうしたのか。捨て子であってもかなりの確率で養育を引き受ける人がいたこと、その背景には地域や共同体の存在があったこと。そういったことが実例をもとに明らかにされている。捨て子の養育をする場合に様々な恩恵があったこと、生類憐みの令との捨て子の関わりなど、あまり知られていないことも多い。また、名前が添えられてない場合は、捨てられた地域などに関わる名が選択されたこともあったようだ(“捨”という字が頻繁に使われたわけではない)。着衣や一緒に置かれたいたものからは、貧困のみが捨て子の要因だったわけでないことも推測されている。捨て子をする側の“選択”に関して、親も子も生き抜くための“捨て子”という考察も興味深い。捨てるから愛がない、とは言えないということだ。
    『性からよむ江戸時代』によると、子どもの数が労働力(人口)と関わるため藩が妊娠・出産をかなりこまかく把握していたことと、捨て子を共同体で育てるということが結びつく。“子は宝”は人類愛的な意味だけではなく、社会的に大きな意味合いを持っていたのだ。

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     2021/04/18

    スパイものはそれほど読んでいないが、黒人、女性、アフリカというのがそれほど多いとは思わないので、そこらあたりが新機軸なのかもしれない(黒人の問題は主人公に対する扱いもだが、末尾の方で描かれるロビーとマットの対比も分かりやすい)。
    アメリカは民主主義の擁護者みたいに振舞っているが、何よりも大切なのは「反共」で、その国の住民たちの幸せなんて二の次。本書の舞台となったブルキナファソに関しても同じだったようだ。ブルキナファソやトマ・サンカラについてはほとんど知らなかったので、興味深かった。事実をベースにしたとしても、あくまでエンターテインメントなので、多少の事実が変更(訳者あとがきによると国連での演説の年次)されたとしても問題はないだろう。ブルキナファソの運命は、ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』、ロスがかかわる会社は、ジェレミー・スケイヒルの『ブラックウォーター』を読んでいても、こういった形で描かれるとアメリカや新自由主義が持つ危険性が分かりやすい。
    『アメリカ 侵略全史』などを読むと、アメリカやCIAの謀略は第二次世界大戦後だけでも驚くほど多いので、もっとこの手のアメリカの“犯罪”が描かれる作品が増えてほしいと思っている。

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     2021/04/16

    山荘の離れのコテージで女性が殺される。コテージは施錠されており、おりからの雪に残されていたのは発見者の足跡のみ。どうみても自殺にしか見えないが、ある証言から自殺の可能性が消える…。
    最初に読んだのは、30年ぐらい前。その後、もう一度読んで、今回で3回目。犯人もトリックも記憶に残っていないので、すごいトリック、すごく意外な犯人というわけでもないだろうと思って読み始めたが、予想通りだった。ただ、コテージがかなり離れていることに、かなり引っかかった。
    しかし面白くないというわけではない。
    まず、エラリー・クイーンを徹底して意識した作家で探偵の法月綸太郎と父親の法月貞雄警視とのコンビによる第一作であること。綸太郎の母の死やその係累なども明かされ、父子の微妙な距離感が理解できる。また、綸太郎が後に別の事件で関わる人物も登場しているので、再読するとそこら辺りも面白い。思想や哲学への著者の興味も作中人物を通じてだが垣間見える。
    巻末にある三橋暁による解説には、著者を含む新本格派が登場したころのバッシングに触れられている。しかし、新本格を一括りにした論議がいかにバカげたものだったのかは、著者のその後の歩みを見れば分かることだ。

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     2021/04/15

    昭和10年の秋、伯爵令嬢の笹宮惟佐子は富士山の樹海で陸軍士官と心中した親友の宇田川寿子が、その直前に全く方向が違う仙台で葉書を投函していたことに疑問を抱く。そこで、真相を知るために、惟佐子の幼少期の「おあいてさん」だった女性カメラマン千代子に協力を依頼する。しかし、来日したドイツ人ピアニストの急死、調査に協力してくれていた男性の不可解な死が相次ぎ…

    2.26事件の前夜を背景にした作品でミステリーの要素も兼ね備えている。ただ、ミステリー的な意味での面白さは、文庫版の上巻までで、下巻になると失われていく。上巻の末尾辺りから漂うある種の違和感、異様さは、下巻になると加速していく。下巻の半ばあたりでは五木寛之の『戒厳令の夜』を思い出す部分もある(ただ、同作はアナーキーなのに対し、本作には不気味だ)。提示された謎に関しても、最終的に未消化の部分もあるし、惟佐子という人格に関してもどこか納得できない。もちろん、その心性が不可解であっても構わないのだが、それを読者に納得させるものが必要なのであって、それが惟佐子にあるか、と問えば疑問である。
    もちろん、あの時代を背景にこういった物語を構築した著者の力量は認めるものの、どこか釈然としない部分が残る作品だった。

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     2021/04/10

    瀕死の妻を救うために、1960年にタイムトラベルして、妻の祖先・竜泉家の人々が次々に殺され、その後の土砂崩れで一族がほとんど死亡した「死野の惨劇」の真相を解明することになった加茂。雑誌記者だった彼は、「死野の惨劇」についてかなりの知識を持っており、それが事件解決に役立つと思われたが…

    タイムトラベルとミステリ、しかも不可能犯罪を融合させた意欲的な作品。SFとミステリというと、アシモフの『鋼鉄都市』が有名だが、私の感覚では同作はSFという土台の上にミステリが組み立てられた感じだが、本作は、主人公がタイムトラベルしても、それほどSF臭がせず、あくまでも不可能犯罪に重きがおかれている。
    ミステリそのものとしては悪くない。1960年という設定が一つのポイントになっていて、現代からタイムトラベルした加茂が戸惑う部分があるのも分かりやすい。ただ、驚天動地というレベルではない。また、タイムトラベルに必然性があるのは分かるが、ミステリとうまく化学反応を起こしているか、と問われると疑問である。読後感そのものは良いのだが、ラストもある意味で、予測を大きく超えるものではない。
    本作と相前後して読んだミステリ4冊のうち、3冊が過去、しかも携帯電話やスマホがない時代を舞台にしている。別にそのためにだけに過去を舞台にしたわけではないだろうが、不可能犯罪が現代では成立しにくいのも事実だろう。

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     2021/03/06

    患者、しかもゼロ号患者(集団内で初めて特定の感染症にかかったと見なされる患者)に焦点を当てた医学史。ただ、必ずしも叙述は体系的なものではなく、様々なケースについて書かれている。いくつかの症例については、かなり知られたものもあり、ほかの本で読んだこともあるものもあった。
    自覚なき患者もいれば、勇気をもって病気に立ち向かった患者もいる。死後になってからも、思わぬ形で医学への貢献をした患者もいる。私たちが病になっても、治癒可能になった背景には、医師たちと患者たちの秘められたドラマがあったのだ。
    新型コロナ感染症の被害が拡大し続ける現在こそ、改めて患者たちの存在に注目すべきなのかもしれない。

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     2021/03/05

    本書は、過去のケースを合わせ、高齢者の受刑者が抱える様々な問題にアプローチされている。
    ただ大きく分けると、一つは、医療とりわけ介護が必要な受刑者の問題で、もう一つは出所後の問題だろう。

    前者に関しては、その費用が税金で賄われるわけだが、刑務所の外にいる人の医療・介護との不公平感を主張する人も出てくることは予測でき、そういった部分で、どのようにコンセンサスを形成するのか。その前提としては、実態が明らかになる以外ないのだが、人権問題も絡み、それ自体が簡単ではない。また、刑期を終了した場合の治療や介護の継続も課題の一つだろう。
    後者に関しては、“居場所”の確保が鍵となるようだ。家族や親族など受け入れ先があり、年金や生活保護などによる金銭的なバックアップもあれば、どうにかなるのかもしれない。しかし、受け入れ先がない場合に再犯リスクが高まる可能性があるようだ。要するに、社会の側でどのように対応するか、ということになるのだろう。

    刑務所の“福祉施設化”は、以前から問題視されているが、本質的な解決に向かっているようには思えない。高齢化そのものはまだまだ進んでいく。4年ほど前、『万引き老人』のレビューで、高齢者の万引きに関しては「政治的な対応が必要な部分がある」と書いたが、高齢者の受刑者は同じ状況というよりも、すでに後手後手に回りつつあるようだ。

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