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チキンラーメン さんのレビュー一覧 

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     2021/07/30

    冒頭のオマハ・ビーチのシークエンスはショッキングですが、映画やテレビにおいて通常見せてはいけないものを「あえて」見せるというスピルバーグ監督の演出は、上陸の直前、上陸用の舟の上で嘔吐する兵士のシーンから始まっています。特殊効果の難しさや社会通念上の倫理観もあり、多くの映画では、残酷描写や生理的嫌悪感を催す描写を直接的には表現しないことを選択します(表現をマイルドにする、画面外や物陰で行われたことが示唆されるなど)。この約束をあえて破り、ショック描写をエンターテインメント化した映画は「スプラッター」と呼ばれますが、スピルバーグはこの手法を長編の戦争映画に全面的に導入し、映像表現によって観客を凍り付かせます。見てはいけない映像を半ば無理やり見せられた観客は、映画が終わるまで極度の緊張を強いられることになります。「プライベート・ライアン」以降、戦争映画は生半可な描写ではもはや信用されなくなりました。その功罪も含め、映画史に与えた影響は非常に大きいといえます。

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     2021/07/30

    「コンビニ人間」がとても面白かったので、同じ村田沙耶香氏の「消滅世界」も読みました。「コンビニ人間」のような有無を言わさぬ勢いを期待してしまったこともあり、それほどは引き込まれなかったのですが、社会通念と、自身の感覚との間にある微妙な「ズレ」を言語化し、物語に落とし込む作風は共通しています。他者との精神的・肉体的な交流を避けることの快適さは抗しがたいものです。その実感を起点に立ち上がる世界は、幾分グロテスクに見えますが、まごうことなきユートピアです。社会通念に反するユートピアへの誘惑と、それに抗おうとする理性に引き裂かれる読書感覚こそ、作者の真骨頂のように思いました。

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     2021/07/25

    実のところ、クレンペラー指揮のピアノ協奏曲(シューマン、リスト)が目当てだったのですが、どの録音も素晴らしく、最初から最後まで堪能しました。特に、モーツァルトのピアノ協奏曲、ベートーヴェンやシューマンの独奏曲が良かったです。独奏曲の場合、演奏者の解釈が見えすぎると時に拒否感を覚えることがあるのですが、フィッシャーのピアノは、流れる川のように時に激しく時に静かな表情を見せながら、すっと心に入ってくる演奏でした。収録されている独奏曲は録音年代に開きがあり、ワルトシュタインや謝肉祭などは他の録音に比べクリアさで若干劣りますが、演奏は素晴らしいです。

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     2021/07/25

    まさに爆演と呼ぶにふさわしい「レニングラード」ではないでしょうか。ショスタコーヴィチの中では第5番に次いでポピュラーな交響曲ですが、それでも通して聴くにはハードルの高い作品であると感じていました。しかしこの録音は、始まりからラストまで尋常ならざる高いテンションで突き進みます。第1楽章で繰り返される「戦争の主題」が徐々に狂気を帯びていく様など、思わず興奮してしまいました。

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     2021/07/19

    特に印象的だったのは「7つのヴェールの踊り」の禍々しい迫力です。もはやヴェールを脱ぎながら踊るという情景ではありません。太古の怪物たちが人間界に進撃を開始する前夜、踊り狂っている様が浮かびました。しかしサロメの物語を考えれば、あの踊りのシーンを経てサロメは怪物になったと解釈することもできます。また、悲愴なメタモルフォーゼンは美しく、ドン・ファンも大迫力でした。月並みな表現にしかなりませんが、クレンペラーと(ニュー)フィルハーモニア管弦楽団が残したセッション録音を聴くと、神々の世界から鳴り響く音楽に触れたような畏怖を感じます(大げさ?)。ボックス・セットのメインはワーグナーでしょうが、穏やかなジークフリート牧歌に最も心惹かれました。ワルキューレからは、第1幕の全曲と第3幕からヴォータンの告別が聴けます。最晩年の録音のようですが、ワルキューレの物語にふさわしい透明さと巨大さです。

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     2021/07/18

    初めて全曲通して聴いたサロメです。「7つのヴェールの踊り」はよく単独で聴いていましたが、「踊り」の音楽が全編を通して現れるモチーフによって構成されてることも分かりました。少しくすんだ音響も「サロメ」の世界観に合っていて、カラヤンとウィーン・フィルが作り上げた妖しい音楽を満喫できました。それにしても、サロメは面白い話ですね。サロメは預言者ヨカナーンを欲し、サロメの義理の父であるヘロデ王はサロメを欲しますが、サロメにヨカナーンの首を要求されて怖気づくヘロデに対し、サロメは最後まで腹が据わっています。何しろクライマックスはサロメがヨカナーンの首に語り掛けるアリアです。サロメはヨカナーンの首を手に入れ、彼を自分のものにしますが、ヨカナーンは既に生命のない物体と化してしまい、サロメはもはやヨカナーンの心を手に入れることは出来ません。サロメのアリアは、決して叶うことのない恋を歌います。シュトラウスはサロメの欲望に肩入れし、ありったけの美しいオーケストレーションで彼女を彩ります。あくまでも高潔な預言者ヨカナーンの存在が、ヒロイン・サロメの背徳的な美しさを引き立てています。(Warnerのボックス・セット「R. Strauss: The Great Operas」に含まれる同一音源のDiscs 1-2を鑑賞)

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     2021/07/17

    初めに、自分にとって一番馴染みのある第4番を聴きましたが、心だけ大海原に放り込まれたような体験でした。以後、Warnerの安いボックス・セット(…がさらに値引きされたセール品)でクレンペラーを買い漁ることになりました。クレンペラーのセッション録音は、どの曲のどの瞬間を切り取ってもつい聞き入ってしまいます。空や海で時々刻々と変化する雲や波のように、音の連なりの中に常に細部が存在し、飽きることがありません。基本的には堂々と進行していきますが、思いがけずテンポの速まる瞬間があり、終末が迫りくるような非日常の感覚を覚えます。

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     2021/07/16

    快活で華のある演奏でした。ベートーヴェンの交響曲全集は色々と出ていますが、どんなものかと初めて聴く方にもお勧めできますね。最後までノリノリで楽しめます。特に素晴らしいと思ったのは第2番と第4番です。スピーディーで軽やかですが、気品があります。それぞれの第1楽章では、モーツァルトのオペラの序曲を聴いているようなワクワクを感じました。「田園」の終楽章はとても美しい。

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     2021/07/04

    序盤から緻密な絵と、濃密なアクションに驚かされます。物語の鍵となるヒルダという少女が印象的で、彼女が歌うシーンの幻想的な表現が素晴らしいです。物語では、村々を滅ぼしてまわる悪魔が登場するのですが、ヒルダはその悪魔の「妹」であることが途中明かされます。彼女は「歌」によって人心を惑わし、村の人々が悪魔に立ち向かう力を失わせる役割を担っているのですが、彼女は最後になって人間を救う選択をします。自らの命を投げ打つヒルダの決意と、ことを成し遂げた後の諦観の表情には、言葉にならない凄みがあります。感動とか悲しみとかそういうものを超えて、頭に焼き付いて離れないのです。

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     2021/07/04

    アクションとエモーションに彩られた濃密な全26話の物語です。絵は生き生きと動き、物語は次々と展開し、大災害や巨大な飛行戦艦の描写は息を呑むスケール感があります。最初のクライマックスは第5話から第8話、さらわれたヒロイン・ラナを主人公のコナンが救い出し、命からがら逃亡するまでのシークエンスです。ここではラナを救い出そうとするコナンと、コナンに全幅の信頼を寄せ命を預けるラナの物語が神話のような純度の高さで描かれます。物語を盛り上げる舞台装置は、高さ百メートルを超える巨大な「三角塔」、そして暗闇の海。コナンは壁をよじ登り、ラナを抱えて塔から飛び降り、文字通り手かせ足かせをはめられた状態でラナを救うために海を泳ぎます。2時間の映画であればここで終わってしまいそうですが、「未来少年コナン」は高いテンションのまま最終話まで走りきります。コナンとラナを取り巻く登場人物たちは回を進めるごとに魅力的になり、最終回はご褒美のようなハッピーエンドです。連続テレビアニメの企画に宮崎駿氏をはじめとする一流のスタッフ達が取り組んだ歴史的な作品です。これからも「古典」として語り継がれていってほしいと思います。

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     2021/07/04

    冒頭、日常の風景から異常事態へとなだれ込むシークエンスが圧巻です。侵略者の情報は観客にはほとんど与えられず、巨大な三足歩行のマシンが突如起動して殺戮を開始します。マシンが発する機械音や光線兵器の実在感は、ブロックバスター映画としては不釣り合いなほどの恐怖を演出し、状況も分からないまま虐殺の渦中へと放り込まれる理不尽を観客は疑似体験することになります。映像技術の発達により、莫大な制作費が投入された映画では自由自在な映像表現が可能となりました。しかし、びっくり箱のようなサプライズ描写や直接的な暴力表現を用いずに観客に恐怖を与えることは容易でないように思います。スピルバーグ監督は、侵略者の巨大なマシンから逃げ惑う人々の目線を徹底することで、圧倒的な力によって自らの命が踏み散らされる恐怖をこの映画に刻み込みました。劇場公開当時、ラストのあっけない幕切れのためかあまり評判が芳しくなかったと記憶していますが、潤沢な予算とスピルバーグ氏の熟練した表現技法が生み出した贅沢な「恐怖映画」を是非多くの人に体験してもらいたいです。

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     2021/05/30

    Single Collection Vol. 1 の作品に比べ、より実験的な作風へと変化が感じられます。私は、Disc 2 に収められている Goodbye Happiness が傑出しているように思いました。幻想とリアルを行き来する、遊んでいるような、それでいて真剣な詩は、人間の中で生じる感情の変化、特別だったはずの人(あるいは「こと」)と素直に関われなくなっている自分、に気づいた動揺、恐れ、切なさを美しく言語化しています。「あの頃へはもう戻れないね」から「あの頃へ戻りたいね」への表現の揺らぎにもハッとさせられます。この曲では「ありのままで生きていけたらいいよね、大事な時、もう一人の私が邪魔をするの。」と歌われますが、これは Single Collection Vol. 2 の作品に共通する一つのテーマであると感じました。一歩踏み出すこと。自分の自意識にからめとられず、自分の望みに素直に従うこと。聴き手である私は、自意識の壁に阻まれている自分の姿に気づき、狼狽しました。

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     2021/05/30

    宇多田ヒカルの歌では、詩、曲、声、そのどれもが欠くことのできない要素です。特に彼女の詩には、言葉遊びを交えた抽象的なセンテンスの中に魂の叫びのような切実な心情が現れる瞬間があり、どきりとさせられます。「完成させないで、もっと良くして。」(光)「少しだけでも、シャツの上でも、君に触れたいよ。」(Letters)その中で、1曲目の time will tell は、宇多田さんの後の作品と比べると少し異色です。ストレートで優しい言葉。「時間がたてばわかる。」「あせらなくたっていい。」最後、英語のセリフに交じって「雨に負けないで。」まっすぐな歌声も印象的です。もしかすると、彼女の歌の根底には time will tell の優しさが常にあって、これが彼女の歌を特別なものにしているのかもしれません。驚くような、本当に充実したベストアルバムです。

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     2021/04/25

    最後、思わず「よっしゃ!」とガッツポーズしたくなる、少なくとも私にとって、そういう結末でした。主人公のコンビニ人間=恵子が、コンビニ人間として勝利するラストは、作者の意図がどうであれ、爽快感がありました。途中「恋人」として恵子の家に居座る白羽という男への嫌悪感も、恵子の「覚醒」を勝利と感じさせた要因です。白羽のネチネチとしたこじれ方に対する嫌悪は、そこに私自身の内面を見出してしまうからこそ抱く嫌悪でもあるのですが・・・。

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     2021/04/25

    日記を読むところから始まります。日記の冒頭、「・・・この子には、……のユリゴコロがないから・・・」と医者が話す言葉が回想されるのですが、ここで一気に引き込まれました。ユリゴコロという言葉の響きがどこか禍々しく、これからどんな恐ろしい物語が始まるのかとワクワクしました。だからこそ、物語の中でユリゴコロの本当の意味が明かされた時、少しがっかりしてしまったのも事実です。ユリゴコロはただユリゴコロのまま、意味を持たない禍々しさの象徴であってほしかったと思いました。

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