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Venus Creek さんのレビュー一覧 

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2015/10/16

    この音楽のトリップ感はハンパじゃない!

    合唱曲を聴くことはふだんはあまり多くないのだけれど、
    仕事の繁忙期のある夜、
    ひょんなことからこのアルバムを手にし、
    ものはためしと真っ暗な部屋で
    ベッドに寝転んでかけてみたところ、
    心の中にたまっていたモヤモヤが雲散霧消し、
    せわしなく動いていた心身が気づいたら落ち着いており、
    いったいこの音楽のどこにそんな力があるのだ!?
    とあとになって驚いた次第。

    この音楽を知らずに人生を送るのは
    じつにもったいない!

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2013/04/03

    ひじょうに上質なピアノを弾く Ketil Bjornstad が、
    ここで、壮麗なオラトリオを書き上げた。
    女声のリード・ヴォーカルと混声合唱、
    リズム・セクション、
    これに、チェロ、ピアノ、ギターなどの独奏が加わる。
    17のトラックにわかれているけれども、
    それらは独立した楽曲の連なりというよりは、
    音楽の素材は互いに関連している部分が多く、
    約75分間、夢中で聴きとおしてしまう。

    どちらかというと内省的な趣のある彼のソロ・ピアノに較べて、
    このオラトリオは壮大で、強い生命力を感じさせる。
    でもこれも彼の持ち味のひとつに過ぎないのだろう。
    円熟を迎えて、ますますBjornstad から目が離せなくなってきた。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/07/14

    シャブリエの、ほぼ知られざる傑作オペラの、これまた傑出した名演盤。
    私が知る限り、入手可能な競合盤はありませんが、そんなものの必要性をまったく感じさせない名演です。

    日本の私たちがふつう「フランスのエスプリ」と言うときにイメージする雰囲気にいちばん近い要素をたっぷり備えた名曲。
    そして、そのイメージの最右翼と言える演奏です。

    指揮者デュトワは、この時期、モントリオール交響楽団の音楽監督に就任して数年を経て快進撃の真っ只中にあり、DECCAに大量の名盤を録音していましたが、あまり知られていませんが、ERATOレーベルにも、フランスのオーケストラと、このオペラやフォーレの《ペネロープ》、ルーセルの交響曲や《バッカスとアリアーヌ》など、カタログ的にも貴重な名盤を録音していました。

    キリコやヘンドリックスらの歌唱もこのオペラの洒落た響きにマッチしており、シャブリエの遊び心に満ちた佳品を、この上ない傑作に仕立て上げることに大いに貢献しています。

    序曲からしてもう悶絶もの。
    シャブリエ以外の誰もが書き得ないスコアを燦然と鳴らし、劇本編への期待感をいやがうえにも高めます。そのあとも愉しい場面の連続。ラジオフランスのオーケストラが、ほんとうにいい音色を出していて、魔法のような世界に私たちを連れて行ってくれます。

    この名盤の録音からおよそ30年。
    そろそろ、新たな録音が出てきても、と思いながらも、この不朽の名盤を改めて聴いてみると、いや、そんなものが現れてもこれにはとうてい適うまい、と思わせる決定盤です。

    ビゼー好きにも、ドビュッシー好きにも、はたまたサンサーンス好きにも、等しくおすすめできる名盤です。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/07/20

    これだけの極上の響きをもったラヴェルは他にないのではないか。《マ・メール・ロワ》が夢の中の物語として、最上の幸福感とともに響いてくる。《クープランの墓》が、詩情と哀しみ、箱庭的な完結した世界の、きわめて強い構築力を伴った音楽として聴こえてくる。そして、《古風なメヌエット》が、典雅きわまりない、色とりどりのガラス玉のぶつかり合い、弾け合いのように、あるいは、束の間の幸福を求める焦燥感のエッセンスとして、右と左の両方の脳を直撃してくる。これはもはや魔法だ。アルバムとしてのカップリングも非常に秀逸で、ラヴェルの作品の中でも、とりわけ詩的で夢見心地な作品ばかりを選り好みして収録している。ここに《ラ・ヴァルス》や《ボレロ》が入ったりしては興ざめなのだ。それらとは完全に異なった世界観に立脚したこれはアルバムなのだから…。もちろん、デュトワの《ラ・ヴァルス》や《ボレロ》、そして《ダフニス》も、たいへん美しく、華やかさと翳りのある名演奏に違いない。でも、《マ・メール・ロワ》《クープランの墓》《古風なメヌエット》そして《優雅で感傷的なヴァルス》を1枚のディスクにまとめてくれた心にくい演出に、感じ入らないわけにはいかないのだ。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 7人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/07/20

    ジャズ・ピアニストに、フィリップ・グラスの盟友である怪しい指揮者。そんなコンビがモーツァルト!?当初はイロモノかと思って購入したのだが、一聴して考えを改めさせられた。これほどまでに美しいモーツァルトはなかなかないのではないだろうか。上質のクリスタルのようにキラキラしたジャレットのピアノに、羽毛のように軽やかなDRデイヴィスと彼の手兵が妖精のように寄り添う。たとえば、23番の第1楽章を聴いてみるといい。幸福感にあふれた、表情豊かな木管とホルンに彩られた管弦楽の序奏に続いて、初めて独奏ピアノが奇を衒うことなく真摯に第1主題を弾き始める瞬間の、えもいわれぬキラキラ感。短調に転じた瞬間の不安感と憧憬に満ちた表情は絶美だ。その瞬間を聴くためだけにも、このモーツァルトは必聴だと思う。

    7人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/07/20

    ゲルギエフの絶倫が全開になった、良くも悪くも彼らしさがヌメヌメ溢れ出ている最右翼の録音。胃もたれする聴き手がいても不思議ではない。もともと濃厚な味わいのあるラフマニノフの音楽を、さらに生クリームとカスタードのトッピングをゴテゴテ塗り固めて提供してくるから、嫌いな人には堪らないだろう。たとえばデュトワなどでは、同じ交響曲も、見通しのよい、スタイリッシュな音楽として表現される。デュトワの演奏は、たしかにかなりゴージャスな響きがするけれども、クールに構えた、客観的な視線がどこかにあって、それがギリギリのラインで変態的になることを回避している。ところが、ゲルギエフの手にかかると、濃厚なものは、うんと濃厚にやってやりやしょう!とばかりに、くどいばかりの主観的かつ音楽に耽溺したエネルギーを発散してくる。これを変態とか馬鹿だとか言うことは容易だ。でも、これだけ透徹した変態は、それはそれで評価に値するのではないかと思う。ゲルギエフは、かなり前にキーロフ管弦楽団と同曲を録音していたが、このロンドン交響楽団との演奏は、前者とは比べものにならぬほどエロくなっている。脂ぎった中年のオヤジの、粘着質なセックスを見ているかのような、破廉恥な演奏だ。最終楽章のコーダの、疲れを知らぬ猛烈なアッチェレランドは、一体何なのだ!?ここまでオーケストラを煽り立てるエネルギーは、いったいどこから生まれるのだろうか。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/07/20

    将来を嘱望されていた、新進気鋭の指揮者だったオッコ・カムの、表現意欲が溢れ出た名演。最も充実していた時期のベルリン・フィルと、シベリウスの代表的な交響曲を録音できたカムは幸せだ。北欧の指揮者が録音した、ほかのどの同曲録音よりも説得力に富み、オーケストラが恰もひとつの楽器になったかのように眼前に迫ってくる。とくに第1楽章ではフルートの音がかなり耳に残るが、これは間違いなくゴールウェイだ。カラヤンとの録音では意図的に抑えられてしまったゴールウェイの音が、ここでは全開になっている。アッバードとのブラームス第2交響曲でもゴールウェイの音はすさまじい存在感だったが、なかなかどうして、このカムとのシベリウスでも強烈だ。ゴールウェイ・ファンにとっても、そういった意味では垂涎の録音。シベリウスはフルートの低音に重要な音符をたくさん書いたけれども、それらが、血の通った音としてズイズイ響いてくる。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/07/20

    チャイコフスキーなんて甘ったるくて感傷的な、刺激のない音楽だと思っていた。これはすごい。《ロミオ》を聴くだけで、その激烈な表現意欲に驚かされる。マウスピースがぶっ飛びそうなラッパの最強奏は類例がないほどであり、いったい何人で演奏しているのか!?と思ってしまうほど分厚い合奏に、「ベタだなぁ…」と苦笑しながら、「でも、これだよね!」と納得してしまう自分に気付く。フルトヴェングラーに私淑した、大金持ちの指揮者。好きな作品だけを、好きなように料理できる、世界中の音楽ファンが羨ましいと感じざるを得ない、パイタはそんな音楽家だ。彼の音楽は、同じ作品の誰の演奏とも似ていない。ひたすら直情的であり、主観的であり、オレ流のどでかいカタマリである。オーケストラの名称が、これまた怪しい。モスクワ新ロシア管弦楽団、っていったい何なのだ?ハンパじゃなくロシアの音がしている。金に物を言わせて、モスクワの、自己顕示欲旺盛なフリーのミュージシャンたちを集めまくったのだろうか。生ぬるいチャイコフスキーに食傷気味な方には、これはこの上ない愉悦と驚きを与えてくれる演奏だ。チャイコ嫌いな方にこそ、この演奏を聴いてほしい。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/07/20

    これはものすごい全集だ。
    え?こんな楽譜だったの?と、目から鱗が落ちる瞬間が、1分に1回ぐらい訪れる。そんな演奏、ほかに存在しない。たとえば、第1交響曲の提示部の終結。ここで、どこかのジャングルの先住民の太鼓のように野蛮に鳴り響くティンパニは、耳に優しい「ロマンティックな」演奏を聴きなれた耳には、笑ってしまうくらい強烈に響く。この演奏が、作曲者が初演で体験した響きだなどと言うつもりはない。作曲から2世紀を経て、ひとつの演奏の方法論として、充分に説得力のある弩級の演奏と評価したい。私はこの全集を聴いて初めて、シューマンの音楽のすごさと弱点を理解できた気がするほどである。オーケストラを愛するすべての音楽ファンに、ぜひ聴いていただきたいセットだ。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/07/20

    超個性的な録音が登場した。4作品、いずれも素晴らしいが、私がとりわけ感銘を受けたのは、《キューバ序曲》だ。
    冒頭の音型など、この演奏を聴いて、初めてどういう音符になっているのか把握できた。一般的に演奏される速さだと、瞬間的に過ぎ去ってしまって、いったい木管楽器が何をしているのか、全然わからないまま主要主題に突入してしまうけれども、通常の1.5倍をかけて演奏しているから、いろいろな音の素材をガーシュウィンがどのように使いまわしているかが、手に取るようにわかってしまう。

    スヴェトラーノフで聴いてしまうと、他の演奏が、「どうして、南の国に来て、そんなにセカセカするんだい?」という感じに聴こえてしまう。
    とにかく、これこそ南国。これこそキューバ。これこそラテンアメリカだ。

    気だるい中間部が終わって、最初の部分が回帰するところ。
    ここの部分の、大見得を切るような超スローモーションは、いつものスヴェトラーノフだ。
    汗をたらたら流しながら、そして、赤い扇風機に当たりながら、しかしあくまでも大真面目な顔をしてキューバのリズムを指揮するスヴェトラーノフの姿が眼前に浮かぶようだ。

    最後に主要主題が帰ってくるところの、たわわに実った果実からフレッシュな果汁が溢れ出るかのような強烈な味わいは、他の誰の追随も許さない。スウェーデンのオーケストラが演奏しているとは、とてもじゃないけれども思えない。

    これまで、《キューバ序曲》なんて、軽いノリで演奏できる、お気軽なコンサートピースだと思っていたけれども、このスヴェトラーノフの演奏を知ってしまったいま、この演奏以外は受け付けない身体になってしまった。
    お気軽どころではない。
    気だるいラテンアメリカの、ゆる〜い空気が横溢する、これは巨大な傑作なのだ。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/04/24

    ただいまバカンス中。
    休暇の前に棚からふと取り出して、南の島に持ってきて、小さいけれどもゆったりとしたコテージの室内で、1週間ぐらいずっと流しっぱなしにしている。

    相互に曲調の似ているトラックがいくつかあるけれども、繰り返し流しているとそれも気にはならない。飽きるとか飽きないとかではなく、ただひたすら、バカンスにちょっとした彩りを添えてくれるのだ。
    ほんとうは、エスケープのためのBGMなんて人それぞれの好みでいいと思うけれど、このアルバムは本当にお薦め。南の島に行く予定がある方は、騙されたと思って携行してみてほしい。
    トラック@のミステリアスな感じが特にいい。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/11/11

    すごい演奏。悠然とした《惑星》を求める方にとっては、おそらく全然肌に合わないでしょう。
    私が痺れたのは、「金星」のアダージョが回帰する直前、練習番号Wの7小節目です。ここは断然Animatoなのに、なぜか次のLargoのテンポに落ちてしまう演奏が多い。ここをAnimatoで決然と奏し切った演奏は、おそらくこのユロフスキが初めてなのでは?

    テンポは全体的にかなり速め。でも、それがどうしたというのだろうか?
    ここには音楽に対する真摯な姿勢だけがあります。
    演歌じゃないから、テンポを落として無理やり感動させるのは邪道。
    作曲者が書いたテンポで、それでも楽譜に忠実に演奏すれば、聴くものを感動させることができるという最上の例。
    いやはや、ユロフスキ・ジュニアには脱帽です。他人と違う方法論で、しっかりと自分の音楽を演じきる姿勢に、心を奪われました。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2009/10/12

    正直に言おう。これはジャケ買いした一枚だ。
    畑の中をまっすぐに伸びる一本道を、何かを引きずりながら男が歩いていく。それはたぶん、ものすごくゆっくりした歩みだ。

    はじめ、blackboxからリリースされていたが、のちにOrchard Road Musicというインディーズレーベルからジャケットのアートワークを変えて再発された。当然ながら、私はblackbox盤のほうに撞着を持っている。

    冒頭に収められた”Gates of Gold”から、作曲者の個性が強烈に刻印されている。誰かがすでに書いていそうな曲調でありながら、唯一無二の存在感を備えた響き。ロイヤル・フィルハーモニックの、鉄壁のアンサンブルや情感に満ちたストリングス、そして、強力なホルンセクションの咆哮がはっきりときこえてくる。
    blackboxがユニークなアルバムを連発していた時期の産物だ。
    日本でこの作曲家の作品が演奏されたことはあるのだろうか。

    一聴すると、とても安易な東洋趣味にきこえるかもしれない。
    でもだんだんに、それはものすごく新しい感覚なのだと気付かされる。
    日本人である私に、ここまで一貫して安易な東洋趣味だと思わせる曲調をこれでもか、これでもかと繰り延べていくことは、常人にはできぬことだ。

    オリジナリティの高さと、その首尾一貫した態度に感銘を受けた次第だ。

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     2009/08/10

    まず、《シンフォニエッタ》という作品そのものに感激せざるを得ない。
    これが14歳の少年の手によって書かれたものか!?
    早熟という言葉だけでは表現し尽くせない、ものすごい天才の作品だ。

    そして、同曲の録音の中で、現在入手の容易なものとしては、このバーメルト&BBCフィルハーモニックのものがいい。バーメルトはきわめてレパートリーの広い指揮者で、古典作品にも素敵な演奏を聴かせる。アルブレヒト&ベルリン放送交響楽団による猥雑かつ頽廃的な雰囲気の名演奏(アルブレヒト盤はジャケットも素敵だ!)には敵わないが、次点としては充分推薦に値する佳演だと思う。
    とにかく、華麗なオーケストレーションに酔い痴れるための作品だ。14歳の少年の頭の中に渦巻いていたのは、一体どのような世界観だったのだろうか。のちのオペラや映画音楽の数々に聴くことができる、後期ロマン派的管弦楽の粋を尽くしたような豪奢な音楽が、これでもかとばかりに展開されていく。いつしか、聴き手は、少年コルンゴルトの夢の中の世界を、自由自在に泳ぎ回ることができるようになる。これだけの作品が、いまでもなかなかオーケストラの演奏会で取り上げられていないことは、とても悲しい事実である。まだまだ、これからリバイバルが進んでいくことを期待したい。
    個人的には、ツァグロゼクかメッツマッヒャーあたりに取り上げてほしい。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2009/07/26

    奇才の絶頂期の記録。
    フィルハーモニアとは相性がいいようである。
    本盤の中では、《胡桃割り人形》組曲が超絶的な名演奏。
    これは表情が怖いです。無表情で怖いのではなく、コワモテなのだ。一切緩みのない凄味のある演奏だ。
    「子供のための楽しいバレエ」「クリスマスのメルヒェンの世界」なんて知りません。だって、楽譜は楽譜ですからね。マーラーだろうとストラヴィンスキーだろうと《胡桃割り人形》だろうと、変わりはありません。真剣に読んで、真剣に演奏してもらわなきゃ困ります。そんな指揮者の真面目な語りが冒頭に収められていてもよかったかもしれない。
    「子供向け」だなどと言って腑抜けた演奏をしているのは、作曲家に対する冒涜だと思う。「ファミリーコンサート」などと銘打った演奏会では、このマルケヴィチのような真摯な演奏は期待できないだろう。

    「行進曲」8小節目などに出てくるシンバルの一発は何度聴いても笑ってしまう。怖いのだ。鬼軍曹が鞭を構えている姿が思い浮かぶ。そして、歯切れのよい管楽器の発音が、聴けば聴くほど不気味だ。子供が聴いたら間違いなく泣き出すだろう。
    「金平糖の踊り」は背筋が凍るような表現だ。真夜中、知らない山村で、暗い農道をひとりで歩いていたら、星空から金平糖が降ってきた。なぜ誰も騒がないんだろう?こんなに金平糖がどんどん降ってきているというのに…。
    「アラビアの踊り」は、奴隷が脅されて踊っているような風情がある。もしこの演奏からエロティックさを聴き取れるとしたら、瀬戸際的なかなりアブないエロだ。タタタタタン。タタタタタン。と繰り返されるタンブリンのリズムがとても怖い。
    「葦笛の踊り」は中間部で温度が下がる。まだ陽の高いうちは葦軍団も整列してマスゲームに興じているのでよかったのだが、夜になるとSMプレイを繰り広げる。そんな感じだ。
    「花のワルツ」は期待に違わぬ誠実な演奏。「誠実」というと誤解されそうだが、つまり、怖さまっしぐらである。ここまでの組曲のほかの小品の解釈の集大成だ。中間部で短調に転じる部分の厳しさ、ホルンをはじめとしてリズム感が生きていること、どこをとっても職人の音楽である。

    この組曲には、ストコフスキーやボールトなど、往年の名匠による素敵な録音が数多く存在するが、このマルケヴィチ&フィルハーモニアは次元が違う。同じ指揮者のほかのオーケストラ(モンテカルロ)との録音と較べても、格別の味わいがある。この組曲を愛している方なら、確実に楽しめると思う。絶対おすすめだ。

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