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ほんず内閣総理大臣 さんのレビュー一覧 

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2014/03/17

    良いステージではないでしょうか。視聴し終わって、大いに感動しました。まず主役二人がいいですね。ポラスキは声も歌も余裕のあるもので、さすがのイゾルデ。トレレーヴェンは熱演。ま、見た感じ(髪型も含めて)穏やかなスティーブン・セガールといふ感じですが、なかなか立派なトリスタンであります。ディスクの上でも実際の来日でも彼の名が日本で知られたのは最近かと思いますが、実際には大ベテラン(1950年生まれ)。脇役も強力で、みな立派。ド・ビリー指揮のオケも好調でしょう。落ち着いたテンポで歌にしっかり合わせつつ、でもしっかり自己主張しておりまして、これまた立派かと思います。キルヒナー演出は、トータルとしては美麗な仕上がりではないでしょうかねぇ。第一幕ラストのマルケ王の兵たちがナチス風なのはなんだか思わせぶりですが、それ以外は特に妙な風景も動きもなし。ライティングも含め、ビューティフルなステージではないですかな。ま、いいことばかり書きましたが、正直、このすばらしすぎる音楽を聴いてはこちらも平静ではいられず、その感動のままに想いを書かざるを得ないのであります。なんと哀しく、そして美しい音楽でしょう!しかしこの完璧な演奏などありうるのかというほどの難しい音楽!多少の瑕疵はあれど、「よかったなあ」といふ素直な印象のままに賛辞をおくるものであります。画質と音は優秀で、高品質であります。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2014/03/16

    さうですね、スタンダードとして良いディスクかと思います。正直、この演奏者ならではの個性や特徴には乏しいと思うのですけれど、ひっくり返せば、妙な自己主張が無く安心して聴けるというわけです。安定していて妥当なテンポ、適度に歌い適度に盛り上がり、曲の良さを十分に味わえるかと思います。オケも優秀で、弱音のフレーズも表現力豊かで見事ですよ。もっとドラマティックな演奏もあり、またもっと歌わせた演奏もありまして、個性的な表現では今一歩ながら、ハイ・アベレージとして評価いたしたく存じます。録音は優秀ですが、このレーベルの特徴であるちょっと多めの残響は「やや作りすぎ」の感はあるかもしれません。

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     2014/03/14

    今は亡き朝比奈先生の貴重な記録。画質は大変きれいで、明瞭です。音はオケ全体をとらえていますが、量感にはやや不足し、レンジも広くはありません。演奏ですが、基本的に堂々たるチャイコフスキー。情に溺れることなく、また勢いで飛ばしていくこともなく、一種風格のあるもの。但し、まあこれは言わずもがなといふところであるわけですが、オーケストラがねぇ…という問題ありなわけです。木管からは「キュッ!」という悲鳴みたいな音も聞こえるよ。まあ、そういう個人技はともかく、アンサンブルの乱れも気になります。映像を見ておりますと、どうも朝比奈先生の指揮にも問題があるような気がします。なんかねぇ、指示がしっかり出ていなくて、入りがはっきりしないとか、パンチの強さがわかりづらいとか、オケがとまどうところがあるんじゃないかな。そういう意味で、演奏自体は特に高い評価はムツカシイかな。冒頭に書いたように、貴重な「記録」であります。

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     2014/03/13

    大好きな『タンホイザー』の比較的新しめの上演。まず、歌。タイトルロールのギャンビルは、固めで細身の声で、個人的にはもう少し「逞しさ(=図太さ)」が欲しい。声量も乏しいのでしょうか、頑張って声を張り上げている感じがしますが(オケや女声陣と張り合うには仕方なし)、その分、ニュアンスに乏しい一本調子になりがちで不満はあります。マイアーのヴェーヌスはやや粗い。ちょっと年がきましたかな。他はみな結構。ヴォルフラム、エリーザベト、ヘルマン、みないい歌です(勇ましいビテロルフも好調)。ジョルダンの指揮は、ちょっとまだ想念を持て余している気がします。大きなドラマを作ろうと思いながら、うまくオケにそれが伝えられないという感じで、特に劇性が弱いなあ。ステージはまあ、何ともねえ、といふ感じ。第1幕はほぼ意味不明で感心しない(演奏もややだれている)。モジモジ君がたくさん並んでもヴェーヌスベルクの「いかがわしさ」は伝わらんぞ。第2幕は正直カラオケ大会。別にマイクを持たせなくていいでしょう。第3幕はまあまあ。レーンホフは、前のリングもちっとも感心しなかったけど、これも大したことはない。演出上でむしろきちんと「表現」した方がいいのではないか。歌手の身振りや表情、コーラスの動きなどはむしろ生硬で、感情もドラマも表現不足だと思いますね。画像と音は優秀。特に画像はブルーレイのスペックが生きています。音もいいのですけれど、ステージノイズを拾い過ぎ。

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     2014/03/10

    こちら、大変良い出来栄えにて大いに満足しました。「グレート」と呼ばれる大作交響曲ですが、ここではそういう壮大さ志向が無く、むしろ清新の気の横溢する叙情交響曲として、溌剌と再現されたように思います。テンポはやや早めの感じがし、滞ることなく音楽は流れ、パワーはありますけれど無駄な力瘤は見られません。全体に屈託のない明るい抒情が大変魅力的で、全編、聴き惚れるという感じでありました。オケはもちろん優秀ですし、録音も優秀。溌剌ぶりを「小鹿のような」とたとえるなら、この演奏は「グレート小鹿」といふことになりますかな。(^_^) わかる人にはわかるネタであります(わからない方、すみません)。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2014/03/10

    マイケル・ティルソン・トーマス(MTT)とサンフランシスコ交響楽団の近年の取り組みと成果について、当事者のインタビューも含めてまとめた、大変興味深い本であります。こういう場合、筆がついついディスク上の演奏批評に傾きがちでありますが、この本はそういうことにはむしろ触れず、現地でのコンサートや教育活動・市民向けイヴェントについて、大いに紙幅を割いております。そして、ボード(理事会)やボランティアからなる「フィランソロピー(慈善や社会貢献の意)」、音楽監督とオーケストラによる「音楽」、管理部門である「アドミニストレーション」の三つの観点からしっかり取り上げた、稀有の記録ともいえましょう。この本を読んでいて感じたのは、MTTもオケも様々な取り組みに積極的に関わっていて、それはもう大変なご苦労なのだと思うのですけれど、そういう「苦労」の要素が微塵も感じられず、むしろ彼らの極めてアグレッシブな姿勢が生み出す充実感こそが伝わってくる、ということです。素人と玄人、演奏者と聞き手、そのいずれにもまたがってアプローチし、音楽とは何かを常に真剣に思索しつつ、そして未来をどう切り開くかを模索する、その姿勢に感動を覚えます。こういうMTTとオケの活動は、きっと他の分野でも応用できる(参考になる)ものではないでしょうか。でも誰にでもできるものではなく、やっぱりMTTの人間的な魅力が大きいのでしょうね。そういうリーダーのカリスマ性も重要ではあります。簡単に真似はできません。それはともかく、演奏批評などではなく、組織論・経営論などにおいて大いに学ぶところの多い本、お薦めいたしましょう。著者の文は平易で読みやすく、その点もいい本であります。

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     2014/03/08

    ロイヤルフィルとのマーラーで大いに名を売ったシップウェイさん、待望の新録音であります。またも大曲で、今度はアルプス交響曲。先のマーラーで聴いた特徴がここにもはっきりとあります。落ち着いたテンポ、充分に開放される金管、柔軟に歌う弦、いずれも同じです。それがこの「山」の交響曲にどっしりした重みを与え、大いに聴きごたえがあります。もしみなさんがこのディスクの購入にためらいを持つとしたら、オケでしょうね。サンパウロ交響楽団、私も初めて聴きました。結果、何の不満もありませんでした。しっかりした技量ですし、ホルンなどは朗々と鳴り響いてまことに結構。すばらしい「アルプス」で、大変感服・堪能いたしました。フィルアップの「影のない女」もいい出来で、魅力的な音世界を描いています。オペラ全体はとりとめがなくてとっつきづらい難物ですが、この幻想曲はいいとこどりで楽しめます。そしてこのディスクは録音が極上で、大オーケストラが見事にとらえられており、すばらしいサウンドを味わえます。お薦めしましょう。

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     2014/03/02

    高年齢かよほどのマニアじゃないと知らんでしょうなあ、野村あらえびす。本書のオリジナルは昭和21年(1946年)刊でありますが、それはあくまでもまとめられた年であり、文が書かれたのはもっと前にさかのぼり、昭和7年とか9年から14年や15年もあります。そういう太古の(!)収集家の書き残した貴重な資料といえましょうか。私もそれなりの古株ですので、出てくる演奏家の名前も結構知っていますし、いろいろ見当をつけながら読み進められます。歌崎和彦氏による注と解題はありますが、それでも大概の人にはなかなか読むのはツライでしょうなあ。といふことで、すみませんが、不満を書いておきます。@今この時期に復刊することの意義をきちんと述べること。現在の音楽状況に照らしてこの本を復刻する意義は、今確かにあるのでしょうか。実演よりも《レコード芸術》の意義を高く評価する文もあり(240〜253ページ)、あらえびす氏は限りない愛着を注いだレコードの意義を強調するのですが、こうした意見は、音楽が様々なメディアで氾濫する現代においてどのように受け取られるでしょうか。海外旅行も容易になり、欧米の歌劇場にひょいっと聴きに行く人すら少なくない現代。一方、ネット配信で音楽をダウンロードし、もはやディスクやジャケットの影も形もない状況で、あらえびす氏の主張は収集家のフェチシズムに傾き過ぎではないかといっても過言ではありますまい。Aあらえびす氏と彼のコレクションに関する説明をもっと入れること。例えばコレクションは「一万枚」と称しておりますが、これはタイトル数なのか、それとも実質枚数なのか、不明ですね。例えばベートーヴェンの第9交響曲はSPでは7枚14面だそうですが(98ページ)、この場合には1なのか7なのか、どっちでしょう?なお、交響曲が全曲ではなくて部分的に販売されていたこと(同ページ)など、現代的には驚愕の状況でありますな。あと、コレクションの傾向について統計的に教えてほしいですね。ジャンルはクラシックだけではないようだし、クラシックならどういう作曲家が多いかとか、また岩手にあるという記念館の情報も知りたいなあ。といふところに不満を持ったのは事実であります。さて最後に一言。あらえびす氏の真剣に音楽に耳を傾けるその姿勢に当方のいい加減さを大いに反省させられるとともに、一方では聴くよりも収集活動に没頭するフェチシズム的姿勢に疑問もあり、ってなとこで、あらえびすさん、なかなか不思議な人物。

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     2014/03/02

    ムーティさんの一回目の録音。なかなかに血気盛んで、劇的な演出をそこかしこに施しております。「いかにもやりそうやね」てな感じで、当方としてはニヤリとしますが、正直若干あざといなあという気はします。シャイーとかシノーポリもレコーディングの初期にこんな感じの「演出」をした録音をしてるんですね。悪く言うと「ちょっと小賢しい」気がして、やや減点。もっと素直に曲に向き合ってくれていいんですが。ソロとコーラスはそこそこ。以上はヴェルディ。一方のケルビーニは初めて聴く曲。なんか時代を超えて、ヴェルディと同じ頃と言われても納得するような感じの曲で、正直驚きました。なかなかに美しい曲で、親しむほどに魅力の伝わる佳曲なのでしょうか。録音はいずれも良好。ちょっと個人的な不満はありますが、総じて水準の高い、コストパフォーマンス的にも優れたアルバム。

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     2014/03/02

    悠然と構えた、余裕のある堂々たるブラームス。オケもピアノもいかにも自然体で臨み、硬さやきつさもなく、身を委ねて聴いていて「ああ、いい曲だなあ」と思わせてくれます。シフのタッチは繊細で、ウィーンフィルもまた柔軟性を発揮し、全体に抒情の魅力を感じさせる出来栄えとなりました。カップリングもまたよし。録音も優秀。たいへん結構でした。

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     2014/03/01

    ベームの旧盤、実はこの時点でベーム先生はすでに60歳前後なんですな。ブラームスはセッションにおける彼らしくきっちりした枠の中に納めた表現。年代相応ながら古めかしい音のせいもあって、個人的にはさほど魅力的だとは思いませんでした。やや生硬で想念が小さい気がします。カップリングのウェーバーでは、曲の良さもあり、何たって「オベロン」がダントツにすばらしい。これぞロマンティックというべき、実に美しい出来栄えでうっとりいたします。ほかはそこそこ。「魔弾の射手」序曲があるとまさに画竜点睛だったのにねぇ。残念。音質は年代相応。でもデッカならではのハイレベルで、レンジは広く全てのパートはしっかり録れています。そうだなあ、楽壇の頂点に「祭り上げられる」やや前のベーム先生の、「普通の記録」という感じかもしれません。

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     2014/03/01

    こちら大変すばらしい出来栄え。大いに堪能しました。大規模な曲を開放的に演奏するとなるとどうにもうまくいかないハイティンクさんですが、ブルックナーの中でもやや小ぶりなこの曲には見事な適応で、立派な完成度です。この曲、要は過度に力瘤が入るとなんだか下品になっちゃうのですが、そこをよくハイティンクさんは心得ていて、迫力はありますがきちんと限度をわきまえており、一方の落ち着いた抒情はしみじみとまたみずみずしく美しく表現されました。特筆すべきはDSKの美しさ!落ち着いた実にいいサウンドで魅力たっぷり。録音も優秀でして、レンジは広く、バランスも最上、鮮度も保たれて何の不満もなし。これは傑作。すばらしい。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2014/03/01

    最初のムソルグスキーは珍しい曲。前座(というと失礼ですが)としてはなかなかにいい感じのカップリング。朗々たる歌と彩り豊かなオケが魅力的です。しかし、なんといってもメインのチャイコフスキーが圧倒的な名演。ライヴならではの感興の盛り上がりがすばらしく、オケも能力全開で見事なもの。豪壮なクライマックスも、沈み込むような抒情も、いずれもしっかりと描き切り、曲の持つ諸要素、確かに表現されました。アバドさん、だいぶ前のロンドン交響楽団との録音もいい演奏でしたが、さらなる円熟、はっきりと聞き取れるでしょう。大いに満足いたしました。録音も優秀。アバド&ベルリンフィルの立派な成果、お薦めいたしましょう。

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  • 8人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2014/02/24

    ヨッフムおじさんの晩年の全集を集めたお徳用ボックス。しかしその値段を考慮しての「お得感」を遥かに超えて意義のある、実にすばらしいボックスであります。まず最初はベートーヴェン。これが実にいい!重くも渋くも鈍くもない。きりっとしつつも柔和な表情づけが印象的な初期の曲集は本当にすばらしい。一方、英雄や第9も充実感たっぷり。見事というべきでしょう。続くブラームスもいい!こちらはロンドンフィルがやや重く、響きに若干濁りもありますが(録音のせいですかねえ)、アグレッシブでガッツのある、堂々たるブラームス。実はやや微妙なのがブルックナー。楽譜には改訂版のテイストが残りやや違和感があるのと、そしてテンポの揺らしがいささか流れの順調さを阻害しています。それと曲によってはオケの楽器バランスが悪く(第8番ではトランペットが妙にギラツきますね)、これもなんだか完成度は今一つ。第3番と第5番は名演かと思いましたが、他は今一つだなあ。最後はバッハとモーツァルト。で、このバッハ、ミサ曲が実にすばらしい。大編成モダン楽器による伝統的なスタイルですが、それは何一つ問題ではありません。むしろ気宇壮大な、堂々たるこのバッハの何と立派なことか。ここでは「聴かせる」ことよりも、演奏者たちがこのバッハを演奏するその営み・その喜びに浸っている様がとてもすばらしいと思います。同様のスタイルのモーツァルトもすばらしい。音楽の魅力を表現する愉悦に溢れています。といふことで、大いなる満足感のうちにこの大ボックスを聴き終えました。ヨッフム師の偉大さを知るにはこれでも十分。もちろん、このボックスはあくまでもシンフォニー分野中心の業績でありまして、伝統的カペルマイスターであったヨッフムおじさんはオペラでも練達の人であり、それもどこか出してほしいな。特に、バイロイトで振った多くのワーグナーを正規にリリースしてくれませんかねぇ。往年の芸術家たちは、劇場こそが真価を発揮した場でありました。

    8人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2014/02/23

    「幻論」というなじまない言葉が書名になっていることにも明らかなように、批評や印象を述べたものでもなく、ジャケットをも含めたカラヤンのディスクを見聞きして「思ったこと=感想、妄想、幻想」を書き綴ったものです。初めからそういうスタンスであることは著者は明言されていますし、そこは大変ユニークですね。通常は誰でもが首肯できるようなもっともらしい批評に作ろうとしますからね。カラヤンの立派さに敬服する者としては、大変に興味深く手に取りました。読了感としては、「いささかモヤモヤ」といふところです。演奏の良し悪しに関する当否は、もちろんこの際問題ではありません。仮に個人的意見にしろ、「幻論」にしろ、もうちょっと調べてほしいとか、もうちょっと考えてほしいとか、そういう個所が多い(多すぎ)なのですな。たとえばジャケット写真の件。著者はずいぶんしっかりとジャケット写真についても収集してご覧になっていますが、それならば、彼の年齢進行による傾向とか、EMIとDGとの異同とか、そういう比較検討はしてみてもいいんじゃないですかねぇ。また、「トゥーランドット」について、外題にリッチャレッリを起用したことについて、死を意識したカラヤン主導の姿勢の表れというようなお考えを披露しておられます(86〜91ページ)。トゥーランドット役は通常相当に強力な声の持ち主を使います。ニルソンとかマルトンとかは、ブリュンヒルデ歌いでも著名ですね。ところがこういう歌手が歌うと、声の威力を出すことに意を注いでしまって旋律線が崩れやすく、せっかくのプッチーニの美しいメロディラインが曖昧になってしまいますし、内心の弱さを持った姫の表現の部分が不十分になってしまいます。例えばカラヤンさんは実演では無理な配役を試みています。「ワルキューレ」でヤノヴィッツをジークリンデに当てたのはその典型でしょう。劇場では実現できないリリカルな歌、繊細な表現を実現するために、レコード芸術として特別な配役を試みたというのがやっぱり妥当な線じゃないかなあ。そう、カラヤンこそまさしく《レコード芸術》の申し子でしょう。数多くのレパートリーを高い質で揃えスタンダードを世界の人々に提供しようとした、そして劇場の公演だけでは少人数しか鑑賞できないからディスクという形で世界中に届けた、そういう高い「志」の成果であったと思うのです。以前の巨匠たちの演奏は「すばらしい」にしても「スタンダード」ではなかったと思いますし、また録音技術の拙劣さや現場へのこだわりにより、レコードではそれらは成就されてなかったですやね。偉大なカラヤン、一時期の不当な非難を払拭して再評価する必要を痛感するものです。そういう意味でこの本の不満をもう一つ書いておくと、取り上げたディスクが少なすぎるよ、ということです。カラヤンに対する著者の想い、もっともっとたくさん、披露して欲しかったですな。

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