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うーつん さんのレビュー一覧 

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     2022/08/17

    Bagatelle−ささいなもの、取るに足らないもの。しかしその中に実は大切なものが隠れている。このディスクを聴いて、私はそのように感じた。小曲集のセットだが、大曲に引けを取らない内容。浅学の私が偉そうに講釈ぶつより、演奏者がライナーノートに綴った言葉を引用すればこのディスクの内容を判ってもらえる気がする。「Bagatelle−ささいなもの、取るに足らないもの。取るに足らない時間の連なりである人生の中に、音楽はふと、現れる。」

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     2022/08/17

    人生、音楽、そして文化の黄昏に思いをはせる一枚。若さの中にも黄昏の萌芽はあるのか、若さゆえの感傷に黄昏の要素が含まれるのか、いずれにしても若きブラームスのソナタが雄大に鳴り始めた瞬間から黄昏への歩みが始まる。リストの小品には自身の人生への、そして意識していたのかは判らないが調性音楽への黄昏の予兆(そもそも人の感情とは、調などでは表しきれない複雑なものなのだろう。リストはそこに到達したのかもしれない)を感じ取り、これを引き継いだベルクのソナタも調性のみならず彼らの文化圏における黄昏を感じずにはいられない…。


    何やら感傷的なレビューになってしまう。「黄昏ちゃってるね〜」と思われるかもしれない。が、これを聴かれればどなたも同じように感慨にふけると思う。そして考える。北村朋幹の曲目構成と演奏はこういった感慨を呼び起こす。前作「夜の肖像」とスタンスは同じ。音楽と文学・思索の要素をミックスしたような構成、それに溺れることなく理性的(かといってドライという意味ではない)に進められる演奏。楽譜から立ち上る「音の向こう側にあるもの」を探す旅を彼は今、している。他の奏者ではなかなか味わえない読(聴)後感を感じたい方におすすめしたい。

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     2022/08/15

    様々な思索を生む“夜”の多面的な肖像を、音楽によって構築した一枚。発売当初から気になっていたのだが、数年経ちようやく入手した。そして聴いた。


    まず、曲の構成から他のピアニストと一味違ってくる。全五曲がシンメトリーに配置(ハンガリーの作曲家が両端を固め、その内側にベートーヴェンの幻想曲風ソナタを配置し、中心にシューマンの夜曲。「夜」というテーマによって4人の作曲家が結ばれ、その曲が奏されて独特の場を創り出していく…。
    夜の闇の中、風にたなびく雲月の光が辺りを照らし出すような、闇と仄かな光の風景を連想させる。そんな連想に合わせるように、曲によってさまざまなファンタジーや沈思が浮かんでは消えていく…。


    こうやって書くと演奏はダークでナルシスティックなものかと思われるかもしれないが、さにあらず。醒めた目で楽譜が読まれ、明晰なタッチで音楽化されていると思う。私のような素人が上に書いた中途半端な夜のイメージだけでなく、理性的な絵筆で描かれた「肖像」である。そして、だからこそ夜という独特な時空間に喚起された幻想や思索を生み出すのかもしれない。


    純粋に音楽を聴きたい方、音楽と思索の世界を行き来したい方、ファンタジーの旅をしたい方いずれにもおすすめしたい。どなたにも新しい「夜の向こう側」が発見できると思う。

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     2022/08/09

    渋くて滋味深い、玄人好みの曲目と演奏。ハイドン3曲にシューベルトの即興曲とは恐れ入る。正直に言うと、決して「客が入る公演プログラム」「真っ先に買いたくなるディスク」と言いづらい曲目だと思う。なのに、これで聴かせてしまう公演にするとはソコロフならでは。例のごとくライヴ収録のため「音、音響」を聴きたい方には万全の状態とは言えないかもしれないが、「音楽」を聴きたい方にはさして気にはならないと思う。

     ハイドンは軽妙とも違うし、古典的な美しさとも違う気がする。流麗で軽やかな音楽という先入観はあっという間に消えてしまい、鈍い光沢を放つ彫刻作品を観るような独特な立体感と説得力を感じてしまう。ソコロフのフィルターを通して弾かれると前述の「渋くて滋味深い」という感想に落ち着いてしまう。

     シューベルトの即興曲D935もまた他の演奏者とは全く違う色合いの演奏。きれいとか美しいピアノ曲という次元ではなく、じっくりと語られた文学作品に変容する。即興曲でよくある「歌うような」演奏ではなく、深く呼吸してゆっくりと物語るという、これまた「渋くて滋味深い」演奏。 恒例でもあるアンコールの多さ、バラエティ、品質(ソコロフお馴染みのアンコールピースでさえまた違って聴こえるのはさすが)も言わずもがな。  これをCDとBDで愉しめるのだから文句はない。来日してくれる可能性がほぼ無いと予想される人物だけに公演映像は嬉しい贈り物だ。聴いてよし、観てよしのディスク。おすすめです。

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     2022/08/05

    再録音ながら「初録音」といってもよいのでは?  新鮮かつ明晰なミサ曲ロ短調と感じた。

    1992年録音と指揮者・オケ・合唱団は同じ組み合わせながら全体の格調が数段上がったかのような気持ちで聴けた。前回より音の重なりはスリムになり、自然と音と言葉の重なりが見通しよく、鮮烈な印象を受けた。前録音にもレビューしており、そこには「ほの暗く少しひんやりとした」という感想が書いてあった。それと比べるなら今回の録音は「微温的で光が差し込むような」感想だ。17曲目の「Crucifixus」などはもう少し人数を加えて静謐な声の重なりを聴きたかったがこれは好みの問題。

    ロ短調ミサ曲も数点あるし、ヤーコプスの盤もあるのだから今回は入手を見送ろうかな、とも思っていたがやはり聴きたくなり入手してみた。曲への信頼と確信、明るく喜びにも満ちたミサ曲を感じ、入手して聴いて良かったと心から思う。おすすめです。

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     2022/08/05

    難解・晦渋な第2巻に新たな光があてられる。第1巻から矢継ぎ早にリリースされた当盤。親しみやすい第1巻と比べお世辞にも聴き易いとは言えない第2巻に対し、ポジティフオルガンという照明で新しい視界を紹介してくれている。個人的な感覚として第1巻が自筆譜表題ページ文中に見受けられる曲線の描写にも呼応するかのような「線の絡まり」を、第2巻は音の様々な視点を「キュビズム彫刻」のように凝縮しているようなイメージで捉えている。そのせいだろうか、第2巻は第1巻以上に理解しがたい部分が多いことも告白しておきたい。だからこそ当盤が「(オルガンの伸びる音の使用で)このパッセージはこんな音が素材に使われているのか」と新鮮に聴こえてくるのだ。


     早いパッセージの曲についてはチェンバロによる演奏が「やはりいいのかな」と思ってしまうこともある。それでも何か言い含めるようにゆっくりと沈潜していく曲(特にフーガ)について聴くと、柔らかにその深奥に案内されるような感覚はポジティフオルガンによる効果なのだろうか。


     今回の平均律全2巻がポジティフオルガンで収録された価値は高いと思う。「世間をあっといわせてやろう」という感触は全くない。演奏者本人も解説書内で『まだまだきこえていなかったものがたくさんこの中に埋め込まれていた』と述べられている通り、私たちにバッハの音楽の可能性の一部を垣間見ることができることを穏やかな口調で紹介してくれているようだ。おすすめです。

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     2022/07/27

    馴染みの前奏曲とフーガが独特な化学変化を起こしてくれる。なるほど、こんな楽しみ方が生まれるのか、この曲はこんな一面があるのかなど、不思議な感覚を体感したい方にもおすすめしたい。
    音が消えていくチェンバロと音が持続するポジティフオルガンの違いは当然ながら明らか。音が重なる部分は(音が減衰していく、いわば音響が減っていく)チェンバロと違い、音が(持続することで)積み重なっていくような感覚は面白い。ピアノやチェンバロの演奏で感じる鋭角的な部分はなく、穏やかに音が生まれてくるようにも感じる。言い方はよくないが曲によっては最初期のテレビゲームのように聴こえてきたのは面白く新鮮な驚きだった。曲の魅力やバッハの音楽の可能性の広さを再発見できるディスクだと思う。平均律クラヴィーア曲集第1巻の誕生年を祝うにふさわしい画期的なディスク。おすすめです。

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     2022/07/26

    若さがなしうる繊細な、切実なマタイ。いわゆる巨匠が演じるマタイとは違う。堅苦しい学問的なマタイとは違う。バロックの修辞学なる頭で考えるマタイとも違う。耽美的なまでにたおやかで美しい合唱と瑞々しいオケ。思えばナザレのイエスなる人物も年寄りではなかったはず。若さゆえの理想や改革を追い求めた人物だったのではなかったのか、と連想したくなるようなドラマを聴かせてくれている。どちらかというと「マタイ受難曲」というより「マタイが伝えた、若きイエスが死に至るまでのドラマ」というタイトルの方がディスクの演奏内容に近いような気がする。

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     2022/07/26

    情感豊かで、映像の風景が見えてくるような充実したすばらしい演奏。名優と制作陣と作曲家の書下ろしによる充実したドラマやドキュメンタリー…現代のTV番組ではもはや実現できないような組み合わせが昔は確かにあったのだ。武満徹は「世界のタケミツ」ともてはやされるより前から「武満徹」であったのだ。

     武満徹がコンサートホールを沸かせる存在であったと同時に映画やテレビなど様々なジャンルで豊かな音楽を作っていたのは頭では分かっていたが、こうして素晴らしい布陣で映像音楽集が発表され、彼の創作範囲の広さを体感する上で佳き財産になると思う。

     タイトルにも用いられている「波の盆」が特に感動的。私はこれを聴きたくて入手したようなものだ。朧げな遠景からカメラが入り、やがて海面が静かに映し出され、波が茫洋と寄せては返すような風景を連想させる弦の旋律、その波に比喩されるような歴史の痛みや人間の心の変化…胸が震えるような美しさをぜひ多くの方に聴いていただきたい。お奨めです。

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     2022/07/20

     2021年、快挙成し遂げた反田恭平のスナップショット。当時はネットで映像と共に視聴し「この演奏とホールの雰囲気、もしかすると…」と思っていたら2位の成績。一番印象深かったのは第3次予選の曲目。ソナタ2番『葬送』→ラルゴ『神よ、ポーランドをお守りください』→英雄ポロネーズというストーリー性のある選曲。このような物語を紡いでくるところに反田の音楽家としての構成力を感じた。もちろん、それを弾ききるピアニストとしての造形力も然り。決勝の協奏曲でも「ショパンの心の痛み」を随所に感じさせるフレーズのきめ細やかさ(中でも第1楽章 CDで18:05辺りの弱音のつぶやきは絶品と思う)、こぶしをきかせた節回し、オケや聴衆も巻き込むステージ作りなど、単なるピアニストを超えた活動を目指す彼の片鱗も感じる。一過性のフィーバーで終わらせずじっくりと音楽を作っていってほしいし、それをじっくりと見守っていきたいものだ。

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     2022/05/20

    鍵盤楽器の聖典を「before&after」で愉しめるのが最大のポイントであり、発見であろう。

      クラヴィコードを演奏した1枚目では、息子の教育のために書き溜めた小曲の中に平均律クラヴィーア曲集第1巻の「芽」を見つけることができ、2〜3枚目のディスクではオーケストラの如き多彩な音とゴージャスな響きを持つ三段鍵盤機構のチェンバロで平均律第1巻の「果実」を聴かせてくれる新鮮な構成。

      今年(2022年)に作曲300年の誕生日を迎える平均律第1巻を、できる過程・できた後で両方聴けるのは今までなかったのではなかろうか。しかもクラヴィコードとチェンバロの組み合わせ。聴いていて「バッハが自宅でクラヴィコードをかき鳴らし曲の構想を膨らませ、チェンバロでその成果・結論が演奏された」というようなバッハの作曲過程を垣間見る錯覚も感じられた。

      第1番ハ長調BWV846から第24番BWV869を番号順に演奏せず彼独自のやり方で披露するのも新鮮そのもの。Disc2の第1曲目 BWV846からしてかなり意欲的なテンポで奏され、その様子はさながら噴水から水が勢いよく噴き出るような瑞々しさを感じ、曲順の変更も相まって「お、次はこれが来るのか!」「あ、この角を曲がるとこんな風景があらわれるのか」と愉しく曲を追うことができるのもうれしい。レジスターの操作なのか、発音・撥弦のバリエーションも豊富で、もともと豊かな響きのこの名器がパートに分かれて自由に歌ったり、おしゃべりをしているかのよう。

      おそらく、今年あといくつか平均律第1巻がリリースされることだろう。当盤はその中に在っても、さらに過去のディスクと比較してもプログラミングの妙、使用楽器の音の良さと歴史的価値、演奏の充実さでひと際光彩を放ち続けるディスクであろうと思う。故に今まで同曲を多く聴いてきた方々にも満足を与え、知的好奇心をくすぐるものになるであろう。ぜひ聴いてみていただきたい。

      蛇足ながら…つい先日、バンジャマン・アラールのチェンバロ・リサイタル(5月11日、浜離宮朝日ホール)も聴いてきた。白シャツにニットタイ、上品なオレンジ色のジャケットとこげ茶色のパンツというフランス人らしいしゃれた服装で登場し、フランス、イタリアなど様々な音楽文化を吸収し作られたバッハの曲たちをていねいに演奏する姿を見て、バッハの音楽と共にさらに成長していくであろう彼の才能に触れることができて嬉しくなったことも書き添えておきたい。

      

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     2022/05/03

    全集の掉尾を飾るにふさわしい盤としておすすめしたい。

    なぜ3番(と1番)を全集のラストにしたのかは判らない。が、聴いてみて「これならラストに持ってくるのは正解だった」と感じた。感じた理由の第一は「勢いがある」、第二は「スリリングなノリの良さ」、第三は「冒険心が豊か」である。        

    第一:両曲とも一気呵成に聴かせる勢いが何よりすばらしい。前作や前々作にも共通するソロとオケ両者のフレッシュな勢いはここでも健在。    

    第二:畳みかけるようなノリのすばらしさと、グルーヴ感にも似た感覚に目が覚めるような感覚をもった。この演奏は他にあまりないテンションで、当然ながら他の盤に引けを取らない。    

    第三:ソロの演奏やオケへの受け渡しなど、曲ががっちり決まってしまっている4番・5番ではなかなかやりづらい即興的なひらめきや実験精神が終始充実しており飽きさせることがない。    

    作曲者自身のピアノ演奏で発表された当時のスリルやワクワク感はこんな感じだったのではと想像してしまう。「ベートーヴェンは今も生きている」と感じさせる一枚だと感じた。
    はなはだ表面的なレビューになってしまった。細かい部分がどのように凄くて愉しいかは聴いてみてほしい。

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     2022/04/20

    2022年4月17日、76歳でラドゥ・ルプーが逝去した。早すぎる引退、そして死。私が彼の実演に接したのは1度のみ。今でも大切な思い出として残っている。おそらくこの本で登場した音楽家たちもそれぞれの思い出を持っていることだろう。その思い出やルプーへの敬愛の気持ちを語っている。音楽家の「業績」を振り返るならCDなどの音楽を聴けばよい。しかし、ルプーのそれはその業績と比べると残念なほど少ない。(そのどれもが魅力的なディスクであるのは言うまでもない)


    ラドゥ・ルプーという名の音楽家・芸術家の人となり(ほんの一面にすぎないだろうが)を表すために集められた「素描集」。この本を読みつつ、彼の演奏したCDを合わせて聴くことで彼の死を悼みたい。

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     2022/03/31

     沈黙という名の空白の中にバッハの音符をはめ込んでいく、またはちりばめていく…数回聴いてそのような印象をもった。

     時間的にみるなら108分という演奏時間はたしかにべらぼうな印象を受けるが、聴いていると「遅い」という印象はない。リピートの有無の問題ではなく、上述のような音の配置が結果的に108分ということになったのかもしれない。残響の長い録音場所で演奏することで発せられた音が沈黙に還っていくようにも感じられる。装飾音についていうととても個性的。楽譜の記述によるのかロンドー本人のinventionなのか私には判らないが、それがあることで曲が不思議な煌めきと生命力を発するので、いろいろな方に聴いてみてほしいところだ。更に言うと、休止または無音も装飾音の一部になっているようにも感じる。沈黙と言うのか、沈思と表現するかは人それぞれだろう。 また、音楽を奏でると同時に詩を編んでいるような印象もなんとなく感じる。彼の名前(Rondeau)から連想してしまうのかもしれないが…。

     ふと思ったのは、こんなゴルトベルクならM.フェルドマンのピアノ曲どれか(「マリの宮殿」か「三和音の記憶」のどれか1曲あたり?)とカップリングしてみたら面白そうだなとも思った。一見、性格や思想がかけ離れていると思えるが、どことなく合いそうな気もする。両曲ともその長さで演奏者も聴く方も大変なのはまちがいないだろうが。

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     2022/03/19

    全ての楽器から鮮烈に音がほとばしる。聴いてまず思ったのがこれだ。奇抜なことをやっているという印象はない。聴いているだけだが、各奏者がすべての音を情熱をこめて「創造」しているのを眼前にしているような錯覚にとらわれてしまう。

     セッション録音でありながら、ライヴのような緊迫感とドライブ感がすばらしい。どんなに短いフレーズでも、テーマを縁取るような小さい音でも今まさに生まれたかのようなほとばしりを感じる。聴きなれたはずのベートーヴェンの交響曲が「生まれ変わった」かのように鮮烈に響き、かけめぐる。他のレビューにもあるように録音も秀逸。ドライすぎず痩せぎすにならず立体的で、モダン楽器によるフル編成のオーケストラにも引けを取らない迫力と推進力がある。それぞれの音がはじけながら聴こえ、「個の集合」といった趣で全体的にもバランスが取れている。ティンパニの縦横無尽の活躍は特筆もの。おそらく他のティンパニ奏者が聴いたら「ここまでベートーヴェンでやれたら本望」と羨ましがるのではないだろうか。

     「ベートーヴェンなんてもう食傷気味だ」と思われる方に、「古楽器演奏は痩せていて、とてもベートーヴェンのボリュームを期待するのは無理だろう」と考える方に、「より鮮烈なフレッシュな演奏を聴いてみたい」と希望される方にお薦めしたい。私自身が「宣伝レビューは話半分に考えておこう」とか、「今さら他のベートーヴェン交響曲全集といっても大して違いもないだろう」と高をくくって入手を遅らせていたが、良い意味で裏切られたくちなので余計にそう思う。

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