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遊悠音詩人 さんのレビュー一覧 

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/08/25

    懐かしい調べに酔う……。クライスラーのヴァイオリンには、何とも言えない甘さや艶がある。それ以上に、「切ない」。まるで遠い故郷や過ぎ去りし日々を思うように響いてくる。絶妙なポルタメントや間の取り方は、ヴァイオリンを“弾く”というより、ヴァイオリンで“歌う”と表現したほうが良いかもしれない。その歌には安らぎがある。忙しない日常の中で、ふと心を鎮められる拠り所のような演奏だ。特に「ロンドンデリーの歌」と「愛の悲しみ」が絶品中の絶品!音質も、オーパス蔵らしい生々しいヴァイオリンが聴ける。勿論、SP盤特有のノイズは付き物だが、それがまたノスタルジックないい味を出している。ノイズも含めて音楽なのだ。クライスラーを良質な復刻で味わえることに感謝したい。

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     2012/08/14

    ゴールドベルクの美音に酔う。何故、彼のヴァイオリンからはこれほど高貴な薫りが漂うのだろう。大抵の場合、ヴァイオリニスト固有の癖が一つや二つはあるものだ。しゃくり上げたり、こぶしが入ったり、掠れたりすることがしばしば起こりうる。しかし、ゴールドベルクときたらどうであろう。耳につくような癖が、まるで無いではないか。響きはどこまでも澄み切っていて、適度に厚みがある。フィンガリングも正確無比で、ピッチのズレも皆無といってよい。ボウイングも考え抜かれており、節回しが至極自然である。それでいて、完璧主義者にありがちな冷たい演奏には些かも陥っていない。過度な感情移入や自己表現を避けながらも情感豊かに聴かせるのは至難の業だと思うが、さすがはゴールドベルク、実に格調高い演奏に仕上げている。音質も、モノラルながら秀逸であり、ヴァイオリンの豊潤な音色の再現に些かも不足はない。古い録音ながら、数多ある名盤の中でも、気品においてはいまだ首位の座を争える一枚と言えよう。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/07/21

    ゴールドベルクの美音に酔う。彼の弾くガルネリの音は、ただ美しいのみならず、渋く落ち着いたトーンを持っている。これが、ブラームスにはピタリと嵌まるのだ。弾き方も実に理想的だ。デュメイのように可憐一辺倒にならず、ムターのように自己主張のみに陥らず、極めて中庸を得たその中に、心の襞に触れるが如き微妙なるニュアンスが込められている。時折、フレーズの終わり際で愛撫するかのようなボーイングには優しさがあり、また、過度にならないヴィブラートにも薫り立つものがある。バルサムの伴奏も、ゴールドベルクのヴァイオリンの美質を活かす硬派な音色を聴かせる。粘着質にならず歯切れよく演奏することで、ややすると横に流れがちな曲想に、明確なリズム感を与えることに成功しているのだ。殊に《雨の歌》でその効果が活かされている。ムード的に陥ることなく、しかも情感豊かに弾かせるのは至難の技だと思うが、それを見事にやってのける。録音もモノラルながら秀逸で、ヴァイオリンの音の厚みも充分だ。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/07/06

    往年のコンセルヴァトワールの味わい深い響きで、プロコフィエフの名作二曲を堪能できる一枚。当時のコンセルヴァトワールの音は、発展解消後のパリ管に比して渋味がある。特に弦楽器がややくすんだ色調である。そこに軽やかな木管や金管が絡んでくる。アンサンブルは決して上出来とは言えず、絶えず荒れっぱなしといってもいい程だが、それが何とも良い味を出しているから不思議である。マルティノンの指揮は、過度にロシア的にならず、さりとてモダンにひた走る訳でもなく、あたかもフランス音楽であるかのような洒落た色彩感覚がある。これぞエスプリというものであろう。音質も、1957年の録音にしては優秀である。さすがデッカ原盤である。しかもバランス・エンジニアにはケネス・ウィルキンソンがクレジットされているだけある。もっとも、高音域がやや強く出る憾みもあり、また、残響もデッドではあるが、それらも許容範囲内だ。同時期のEMIのオフ過ぎて細部が判りにくい録音より、遥かに面白く聴ける。特にパーカッションの弾けっぷりには胸がすく。実に愉しい一枚だ。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 7人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/06/28

    カール・ベームの指揮の特徴は、フレーズの区切り方にある。同時代のカラヤンがレガートを多用するのに対し、ベームは一つ一つの音を立たせる。余り立たせすぎると音楽がぎくしゃくしそうだが、ベームの強みは、VPOという最高の伴侶を得たことだ。アインザッツを敢えて完璧に揃えず、僅かにずらすことによって、アンサンブルにふくよかさを出すのがVPOの持ち味だが、これが、ややすると硬直しがちになるベームの指揮に柔軟さを与えることに成功したのだと思う。こうした相乗効果がフルに発揮されたのが《田園》だ。ベートーヴェンの全交響曲の中でも最もふくよかさが要求される一方、「嵐」に見られるようなダイナミックさも必須という曲であり、多彩な表現手腕が試されている。第1楽章冒頭から、まるで朝露に濡れた若葉が風にそよぐような“匂い”を感じる。さすがVPOという質感だ。次いで《運命》の終楽章を挙げたい。とにかくテンポ感覚が抜群だ。これしかない、という程、一切の過不足のない毅然とした音の運びは感動ものだ。逆に曲の前半は、やや力を温存し過ぎている憾みがある。相手がVPOだけに、更に上を求めたいものだ。《英雄》も、ふくよかさに重きを置くなら当盤だが、タイトでアグレッシブな質感を取るならBPOとの旧盤だろう。第7にしてもそうで、リズムの神化たるバッカス的なニュアンスが不足している。特に終楽章は集中力が持続しておらず、ベームにしては不出来の部類に入る。バイエルン放送響とのライヴが超名演だった故に、尚更物足りなさが募る。録音は概して良好だが、第4番にモスキート・ノイズが混入しており、ヘッドフォンで聴くと耳が痛くなる。その他も、OIBPの悪癖たる中音域のアンバランスさがやや気になるところだ。SHM化による高音質を標榜するにはいささかインパクトに欠ける。パッケージも、薄っぺらいビニールに入れられたCDが安っぽい外箱に入れられているだけで、これでは廉価盤BOXより酷い。総じて、買って損したとまでは言わないが、いささか満足度に欠ける一組と言えよう。

    7人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/06/22

    高音質のEXTON盤でスヴェトラーノフを聴ける喜び!さて、ロシア人によるチャイコフスキーの名盤といえば、真っ先にムラヴィンスキーの名が上がり、次いでスヴェトラーノフやロジェストヴェンスキー、コンドラシンやキタエンコなどが挙がるだろう。殊にスヴェトラーノフもムラヴィンスキーも、どちらもロシア的と言われるが、両者は何と対照的なことか。ムラヴィンスキーの指揮は、とにかく即物的なほどにフレーズを短く区切る。一方で、小節の最後の音を心持ちサッと引いて、次の小節の最初の音を前に出すことによって、音楽に持続性を持たせるのだ。対してスヴェトラーノフは、一つ一つの音をよく引き延ばす。特に一拍目の音を長く保つ癖がある。これが、演歌のこぶしのような効果を生む。つまり、フレーズの頭にストレスがかかることによって、音楽がうねるのだ。音の構築の仕方も違う。ムラヴィンスキーは、音の分解と再構築を感じる。対してスヴェトラーノフの場合、曲を大局的視点で捉えている。総じて演奏はド演歌丸出し巨大爆演型といったところだろう。特に交響曲第4番のハイカロリーぶりには脱帽で、中でも終楽章の快速テンポには度肝を抜かされること必至!さて音質はというと、WARNER盤と比べたら断然EXTONに軍配が挙がる。勿論、CANYON盤よりも更に磨きがかかった音になっている。従来盤にはなかった高音域の伸びや分離の豊かさが感じられ、特に、交響曲第5番の音質の改善が著しい。SACDでないことを惜しむ向きもあるだろうが、これだけ改善した上で再発買にこぎつけたEXTONには感謝しかない。この勢いで、ラフマニノフの全集再録盤を、音質向上のうえ復活してくれないだろうかと願うのは、私だけではあるまい。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/06/17

    イギリス紳士のノーブルなイメージを求めたいならプレヴィンやボールトだろうが、かつての大英帝国の栄華を彷彿としたいならば圧倒的にショルティに分がある。輝かしい金管楽器の響きはまさに威風堂々そのものである。ケネス・ウィルキンソンが手掛けた録音ゆえに音質も水際立っている。《威風堂々》と《コケイン》は屈指の名演と言っても過言ではない。対する《謎》は、やや金管が強調されすぎている感が否めず、荒々しい印象を受ける。個人的にはボールトに軍配を上げたい。しかしながら、フリッツ・ライナー時代に次ぐ第二の黄金期を迎えていたシカゴ響のアンサンブルの正確さは抜きん出ており、悉く決まるアインザッツはさすがと言えよう。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/06/17

    イギリス紳士のノーブルなイメージを求めたいならプレヴィンやボールトだろうが、かつての大英帝国の栄華を彷彿としたいならば圧倒的にショルティに分がある。輝かしい金管楽器の響きはまさに威風堂々そのものである。ケネス・ウィルキンソンが手掛けた録音ゆえに音質も水際立っている。《威風堂々》と《コケイン》は屈指の名演と言っても過言ではない。対する《謎》は、やや金管が強調されすぎている感が否めず、荒々しい印象を受ける。個人的にはボールトに軍配を上げたい。しかしながら、フリッツ・ライナー時代に次ぐ第二の黄金期を迎えていたシカゴ響のアンサンブルの正確さは抜きん出ており、悉く決まるアインザッツはさすがと言えよう。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/04/26

    音質向上に感謝!確かに、既出盤の存在や未SACD化には疑問もない訳ではない。しかし、新たに音源を完全に揃え、しかも改めてリマスタリングし直した上で再発売しただけあって、音質は明らかに向上している。既出盤の音は乾いており、余韻成分を殆ど感じられなかったが、今回のリマスタリングで見事に修正、潤いと伸びを獲得した。第5楽章の鐘の音が、ようやく鐘らしくなった。終演後、取って付けたような拍手も、ここでは自然に沸き起こるさまが見て取れるようになった。勿論、演奏は他の《幻想交響曲》が束になってかかろうとも敵わない。ミュンシュに悪魔が乗り移ったかのようだ。第1楽章での、固定楽想の描き分けなど凄まじく、憧れや胸の高鳴りや衝動が恐ろしいくらいに伝わってくる。理想の女性を追う人間が、今度はその幻影に追われる立場に変わる。その瞬間の猛烈なアッチェレランドに打ちのめされる。第4楽章のティンパニの強打は、断末魔そのものだ。第5楽章など、魑魅魍魎うごめくさまが見て取れ、尋常ではいられない。《海》も、印象派音楽にありがちな曖昧さなど皆無で、生命の躍動を感じさせるような、うねりのある表現がさすがだ。ミュンシュも熱を帯びていたと見え、随所で唸り声を上げている。さて、新たに収録された《レクイエム・カンティクルス》は、カメレオンのように作風を変えたストラヴィンスキーが十二音技法を取り入れた作品だ。強烈な音響に眩暈がしそうだが、作曲されてすぐに本作品を取り上げるミュンシュの柔軟性は高く評価するべきだと思う。フランス音楽やドイツ音楽だけでなく、コンテンポラリーにも抜群の相性を見せる。ミュンシュの多彩な芸風を一夜で味わえるのだ。当時のパリ管の質感も、音の一つ一つが冴えており、現在では求め得ない、いい意味でのローカルな味わいがある。まさに、歴史的ドキュメントと言うに相応しい。そんな名演の音質がリフレッシュした。素直に喜びたい。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/04/06

    EXTONの優秀録音の勝利!元は同じ音源のはずなのに、WARNER盤とは全く異なる超高音質に驚愕!かつてWARNER盤を聴いたときは、失礼ながらどこがそんなに良いのか全く分からなかった。優秀録音と巷で騒がれている割には、音が詰まり気味だし、抜けが悪いし、クリアネスに欠けているのだ。そこへ来て偶然、中古屋で発見(新品:3枚\9450は高価)し、迷わず購入。再生して最初の一音で違いが分かるほどの優秀極まる音質に、ただただ感激!さすがEXTON、江崎氏の手掛けた録音の技術にハズレなし!交響曲第1番の合唱の透明感といい、《法悦の詩》のクライマックスの壮絶さといい、鳥肌が立ちっぱなしだ。願わくは、WARNERによって音質改竄を余儀なくされた他の演奏(特にチャイコフスキーの交響曲全集(1990年来日公演ライヴ))を、是非ともEXTONの復刻で聴きたい。可能ならば、本盤も含め、SACD化して頂けたら有り難い限りだ。但し、お値段は張らぬよう(笑)

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/03/04

    ベーム&VPOの貴重な遺産!《田園》は、有名なDG盤をも凌ぐ大名演。冒頭から、この世のものとも思えないほどのふくよかさに満たされる。終楽章は祈りに満ち、その余りの美しさに涙が出そうになる。演奏姿も、ヘッツェルやプリンツ、トリップなどの名手達が、一音たりとも気を抜かずに音楽にのめり込んでいく様子がよく分かるし、何より眼力鋭いベームの指揮姿には、無条件で頭を垂れたくなる程だ。気迫満点な《運命》も捨て難いが、《レオノーレ》が凄い。特に、曲の中盤、フルートとファゴットの掛け合いによる難所は聴きもの。ヴェルナー・トリップのフルートの軽やかな飛翔は、何度聴いても胸のすく思いがする。滅多に団員を褒めないベームが、この日とばかりは会心の出来にご満悦であったそうで、トリップ自身も忘れ難い名演だったとのことである。派手過ぎずくすみ過ぎず、木目調の温もりを湛えたフルートを聴くだけでも、充分に価値がある。音質も、《運命》でやや硬さが見られるが77年のライヴにしては良好である。画質も悪くない。会場はNHKホールであるが、毎週日曜夜9時に教育テレビで観ているはずのものとは全く違う豊かな音響がつくり出される(裏を返せば、某N響の下手糞加減を否応なく痛感することだろう。やる気のない演奏姿も相俟ってか、視聴率も低迷の一途を辿り、遂に番組の歴史に幕を下ろすこととなった)。ベーム&VPOが本気を出すと、こんなにも凄い。

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  • 7人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/02/15

    これぞショパン!ショパンのピアノ協奏曲といえば、とかくオーケストレーションが貧弱といわれる。それゆえ、往年のピアニストは平気で大胆なカットを施してきた。他にも、ツィマーマンのように濃厚なルバートとポルタメントで味付けしたり、スクロヴァチェフスキのように音符を足したり、要は“改竄してナンボ”のように扱われ続けてきたのである。しかし、そうした風潮が果たしてどれだけ作品理解に寄与してきたかと考えると、かなり疑わしいと思われる。本盤は、この疑問に対する回答の一つとなるだろう。1849年(つまりショパンの没年)に製作されたエラールと、ブリュッヘン率いる18世紀オーケストラの真正古楽器とのコラボレーションによって、作品本来の響きと味わいが見事に再現された。逆説的に述べれば、単純なオーケストレーションを肥大化したオーケストラでやるがゆえの物足りなさが、今日までの批判を生んだと言えまいか。本盤は、作曲家が思い描いたであろう音色、演奏法、規模を踏まえた上で、現代的な感覚や表現意欲を加味していくことがどれだけ大切かを、身を以って知らしめているようだ。

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     2012/02/10

    あらゆる音が存在を主張する!ラフマニノフの交響曲第2番は、第3楽章を初め、美旋律の宝庫として名高い。しかしそれ以上に、構成も非常に凝っているのである。序奏で示されるモットー動機が、全編に形を変えて現れるのだ。あの第3楽章の高潮部でさえ、さりげなく鳴らされるのである。エド・デ・ワールトは、この動機の扱いが完璧なのだ。例え分厚いメロディの影に隠れてしまうようなところでも、決して埋没させず、明瞭な分離を伴って浮かび上がらせるのである。この意味付けがあってこそ、曲が活きるのだ。今まで甘ったるいメロドラマのように捉えていたのが一変、眼から鱗の連続である。表現自体も、過度にロシア情緒に溺れる訳でも、逆に極端に洗練されている訳でもない。まさに中庸の美学。録音も極めて優秀であり、これは、プレヴィンに代わる21世紀の名盤と言えよう。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/01/31

    燃焼度の高いピリオド演奏が遂に出た!ピリオド奏法による《幻想交響曲》は何種類か知られている。筆者は古い順からガーディナー、ミンコフスキー、インマゼールと聴いてきた。いずれ劣らぬユニークなサウンドが聴かれ、特にガーディナー盤の鐘やコルネット、インマゼール盤のピアノやオフィクレイドの音色は唯一無二の面白さだ。また、ミンコフスキー盤も、精緻な面では捨て難いと感じている。だがいずれも、燃焼度においては今ひとつ物足りない。《幻想交響曲》というと、どうしてもミュンシュの影が余りにも大きく、あの悪魔的な興奮を齎す演奏の呪縛から中々離れられないのだ。だが、やはりミュンシュでは精緻さが犠牲となる。ということで、今までずっと、精緻だが勢いに欠ける演奏を取るか、それとも勢いはあるが騒々しい演奏を取るか、悩まされ続けてきたのである。そこへ来てロト&レ・シエクル盤の登場である。初耳の指揮者と初耳の団体だが、これが実に素晴らしい。精緻でありながら燃焼度も高い。テンポも一定ではなく緩急自在だし、何よりダイナミクスが凄い。当時の演奏法の再現ばかりに気を取られて、肝心要なメッセージ性が二の次になりがちな古楽器界において、瞠目すべきコンビといえよう。音質もオン気味かつアグレッシヴで聴き応えがある。強いて汚点を挙げるならば終楽章の鐘で、他の楽器に埋もれ気味になってしまっているのが残念。また、ライヴゆえアンサンブルが若干ラフになるところも無きにしもあらず。だが、それを除いては、ピリオド演奏による《幻想交響曲》の中では演奏・録音(とジャケット)ともに最高だろう。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/01/29

    古楽器演奏による《幻想交響曲》も、ノリントン旧盤を皮切りに何種類か出るようになった。個人的にはそのうち、ガーディナー盤、ミンコフスキ盤、グザヴィエ・ロト盤、そしてこのインマゼール盤を入手している。当盤は、上記のうちで最も徹底した時代考証が聴かれるという点において、一日の長があるといえる。第2楽章でのコルネットや第5楽章でのオフィクレイド使用は勿論、鐘の想定が現実的でないとして敢えてピアノを用いている。それだけでなく、管楽器は随所にピストンの無いものを用いたり、あるいは打楽器ならば撥の種類や台数を適宜変えたりと、よくぞここまでというぐらいの徹底ぶりを見せる。そうした綿密なる考証が奏功し、従来の演奏では聴くべくもなかった響きに、何度となく出会うことが出来るのである。そうした意味での面白さは抜群なのだが、やはりものが《幻想交響曲》となると、インマゼールのアプローチはいくら何でも真面目過ぎる。この作品が持つ狂気や愛憎の念が抜け落ち、単なる研究成果のお披露目に陥っている嫌いがある。殊に、グザヴィエ・ロト盤に接してからは、余計物足りなさを感じるようになった。その分減点だ。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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