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kadoshin さんのレビュー一覧 

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2024/02/28

    これは、近年のブルックナー録音として、シモーネ・ヤング指揮ハンブルク・フィルの全集に続く、優れたものだと思います。
    スイス・ロマンド管弦楽団は、まずはアンセルメのデッカ録音のイメージが強いかと思います。フランス語圏のジュネーヴに本拠を置くオケのため、ドイツ音楽の印象はありませんが、アンセルメの後のシュタインやサヴァリッシュの時代はイマイチ、すごいという記憶はありませんでした。
    このブルックナーは、楽員の世代も代わったのでしょうか、とてもいい音を出しています。ペンタトーンの優秀録音もあるのでしょうか、重厚さと繊細さを兼ね備えた、まさにブルックナーに必要な音が出ているのが、まずは一番訴求するポイントではないでしょうか。金管のコラール、ファンファーレはとてもコントロールされた、大きな音で圧倒されます。木管もかなり優秀な奏者が揃っている印象です。限はクリア、統制が取れています。
    コントロールといえばやはり、今やブロムシュテットと並ぶドイツ音楽会の巨匠、ヤノフスキの力によるものでしょう。かつて1980年代、90年代にNHK交響楽団に多く客演していた頃には「まじめでダメなところはないが、なんだかつまらない指揮者」と思っていた不明を恥じます。基本に忠実に、愚直にと続けていて、いつの間にか、こんなに大きな音楽をつくるようになったのではないか。
    どこをとっても不自然なところはありません。
    4番「ロマンティック」の第1楽章、展開部の金管コラールの部分、トランペットを大きく抑えて、ヴィオラの主題を際立たせます。ここの効果は絶大で、こういう解釈もあり得るのか、と目から鱗が落ちました。
    全体にテンポは速め。チェリビダッケのブルックナーが好きな方には「速すぎる!」と感じる方も多いかもしれません。ですが、これもありと思わせる説得力があります。
    もうふたつだけ。
    この全集で特筆したいのは木管の扱いの巧さに代表される各楽器の最上のバランスと、デュナーミクの正確さです。
    木管が埋没せずに聴こえるのに驚愕しました。5番フィナーレの最後のフルートが明瞭に浮かび上がるのは、録音ではアバド以来かもしれません。でもこれは、ヤング盤でもそうなので、もしかしたら録音の高い技術のせいかもしれません。管弦打楽器が最上のバランスで統一されており、テュッティでも各楽器の動きが明洋に分かります。でもかつてN響の実演で聴いた限りでは、そこまで神経を使った指揮には見えませんでしたので。ここは保留とさせてください。
    デュナーミクの正確さは、ヴァントも真っ青といったところ。先に書いたことと同じなのですが、厳格にスコアに書いてある強弱記号を守り、ピアノ、ピアニシモの区別など実に正確です。むしろドイツのオケだとなあなあでやってしまうところもあったかもしれず、スイスの楽団だからこれだけ徹底できたのかもしれません。
    とてもレベルの高い全集だと思います。値段的にもかなりお買い得ではないでしょうか。最近は廃盤になるのも早いので、ブルックナー好きな方はぜひ聴いてみていただきたいと思っています。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2024/02/28

    ようやく全曲聴き終えました。
    まず録音について、残響が多いのですが、個々の楽器の音が埋没することはなく、不思議な感じです。電気的なエコーを加えているのではないかと感じるところもあり、最新の録音と比較すると少し違和感がありました。1980年頃のU度スラビアの技術力がどれほどのものだったかと考えてみたのですが、同時期の旧東側の東独やチェコ、ハンガリー、さらには70年代のNHK交響楽団のライヴ録音などと比べると、やや「自然さ」という点で落ちるのかな、というのが素人の感想です。しかし続けて聴いていると慣れてくるので鑑賞には大きな支障はないといえます。
    全曲チクルスのライヴ録音です。演奏後には拍手が入ります。マタチッチのものも混じっていると思われる「咳(せき)」もたびたび入っています。
    巨匠時代の指揮者ですが、N響との演奏でも明らかなように、新即物主義の演奏です。テンポを揺らしたり楽譜にないアゴーギクを加えるようなことはありません。アーティキュレーションも実に厳格に処理します。
    その上で、第一印象としては、非常に強く大きな「歌」に満ちた音楽になっているということ。かつて指揮者の岩城宏之さん(故人)がテレビ番組「題名のない音楽会」でマタチッチはフルトヴェングラーの後継者みたいな主旨のことを話されていたのですが、このベートーヴェンを聴いて思うのは、むしろトスカニーニにちかいのではないか。太く雄弁で、大きなアリア。LGBTQの時代に言うの憚れますが、男性ならではの雄々しい詠唱が、一貫しています。
    一例だけ挙げれば、第5の第2楽章。もう何度も聴いて、食傷気味どころか最初に聴いた感動も忘れていたのに、この演奏を聴いて、その「たくましさ」に何度も目頭が熱くなりました。
    といって、細部に拘泥しない演奏ではなく、やはりただの雰囲気だけの指揮者ではない。金子さんのライナーはかなり紙幅に制約があるようですが、各曲、かなり細かいところまでこだわっているのが、聴いていてよくわかります。例えば、「エロイカ」の第4楽章、主題提示の2回目をアルコで弾かせています。こんな解釈は初めて聴きましたが、楽譜の不思議なテヌート表記を生かすにはこれしかないと思わせる説得力がありました。
    不思議なものです。本当なら、イッセルシュテットやケンペ、セルのベートーヴェンを好んでいたのですが、フェレンチクやジョルジェスクやこのマタチッチと、旧共産圏のベートーヴェンにこのところ、立て続けにノックアウトされています。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2023/11/05

    皆さんのレビューが好評なので、期待して聴きましたが、私には無理でした。
    録音がどうも電気的な音場感が付加されているような、実に不自然な録音でした。この録音の違和感をぬぐいきれず、演奏に集中できませんでした。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2023/09/21

    メンデルスゾーンともなると、響きの薄さが気になるかなと思いましたが、サヴァールは力業ではなく、柔らかい、透明な響きを生かし、「素材の良さ」で勝負しているように感じました。管楽器の古雅な響きはなかなか魅力的です。ベートーヴェンなどでは強打が目立ったティンパニも、ここでは少しおとなしめです。
    ただ、全体でみると現代のオーケストラの演奏で慣れているだけに、盛り上がるところなどで第一ヴァイオリンが弱く、少し違和感を感じたのも事実です。曲の持つ生命感や躍動感をもう少し感じさせて欲しいとも思いましたが、モーツァルト「レクイエム」でも感じたように、最近のサヴァールは、どこか達観したような趣を志向しているのではとも思いました。
    2つの版を演奏しているのは貴重な試みだとは感じますが、一聴して、明らかに初版の方が出来が良く(改訂版を聞くと、メンデルスゾーンの意図はわかりますが、どうもまとまりが悪い、つぎはぎ感がある?)、これなら「スコットランド」を収録してほしかったと思いました。まあ、次に録音するのかも知れませんが。

    0人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2023/06/08

    「エロイカ」も悪くないですが、この盤の一番の聴きものは、グリュミオーのメンデルスゾーンだと思います。
    実演では、ここまでしたたるような美音だったとは! そして、センスのかたまりといいたい歌い回し! もちろんフィリップスに残した膨大な録音からも、グリュミオーの美音は堪能できるが、一夜限りの、そしてシューリヒトという大指揮者の伴奏で、という一回性の奇跡とでも呼びたい、すばらしいメンデルスゾーンだと思います。
    マニアレベルのクラシックファンにとっては、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲といえば、コンサートの演目に乗っていると、「またか」「もう食傷」という感じの扱いではないでしょうか。私も「早く終わって、後半のシンフォニーが聴きたい」と常々思っています。
    それが、このグリュミオーの演奏は、こんなに良い曲だったのかと思わせる(私にとっては)唯一の録音です。

    0人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2023/06/08

    このシューベルトは素晴らしいです。
    高橋アキさんといえば、大昔に東芝EMIに録音したエリック・サティの作品集を1枚だけ持っています。現代音楽専門のピアニストという勝手な認識を持っていて、実演は聴いたことがありません。
    近年、カメラータにシューベルトのピアノ曲をシリーズで録音しているのは知ってはいましたが、何となく先入観から現代音楽を弾くピアニストのシューベルトってどうなんだろう? と勝手に思い込んでいました。
    「思い込み」は良くないですね。何気なくふと「即興曲D935」をどう弾いているのか聴いてみたくなり購入。素晴らしいではありませんか。
    まず感じられるのは、ベーゼンドルファーインペリアルの重厚な音です。「重厚」という言葉がぴったりの重い音です。特に中〜低音域の若干くぐもった分厚い音はそれだけで魅力的です。
    高橋さんの解釈は、あまり押したり引いたりせず、遅めのテンポでじっくりと歌を紡いでいくというもの。テクニック的にはまったく危なげないです。作品142の2などは、少し遅いかなと感じますが、この遅いテンポのまま最後まで行くので、高橋さんなりに確信をもって演奏しているのでしょうね。
    142の4などは、もう少しハンガリー風の切れ味があると良いなとは思いましたが、ここでも、高橋さんは遅めのテンポでブラブーラの動きよりは、シューベルトの心理的な動きみたいなものに、ひたすら眼を向けている、そんな印象を受けました。といっても、形の上では、アファナシエフのように「異形」ではない。
    内田光子さん、アンドラーシュ・シフ、ケンプやブレンデル…、だれとも似ていない独特な世界観のシューベルト。あえていえば、晩年のアラウの演奏がもっとも近いといえるかも知れません。いずれにせよ、すっかり魅了されてしまいました。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2023/06/08

    旧録音も持っていますが、あらゆる面において練度が増しているようです。近年発売されたベートーヴェンやシューベルト、モーツァルトの交響曲に続き、ますます円熟の度を増しているサヴァールならではの境地ではないでしょうか。
    オケ部分の音のドラマは十分感じますが、全体を通じて、どこか達観したような融通無碍というか、静謐な空気感が印象的に感じました。独唱陣、コーラスともにラテン語の発音がとても明瞭で、その点ではペーター・シュライヤー指揮ドレスデン盤(合唱はライプツィヒ放送合唱団)に匹敵すると感じました。
    後半部分はジュスマイヤー版のように感じましたが、ふつう、大指揮者の演奏で聞いても、この弟子が作った部分はやや落ちると感じるものですが、サヴァールの演奏ではあまりそういう感じはなかったです。演奏の良さなのでしょうね。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2023/01/27

    シューベルトのピアノ作品が網羅され、比較的くせのない演奏で収録されている点が、良いと思います。
    録音は70年頃とやや古めですが、クリアーで聴きやすい音質といえます。
    シュヒターの演奏はベーゼンドルファーを使用しているということですが、バックハウスやグルダの録音で聴き慣れたインペリアルの音と比較すると、ややシャープに聴こえます。中低音のくぐもった感じがあまりありません。ですが、手作り感のある音で、嫌いな音ではありません。
    演奏は中庸、オーソドックスという形容が最もふさわしいでしょう。最近のシューベルトのピアノ曲演奏は、歌い込みすぎたり、深淵をのぞき込み過ぎたりとか、異形の凝ったものも多いのですが、シュヒターのは、1970年代までドイツ圏(シュヒターはオーストリアの人です)で、ふつうに弾かれていたであろうと感じさせる、てらいのないものです。そういう意味では、旧東ドイツのディーター・ツェヒリンの演奏(エテルナレーベル)に近い感触があります。
    従って、個別の曲で出来不出来がないのも、こうして全集で聴くCDとしてはメリットかと思います。
    そこが逆に不満とまでは言わないまでも、曲によってはもう少し突っ込んでほしいと思う曲も(特に後期の作品で)あるのも、致し方のないところですね。
    いずれにせよ、シューベルトのピアノ作品=人生を俯瞰的にとらえられる、という意味で、なかなか得がたい全集なのではないかと考える次第です。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/04/11

    国内盤CDを買いました。
    内田光子のベートーヴェンといえば、もうだいぶん前にソナタの28番&29「ハンマークラヴィーア」と、30〜32番の2枚を聴いたことがあり、技術的にも解釈面でも大変優れた演奏だと思った記憶があります。
    内田さんは最近、「ディアベリ変奏曲」を集中的に取り上げているそうで、ここでも完全に堂に入った演奏ぶりです。
    正直に申し上げて、この曲、最初に聴いたときからなかなか最後まで聴き通すのが難しいのです。難解というわけではありません。音楽自体は最初のテーマからとてもシンプルで、変奏もスイーっと入ってくる曲ばかりですが、とにかく長いという印象です。ベートーヴェン晩年の作品なので技法的に手が込んでいるのが分かるのですが、例えば後期のソナタに感じられるような崇高さが感じられず、はっきり言ってしまえば「冗長な」感じもします。
    これまで何とか最初から最後まで聴き通せたのは、いろんな仕掛けが面白いアンデルジェフスキ盤と、多彩な音色が美しいバレンボイム盤くらい。
    さて、この内田盤ですが、上記2盤と比べると「正統派の名演」といえるでしょう。内田さんのモーツァルトやシューベルトと同様に、音自体は透明なタッチなもののバレンボイムのような多彩さはなく単色です。フォルテの打鍵は強いものの、アラウのようなお腹に響くような重厚さはありません。単調な曲を面白く聴かせようとすることもしないので、いくつかの変奏曲では少し退屈したりもしました。
    しかし、この曲は難しいですね。ライヴで時間をともにすればまた違った感興も起きるのでしょうが、内田さんをもってしても1時間近くを聴き通すのにやや難渋したというのが正直なところです。
    ただ録音も良い正統的な名盤が誕生したことは素直に喜びたいところです。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/03/17

     チェリビダッケ、ミュンヘン・フィルのブル8なら悪かろうはずがありません。実際聴いても、細部の彫琢と極大なスケール感の両立、各楽器の精緻なバランスによる見事な音響構築と、まずは両者のベストフォームと言って良い名盤だと思いました。
     この94年のリスボン・ライヴ、許光俊さんが激賞したことも大きいのでしょうが、ブルックナー・ファンの間では垂涎の名演として半ば「伝説」化していたわけですが、では、90年の東京ライヴ、93年のミュンヘン・ライヴの同曲演奏と比べて、感動の度合いにおいて著しく高いかと言うと、私の感想ではノーです。既出の2種の録音に比べて、当盤の最大の特徴は、ライヴの雰囲気をうまくとらえたオン気味の録音ではないかと考えます。客席で目の前の演奏を聴いているかのような臨場感、これはこの盤でしか味わえないように思います。
    とはいえ、けなしているわけではありません。良い演奏です。凡百のブルックナーを足元にも寄せ付けない名演であることには変わりません。正規盤の登場を素直に喜んでいます。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/03/02

     ラローチャのモーツァルトピアノ協奏曲は、1975年頃にショルティ、ロンドンフィルと入れた「25、27番」、1980年頃にユリ・シーガル(ウリエル・セガル)、ウィーン響と入れた「19、22番」(いずれもデッカ)が知られている。実はショルティとは85年に「24、26番」も入れているが、この頃にRCAに移籍が決まり、このコリン・デイヴィス指揮との録音が始まったため、「24、26番」はお蔵入りとなり、数年前にショルティ指揮の25、27とともに販売された経緯がある。
     デッカに録音した上記6曲も、なかなか良い演奏だったが、いかんせん録音がイマイチで、ピアノがかなり痩せた音で遠目に小さく録音されていたのが残念だった。
    このデイヴィスとの録音は、その点、ピアノが豊かな音で録音されており、デイヴィスの指揮も良いので、ラローチャのモーツァルトピアノ協奏曲としては、こちらの方を採りたい。
     デイヴィスの指揮は、モーツァルトを得意としていただけに、とてもナチュラルで潤いに満ちた伴奏である。ここぞというときの緊迫感、迫力も十分である。
     ラローチャのピアノは、どちらかというとロマンティックなもので、昔風といえばそうかもしれないが、芯の通った美音でなかなか魅力的な演奏である。テクニック的にも万全で、どこをとっても危なげない。モーツァルトの音楽の持つさまざまな感情表出において、ベテランならではの技を感じさせる。
     指揮共々、シャープで現代的な演奏とはいえないかもしれないが、こういうまったりしたモーツァルトを好む人にはお勧めしたいCDである。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/01/17

    素晴らしい!まだ一部しか聴いていませんが、前回の「1〜5番」と同様、今回も、今生まれた曲のように感じさせる新鮮な表現が全開で、敢闘しました。SACDの威力はすごいですね。超優秀な録音も相まって、古楽器による新たなスタンダード全集の誕生と言ってもいいかと思います。
    いずれも早めの颯爽としたテンポ。エッジの効いた低弦、厚みのある中声部にのって、ヴァイオリンにはやはり南欧の楽団のせいか歌謡性が感じられます。写真を見ると編成はコントラバス3本位で小編成ですが、近接録音のためか物足りなさは皆無。木管、金管は古雅な響きでやはりオリジナル楽器ならではの魅力があります。ティンパニの強打が目立つのは前回1〜5番も同じでしたが、今回も要所要所で打ち込まれるくさびのように、曲を引き締めています。
    サヴァールと言えば、バッハのブランデンブルク協奏曲で打ちのめされたのがもう20年以上前でした。最近だとモーツァルトの最後の3曲の交響曲は、すこし細部の詰めが甘いような気がして、あまり感心しなかった記憶がありますが、このベートーヴェンは文句なくお勧めできます。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 7人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2020/12/22

    元日経の池田さんがライナーを書いています。NHK響のブルックナー全集でも池田さんが書かれていましたが、腰椎を骨折してからの若杉さんの指揮は焦点が定まらず、急速に生彩を失っていったという旨のことを書かれていました。2000年代に東フィルとの演奏を何度か聴いた印象では、私も全く同感です。巨匠風にスケールは大きくはなったものの、音楽の流れの良さや細部の詰めの甘さを感じるようになったのです。
    やはり若杉さんの全盛期は(こういう言い方は注意が必要なのも分かりますが)、このケルンの時代、それに続くドレスデンの時代、そしてN響とのブルックナー全曲をやった70年代半ば〜90年代半ばではなかったかと思うのです。
    そのケルン時代の最良の遺産が、アルトゥスがまとめてくれました。秘曲好み(?)の若杉さんですが、ここに収められているのはきわめつけの名曲ばかり、ファンにはうれしい限りです。もとからブラームスの4番やピアノ4重奏曲(シェーンベルク編)など聴いたことはあったのですが、チャイコフスキー「悲愴(ひそう)」やベートーヴェン「英雄」、マーラー第9などを聴き、そのあくまでも純音楽的な美演に酔いしれました。なおライヴ録音が多いですが、どれも放送録音らしいクリアな音質でまったく不満はありません。また拍手は入っていません。
    若杉さんの特徴である、横の流れと縦の線の綾、楽器のバランスの良さ、構築力、クライマックスの作り方の巧さなど、とても素晴らしいです。ケルン放送響もまずは不満のない演奏を繰り広げています。
    ミュンヘンフィルの楽団員が「棒はいまいちのところもあるが、ドイツ音楽や文学など教養の深さから、楽員は若杉を尊敬して付いていっった」というような内容のことを池田さんがライナーノートに書いています。ドイツの重厚な響きを生かしながら、若杉さんならではの個性を刻印した名演がそろっていると思います。

    7人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 8人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2020/12/21

    6枚組ですが、コンパクトなケースに入っています。昔の2枚組6600円とかの時代の2枚組ケースの大きさです。ただ開けるところが多すぎて、壊れないかと慎重になります。
    最初に、帯に書かれている「浪速のバンベルク響がここまでやった」というのは、何とかなりませんかね。誰か評論家が言ったのかと、いろいろ調べてみたんですが、出典がはっきりしません。キングの担当者が考えたのでしょうか。大阪はハンブルクとは姉妹都市ですが、バンベルクとどうつながるのか、意味不明です。もちろん、オーケストラのサウンド自体もまったく別物だと思います。「売らんかな」でキャッチコピーを付けるなら、もう少し気の利いたものにしてもらいたいものです。以上は、演奏とは関係ない感想です。
    さて、2016〜2020年にかけて行われた外山マエストロのベートーヴェン。ライナーノートによると、意外にもマエストロにとっても、大阪響にとっても、ベートーヴェンのチクルスは初めてとのこと。まあ、チクルスといっても足かけ5年かけているので、厳密な意味でのチクルスとはいえないかもしれません。
    全体の印象を記すと、先に発売されたチャイコフスキー4〜6番の演奏にも共通する特性が感じられます。遅めのインテンポ、各楽器をしっかりと鳴らしながら、踏みしめるように歩みを進めるどっしりとしたベートーヴェンです。
    1番、冒頭の属7和音からくっきりとした輪郭で音価をしっかりと取った木管を鳴らします。主部に入っても遅めのテンポで堂々の横綱相撲。第2楽章はさすがに少しテンポが遅く感じます。他の緩徐楽章でもそうですが、だれるというわけではありませんが、遅くてもチェリビダッケのように手練手管を使わないので、なんとなく重いだけに感じる場面もありました。
    スケルツォも遅め、これも少し重く感じます。フィナーレコーダは盛り上がります。
    1番だけ書きましたが、他の曲もだいたい似たような印象でした。唯一、7番は序奏から早め、アレグレットも早めで意表をつかれました。3楽章からはまたじっくりテンポでしたが、フィナーレはインテンポで各楽器を鳴らしきった迫力が相当なものがありました。
    個別に書いていくとキリがないので、この辺にしますが、チャイコフスキーでは、遅いインテンポの中にも結構旋律のバランスなどに独自の解釈も見せていたのに対し、ベートーヴェンではそうしたことはまったく感じさせず、押しても引いてもびくともしない演奏であると感じ、そこが少し物足りないと思ったのも事実です。それはマエストロの見識なのだと思いますが、ベートーヴェンだとこちらもかなり好みが出来上がってしまっていて、あそこのフルートがもう少し聞こえて欲しいな、とかここはティンパニ鋭く打ち込んで欲しいなとか、思った瞬間がありましたので、星4つとさせていただきました。
    最後に第9について。練習の時、ソリストの一人(だれかは明かされていません)に「あんたはそんな歌い方するのか」と怒ったというエピソードが伝わっています。楽譜通りでなかったのではないかと推測しますが、この録音を聴く限り、4人のソリストは大変まじめに歌っています。外山マエストロに一喝され、頑張って歌ったのかと思うと、少し微笑ましくなります。

    8人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2020/10/16

    第4&「ロミジュリ」の項で書いた印象がそのまま当てはまります。むしろこの第5の方が、その異形さが際立っていると感じました。
    第1楽章。暗く深い沼を思わせるような遅いテンポで始まります。主部に入ってもインテンポ。押しても引いてもびくともしない、と決めているかのようなある意味で「確信犯」的な演奏です。
    第2楽章も遅めのテンポで、甘い主題も決して陶酔的にはならず、各楽器のテクスチャーをていねいに描き出します。フィナーレはふつうのライブなら熱狂的な演奏になりがちですが、終始インテンポ、最後の盛り上がりは、ほとんどの指揮者はテンポを上げますが、ここでも遅いままです。遅いままなのですが、オケがよく鳴っているので圧倒的なクライマックスとなります。終演後には猛烈なブラボーが。客席で聴いても、この不動の第5が感動を与えたんですね。
    不思議な演奏というほかはありません。ジャケット写真をあらためて見ると、外山マエストロが妖怪のようにも(失礼!)見えてきました。
    一転、「だったん人」はすごく柔らかい音作りで始まるので、一筋縄ではいきません。こちらは別日のライブです。昔から外山さんという人は、シンフォニーとかでは真面目一筋なのに、小品になると、すごく表現意欲を見せてきて、驚かせてくれる指揮者でした。この「だったん人」も、郷愁を誘う前半、これでもかと音のドラマをぶつけてくる後半と、起伏がはっきりした名演といっていいと思いました。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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