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風信子 さんのレビュー一覧 

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/04/04

    パドモアはシューベルトの三大歌曲集の録音を終えている ”冬の旅”は二度収録している ピアノとフォルテピアノの違いはあっても どちらもオリジナル譜に拠っているのが特筆に値する ”冬の旅”は出版社の意向で初版刊行時にいくつかの曲の調性を変更して世に出された 一般には現在もそれが流通し歌われている とは言っても リートは慣行上歌手の声域に合わせて移調して歌う だからテノールのために書かれた音楽をバスから女声までが自由に歌っている テノールのパドモアはこれに反旗を翻した オリジナル演奏を旨としている これにわたしは大いに共感している 由は述べるまでもない ベートーヴェンの ”第5交響曲”はハ短調だし シューベルトの”未完成交響曲”をロ短調以外で演奏しないように 調性が違えれば全く違う曲になる まだならパドモアの”冬の旅”を一聴あれ 楽曲の印象がガラリと変わる 端的に言えば”冬の旅”は人生の終焉を告げる歌ではない 重々しく哲学的な涙を催させてきた名演奏がお門違いだと分かる その”冬の旅”でも共演した二人がシューマンのロマンチックな”詩人の恋”をポップに軽やかに歌っている これも素晴らしい あなたも如何
     

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/04/04

    フェルミューレンのシューベルト・クラヴィーア曲全集の第6巻をワゴン販売で手に入れた あと五巻あるようだ 全巻集めて聞こうとも思ったが 気が遠くなったのでやめておいた ソナタだけではなく様々な形態の作品からほんの小さな曲まで集めている 明朗闊達な歌と踊りを繰り広げる作品も聴いて愉しいが ドイッチェ番号の大きいものにやはり味わいがあるようだ D.915”アレグレット ハ短調”は呟きから言い聞かせまでシューベルトの声を聞いているようだ ダダダダダーンダで始まる”ソナタ ニ長調”は強烈な押し出しで迫ってくる フォルテピアノの音色が操作音も含めて粗野な荒々しい主張を伝えて独特の趣を醸す これに違和感を持つ人もあろうが わたしは面白く味わった 続く小品”ハンガリーのメロディ ロ短調”もいい味だ D.718”ディアベリ〜変奏曲”も短いけれど興味が尽きない ソナタ以外の小曲を散りばめたこの曲集には愉しみが詰まっている あなたも如何 

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/04/04

    モーツァルトの最後の4年間はバッハを学んだ影響が色濃く作品に反映した スヴィーテン男爵が所有していた楽譜との出会いがモーツァルトを変えた 平均律クラヴィーア曲集から素材を抽出して編曲を施し男爵家の私的サロンで演奏した その幾つもがケッヘル番号を付されて残っていたとは知らなかった てっきり弦楽合奏曲になっているのだろうと聴き始める どっこい管楽合奏 ピアノ・デュオ 管弦楽曲と姿を変えて提供されたのには驚いた バッハの技法を自作品に取り込もうという意思が明確に刻印されている 実際晩年の多くの曲に対位法が用いられて えも言われぬ味わいと奥行きを纏うことになるのだ さて このアフター・バッハは面白いか モーツァルト作品であってそうではないから モーツァルト的なるものを求めると肩透かしを食らう だが モーツァルトの冒険旅行あるいは自由遊戯とみればつくづく興味は尽きない 意外とアンチ・モーツァルトの諸氏が面白がるのではないか モーツァルトはお好きだろうが あなたも如何

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/04/02

    懐かしくて希望に溢れる音楽と演奏 ヘルヴェッヘがピリオド・オーケストラではなく現代オーケストラと組んでシューベルトを録音した理由が伺えたような気がした 弱冠二十歳でこれだけの完成度と個性を留めた第6番と呼ばれる”ハ長調”を書き上げたシューベルトは古典派の壁を超えた それからの10年は試行錯誤の連続だった 全4楽章を完成できた交響曲は一曲もなく 何故か2つの楽章だけ他人に送られ死後27年を経て世に出て未完成と呼ばれることになる”ロ短調”が苦闘の跡を伝えている ヘルヴェッヘはピリオド奏法を取り入れた現代楽器で創作の魔境を彷徨い流離った青年の魂の声を捉えている 一つの完成と未知への憧れを捉えている テンポをゆったり目に設定して克明に彫刻していく 豊かで彫りの深い表情が浮かび出る ただ決して遅いという印象は残らない ブルックナーにもマーラーにもならんとした青春の夢が渦巻いている 誰も触れないので堪らず書いた あなたも如何 

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/04/01

    児玉麻里は行き着いてしまった もうベートーヴェンを弾かないだろう こんなに自由で完全な世界に辿り着いたら恍惚の中で死んだように静止してしまうだろう ベートーヴェンももうソナタは書けない 否 これがソナタか そこにあるのは尽きない”激情”とその果てに残っているのは”歌”だけだ エスプレシーヴォ アパッショナータ カンタービレ アリオーソの海原の向こうに小さくないアリアの砂州が横たわっている なんだこの世界は こんな所に踏み入ったら 懸命に歩き続けた俗世で鍛えられた筋肉も萎えて蕩けていく 天国かはたまた地獄か ありえない こんなにも人間的なあの世など いや人間的過ぎる 剥き出しの感情が波打ち自己告白するような音楽があったろうか ベートーヴェンは時空を超えてしまった もう音楽ですらないのかもしれない だから比較も評価も成立しない 只この異空間に飛び込んだピアニストが眩しい もし勇気があるなら あなたも如何

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/04/01

    ジェームス・ジャッドはローカルな指揮者だ ローカルという語には《局所の、局地的な、各駅停車の》など意味があるが ジャッドは地元の(当地の)指揮者と言える グローバルでもナショナルでもない だから知る人も限られているが 地に足の着いた信頼できる指揮者だと思う 信頼できる指揮とは何か それは音楽の勘所を外さないということ だから指揮する曲は偏る 自身が咀嚼しきちんと呑み込めて生きる糧にし感謝と愛が生まれた時 初めて全身で歌い出す音楽をする人 失礼ながらマイナーなオーケストラばかり回って 母国イギリス音楽を中心とした録音を中心に限られた作曲家の限られた作品を記録し残している このDVD Audioの存在を知らなかった これは宝石だ ニュージーランドsoを振ってRVWの珠玉のオーケストラ曲を聞かせる あまりの美しさに日が暮れたことに気づかなかった 新元号発表の日 忘れられない一日となった ジャッド・ファンもそうでない人も如何

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/03/31

    新交響楽団に匹敵するアマチュア・オーケストラが登場した と言っては遅きに失する 只わたしが二の足を踏んでいたに過ぎない かつて井上喜惟氏率いるグスタフ・マーラー・オーケストラが残した名演に並ぶ或いは凌駕した快演となった 楽器操作の不備は指摘できるが 音楽をする喜びはそんな低地には止まらない そこには紛れもなく楽興の時が生まれている マーラーのフィールドに花は咲き草が風に戦いでいる 動物の目は俊敏に周囲を伺い遠くの気配に耳をそばだてている 草花も獣も微睡む時がある すると人間が真理の淵で呻くように宣う どこまでも大胆に天使が楽天的に歌う 世界は愛に包まれて憩う マーラーの幻想と夢が夏の天地を駆け回る これは夢 指揮者坂入はまだ夢幻から醒めないと見える マリアと妖精の歌というエピローグを付けた ミューザ川崎シンフォニーホールの音響特性も手伝って透明で立体感のあるソノリティーが広がっていく これは素晴らしい あなたも如何

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/03/29

    貴重な録音だ ファゴット所謂バスーンとバソンの違いを聴く格好の場となった 録音は古くともアラールの演奏は凄い そして選曲がまた憎い 最後に20世紀のジョリヴェを置いて 前にバロックから古典派までの傑作が並ぶ ヴィヴァルディの”ホ短調”はたくさんある彼のFag Con.の中で特異な存在だ 他に同調曲はない ボワモルティエの”ニ長調”は1729年にパリで刊行されたチェロのための”5つのソナタと1つの協奏曲”の中の一曲でヴィオールかFagがソロを執る 同種曲を他には見ない C.P.シュターミツの”ヘ長調”も唯一の傑作 モーツァルトの”変ロ長調”もヘ長調に偽作の疑いがある以上ただ一つのものと言っていい 母国も伊・仏・チェコ・墺と多彩 それをバソンで吹いている味わいは格別なのだ 音色は色彩ではない 色気である 言い換えれば表情である 軽やかな表情変化も然ることながら楽天性が根底に流れている まだ手に入るうちに あなたも如何 

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     2019/03/28

    特別なDiscだ 50年近く昔の録音でありながら市場から消えない それほどに優れた演奏であり特異な選曲による他に類を見ないレコードなのだ サン=サーンスの全交響曲を網羅しているというだけで何が特別なのだろうか 5曲中4曲が作曲者が23歳までに書いた作品であり 実質コンサートで取り上げられるのは彼が50歳で書いた最後の1曲であって 他の4曲はほとんどの音楽ファンは聞いたことがない だからディスクにして出版しても需要がないので 第3番「オルガンつき」だけが大量に店頭に並んでいる マルティノン盤に代わる全集が出たことが無いわけではないが 少数であり このマルティノン盤は今以て貴重な録音として流布している 初期の4曲中2曲が出版され番号が振られたが 10代中ばで書いた”イ長調”そして21歳の時の”首都ローマ”どちらも番号付きの2曲に引けを取らない魅力を聞かせる これらの交響曲にはサン=サーンスのアポロン的芸術観が色濃く染めこまれている もしまだなら あなたも如何    

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/03/27

    シトコヴェツキーが自編曲による弦楽合奏版”ゴルトベルク変奏曲”を紀尾井シンフォニエッタと演奏している 弦楽五部の合奏で演奏されるのは10曲 弦楽三部・四部合奏が各1曲 コンチェルト・グロッソ型が8曲 VnソロとVa・Vc群合奏によるコンチェルト型が2曲 DuoからQuintettoが10曲と 全32曲は変化に富んでいる 鍵盤が弦楽に入れ替わって音色変化が出たことで音楽の印象は変わった 少なくとも不眠症の王を眠りに就かせる働きは弱まったと言えそうだ 代わってバッハのコントラプンクトの妙を堪能できる シトコヴェツキーもバッハの展開を紐解き共感し感動を伝える編曲を行なっている 第一のクライマックスは第5カノンに至るブロック 後半の開始を告げる第16変奏”序曲”からはよりダイナミックな変化を見せて高揚していく ”クォドリベット”に至る最終ブロックは大団円 その前第9カノンのブロックが第2にして最大のクライマックスだ Vnソロが唸る 全合奏の後に弦楽四重奏でカノンを奏で締めくくりへ突入していく バッハの音楽技法を知る上に極めて興味深く面白い演奏だ あなたも如何

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/03/26

    どこまでも澄んだ声音に青春性を感じずにいられない シューベルトの最期の年に書き残されていたことから”白鳥の歌”と名付けられたが シューベルトにその自覚はなかった 人との関わりとその想いを歌い 一方で自己の煩悶と孤独を歌い まざまざと若き魂の揺らめきが刻まれている レルシュターブ詩の7曲は繊細で愛しさが横溢する ハイネ詩の6曲は劇性の畝りを顕にし激しい情念が漏れ出てくる 最後に添えられたザイドル詩の”鳩の使い”にはシューベルトを愛した人たちの思いが込められたようにも思う コボウの美しい発音はロマンチックに流されない 感情に惑溺しない 鮮烈な精神の飛沫を散らして駆け抜けていく姿に儚さと果てない希望の光を見る ベズイデンホウトのFpも闊達に快走している 決して重くならないソノリティがコボウの歌に伴走する 余白に添えられたハイネ詩によるメンデルスゾーン歌曲もこの延長線上で歌われている 青春の歌だ あなたも如何 

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     2019/03/25

    ミネラルウォーターのような味わいと言ったら誤解されるだろうか テムズ川の水は飲めたものではないだろうが ”水上の音楽”だけに清流あるいは伏流水を想起した ベルリン古楽アカデミーの弦が清冽な飛沫を放って流れ来る 第一組曲はナチュラルホルンの野趣ある音色が生きて心奥の埋み火を掻き立てられるようだ 第二組曲に加わるトラッペットも鮮烈だ 水上の当に野外での演奏を想定したソノリティを実現するAAMBの奏法はマルカートに徹している これは単調さを生む危険を孕んでいる ここでヘンデルの工夫が見られる フルートの登場だ 川の上でも笛の音は存外通るもの 音量だけが武器ではないことを知っているのが憎い 第三組曲ではティンパニーが印象を残す ラメンテでしっとり始まった曲に太鼓の打音が響く ここで初めて登場した訳ではないが ソロ風に踏み込んでくる衝撃は忘れがたい 再びフルートの歌も存分に聞かれ 全体がメヌエット調に終始するが 最後は全楽器が登場して大団円となる 実によく書けた音楽だ つい音楽の流れを辿ってしまった あなたも如何   

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/03/25

    人形の顔がアップになったジャケット・デザインが印象に残っていた 23のピアノ小曲を並べた金太郎飴風の名曲集ではない お馴染みのメロディーだけで構成されていない異形異風から ミーちゃんハーちゃん向けアンソロジーになっていない 大井和郎の名とその演奏を知る人は決して多くないようだ ピアノ好きに水を向けても話に乗ってこないこと屡なのだ わたしのようなピアニスト嫌いが小さなコンサートで出会って驚く その技量は当代一級の腕前と言っていい ここで弾くピアノはベーゼンドルファーだ 1分に満たないものから数分の小品ばかりだが選曲は偏っている ギロックとバッハが6曲 チャイコフスキー3曲 ブルグミュラー2曲 残る6曲は一人1曲 わたしの好きな曲 初めて聴く曲 ピンとこない曲様々だ だがピアノに嗜みのある方なら傾注傾聴するのではあるまいか わたしでもピアノの力と魅力をまざまざと感じるのだから あなたも如何 

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/03/23

    図書館の棚に見つけ聴き直した そこには20世紀の楽天的な気分が住んでいた 国家間の或いは民族間の諍いと殺戮が無数の不寛容と怨念を生み続けた世紀だからこそ 争いと憎悪の隙間に流れ込んだ能天気な気風は 喉がつまりそうな息苦しさから逃れる術だったのかもしれない そして多くの人間が無軌道と自暴自棄に染まっていった中で ジョリヴエもミヨーも品性を失わなかった 歴史の中を生きてきた民俗音楽の美と微笑みを内包した歌のエッセンスを抽出して自己の内なる音楽に羽織らせた それは多くの同時代人の心の襞に染み入っていった なぜだろう 懐かしい もう確実に時代が移ったことを感じずにいられなかった 感傷に捕らえられたのはわたしが年を取ったせいだろうか ここには硝煙が巻きと血飛沫が散乱する地獄の縁を通っても己を見失わず人間の善の灯を点し続けた人の音楽がある 若い人たちよ 如何

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     2019/03/21

    なんと言うピアニストだ 舘野泉のピアニズムに胸が熱くなった それは災厄の中で弾き続ける魂の不屈さにではない 音楽に向き合う時現れる心延えの自由さに五感が洗われた だから心は躍動し呼びかけ歌う 今生まれる喜びを纏って音楽が立ち上がる美しさは喩えようもない それだけに音楽の本質が透けて見えて来る バッハ(ブラームス編)とスクリャービンが素晴らしい スクリャービンの”夜想曲”一曲を聴いただけで満足だ それほど優れた楽曲でありまた演奏である 間宮芳生とブリッジは音楽の前に何かを考えている 現れた音楽は音楽より言葉に近い 言語感覚を伴わない音楽はありえないけれど 想いが詞になり辞になり音楽の上っ面にくっついているのは困る 音楽から湧き出す愉悦感や推進感が後ろに引いてしまう 音楽を聴く喜びが退潮してしまう 思いの深さは分かるけれど それは音楽の律動と歌の波の向こうに聴取者が感じ取ればいいのだ 勿論舘野泉の責任ではない 誠意ある熱演を繰り広げている それだけに選曲に一層の工夫が求められる バッハとスクリャービンを聴くためのディスクだ あなたも如何  

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