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mimi さんのレビュー一覧 

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     2019/05/31

    Mahan Esfahaniのこれまでの録音の中で最も素晴らしい仕事かも知れません。Rameauのクラブサン全集録音は、F.Couperinなどに比較して曲数がそれほど多くなく、またはるかに近代的であるため、ピアノによるものも含めてこれまで決して少なくありませんでしたが、他の評者も指摘されるように決定版と言える演奏は無かったように思います。自分も過去のRameauクラブサン全集録音の一部しか聴いてませんが、それでも録音の良さも含め、こんなに魅力的な全集は初めてです。実は最初に聴き始めた時、Rameau最初期(20歳そこそこ)のイ短調組曲においては、やはりまだ一本調子で味わいが乏しいかな、と感じた瞬間はあったのですが(Pinnockの再録音などに較べ)、聴き進めるにつれ、Esfahaniの明確な構造を表出する主張のはっきりした新鮮な演奏に引き込まれていきます。Rameau壮年期のホ短調、ニ長調組曲、その中でもいくつかの有名曲(Le Rappel des Oiseaux, Tambourin, Rigaudons1/2, L’Entretien des Muses, etc)は、瑞々しい詩情と近代的な生命力を漲らせた、これ以上ない名演奏。後半の2組曲においても、とても一本調子とはほど遠い、明確な和声感覚と構造にRameauの音楽本来の魅力であるピンと張りつめた情緒をまとわせた表現した好演奏であり(Le Triomphante, Gavotteなど!)、Peter Jan Belderの全集を録音の面だけでなく、完全に上回っているのではないでしょうか。決してフランス的とは言えない演奏かも知れないし、このような現代的なRameauを好まない方もおられるかも知れませんが、それでも確かにRameauの音楽の本質的な魅力を確かに捉えた良演奏であることは確かで、多くの方にお薦めする価値があると思います。

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     2019/05/09

    Giuseppe Maletto自身のライナーによれば、Cantica Symphoniaが初期から活動の場として結びつきが強い、北イタリア/コレットのカルメル会女子修道院教会ゆかりの作品集。この修道院ゆかりのルネサンス合唱小品に、現代作曲家がCantica Symphoniaのために作曲した2曲を加えており、地味ながら全てに充実した合唱ポリフォニーが味わえます。作曲家としてはHeinrich Issacが3曲、Jean Mouton2曲、Josquin1曲、Senfl1曲他。今から10年前、すでにCantica Symphoniaの活動が脂が乗り切った時期であるだけに、その演奏技術は現代のトップクラスであり、器楽を全く加えないながら一切の緩みが無い見事な歌唱と思います。有名作品は無いですが紛れも無い好演集としてお薦めできる思います。

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     2019/04/14

    実は古楽愛好家としては恥ずかしながら、Colin Tilneyの演奏をこれまでまとまって聴いた事がありませんでした。その名は自分が音楽を聴き始めた数十年前から知っていたし、断片的にはその演奏に触れた事はあっても、何となく若手演奏家の一人くらいのイメージでしたが、今回初めてアルバムを購入し、若手どころか、まもなく90歳も近い、古楽演奏家としては最長老の域にあることを知りました(昔Leonhardtに師事したことを聞いてたので若手のイメージがあったのですが、年齢はたった5歳しか違わない)。今回のW.Byrd作品、その長い演奏経験と古楽研究を積み重ねた名匠らしい、実に味わい深い演奏集と思います。おおむね、Byrdの最もポピュラーな作品群が選ばれており、さすがにもっと若々しい溌剌とした演奏も他にはあるのですが、一方でひとつひとつのフレーズとリズム、その間に潜むえもいわれぬ「間」の妙味は、普通ベテランでなければ出せないものかも知れません(A.Hakkinenなど若くして適合してしまう演奏家もいますが)。必ずしもこれが各曲の最高の演奏では無いかも知れませんし、地味ですが、Byrd鍵盤音楽の魅力の本質をはずさない好演盤ではないでしょうか。W.Byrdの音楽に魅力を感じる方なら、持っておかれて決して損は無いと思います。

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     2019/04/05

    もはや老境に入ったと言っていいこの作品、年寄臭い要素など一つも無いにもかかわらず、非常に滋味溢れる、味わい深い作品と思います。思えばPaulほどに鋼のメンタルを持った人でなければ、Beatles解散後、ここまで息長く活動はできなかったでしょうが、それがわれわれ、Beatlesによって生涯を決定された人間達には、良くも悪くも彼を冷静に評価できない原因になってしまうのは皮肉です。それでもBeatles解散後半世紀、Paulが決してめげず弛まずに前向きにいてくれた事が、われわれ(Beatlesファン)を結果的にどれだけ救ってくれていたか。客観的な評価はまだできないけれど、おそらくすべての音楽ファンに薦める価値のある名品(の一つ)と思います。Thank you so much for your long-term contributions to world-wide, contemporary music, Paul!

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     2019/03/23

    Christophe Roussetは2010年にも、同じ仏HMからLouis Couperin作品集を出しており、今回の新しい作品集と合わせて(曲の重複が無いので)Louis Couperin全作品のほとんどを録音した事になるでしょうか。今回は録音のコンセプトが前回と異なるようですが(フィルハーモニー・ド・パリ所蔵の歴史楽器による初録音)、収録作品数も前回より遥に多い68曲、CD2枚にいっぱいいっぱいと非常にヴォリューム満載(前回は同じCD2枚に38曲)。Louis Couperinの演奏では数年前に、Richard EgarrによるCD4枚の全集が出てますが、Egarrの繊細を極めた演奏と比較すると、前回のRoussetのはどちらかといえば、構造的・構築的であり、Louis Couperinの重厚さ・劇性が強調された反面、細部の細やかさ、微妙な味わいにはまだ乏しい印象でした。今回の新録音、Roussetの基本的な姿勢は全く変わってないようですが、前回より重量級のCDであるにも関わらず、遥かに印象は軽やかで味わいが増しているように思います。構築的・劇的でありながら、決して重々しくがんじがらめにならず、全体で2時間半もの演奏がいつのまにか聴き通せてしまいます(前回は1時間半を聴き通すのがしんどかった!)。あまりにも月並みな文言ですが、やはり前回から10年を経たRoussetの円熟、としか言い様のないものが今回の新録音には表れているように思います(楽器の違いも大きいかも知れませんが)。もちろん他の奏者の録音に、これ以上のLouis Couperinの表現が無いわけではありませんが(1970年代のLeonhardtのDHM盤や、ごく最近のPinnockのPlectra盤!)、それでもEgarrの全集同様、現在求め得る最上のLouis Couperin演奏の一つとして、多くの古楽ファンにお薦めできる好演集ではないでしょうか。

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     2019/03/03

    自分は世評の高い、C.Davis/LSOのシベリウス全集を聴いておりません。なので、今は亡きこのシベリウス・スペシャリストのキャリア内での、この最初の全集の位置づけは判りませんが、最近ふとしたきっかけで購入し直したこのデッカ盤(CD初期に出たPHILIPS盤はあまりにもお粗末な音質で、演奏の真価をとても伝えられてなかった!)全集を、それこそ30年ぶりに聴き、初出時に数々の賛辞を受けたこの名演の真価をあらためて再認識しました。C.Davis/BSOのLP全集が出た40年前、すでにシベリウス交響曲全集は複数存在していた訳ですが、思うにこれだけ見事な合奏力を持つオーケストラによるものは、(バーンスタインやマゼール含め)Karajan/BPOの選集を除いて無かったのではないでしょうか。それだけここに聴くBSOのオケとしての能力は素晴らしいものがあります。そして徹底的に磨き抜かれて耽美的なKarajan/BPOの演奏とはまさに対称的に(作曲者自身が絶賛したようにそういった演奏もシベリウス音楽の本質をついた名演ではあるでしょうが)、このC.Davis/BSOの演奏は、希代のメロディスト、耽美家としてのシベリウス音楽にほとんど目をくれず、シベリウス音楽の構造性、現代性、そして非西欧性を徹底してハードに、武骨なまでに明らかにしていきます。それを支えるのが、BSOの粗削りなまでに強烈な合奏力ですが、それは粗い未完成な演奏とは対極の、徹底して考え抜かれた演奏であり、雪と氷に覆われた北欧の荒々しい自然の偉大さを目の当たりにするようです。最も典型的な例として、シベリウス通を自認される方が「通俗的」「恥ずかしい」と非難される事が多い第2番、ここに聴くC.Davis/BSOの演奏は、万人を興奮させるような盛り上がりには全く欠けるかも知れませんが、まるで寄せ木細工のように種々のモチーフがちりばめられ組み上げられていく様は、それまでの西洋古典音楽における交響曲概念からかなり逸脱しており、この「通俗名曲」がいかに限りなく斬新で現代的な価値を有するか、再認識させられます。一般には目立たないとされる第3番が、ここまでの雄大な偉容を有した大曲である事を感じさせるのも、この演奏をおいて知りません。第4番は耽美的な詩情こそ希薄かも知れませんが、やはり徹底的に構造を全面に押し出した、極めて現代的で充実した名演。最後の第7番も、バルビローリのような名人芸とは異なりますが、一切甘さを排除して純粋に音楽構造のみの充実を追求することによって、この最後の傑作がJ.S.Bachのシャコンヌや、Beethovenの最後のピアノ・ソナタ第32番のような、「音楽そのものによってしか説明できない」西洋音楽史上の第一級の芸術作品であることを、実感させてくれます。交響詩ではタピオラが、やはりKarajanの名演と全く対極の、しかも双璧をなす構造的かつ現代的な名演奏。いまや星の数ほどにある(であろう)シベリス交響曲全集ですが、このC.Davis/BSO盤は、少なくともオーケストラの能力の点で言えば未だにこれを越える演奏は(Rattle/BPO含めて)無く、かつシベリウス音楽の構造性、現代性、非西欧性を極限まで表現した点で、他にならぶもののない存在価値を有する名盤と言えるのではないでしょうか。

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     2019/02/11

    私見では、J.S.Bachの有名曲中でこれほどの難曲は無いでしょうが、それはひとえにこの西洋音楽史上でもちょっと類を見ない傑作の理想的な再現がほぼ不可能に近いからと思います。もちろん、この曲集はJ.S.Bachの生きたバロック時代の、器楽協奏曲原理に深く根ざしているわけですが、このたった6曲の小曲集(一曲一曲は決して長くない)が、当時に至る器楽協奏曲の歴史をほとんど鳥瞰する内容になっていることからしてあり得ないのに、加えてそこに遠く古典派から現代、果ては未来に至るまでの音楽の流れを見通す要素さえ、示唆される。このようなとんでもない傑作に対して、これまで十全な再現に近づけた演奏なぞ、片手に余る程もありません。Lars Urlik Mortensen/Concerto Copenhagenのこの演奏も、不満な要素が無いはずもないのですが、それでも近年のBrandenburgの中で、目立たないながらこれほど質の高い演奏も稀なのでは無いでしょうか。自分の考えるに、Bachのこの傑作で(そして他の全てのBach管弦楽作品で)の再現に最も重要なのは、音楽のあらゆる要素において「中庸」な、言い換えれば「至適」な方法を見いだし、それを各要素間のやはり「中庸」なバランスにおいて実現することーこれはおそらくBrandenburgの演奏史上初めて理想的な再現に近づいた、Gustav Leonhardtのセオン盤にLeonhardt自身が寄せた短文に書かれている事ですがーではないかと思うのですが、Mortensen/Concerto Copenhagenはこの盤において、人の目を奪うような奇異な再現は何もしていないにも関わらず、決してそれ以上でもそれ以下でもない、曲そのものの中庸な再現を実現しており、それが聞き返すほどに味わいを増していきます。もちろん歴史的音楽の再現にーこれもLeonhardtが言ったようにー決定版とかスタンダードなどはあり得ず、これ以上の再現も十分に存在するでしょうが、それでも現在存命中の音楽家で、ここまでBrandenburgの忠実な再現に迫り得ているのは、Mortensenの先輩/盟友であるTrevor Pinnock/European Brandenburg Ensembleのさらに一段上をいく演奏を除いて、自分には思い当たりません。細かい事を言えば、5番のチェンバロ独奏の推進力を始め、もう少し望みたい部分は尽きませんが、それでも自分の知る限りで実は稀にしか出会わない、「中庸な」Brandenburgの再現として、多くの方にきいて頂きたい良演盤と思います。

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     2019/02/11

    Rudolf Lutz/J.S.Bach-Stiftung St. Gallenのカンタータ第7集。今回は復活祭用の第159番を、三位一体節用のカンタータ2曲(第38番、第139番)が取り囲む構成。いずれも超有名曲とは言えませんが、中では冒頭の第38番「深き淵より」が、K.Richterの往年の名演奏もあって、最も良く知られているでしょうか(第139番もRichterの名演があります)。その第38番ですが、Rudolf Lutzにしてはあまりリズムやフレーズを際立たせない、どちらかと言えば穏健な演奏と考えられ、信仰心を強烈に押し出したK.Richterの演奏に較べると、あまり印象は強くありません。しかしながら、例によって確かな器楽演奏技術と、超一級ではなくとも堅実なソロ歌手陣、そして目立たないながら隅々まで考え抜かれたRudolf Lutzの解釈によって、間違いなく上質の演奏が聴かれ、おそらくピリオド演奏によるものとしてはトップと言えるのではないでしょうか(今回の3曲はS.KuijkenのOVPP選集に含まれてません)。復活祭用の第159番はさらに渋い曲ですが、曲の真価を決して損なわない、素直で上質な演奏ですし、最後の第139番も、やはりK.Richterの力強い演奏に較べると温和ですが、曲そのものの本来の性格を考えると、本盤の力みがなく、美しい自然な演奏の方が相応しいとも考えられます。曲の解釈、演奏技術、隅々まで手抜きの無い誠実な演奏集として、やはり第一にお薦めできる良演ではないでしょうか。

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     2019/02/10

    特にシベリウスの熱狂的なファンでもないので、大きな事を言う資格は無いのですが(それでも交響曲全集は、いつの間にか7種類くらい持っている)、このライブ盤のハイライトである交響曲第4番は、同曲の演奏中でも屈指の名演と言えるのではないでしょうか。歴史的にはシベリウスの最高傑作と名高い同曲ですが、実際の人気は高いとは言えず、確かに少なくない録音の中で、これは、という感銘を受ける演奏は決して多いとは言えません。渡邊暁雄/ヘルシンキ・フィルの演奏は、実は初めて東京FMで放送された1982年の春、たまたま学生時代の貧乏旅行で関東に滞在し、千葉の友人宅に泊めてもらった際に友人宅で録音させてもらい、それこそ目から鱗が落ちるような衝撃を受けました。それ以前にも、有名なKarajan他、いくつかの演奏で知っており、正直4番の魅力がよく理解できていなかったのですが、渡邊暁雄/ヘルシンキ・フィルの演奏はそれまでのどの演奏とも全く異なりました。音の一音一音、フレーズの抑揚、テンポの微細な揺れ、その全体で構成される徹底的に静かで冷たく美しい世界は、自分の知る限り過去の(そして現在にいたるまでの)どの演奏とも違って、静かではあっても重々しさは微塵も無く、雪風のように軽々しく爽やかで、ひたすら詩的です。ここには華やかで賑やかな世界はありませんが、世間でこの曲に言われる「陰鬱な」「死の世界のような」といった雰囲気はほとんどなく、冷たく静かで穏やかな時間が、それも一瞬の弛緩もなく流れていきます。北欧の湖畔の水音と野鳥の羽ばたき、泣き声が静かにこだまするのが目に浮かぶよう、とでも言えるでしょうか。この録音の演奏によって、初めて自分は、シベリスがこの4番を(晩年にいたるまで)自他共に最高傑作と認めた訳が完全に納得できました。有名楽団とは言えないでしょうが、この演奏において、ヘルシンキ・フィルの演奏は技術的に神がかった素晴らしさであり、それ以上に自分たちで無ければ絶対に奏でられない音楽を実現しています。おそらく世界ではもちろん、わが国でも決して有名な盤ではないでしょうが、交響曲第4番の演奏史上でも特筆すべき奇跡的名演奏と言い切って差し支えないと思います。他の収録曲では、交響曲第1番が初期曲に見がちな荒々しさを全く見せない、静謐で高貴な演奏。第7番はさすがにバルビローリ/ハレ管の名人芸には及びませんが、暖かく堅実な好演。疑いなく、わが国のシベリウス演奏史の頂点を極めた名録音です。

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     2018/10/26

    Rudolf Lutz/J.S.Bach-Stiftung St. Gallenのカンタータ第6集。今回第140番を中心に、主の来訪を喜ぶカンタータ3曲が選ばれていますが、演奏技能の確かさ、高度さ、そして指揮者としてのR.Lutzの能力の高さに関しては、第5集までと何ら変わる事はありません。しかしながら、中心となる第140番は名曲中の名曲、全カンタータ中ではもちろん、ひょっとするとBachの全声楽作品中でも一二を争う程の美しさに溢れた作品です。R.Lutzの演奏は例によって、早めのテンポとリズムによってきびきびと進める現代的なものですが、この全てに美しさで満ち満ちた曲の再現には、あまりにも細部の美を掘り起こせておらず、正直曲の魅力の半分も表現できていないと言わざるを得ません(実は十分に掘り起こせた演奏は稀ですが。でもS.Kuijkenなどの涙が出るほどの美しさ、清らかさに較べると...)。他の2曲も今回、決して単純とは言えない複雑な魅力を有するだけに、やはり真価を十分に見いだした演奏とは言えず、全体として満足できる盤とは言い難い。少し前に彼らのロ短調ミサを聴いた時に、あまりにも見事で完璧な演奏だけど、どこか外面的で何か足りない想いが拭えませんでしたが、この140番の美にまだまだであることを考えると、やはり演奏者・指揮者としてこれからの人たちであるのが明らかではないでしょうか。公平にみて、好感を持てる演奏ではありますが、多くの方にお薦めできるレベルではないように思います。

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     2018/10/14

    Rudolf Lutz/J.S.Bach-Stiftung St. Gallenのカンタータ第5集。例によって、非常に高い演奏能力を有する古楽器集団と指揮者による、きわめて推進力に溢れた、ある意味現代的な好演集です。その美質が最もよく顕れてるのは、独立のシンフォニアとして、一時期Trevor Pinnock/English concertがテーマ曲のように演奏していた、第42番冒頭曲で、その生命力と引き締まった響きは、English concertの演奏すら超えています。次いで、地味なようでいて実は従来より人気が高い180番「装いせよ、わが魂」が、これも引き締まった響きによる好演ですが、この曲に関しては最も優美で心の篭った冒頭合唱曲の演奏は深い情緒を湛えた古のK.Richterや、ひたすら素朴でさりげないS.Kuijkenの美しさに比較すると、演奏全体の外形は質が高くとも、篭められた感動の面で今一歩の感がないではありません。ロ短調ミサ第一部Gloriaからの転用によるクリスマス・カンタータ、191番についてもH.Winschermannの、ひたすらに滋味溢れた表現に比較すると、特に優位な演奏とは言い難いようです(おまけ感がどうしてもでてしまう!)。しかしながら、全体としてはもちろん、現在進行中のカンタータ全集の中で、トップクラスの演奏には違いなく、万人にお薦めできる程ではないにしても、Bachファンなら一聴の価値は十分あると思います。

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     2018/09/24

    古今の数あるWilliam Byrd鍵盤作品集中でも、疑いなくトップクラスの名演と思います。実はHMVに出るより前に、FinlandのALBA recordより直接購入したのですが、期待を上回る素晴らしい出来。前回のHakkinenの、ほぼデビュー盤に近いと思われるByrd鍵盤作品集が23歳時、その録音からほぼ20年経ってるとはいえ、本盤録音時も実はまだ若干42歳。それでいてこのByrdの音楽に対する適合性の良さは驚異的です。前回盤における瑞々しさを十二分に保った上で、今回の演奏は、特にPavan&Gaillardのような楽曲で、遥かに精緻で堅固、隙の無い多声構造を見事に再現しています。しかしながら、より驚くべきはWilliam Byrd特有の親しみやすい旋律、近代的な和声の合間にちりばめられた音と音の微妙な、さりげない、それでいてしみじみとした間、ニュアンスが、このまだ若い奏者の手によって、ものの見事に再現されていくことで、これだけの再現は正直、Leonhardtの晩年盤くらいでしかみられないのではないでしょうか。もちろん、ここにはこの20年間のHakkinenの、様々な時代、様々な音楽様式とその背景に触れ、研究してきた経験と学識が大きな力となっているのでしょうが(それだけなら近年のRichard Egarrの方がむしろ上のはずなのに)、Hakkinenにはそれだけでなく、天性のByrdの音楽に対する適合性、相性の良さがあるように思います。Praeludium MB1、Fantasia MB25、Callino Casturame MB35、やMonsieur’s Almanなどの作品における、滋味溢れる表現は、ちょっと容易な事では手に入れられないこの奏者の音楽性の賜物ではないでしょうか。決して目立つ盤ではありませんが、自分の知る限り、現在入手可能な他のByrd鍵盤作品集のいずれにも劣らない演奏であり、Brydの鍵盤音楽の魅力を余すところ無く味わえる希有な名盤として、バロック以前の音楽を愛する、多くの方に一聴をお薦めしたいです。

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     2018/08/31

    2008年の録音なので、Hakkinenの録音としては10年前、キャリア最初期ではありませんが、それでもまだ32歳での録音。数多あるGoldbergの中でも良演に属すると思います。この西洋鍵盤音楽史上で、ひょっとすると最も大きな包容力を有する傑作には、それこそ無限のアプローチがあるでしょうが、Leonhardt, Hantaiに師事し、わずか23歳でWilliam Byrdの作品集で希有の良演盤を記録し、その後もFrescobaldiをはじめ、数々の歴史的音楽に携ってきたHakkinenのアプローチは(Leonhardt, Hantaiの流れをくむ?)作品の一つ一つの歴史的多声音楽的背景を踏まえた、いわば完全に「基本に忠実な」ものと思われます。こういったアプローチは当然の事ながら、奏者の音楽的思考、経験がもろに出てくるので、この演奏も、特に中盤から後半にかけて、やや一曲一曲の細部の構造再現で掘り下げがどうかな、と思われる面が見過ごせない瞬間がいくつもみられます。ただ、曲冒頭から前半部分にかけての美しい再現は、それでもこの若い奏者が年齢に相応しからぬ(?)深くてひろい学識と、Bachの音楽に対する適合性の良さを有している事の証明と思います。特筆しておきたいのは、各変奏の前半・後半すべての反復を行っているにも関わらず、そこに(時折みられる)決まりだから反復しておいた、風の不自然さが一切なく、各変奏から曲全体があくまで一つの流れの中に自然に流れていくことで、トータル80分の演奏時間が全く長く感じられませんでした。Goldberg variationという汲めども尽きぬ傑作の、最上の再現にはまだ及ばないかも知れませんが、それでも昨今のチェンバロによる演奏ではかなり上位にランクするのではないでしょうか。やや甘いかも知れませんが、多くの方に聴いていただきたい演奏として、推薦させていただきます。

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     2018/07/16

    最近、Lark Ulrik Mortensen/Concerto Copenhagenの、数々の素晴らしいJ.S.Bach演奏に感銘を受けたので、ほぼ30年前、Mortensenのまだ30そこそこの頃のFroberger演奏を入手しました。結論から先に申し上げると、特上の名演とまではいかないかも知れませんが、これも誠実でこの奏者にしか出せない魅力を持った良演と思います。Frobergerの名演奏は個人的に思うに、その堅固な曲構成と、時に重々しすぎる位に憂愁を湛えた曲調のバランスの再現が決して容易ではないため、そう滅多に出会えるものではなく、少し前、あの当代最高の奏者であるRoussetをしても、立派だけどやや重く、もう少し別の再現もあったのでは、という印象が拭えませんでした。この若き日の演奏においてMortensenは、Frobergerの作品の堅固な曲構成を完全に自分のものにしたとまでは言えず、随所にやや曖昧な表現も散見されるかも知れませんが、反面、どこをとっても深刻に重々しくなり過ぎず、その演奏が常にデリケートさを失わないために、非常に優しく味わい深いものになっています。昨今の決して自分を主張せず、Bachの自然な姿を再現した名演奏の数々を思い起こさせますが、これはMortensenが、若くしてすでに他の多くの奏者が通り過ぎてしまうような、Frobergerの曲の細部に秘められた構造ー魅力をしっかりみつけて再現していたから実現できたことと思います。どの演奏も美しく繊細な魅力を有していますが、特に組曲第6番冒頭のPartitaの滋味深さはたとえようがありません。古い録音ですが、Lark Ulrik Mortensenの若き日の良演盤として、古楽ファンなら一聴していただく価値はあるのでは、と思います。

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     2018/07/10

    これは良演盤です。A.Hakkinenは、近年師(?)のHantaiらと組んだ、J.S.Bach/チェンバロ協奏曲全集で初めて耳にし、そこでのチェンバロ奏者としての技能はともかく、重層的かつ生命力に溢れたJ.S.Bachのコンチェルトの構造再現まで、全く手が及んでおらず、やはりまだ若いのは如何ともし難いか、と思わせられましたが、このByrdではうってかわって素晴らしく美しい成果を見せています。元来、歴史的に豊饒なネサンス〜バロック・イギリス鍵盤音楽の分野で、William Byrdは質的にも量的にも、疑いなく最も大きな存在と思いますが、その名演奏に出会うことは決して簡単ではありません。西洋ルネサンス最大の作曲家の一人として、もちろん精緻で強固な多声様式がベースにあるわけですが、それに加えてByrdの音楽は、そのあまりに親しみやすい旋律、イギリス音楽伝統の和声法を纏い、決して劇的ではないがそのちょっとして瞬間瞬間に無限のニュアンスを秘めており、この微妙なニュアンスを十分に表現できる演奏にはちょっとやそっとではお目にかかれません。この盤にも多く収録されてるような名作が多いにも関わらず、自分の乏しい聴経験では晩年のLeonhardtのアルファ盤と、Gouldのピアノによる演奏くらいしか無かったのではないかとさえ、思います。A.Hakkinenはまだたかだか42歳、この盤はキャリア初期だからたぶんまだ30歳になるかならないかの若さでの録音だったと思うのですが、あまりにもさりげなく見事に、Byrdの音楽のさりげない瞬間瞬間の微妙なニュアンスが再現されており、こうした音楽の演奏が決して年齢と経験だけで解決できない、奏者の音楽への適合性が大事であることを痛感させられます。もちろん、Leonnhardtなどに較べると、曲によってはやや細部の精緻さが劣り、やや一本調子で雑に感じられる部分も無くはありませんが、それでも若き日のGouldのかけがえのない名演にあったような、新鮮さも備えており、繰り返して聴きたくなる魅力に溢れています。決して目立たない地味な盤かも知れませんが、W.Byrd鍵盤音楽の、紛う事無き良演奏であり、できるだけ多くの古楽ファンに聴いていただけたらと思います。

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