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2011/06/26
オーケストラのダイナミックで切れ味鋭い演奏も抜群に魅力的だが,この盤最大の魅力は,酒場の場面での,酔っ払いのアーメンフーガにあると信じる。この曲の最近の名演のケント・ナガノ盤など,ここを美しくきれいに決めているが,それではこの曲の面白さは生かせない。この盤でのエリザベート・ブラッスール合唱団は,まるで本物の酔っ払いの集団のようだ。地声に近い発声で,音色バラバラの荒っぽい合唱が,かまどに飛び込んで焼け死んだネズミの追悼に,罰当たりなアーメンコーラスを歌うさまは諧謔に満ちて爆笑を誘う。そこにいきなりメフィストーフェレスが現れ,俗物音楽評論家張りの陳腐な美辞麗句を述べて罰当たりコーラスを絶賛するあたり,ゲーテのテキストの白眉である。であるから,地獄落ちの場面の悪魔たちによるハナモゲラ語コーラスも鬼気迫る。となると,天上の天使達の合唱の透明度は今ひとつ,それにキャストもメフィストーフェレスにもう一歩の存在感が欲しいが,上記の諧謔性を存分に生かしたこの盤を聴かずして,この曲の演奏について語って頂きたくないのである。
雑感:
・ベルリオーズはその自叙伝で,ベートーヴェンのミサ・ソレムニスのアーメンフーガを酷評しているのだが,この酔っ払いコーラスはそのパロディではないだろうか。
・天使のコーラスと悪魔のコーラスは,別の合唱団を起用するのが良いと思う。合唱団が気を悪くするかな?
・メフィストーフェレスは,ショルティ盤のダムが最高だなあ。