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mari夫 さんのレビュー一覧 

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     2015/11/13

    ヌヴーが亡くなる事故の前月と言う因縁は別としても、古い録音のヒストリカルなんか聞かないと言う人でなければ、すべてのヴァイオリン好きのファンが耳を傾けるべきCD。ヌヴーのような激しい、形容は悪いが噛み付くような演奏をする人にベートーヴェンってどうなんだろう、ブラームスだってややきついように思うのに(両方とも協奏曲のことです)、と考えていたが、物の見事に外れ。この曲の演奏として至高の域に達している。ヌヴーのベストでしょう。EMIのスタジオ録音が直接音の多い、明快だが堅くきつい音であるのに、ライブのこれは適切なホールトーンを伴って、まことに美しく瑞々しい演奏が聴けます。小股の切れ上がったフレーズの収め方の気持ちのよさは、まさに天賦のものとしかいいようがありません。二楽章のじっくり構えた緊張の持続や三楽章の溌剌とした迫力。30才にして更なる円熟に到達しようとしていたのか、という感動を改めて覚えます。事故死だから当然ではありますが、死を目前に控えた人の演奏とは思えません。あるいはもはや神の領域に入ろうとしていたのか?ロスバウトのオケも好サポート。兄との協演のブラームスのソナタも凄い集中力。強いて言えば三楽章はやや粘り過ぎかもしれないけれども、この切れ込みの鋭い情熱と叙情は本当に他に換え難い。事故がなかったらフィッシャーとのスタジオ録音が吹き込まれる予定で、デ・ヴィートが素晴らしいピンチヒッターをつとめたわけですが、この演奏が残されただけで本当に我々は感謝しなくてはならないと思います。イッセルシュテットとの協奏曲もベートーヴェンに匹敵する名演ですが、曲想とのマッチングではこのソナタの方がより合っているように思います。両曲とも、音質もこの時代としては大変いい。ちなみにリーフレットには、事故直前にオルリー空港でヌヴー兄妹とピアフの恋人だったセルダンの写っている写真が掲載されていますが、その数ヶ月前にチューリッヒでやったトンハルレ響の客演コンサートのポスターも載っていて、曲目は録音の残されていないメンデルスゾーンの協奏曲なんですが、指揮が何とクナッパーツブッシュ!!どうだったんだろうなぁ。怖い、聞きたい(笑)。

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     2015/11/07

    ショスタコーヴィッチの二曲のみ60年代のライブのモノ、他は70年代のスタジオでもちろんステレオ。十年程度しか離れていないのだが、随分違うように聞こえる。ショスタコは50年代並の音質だし(とはいえ聞ける音質)、他はEMIとしては好録音。70年代になると(楽器も替わったのかもしれないが)、演奏もずっと余裕をましているし、音も透明でありながら重量感のあるオルガンのような音(重音の見事さにもよるかもしれない)で、実に滑らか。カラヤンBPOが、ハイウェー上を滑走する重戦車に喩えられたことがあるが、このロストロポーヴィッチもそんな感じがある。両者とも、汗ひとつかかずにフェザータッチですーっと音もなく(なわけないか?)走る、いや滑る。ある意味完璧な技術のマニエリスムの極致で、サイボーグじみた完璧さ。これに比べると、ショスタコは、車輪が赤い火花を発しながら走る蒸気機関車みたいな熱さが横溢した演奏。ライブということもあるには違いないが、作曲者への強烈な共感が支配する記念碑的な演奏。バーンスタインとの二曲は見事を極める。上記のようではあっても、シェロモでユダヤ人演奏家二人が篭める熱は、クールなのにやはり凄い。ドンキホーテは、カラヤンは、かつてのフルニエとの優麗を極めた演奏と比べて、踏み込みの強烈な演奏だ。DGとEMIの違いもあって、旧盤の方が色彩は豊かだが、表現の振幅はこっちの方が大きい。この違いはソリストの違いとも合致していて、ロストロは、居心地が良さそう。ハイドン、とくに一番は、もはや解脱してしまったかのような、何も不足ない自由自在の境地。ジュリーニとの演奏は、サンサーンスは文句ない名演で、ドヴォルザークももちろん名演だが、ジュリーニの指揮が少し構えが大きすぎる(一楽章の最後とか鳴らし過ぎでしょ)こともあって、ロストロも余裕綽々な点で、ちょっぴり曲との間に隙間を感じさせないでもない。ま、あまりに出来すぎてしまう巨匠への無い物ねだりだけれども。

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     2015/10/30

    何故かドビュッシーの録音が乏しいクリュイタンスの唯一の「夜想曲」。音質自体は比較的明快だが、レンジが狭くて、SN比も今イチなため、この曲に欲しい香りのようなものが飛んでしまったと聞こえてしまうのは、惜しい、悔しい。お目当てだったのに残念。☆三つかな?チャイコフスキーは、とにかくギレリスが凄い。文字通り鉄腕振りを縦横無尽に披露。ワレ鐘のような冒頭から、ノリノリの終楽章までいや凄い!終った直後の客席の熱狂もこれまた凄まじい。ライナーとのスタジオより数倍の大迫力。☆7つ!フランクは死の前年のギーゼキングが、老獪振りを発揮している。☆4こ。平均してまぁ、4こ。

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     2015/10/30

    日本盤HQCDでの感想。リマスターで色々といわれているO氏の担当だが、音は決して悪いとは思えなかった。59年の音としてはむしろいい。同じラヴェルでも少し後の管弦楽集より、むしろ奥行き感とか陰影感はある。LP時代にEMIが東芝に移る前のコロンビアの音に似ているーといっても通じないか?両手は一楽章でピッコロ(冒頭)とかホルン(聞かせどこです)とか音程が大分怪しいが、フランソワ共々大変ノリが良い。この曲にはミケランジェリの神がかった名演があるが、クリスタルの彫像のようなあれに比べて、フランソワのこの演奏はジャジーな自由奔放さが横溢している(実際彼はジャズをひいていたらしい)。

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     2015/10/30

    短いデュプレのキャリアのパノラマを見せるようなBOXだが、何しろティーンの頃からのレコーディングがあるので、円熟の軌跡をはっきりと見ることが出来る。デュプレと言うとエルガーとドヴォルザークばかりが言われがちだが、それ以外の曲も素晴らしい。「ドンキホーテ」は、酸いも甘いもみたいなボールトの素晴らしい指揮を得て、感銘が深い。単なるじゃじゃ馬娘の演奏ではない。最後の方の回想的なシーンなんかは、若いのにこんな感慨に耽るような音楽も出来るとは、と感じさせる(想像力の問題なんだね、きっと)。ラロの協奏曲やブラームスのソナタ(何故か極く短期間に二度録音が行なわれており、両方が収録されているが、後のものの方が圧倒的に音が良いし、二番の一楽章はそれだけ提示部を反復している)は、短い生涯のうちでも彼女が深みを増していったことを示している。ここのレビューではバレンボイムへの風当たりが強いが、ちょっと映画での描かれ方の影響もあるのでは?確かに気負い過ぎというかあざとさ感はあるし、私も彼のブルックナーとかの指揮には関心がないが、決して無能な伴奏ではない。それに三重奏でのズーカーマンのヴァイオリンもいい。それと過去のレビューで音質についての批判が多いみたいだけれど、もちろん年代によってかなり違うのはやむを得ないとして、そんなに悪いとは思わない。とくに最後の方の録音は十分な音質だと思う。

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     2015/10/28

    何となく寄せ集めのプログラムという感を免れないけれども、この値段です、文句はないでしょう(私はその後にDGに録れた演奏が今イチ感を否定できなかったのでワグーナを目当てに買いました。それだけでも元を取れる価格)。この時代のカラヤンのEMI録音は、会場が途中で替わっているにもいるにも関わらず、長い残響時間に、そうだと埋もれそうな細部をマルチマイクで拾っているせいか、奔流のような溶け合った音響の中に管楽器などが明滅するという、いささか印象派的なーとはいえドイツ風に厚く巨大な音ですがー音づくりが特徴となっています。ちょっとオケの中に頭を突っ込んで聞いているみたいで、耳のすぐ隣で金管が咆哮したりすると、やや放縦な感じがしなくもありません。流線型のマニエリスムというカラヤンの「超」美学主義が横溢するというか。うまくいっている演奏では全体の流れとは別に細部のリズム感とか表情付けがフィットするのですが、うまくいかないとベタっとした感じになってしまう。とくにブルックナーは昔LPをもっていてそういう違和感を持ちました。禁欲的な所が少しもない演奏ですから。
       再生装置も違うので今度のリマスターとは比較のしようもないのですが、今回のはそれほどには感じなかったため、全体としては楽しめました。上記の特徴と各リスナーがもつ曲のイメージの距離で判断が違ってくるのででしょう。とくに良かったのはワグナー、シュトラウス、ブラームス。ついでブルックナーで、首をかしげたのはJの方のシュトラウス。ブラームスなんかは渋さとは無縁の耽美的な演奏ですが、元々三番の交響曲(中間の二つの楽章)とか曲自体にもそういう要素があるわけだし、「ハイドン」の各変奏曲の描き分けも素晴らしい。レガートばかりがいわれがちですが、実はそれを成立たせているのは優れたリズム感ではないかな。ワグナーは元々「印象派」風なところがある(というかドビュッシーがワグナーにイレコんだけわけだけど)せいもあって、そのようなワグナー演奏として極致に達しているといってもいいでしょう。「トリスタン」は何故か音楽が流れない全曲盤よりも(またDG盤よりも)格段に良い。タンホイザーも主旋律以外の音の際立たせ方などが素晴らしく、こういうのをただゴージャスだけれど空虚な音響とだけしか捉えられないのはあまりに寂しい。シュトラウスは両方とも名演だけれど、「英雄」は私の趣味では少し流線型過ぎで、「家庭」の方が好きです、でもワルツは、VPOじゃなきゃいけないとはいわないけれど、ちょっと牛刀で鶏の感があります。なくもがな。
       

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     2015/10/26

    ルービンシュタインだけいうとこれをとくにという盤とは思わない。ブラームスは十八番の作曲家の一人である(協奏曲一番とかVl.ソナタとかピアノ・トリオとか)はずだが、何故か二番はどこかしっくりしない。今度の演奏も豪快に行く所と叙情的な所の間で何処か埋めきれていない感が残るところはこれまでの二種類のスタジオ録音と変わらなかった。実はクリュイタンスのドイツ物を追っている中で、ブラームスをと、この盤を買った。同じライブの四番の交響曲はノイズ・リダクションが酷過ぎたが、他のレパートリーから推して悪いはずがないと思っていたが、とくに一楽章が名演で、有名なベト全の延長上に位置づけられる。ただ、この日は他に出ているオネゲルの三番と同じはずなのだが、オネゲルが音の良いステレオなのに、これは何故かモノで音質もそれより劣るし、所によってムラもある。テープの保存状態のせいか?シューマンは元々健康的なルービンシュタインと何処か合わないという気がしていて、ライブでもそういう感を払拭できなかったが、これはかなり名演で、こっちは正真正銘のステレオ。豊な美音で聞かせる。とはいえ、やはりホノ暗いシューマンの暗いロマンティシズムとはちょっと違うかなぁ。

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     2015/10/03

    林秀樹さんと言う方のリーフレットが色々な経緯を書かれていて興味深い。バッハとモーツアルトがとくに日本とイギリスで希少盤としてもてはやされた時期があったとのこと。彼女の最後の吹き込みでステレオとモノと両方発売されていたということだが、ステレオ装置の普及が未だしの時期ならではと思ったら、このCDは何とモノーラル!音質に恵まれなかったデ・ヴィートとしてはいい方の音だが、ステレオだと期待していたせいで肩すかし感が。演奏も、そのせいあってか、モーツアルトの闊達さは聴くべきものがあるとしても、何となくイマイチ感が否定できない。もう一枚は演奏は共に素晴らしい。メンデルスゾーンは最初の主題から結構思入れ激しく伸び縮みがあるのに不思議と粘り過ぎとかべったりという感じにならない。むしろ自在でチャーミングな演奏である。これで音がもう少し良かったら。霊妙と思われる箇所が少しかすみ気味なのが残念。ブラームスも冒頭から凛とした弾き方が素晴らしいが、音の点でやはり魅力が100%伝わっていないような気がする。

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  • 10人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2015/10/02

    10枚組のBOXを既に買ってしまった身としては、いささか考えさせられる。何しろ半分くらいは重複する。このHMVさんのセールストークで言及されている曲目は殆ど重複ナンバーだ。けれども、実は聴くべきは言及されていない方、ハイドンとシューマンとあとは「シェエラザード」、「展覧会の絵」と最後の方のイタリア録音組)だ。ということで業腹だけど買って、やっぱり良かった。まずは前二者でクリュイタンスがフランスもののみならずドイツものも超一流であることを改めて再確認した。フルトヴェングラーみたいにデモーニッシュではなくてアポロ的な演奏だが、幻想味にも迫力にも欠けているわけでもない。シューマンの四番はPCOの演奏だが、実にいい(元々フランス人にはコルトーとかナットとかシューマンの名手がいるではないか)。BPOの三番に劣らないー幸いなことに50年録音でも音質は悪くない。何でまともな音質でブラームスの交響曲を入れておいてくれなかったかなぁ。しかし、同時にロシア物も実に良い。「シェエラザード」のリムスキーは、併載されている「展覧会の絵」を編曲したラヴェルと相称されるオーケストレーションの名手で、同じムソルグスキーの「ボリス」を編曲もしている!クリュイタンスはこの路線にピッタリ。両編曲をムソルグスキーへの冒涜とするのもいいが、これらはこれらで楽しんだら良いではないか?両曲とも最上級の名演である。とくに「展覧会の絵」は、強気で吹き捲くる冒頭のTrpからして、当時のフランス式の管が堪能できる。指揮も気合の入りきった演奏で、このBox中の最高の出来か?ただこの年代なら、後発組のEMIでもステレオでとっていたはず(BPOとのベト全のある曲よりはこっちの方が後)なのにモノ。そればかりはちょっと恨めしい。そういえば、第一集に入っていたVPOとの名曲集がステレオなのに、こっちの同時録音のスメタナ二曲は何故にモノ?その代わりというのでもないだろうが、全部ステレオのイタリアでのライブは、ドビュッシー「放蕩息子」などのcd(間違って☆4つにしてしまったが、当然5つの出来)と一緒の録音なので同レヴェルの音質(RAI偉い!)。オケは同じRAIのオケでも、トリノの方がミラノのよりもうまい。「火の鳥」はPOCとの「展覧会の絵」と並ぶ本Boxのハイライトだ。ミラノの「展覧会の絵」は、折角のステレオなのに、オケが大分アバウトで、決めてほしいところで決まりきらないところがある。音と言えば、10枚Boxでは何故か良くなかったラヴェルが、今回は大分向上している。「ロメジュリ」は、セールストークで「モノーラルとしては最上」と唱っているが、それはないだろう。Box中の平均よりは落ちる。「幻想」よりずっと好きな曲なので、再録音がないのがまったくの心残り。「キリストの幼時」と一緒にやっていてくれたら!でも10枚Boxより少しは良くなっているかな?

    10人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2015/09/25

    このアルバムにも入っている最初の曲目ベルリオーズの「海賊」序曲の冒頭から、あまりにも素晴らしい音色に、生のオケってこんな良い音がするんだと「錯覚」したのが、内外、プロ・アマを問わず、はじめての生オケ体験だった、クリュイタンス・パリ音楽院の来日公演。その後の体験でも、それに匹敵する「良い音」を聞いたのは、楽友協会ホールでのウィーン・フィル(指揮はベーム)くらい。その時以来クリュイタンスはファンだったはずだが、レコードは意外にもっていなかった。来日公演でも絶賛はフランスもの、とくにラヴェルと「幻想」に限定されていた。ここにもあるベト全は、BPOの初ベト全(誇り高いこのオケにとって重い選択だったはず)なのに、すぐに廉価盤のセラフィム・レーヴェルで出ていたし、「幻想」もイギリスのオケで、ずっと後になって出た東京公演と比べると「同一指揮者の棒とは思えない」「あまりにもおとなしく、あまりにも迫力に乏しい」演奏(宇野氏)といわれたりしたため、皆の注目はミュンシュ・ボストンばかりで、こっちも大勢に流されてクリュイタンス盤はパス。あの当時のEMI、日本盤は東芝の赤いLP。高音も低音も出ないカンカンした寸詰りの音で、それも人気の伸びない一因だったか。ドビュッシーも少なかった(東京では「海」をやって素晴らしかったが)し、結局はラヴェルとフォーレ(レクイエム)の指揮者というイメージが定着して、私もそれ以上を追わなかった。何たる浅慮。

       でも、このBOXで聞いたら、ベト全素晴らしくありません?「田園」だけとか(確かにとりわけ素晴らしい演奏で、指揮者とオケのもっているパレットの多彩さは感服ものだけど)、偶数番なら、とかいわれがちだけど、奇数番も素晴らしいではないですか?吉田秀和先生の名著『世界の名指揮者』では、クリュイタンスの七番が「ちっともおもしろくない」と引導を渡されている。ダイナミックスは見事だけど、テンポが動かないからだそうで(それはフルトヴェングラー流でないというだけではないのかしらん?)、でも彼のベートーヴェンは対旋律やキザミを含めて音塊の分解能がすこぶる高くて、迫力も全然不足はない。ベートーヴェンには不可欠な低弦の生かし方(宇野流のいい方だとえぐり)も素晴らしい。そもそもこの当時のEMIとしては音がいいことも特筆もの。カンカンした音のイメージは払拭されている(ラヴェルもちょっぴり良くなったような気がする。けど一、二年後のドビュッシーは、もそっと音に膨らみと色彩感があり、それに比べるといってみれば音の香りが僅かに不足して聞こえるのは本当に惜しい)。吉田氏にこれもおもしろくなかったといわれてしまったブラームスの四番(ここには入っていません!)も、最近聴いたライブでは、酷いノイズリダクションで真価を味わうにはきついが、詰まらない演奏では全然なさそうだし、ワグナーもこのところバイロイト等での一連のライブを聞けたけれど、このパリ・オペラ座のオケとの演奏も、この種の「名曲」集でも一二を争う素晴らしさだ。シューリヒトとのモーツアルトではげんなりするほど下手に聞こえたこのオケも、金管のヴィブラートなどフランス風の響きは聞けるが立派なもの。「未完成」も意外や意外、とても素晴らしい出来。とくに、「田園」同様、二楽章の木管の音のパレットの豊富なこと。フィルハーモニアとの「幻想」だって、オケは、比較すればパリのオケより確かに中性的な音ではあるけれど、実に巧いし、どうしてこれが迫力に乏しいと言われなくてはならなかったのか?ラヴェル(やルーセル―でも何故交響曲が入っていない?)はいうまでもないけれど、それだけではない。彼はオールラウンドな名指揮者だったのだ、LP期にはまだまだお国もの志向の偏見が災いしていたのだ、とこれは改めての発見だったのだけれど、このレビュー欄とかみると、ベト全とか「未完成」とか皆さん評価凄く高いではないですか?いや恐れ入りました。脱帽ものです。この上は第三集をオペラにして、是非とも『ボリス』を入れて下さい(ほかには『ペレアス』とか『ホフマン物語』とか『ファウスト』とか『カルメン』とか?)。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2015/09/09

    こんなに地味な曲目なのにこれだけのレビューが寄せられていることにまず感服。どちらもクリュイタンスの従来の吹き込みがなかった希少な曲である。しかし演奏は詩的に高雅なドビュッシー(歌手の二人はクリュイタンスの『ペレアス』と同じ)も、鮮烈なオネゲルも全く素晴らしい。皆さんおっしゃっておられるように62年のライブとしては破格の音質ということも特筆もの。どうにかすると、ノイズは別とすれば同時期のラヴェルのスタジオ録音よりもいいかもしれない。わずか4年前の同じジェノヴァでのライブでも、仏国立放送オケとのブラームスの4番の酷い音と比べてどうしてこれだけ違うのか。それだけが謎。

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     2015/09/08

    ベト7を除いてクリュイタンスの珍しいレパートリーのライブ。いずれも演奏はトップクラスにランクし得る素晴らしい出来。まずハイドンは比較的大きな編制のようだが、ひきずらず爽やか。しかもスケールも大きい。オリジナル全盛期の今としては古いスタイルだが、名演であるには違いない。サンサーンスはとくに最後の方がBPOの威力を生かしきった名演。ただ、仏国立放送との同年のスタジオ録音(全然違うようには聞こえませんが?)も良かったし、音はスタジオの分あちらに部がある。パリ音楽院とのベト7は来日公演でもあった(例の『幻想』と同じ日だったはず)が、あまり好評でなかったみたいだけれども、これも躍動感溢れた名演。パリ音楽院らしい美音も聞こえるが、低弦の底力もなかなかのもの。音はどれも当時のライブとしてはまぁまぁというところ。最後のブラ4はレパートリーとして珍しいが、演奏は熱っぽく迫る名演で予想外だった。ワーグナーをあれだけやれる人なんだからとは思うが、何でもっと演奏しなかったのかな?ミュンシュの一番とかモントゥーの二番(私が好きなのはLSOよりもサンフランシスコの方だが)とかに並べられる演奏だったかもしれない。ただしこの曲での問題は音。多分元々の音質自体はかえって他の曲より良かったのではないかと思わせるが、盛大なノイズ・リミットがかかっていて、弱音の歪みは耐えがたい。それでも名演の片鱗は伺えるから貴重だけど、反復して聞く気にはなれない。何でまた余計なことをしてくれたものか。音質考えたら☆5つは難しいので4つまで。でもクリュイタンス・ファンには買う価値があるでしょう。

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     2015/09/03

    EMI盤に音質を含めての不満をやや感じたので、こちらのライブ盤を求め、併せてデ・ヴィートのヨッフムとのライブ盤も同じ理由で求めた。いきおい比較にならざるを得ないが、どちらも全く傑出した名演である。ただし内容的には対照的。ヌヴーのこの演奏はまさに火の出るような演奏で、冒頭などはEMI盤にも増して、まるでオケにかみつくような激しさ。デ・ヴィートが貴婦人のようにエレガントに弾く叙情的な第二主題も、ヌヴーでは、熱にうかされた愛の告白よろしく、まるで身をよじるように奏でられる。第二楽章もこの曲の田園的な味わいよりも、駒に近いところで弓を弦に密着させながらまことに熱く勁い音楽。三楽章もはっしとばかり弦に弓をぶつける体当たり的な大熱演。稀に見る-聞く?-爆演(好きな言葉ではないが)であることは間違いない。イッセル=シュテットのオケも充実した名演。大家の棒だ。48年の収録としては音は悪くない(56年のデ・ヴィート盤よりむしろいいかも)。好みでいうとデ・ヴィートだが、優劣をつけるなどと言うことよりも、この二枚の名演を残してくれた女流の二人に深く感謝したい。

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     2015/09/02

    大部分がライブで拍手がついている(ラ・フォリアだけは違う?)。それにしても素晴らしいアルバム。とくにブラームスの協奏曲は、彼女の最初の吹き込みであるケンペン盤の録音がぼやけているのが不満で買ったわけだが、めざましい音というわけにはいかず。オケの音の抜けは今イチだとしても、年代が下っただけのことはある。演奏は、とりわけ二楽章の殆ど神々しいばかりの凛とした叙情など、全くめざましい。同じような理由で同時購入のヌヴーのイッセルシュテット盤も凄い打ち込みぶりだが、双方とも名演としても、曲想を考えると好みではこちらに与したい。ヨッフムの棒も見事。似たような素晴らしい叙情が聞けるのは「フォリア」で、冒頭の立ち姿(?)の奇麗なこと。対してブラームスのソナタはフィッシャー盤に勝るとも劣らない熱演で、それはバッハの二曲の無伴奏(どちらも初出?)に関しても該当する。買わない手はない。

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     2015/09/01

    デ・ヴィトーの演奏はセンスに溢れている。下の方のコメントによると元々はヌヴーが予定されていたのが、事故死でデ・ヴィトーに代ったのだというが、随分違った演奏になっただろうけれども、デ・ヴィトーで良かったと思う。1番と2番の叙情的な演奏振り(ヴィブラートの細やかな巧さとか、消え入りそうな弱音の使い方とか)は直情径行方のヌヴーでは望めなかったに違いない。しかし、打って変わって、激しい3番では、女豹のようなしなやかさと激しさをもって、ハッシとばかり弓で弦に挑みかかる。ピアノは1番と3番がフィッシャーで、前者では滋味に満ちた演奏ぶりが素晴らしく、3番ではvl.に対抗した豪快さも見せる。大家の芸だ。2番のアプレスはデ・ヴィトーの伴奏者として良くやっていた人らしいが、とくに不足はない。音は50年代の中頃のスタジオ録音としたら並と言うところか。ところで、リーフレットによると、48年のエジンバラ音楽祭で、デ・ヴィトーはミケランジェリ、マイナルディとベートーヴェンのトリプル・コンチェルトをやって、しかもオケがフルトヴェングラー指揮の聖チェチーリア管だったという。本当かい!何でその録音が残されていないんだ!

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