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FAB4 さんのレビュー一覧 

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/11/12

     テンシュテットがシカゴ交響楽団に客演した時の演奏。1990年5、6月、シカゴ、オーケストラ・ホールでライブ録音。
     病気療養復帰後のテンシュテットは、それまでのロンドン・フィルとのセッション録音が比べ物にならない程熱っぽく、密度が濃く、スケール大きなマーラー像を造形していくが、ここでは圧倒的技術とパワーを誇るシカゴ響と組んで空前絶後の《巨人》を創造してみせた。ショルティ指揮下では幾分無機質的になりがちだったオケに、テンシュテットは遅めのテンポ設計で細部に至るまで濃厚な表現を施し、全篇これ息もつけぬ異様な緊張感が漲っている。
     第1楽章は、ゆったりと始まる。62小節から音楽が息づき始めても、決して急がず、悠揚たるスケールの大きな音空間を維持する。弦の骨太の深い響きが印象的で、たっぷりフェルマータをかけて旋律を唄う様に魅了される。テンシュテットは随所随所で独自のアゴーギクを効かせ、オケに丁々発止と真剣勝負を仕掛けていく緊張感がたまらない。337小節から徐々にクレッシェンドしていき、357小節から358小節に入る直前に一瞬止めて、358小節冒頭ffで音を爆発させる箇所は、何度聞いても鳥肌が立つ。
     第2楽章冒頭、低弦の凄い迫力。男性的的で武骨な逞しさを作り出そうとするテンシュテットとシカゴ響は、正に理想的組合せ!175小節からのトリオは悠然と進め、285小節からのテンポ・プリモも殆どアッチェルランドをかけず、メリハリがついた重厚な響きのまま鮮やかに締め括る。
     第3楽章、38小節からの憂いを帯びた――東欧の土着的民謡のような――旋律が、強い哀感を呼び起こす。さらに、85小節からの「さすらう若人の歌」の切ない唄い方が、絶品。金管楽器が、曲想に合せ演奏スタイルをがらりと変えて見せる柔軟性に唸る。
     終楽章は終始かなり遅めのテンポをとるが、アンサンブルは一糸乱れず、正に「巨人」の歩む様さながらである(これ位遅いテンポでfffを要求されると、通常なら金管楽器は息が上がってしまうが、微塵もそれを感じさせないシカゴ響は怪物的!)。165小節までは嵐に巻き込まれたように、聴き手は音の洪水に翻弄される。嵐が一旦収まった後、166小節からの甘美な旋律は、生の憧憬と回顧の念が入り混じったようで、胸を締め付けられる。テンシュテットがテンポを揺らして細かく表情付けをし、泣けと如くにコブシをつけてくるのが堪らない。
     この後は、オケが全開となってクライマックスへと突き進んでいくが、まず375小節を頂点とする爆発力が凄い。一旦爆発が沈静した後も、悠揚たる巨人の歩みに変わりはなく、428小節から第1楽章の再現部を挿んで、その後はテンションが全く落ちない状態でクライマックスが持続する。とりわけ、639小節からのtpの炸裂、そしてそれを上回るhrの音量と厚みは天に届けとばかりに咆哮し、何度聞いても筆者はここで昇天状態になる。
     客席からのノイズも拾ってしまう程、録音は生々しく鮮明。加えて低音域がしっかり録られているので、スケール感と重量感が合わさって圧倒的迫力を生み出している。マーラーの交響曲第1番は斯くも気宇壮大で、斯くも深く熱い情念を内に滾らせ、聞き手を否応なく感動の渦に巻き込む素晴らしい音楽なのだと、テンシュテットのこの録音を聴く度に無上の喜びに浸る。そして、曲が終わった瞬間、観客と共に拍手している自分が居る。
     テンシュテット&シカゴ響の一期一会が成し遂げた、最高最上にして最強無比の第1番。これを聴かずして何を聴く。

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     2011/11/05

    今までに無かったタイプの《大地の歌》である。まず恐ろしく録音が良く、細かな音まで鮮明に再現すると同時に空間的な拡がりも申し分ない。ウィーン・フィルの音の艶やかさも瑞々しく捉えられ、スコアは音響的に完璧に再現されている。一方ブーレーズの指揮は実にクールで、感情的な高ぶりや思い入れを聞き手に殆ど感じさせない。
    テノールのミヒャエル・シャーデは、張りのある美声を聞かせているが、オケが控えめなので歌だけが飛び出ているような感じを受ける。メゾ・ソプラノのヴィオレッタ・ウルマーナは、硬質で透明感ある美しい声で魅了し、とりわけ第6楽章では完璧な歌唱を聞かせる。ただ、水晶のように美しい歌唱なのだが、ブーレーズの指揮と同じくストイックなアプローチなので、ちょっと近寄りがたいというか感情移入しにくい面もある。
    ウィーン・フィルは、これまでのワルターやバーンスタインとの演奏以上に、洗練された美の極致を聞かせてくれる。二人のソリストも各々持ち味を生かした好唱である。にも関わらず、全体としてその美しさが無機質的で冷やかな感じに聞こえるのが、ブーレーズのブーレーズたる所以か。マーラーにつきものの、感情のうねりや高ぶりは露ほども見られないこの演奏スタイルに戸惑う人間は多いだろう。決して筆者が好むタイプの演奏ではないが、かといって第6楽章の恐るべき完成度と緻密さを前にすると、それはそれで無条件に吸い込まれてしまう。
    非常に特異で賛否両論分かれる問題作だが、傾聴に値する事は間違いない。

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     2010/08/09

     シカゴはテリー・キャス存命の第11作まで、その中で最高傑作はセカンド・アルバム−−こう考えている人は、ほぼリアルタイムで聞いてきた世代には圧倒的に多いはずだ。単なるロックバンドではなく、ギターよりもブラスが聞かせどころをさらい、サウンド的にもメッセージ的にも硬派で、「革命」とか「世界」とか“We”という言葉がまだ輝きを放っていたこの頃のシカゴは本当に素晴らしかった。
     デビュー・アルバムはスタジオ・セッション的な野放図さが魅力だったが、本作では一曲の時間も短くなり、その分入念に作りこまれて密度と完成度が高くなってる。6〜12と19〜22の二つの組曲は前者が曲調の多彩な変化、後者がストレートなメッセージと熱っぽさで聴きごたえ充分。「長い夜」をはじめとして、どれもいい曲ばかりで、本当に、本当に良く聞きこんだ大好きなアルバム。

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     2010/07/25

     何と言ってもA面1曲目の「ライク・ア・ローリング・ストーン」に尽きる。ドラムの一打のあと音が一斉にガーっと溢れてくるイントロは、何百回聴いてもしびれる。同時期にビートルズがリリースしていたのは「ヘルプ!」だが、あのビートルズのレベルさえも飛び越えてしまったこの時期のディランは正に神がかっていた。6分10秒間、この曲に我が身を浸しているとひたすら気持ちがいい。六十年代屈指の名盤というだけでなく、ロックという音楽を代表する大傑作。
     「やせっぽちのバラッド」や「追憶のハイウェイ61」も名演だし、ラストを飾る「廃墟の町」がこれまた傑作。「ライク・ア・ローリング・ストーン」と「廃墟の町」が1枚のアルバムに共存しているなんて・・・これぞロック史の奇跡!
     
     

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     2010/01/03

     1987年春の国鉄民営化で設立されたJR東海は、88年12月にある一本のテレビCMを流した。83年に山下達郎が発表したアルバム『メロディーズ』に収録され、コアなファンからは高い支持を得ていたものの一般的には全く知られていなかった楽曲「クリスマス・イブ」。撮影当時15歳で、まだ全くの無名だった深津絵里。この二人のコラボレーションを主体にして、今や伝説となった「シンデレラ・エクスプレス」という素晴らしいCMが生み出された。
     それから20年余。朝日新聞2009年12月19日土曜日版が、この「クリスマス・イブ」と「シンデレラ・エクスプレス」を大きく取りあげ、このCMの舞台裏や時代背景を分析していた。記事の最後には、このCMの生みの親である三浦武彦氏と早川和良氏のお二人が語り合った『クリスマス・エクスプレスの頃』という本も紹介されていた。何か予感めいたものがはたらいて早速購入してみた。本には、お二人が製作したCMも何本か収録され、「クリスマス・エクスプレス」は1作目と2作目(牧瀬里穂篇)が入っている。
     まずは、DVDでこの2本の「クリスマス・エクスプレス」を観た。恥ずかしながら涙が流れた。20年前のこの頃、自分は何をしていたのだろうと、年甲斐も無く回顧的で感傷的な気分に溺れた。幾度も幾度も続けて映像を見た後、本も一気に読んだ。そして、このCMの成功は単なる偶然でなく、優秀なクリエーター達の苦労の産物、叡智の結集であることに感銘を受けた。でも、それだけでは、一本のCMが伝説となり、映画ならいざしらず、20年も経ってからわざわざ本のタイトルに冠せられるはずがない。
     では何故このCMが「伝説」となり、社会現象にまでなったのか。今見直しても、当時見た時の新鮮な衝撃が蘇るのか。三浦氏は「時代の真空状態を埋めた」と語る。バブル絶頂期で日本中が浮かれていたあの時代も、一皮向けば不安と空虚感が支配していた。そういう虚飾の中に潜む孤独感を、CMは見事に撃った。そして、最後に人が拠り所とするのは、富でも名声でもなく、人と人の触れ合いから生まれるぬくもりであることを証明(映像化)した。だから、今でもこのCMの魅力は褪せない。
     当時このCMに心動かされた人も、名のみ知っている人も、この60秒のドラマを改めて体験して下さい。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2009/09/17

     2009年9月9日、遂に出ましたね!
     ぼくは「ステレオ・ミックス16枚組」&「モノ・ミックス13枚組」の2セット英国版をHMVで予約しておいたので、9日にちゃんと届きました。また、これに合わせてCDプレイヤーを買い替え(マランツSA-15S2)、正に満を持して9日を迎えました・・・。
     イヤ〜、確かに音がよくなりましたね。勿論以前出たCDも持ってますので何曲か聴き比べてみたのですが、まず音圧が全然違う。そして音の分離が良くなり、一つ一つの音が鮮明に聞こえます。ボーナス温存しておいた甲斐がありました(感涙)。
     これでもう元気百倍、テンションMAXで仕事をバリバリこなす活力が湧いてきました。
     来年の目標は、ラスベガスまで『LOVE』を観に行く事!

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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