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てつ さんのレビュー一覧 

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/08/12

    このディスクはベームのベストフォームではないだろうか。もちろん未完成は冒頭のコントラバスから沈んだ響きで、デモーニッシュなシューベルトとの姿を伝えてやまない。特に第一楽章の展開部の凄さといったら。トロンボーンが怖い。終結部もブラックホールに落ちるようだ。第二楽章も天上の音楽ではあるもの、低音の響きが足を引っ張り、単に明るい音楽になることを許さない。これだけでもすごいのだが、未完成よりグレートの方が凄い。冒頭の弦の響きの深さ、第一主題の推進力。これがベームだという剛の響きが鳴り響く。それだけではなく、再現部直前の寂寥感も素晴らしい。インテンポを守らないベームが聞ける。そしてコーダが堪らない。この楽章の終わり方は意外に難しいと思うのだが、ほぼ理想的テンポだし、最後の和音は私たちが好きなシュターツカペレの音そのもである。第二楽章はこのテンポか、と思うほど早いが、響きの深さは変わらないので、ベタベタした演奏より心に残る。第一楽章も第二楽章も即物主義的なので第三楽章以降どうするんだろう、と思ったら・・・とにかく第三楽章すごい!冒頭から明らかに力を抜いて、優しい音楽を奏でる。これがベームなのか?と言いたくなるほど優しい。特にトリオは心に響く素晴らしい音楽である。グレートの第三楽章のトリオでこんなに感激したことなんて今までなかった。第四楽章は再び剛のベームに戻って締めくくる。この稿書きながらもう一度聞いたが、やはり掛け値無しに素晴らしい。繰り返し申し上げる。このディスクはベームのベストフォームだと私は確信している。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/05/26

    一言で言うと「王道路線」の演奏。細部にこだわり演奏精度を上げ、表現も奇を衒わず。そうだ、何も最初から冒険する必要はなく、まずは横綱相撲を見せれば良い。そう言う感じがします。おそらくどの演奏よりも各声部がよく聞こえ、バランスが良いと思います。でもね、このディスクに対する期待度はみなさん高いと思いますが、その期待度を上回る驚愕演奏じゃない・・・と言う気がするのは私だけしょうか。この演奏だけ聞くと、ペトレンコの目指すものがよくわからない。しかし、天下一のベルリンフィルが彼を選んだのだから、このあと私のような素人にもわかる素晴らしい、彼ならではの演奏が聴けることでしょう。この曲目にしたのも、あえて「王道路線」を強調するためかもしれません。王道というのはいつの時代もあるレベル以上のものを必ず約束するものだから。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/01/26

    何の気なしに聞いてみたが、確かにサロン風の名曲ばかり。ズンと響く低音など一切ないが、「へぇ、誰の曲だろう」と思わせる佳品集。作品44、45あたりは平穏の中に吹く風のようにちょっと心に染み入る。私は作品44−1のアラベスクが大好きになった。こういうアルバムは世界を広げてくれる。これを機会に世界のピアニストが取り上げてくれることを望みたい。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2018/10/28

    冒頭1小節でノックアウトされた。

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  • 9人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2018/09/10

    昨日Eテレで見ました。ラトルも年を取りました。ベルリンフィルの首席になったのが、47歳で、今は63歳。社会人で考えれば、部長から社長くらいの年月をベルリンフィルという世界最大の会社で過ごしたようなもの。もう責任とプレッシャーの立場から解放されたいというのも当然だし、周囲も、皆拍手をもって見送る・・そういう立場の指揮者です。それでも有終の美を飾ろうと、ラトルは最大限の努力を払いました。そして成し遂げた集大成、そしてラトルという指揮者が目指すものがこのマーラーだったと思います。コントラバス10本、舞台上パンパンの人数。巨大なれども統制が取れ、大音量でもクリアな声部。なぜこういう演奏ができるのか。ティンパニのスティックをあれだけ変えるという事は、ラトルの頭にはこれだけの巨大さの中で、全ての局面での音響がしっかりイメージされたいたのでしょう。それを具現化するのですから、あまりにも凄過ぎる。私ごときが言うのはおこごましい。この演奏は聞くしかないと思います。この曲でここまでできる。サイモン・ラトルはベルリンフィルの歴史に残る大指揮者だったと言うことが骨の髄までわかる演奏だ、と思います。NHKが収録に絡んでいますから、おそらくブルーレイはとことんまで突き詰めた記録になっている事でしょう。もう一度サー・サイモン・ラトルとベルリンフィルに心からの感謝を。

    9人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2018/07/28

    世界は広い。あなたはヘンヒェンを知っていたか?私は知らなかった。しかし、このディスクはHMVのレヴュー通りの素晴らしい演奏である。第一楽章は名刺代わり。引き締まったテンポと響きのバランスがとても良い。このままインテンポでタイトな演奏なのかなと思ったら、第二楽章が凄い。快速テンポ(とは言っても、世の中のテンポが遅すぎる。この楽章、Allegro Moderato である。この演奏は普通のアレグロモデラートのテンポに過ぎないのだが)で始まりリズムが立っている。私はブルックナーの交響曲でこれほどリズミカルな経験をした事がなかった。とおもったら、急にテンポを落とし歌い出す。この緩急が堪らない。特にトリオが素晴らしく良い。第三楽章は締まったテンポはそのまま、あえて一歩退いて精神世界を見せる。できるのにやらない。後ろにあるものを聞け、とばかりに8割の力で流す。私はこの楽章をきいて晩年のギレリスを思い出した。あえて力を抜く凄さを聞いた。第四楽章はまた縦横無尽に緩急を尽くす。あのティンパニ連打の場面でアッチェレランドするなんて思いもよらなかった。と思うとまたテンポ落として歌いだす。そして終結部がまた素晴らしい。大河の流れで堂々と終結する。本当にこの指揮者は凄い。この演奏が一日で録音されたなんて信じられない。全体を通じ特筆したいのはティンパニがキメまくること。第二楽章の転調部分とか、弱々しいものが多いが、この演奏はしっかり決めてくる。第四楽章冒頭も「こうでなくちゃ」というキメっぷり。デンマーク王立管弦楽団は、どうもデンマーク国立交響楽団とは別物で、Wikipedia見たら1448年創立の世界最古のオケとあったが、「ホンマでっか!?」でも、とても良い演奏をしてくれた。この演奏は絶対に一聴の価値がある。この演奏を聴いた後で、最近出た有名どころのディスクを聞くとみんな緩い。この演奏はここまで細部にわたり徹底しつつ、ブルックナーへの共感を心から歌う。かつブルックナーの背後にある精神世界を見せるという離れ業を達成した。私はこの演奏はブルックナーの演奏史に残ると断言したい。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2018/04/03

    交響曲5番はメンデルスゾーンの大傑作だと思う。賛美歌やコラールを交響曲に昇華させ、ロマンと一致させたところが本当に素晴らしい。Wikipediaには本人はこの曲が気に入っていなかった、とあったが本当なのかな?この曲のコラールは後世に影響を与え、小生はアルバン・ベルクはこの曲の終楽章コラールが好きだったと勝手に思っている。ファイの演奏は、お得意の生気あるフレージングに加え、曲への共感が溢れていて、この曲の最良の演奏である。アバドやムーティのように良いオケによる充実した響きを聴かせる演奏がスタンダートだったかもしれないが、この演奏を聴くとまだまだリズムの扱い一つで音楽の可能性が広がる事をファイに教えてもらった。第一楽章展開部終盤の緊張感や、チャーミングに囚われず、しっかり構成した第二楽章、強弱にこだわった第三楽章と聴きどころは多いが、特に小生が感動したのは終楽章冒頭コラールでのリタルダンド。聞けば聴くほどこのリタルダンドによってコラールに生命感が溢れ、次のアレグロへの機運が高まる。このリタルダントは楽譜には書かれていないが、これだけでもファイがどれだけこの曲が好きか、心込めているかわかる。この曲の録音は2008年。ホグウッドの改訂版の出版は翌年2009年だから、あのフルートのカデンツァが聞けないが、これは無い物ねだり。小生は本当にこの指揮者は素晴らしいと思う。活動の場が増え、彼の音楽への真摯な貢献を世が高く評価する日が来る事を心から願っている。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2018/03/03

    ネゼ=セガンは常に全ての音をバランスよく鳴らそうとする。それが全てに優先する。そのため時折リズムが犠牲になる。チャイコフスキーなんてそれが悪い方に出た演奏だと思うが、メンデルスゾーンでは元来曲が流線型なので、その弱点が薄まる。一番良いのは2番。ポリフォニックな曲の方がこのアプローチの良さが生きる。曲の構成がよくわかる。この演奏はオールドスタイルよりずっと明晰で聴きどころが多いけど、でも、何かしらもどかしさが残る。もっとガツガツ来て欲しいかも。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2018/03/03

    ミンコフスキの演奏会のために3番と4番を聴き比べて見た。クレンペラー、カラヤン、ショルティ、アバド、マーク、レヴァイン、ブリュッヘンにアーノンクール、あとネゼ=セガン。でもとにかくダントツで良かったのがファイ。ファイはピリオドアプローチで、全ての音を聞かせようとする。これはネゼ=セガンも同じなのだが、セガンはテンポを犠牲にする時があるのに対し、ファイはテンポありきなのが凄い。イタリアだけとってみても、第一楽章コーダのアッチェランドとか、第四楽章冒頭のたたみ込みとか、聞いてて快哉を叫びたくなる。作り込み全てがツボにハマる。スコットランドでも、生気溢れるリズムが充溢。第二楽章など他では聞けない。このアプローチが宗教改革でも生きる。冒頭コラールのバランスの良さを聞けば、ファイの目指すところがわかる。多分ハイデルベルグ交響楽団はメジャーオケに比べ弦が弱いのかもしれないが、それを逆手に取りこれだけの演奏を成し遂げたファイに賛辞を惜しまない。メンデルスゾーンの交響曲はファイが小生の知る限り一番良い。過去の巨匠はメンデルスゾーンからここまでの生気を引き出していない。ファイはハイドンでもそうだが、とにかくトコトン全部やるという指揮者。もっと評価されて然るべきと思う。その路線ではクルレンツィスと双璧かもしれない。ところでこのファイの演奏、ホグウッド校訂版かどうか、聞いててわかりませんでした^^

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2018/01/06

    世の中には「わかっていてもできない」ことがある。この巨匠のベートーヴェンはそういう演奏だと思う。サイトのレヴューで観ることがなかったら、絶対に入手など考えもしかったセットであるが、まず思ったのは、あれだけ日本に来てくれていた巨匠にも関わらず、一度も実演に接しなかった後悔。世の巨匠は晩年になるとベートーヴェンでもインテンポではなくなると小生は思うのだが、ブルゴスは本当に適切なテンポを決め、インテンポを守る。その結果、メロディとスケールが両立した素晴らしい演奏を聞かせてもらった。少し遅めのこのテンポ、なぜか懐かしさと納得感が半端無い。7番3楽章のトリオなど「やっぱりこのテンポだよなぁ」と正にほっこりしたし、エロイカでは全曲にわたりしっかりとしたテンポ、造型の上に充実した響きが鳴り渡る。終演後の客席の盛り上がりも当然である。このように細部より全体の流れと響きを両立させた演奏、最近ではお目にかかれない。気鋭の指揮者たちはこのブルゴスのような演奏がいかに難しいか知っているのでは無いだろうか。「知ることとできることの差」は我々素人の想像以上なのだろう。アランフェスはこの演奏と映像があること自体が有り難すぎる。幻想は巨匠も表現の幅が大きく自由。展開部の繰り返しを省略して流れに任せたり、マルティノン以来(?)の素敵なコルネットを聞かせてくれたり。それでも全曲にわたり計算が行き届いている。画像については小生門外漢なのでカメラワーク等について全くわからないが、デンマーク国立交響楽団の巨匠への共感はしっかり捉えている。この楽団、巨匠逝去後、昨年ファビオ・ルイージが首席に就任したとのこと。このコンビで是非とも来日して欲しい。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2017/11/26

    悪魔か天才か、ではなく間違いなく天才だ。春の祭典も素晴らしかったが、この悲愴は本当に凄い。小生は細部に拘り、各声部をしっかり聴かせる演奏が好きだが、クルレンティスは拘りという狭い範疇ではなく、音楽として全てを表現し切っている。各楽章に聞きどころは多いが、とにかく第4楽章のコーダを聞いて欲しい。こういう音楽は誰もなし得なかった。スコアを見たら、確かにその通りだった。なのに誰もやっていない。チャイコフスキーは死ではなく、生きることの辛さを表現したかったのだろうと思えた。この演奏は聞いている時は新たな発見を、聴き終わってからは曲自体の存在感を聞き手に意識させる稀有な演奏だと私は思った。

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     2017/10/29

    この名曲、CDはアルバンベルクとアマデウス(ライブ)とラルキブデッリが双璧と思っていたが、この名手たちの演奏はその上をいく。1番の冒頭から「ああ、これはいい」という感覚に満たされる。その理由は名手たちがお互いをリスペクトして、一歩引いたところに身を置きながら、瑞々しさを失わないところにある。誰がこの演奏のリーダーだったのか?誰がこういうフォルムを決めたのか?これだけの名手揃いになると自ずと決まるのだろうか?とても小生のような素人では想像がつかない世界がここにはある。名手揃いだが、それでもクレメンスは上手い。2番の第一楽章第二主題など、心が震えるレベルの演奏だ。ライブでの良い演奏は、聴衆も演奏家も本当に幸福になれるが、このディスクはその記録である。この2曲が好きなら、是非聞いてほしいと願わずにいられない。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2017/10/11

    自分の好きな曲になると、皆自分なりの評価軸を持っており、その軸に近いかどうかで演奏を評価する。技術的にある一定水準を上回れば、あとは「好みの問題」とも言われる。小生にとってはシューベルトの20番がそれに当たる。このツィマーマンの演奏、細かいテンポの動きとか作り込みはあるものの、どちらかというと造形美を優先させた演奏で小生の好みではない。曲に対する共感が薄いように感じる。しかし、何度も聞くと録音の良さも相俟って、ツィマーマンがやりたかったことが見えてくる。彼が強調する声部は必ず意味がある。これはしっかりとした造形の中で細部を徹底的に表現したこだわりの演奏だと思う。一方21番は20番より感情移入がストレートで、ツィマーマンの「私もこの曲、好きなんですよ」という声が聞こえるようだ。小生はツィマーマンの演奏会に何度か通ったが、実は都度あまり感心しなかった。結構表面的だよな、と思っていた。ところがこのディスクを聞いてこのピアニストを理解するには集中力が必要で、私にはその力がなかったことを思い知った。またツィマーマンの演奏会に行こう。今度は違う彼に会えるだろう。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2017/09/07

    技術は向上する。それも単に向上するのではなく、新しい価値を創造する。スマホができてまだ10年なのに、モデルチェンジを毎年繰り返し進化し続けているが、その進化には常に「新しいものを創造する」技術者の熱意が詰まっている。この演奏、最新鋭のスマホに似ていて、ベートーヴェンのカルテットに新しい価値を見出そうとする演奏者の熱意の賜物である。ラズモフスキー3番の終楽章を聞けば、その凄さがわかる。このテンポで縦の線が寸分のズレもなく揃うのは当たり前。外声優先のカルテットなんてもう遺物と言わんばかりに4声が常に均等の響きで鳴り続ける。ここまでは先人カルテットもやっているが、この団体はこの先を行く。それは何か。ここまでやるのか、と舌を巻くダイナミズムの徹底である。fとpを瞬時に切り替える。クレッシェンドの途中でも4声のバランスは崩れない。ffは朗々と響くが、終結部にさらなる大音量を出す奥深さ。最後に一番大きな30号を打ち上げる花火大会のような満足を聴く者に与える。とにかくキリがないくらいの徹底である。加えて音の融合にも最大限配慮している。ハープの冒頭を聞けばわかる。4声が完全に混ざって、新しい音を聴かせる。技術は高すぎるほど高く、そのために徹底した計画を実行し、かつギクシャクした感じを全く与えない。
    小生は以前ゲヴァントハウスを絶賛したが、この演奏は間違いなくその上を行く。タカーチも良かったがここまでのダイナミズムの徹底はない。アルバンベルクすらオールドスタイルに追いやったこの演奏の価値は高い。エマーソンやハーゲンはこの路線ではない。小生は現在アルテミスが一番すごいと思う。もちろん他のすべての演奏を聴いたわけではなく、もっとすごい演奏があるかもしれない。もしご存知の方がいれば是非教えて欲しい。演奏技術はここまで向上したのだ。そして単に技術だけなく。表現の幅も広がったのだ。これを知れば最早過去には戻れない。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2017/07/29

    70年代までのドイツには、なぜか「職人」と呼ばれるような、そういう方々がおられた。例えばサッカーならフォクツ。指揮者ならライトナー、コンヴィチュニー、そしてこの名盤の主役イッセルシュテットである。彼らは与えられた仕事に最善を尽くし手を抜かない。時に相手に嫌がられようとも目的達成に向け迷いが全くない。この演奏はその観点からとにかく冒頭から練りこまれている。KYRIEの呼吸は深く、ゆったりとしたテンポで堂々と始まる。合唱団が訓練されている。セーデルストレムの最初の「Christe」の巻き舌がまぁすごい。気合い入ってます。GLORIAはもちろん職人ハンスの腕の見せ所。特にどっしり構えた「In Gloria」のフーガがたまらない。しかし、CREDOはその上を行く。この章、冒頭旋律が投げやりな気がして、小生は少々苦手だったが、この演奏を聴いて目から鱗だった。やはり「Et vitam venturi saecli. Amen.」からのフーガはこの演奏が小生の中では一番だった。よくここまでやってくれた。SANCTUSとBENEDICTUSは合唱の発声が前章を引きずったのか少々硬く、実直すぎてちょっと違和感がある。でも職人に天使は似合わない。当たり前だ。そしてADNUS DEI になるとまた表情が変わる。合唱が音色を使い分け、祈りの部分と現世の差異を際立たせる。さすがだ。最後まで手を抜かない。
    ということで、この演奏本当に素晴らしい。あまりの仕事ぶりの徹底にProf.クレンペラーが「やれやれ、生真面目にやるだけが能ではないのに・・」とぼやく声までが聞こえる気がした。
    さて、仕事ぶりも最後の部分がやってきた。イッセルシュテットは最後も堂々と終わらせて仕事を締めくくると思っていた。ところが、である。職人は400小節前から慈愛の顔になり、神と楽聖と演奏に携わった全ての人に心からの感謝を述べる。これはずるい。あんな妥協を知らない男が最後に笑顔になって感謝するのである。小生はこの部分を通勤途上歩きながら聞いていたが、一瞬で落涙した。こんな経験はザンデルリンクの引退コンサートのハイドン変奏曲以来だ。こういう演奏がまだ世の中にはある。ハンス・シュミット=イッセルシュテットに、今度は私が感謝したい。このディスクを名盤と呼ぶのに、いささかの躊躇いもない。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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